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第21話 魔核+サイボーグ。
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アンジェリカはWO-2のビジュアルシステムに切開ポイントをオーバーラップ表示して見せた。
<この赤線に沿って深さ30センチまで切り裂いて頂戴>
WO-2は言われた通り怪鳥の皮膚と肉を切開して行った。
<ここからは手作業ね。切り口を広げて、中の臓器を取り出して>
言われるまま、WO-2は魔核と言われる臓器を切除した。
<オーケー。それじゃ上半身裸になって、ここに寝てもらえる?>
<ここで移植するのか? おいおい、WW2の野戦病院だってもう少しまともだったろうぜ>
<ごちゃごちゃ言わないで早くして。そうよ。横になったら体の制御をこっちに預かるわ>
覚悟を決めたWO-2は上半身裸になって、怪鳥の背中で横たわった。
<緊張する必要は無いわ。あなたたちの場合はメスなんかで体は切れないんだから。セキュリティコードを入力してメンテナンス・ハッチを開けるだけよ>
<止してくれ。聞けば聞くほど、自分が化け物に聞こえて来るぜ>
WO-2の肉体を直接制御したアンジェリカは、両手を使って瞬く間に魔核を胸に埋め込んだ。
それは「手術」という名には程遠く、「部品交換」と呼ぶのがふさわしい手軽さであった。
<これで終了よ。体の制御を返すわ。燃料タンクや燃焼エンジンは要らなくなったので取り外した。体は前より軽くなったはずよ>
<けっ! 旧車のエンジン交換みたいに言いやがるぜ>
<実際に性能は改善しているはずなんだから、文句を言わないで>
移植手術なら器官が馴染んだり傷口が癒えるのに何週間か必要であろうが、「部品交換」ならば必要なのは「慣らし運転」だけである。
<こいつはすぐ使えるのか?>
<いきなり超音速はお勧めできないわ。ベースのパワーを考えれば亜音速までなら問題ないと思う>
<はっはっは。良いねえ、「音速」って言葉の響きは。使い方は今までと同じで良いんだな?>
<制御システムはレガシー・ベースに統合したわ。パワーが上がっていることだけ注意して>
WO-9は怪鳥の死体の上に立ち上がり、防護服の上着を纏った。
<マジかよ? 本気で体が軽いぜ。足元なんかタップダンサーになれそうだ>
<使いすぎに注意してね。魔核を長く使うってことは、魔核からのフィードバックがたくさん脳に流れ込むってことなんだから>
<へへっ。今更健康に注意される日が来るとは思わなかったぜ。スバル、聞こえるか?>
<感度ありだ。どうした、ブラスト? 姿が見えないんで見捨てられたかと思ったよ>
<元気そうだな。オレちゃんがブラザーを見捨てるわけないだろう? ちょっとヘアーをセットし直してただけさ>
<そいつは余裕だね。こいつ僕を咥えたままおしゃぶりみたいに離してくれないんだ。そろそろ合流してほしいんだけど>
WO-2はWO-9が連れ去られている位置をレーダーマップ上で把握した。
<オーケー、ブラザー。3秒だ。3秒後に合流するから待っててくれ>
<3秒って、ブラスト。どういうこと?>
<じゃあ、行くぜ!>
WO-2はエンジンに見立てた魔核を起動した。ブーツ内に魔力が充填され、炎魔法「フレア」として火を噴く。ブーツは細かくパーツを動かし、噴射流の制御により瞬間的に姿勢を安定させる。
10センチの浮上。静かな燃焼音だけを立て、WO-2は空中に制止した。
<うはははは。静かだな、こいつは。爆発音なんか無いんだな? 振動もほとんど感じない。これならデート中でも使えるんじゃねえの?>
<3秒立ったわよ?>
<もう合流したさ>
<え?>
<スバルは今、空にいる。「すべての空」は俺の物だ。だったら、もう合流したってことさ>
その言葉を合図に、白昼の空間を真っ白に染め尽くすほどの光を発し、WO-2は空中に飛び出した。
<ヒャッハー! 何だこの加速ー! キタ、キタ、キタ、キターっ!>
<ブラスト~? 真面目にやってる?>
<スバルか―? 悪い、お前のスピードが遅すぎて見落としちまったよー!>
<調子に乗ってると、落ちるからね? どうしたのその燃料?>
ほんの一瞬で怪鳥に追いつき、WO-2は出力を絞って速度を合わせた。
<話は後さ。今は俺のカッコよさに見惚れておきな>
<何だかエンジンが静かになったね。口数が増えてうるさくなってるけど>
WO-2は怪鳥から離れて上昇し、高度を取った。
<スバルさんよー、当機は乱気流に入るので衝撃に注意してください、だぜ>
<乱暴なことをする気だね? いいけど、後の面倒はちゃんと見てね?>
<そういうとこだぞ、スバル。シートベルトをお締めくださいー!>
言うや否やWO-2は垂直に怪鳥目掛けて突っ込んだ。
鳥の目は地上を見下ろすのには向いているが、頭上を警戒するようにはできていない。
怪鳥はノーマークでWO-9の急襲を受けた。
頭部への「鉄拳」である。
「『オレの空』で偉そうな顔をすんのは、100年早いんだよーっ!」
これだけは肉声で叫びたかったブラストであった。
インパクトの瞬間、怪鳥の嘴をこじ開けていたWO-9は衝撃で空中に投げ出された。すぐさま姿勢を調整し、降下態勢に入る。
怪鳥はパンチの衝撃で頭蓋骨が潰れ、脳が液体化して眼窩から飛び出した。翼が脱力し、たちまちぼろ雑巾のようになって落下していく。
<あ、畜生ー>
<何だい、ブラスト?>
<間違えたぜ。フライド・チキンにするつもりが、鳥のミンチにしちまった>
<あのさ、そういうのは僕を回収してからやってくれる?>
自由落下中のWO-9が口を尖らせた。
<あー、悪い、悪い。キミって飛べないんだっけ? そりゃあ不便だろう>
<マウントの取り方が幼稚だよ。まだ仕事が残ってるだろう?>
1羽のつもりだった怪鳥が実は2羽いた。
3羽めがいないか、周辺の確認が必要であった。
<わかってるって。ちょっとしたジョークじゃねえか。オ・ア・ソ・ビ>
ぶつぶつ言いながら、WO-2はWO-9の上に飛び、わきの下に両手を入れてすくい上げた。
<いったん地面に下ろすぜ? 男2人抱き合ったままで偵察飛行ってのも外見が悪いだろう?>
<ああ、頼むよ>
WO-2はWO-9を抱えたまま急降下し、最後はふわりと地上に降り立った。
目の前にはWO-2が倒した怪鳥が、無惨にも地面に叩きつけられた姿で死んでいた。爆発したように飛び散った死体は、元の形がわからない状態であった。
「うわあ。これはひどいね。WO-6がいれば燃やしてもらうんだけど、現地の人に片づけてもらうしかないか?」
「う、うん。ちょっと倒し方がまずかったかな? 空の上で偉そうにされて頭に来ていたからな」
「下に人がいたら大変なんだから、その辺も確認してよ?」
「わかってるよ! 次から気を付ける!」
WO-2は両手を上げて降参した。
「じゃあな。10分ほど周囲を偵察してくる。お前のビーコンを頼りに戻るから、地上の警戒を頼む」
「ロジャー。街に戻って要救助者を探すよ」
WO-2は再び空に飛び上がり、WO-9は街に向かって走り始めた。
<アンジェリカ、見ていたか?>
<もちろんよ。噴射装置は正常に作動しているわね? 脳系統はどう?>
<どうと言われてもな。何も異常はないぜ。頭痛も吐き気もなしだ>
<それは良かったわ。どんな小さな異常でも気が付いたら教えてね。手遅れになったら困るでしょ?>
<今となってはお前が頭の中にいるってことが、心の支えだぜ。何かあったらよろしく頼む。スバルの重荷になるわけにはいかないんだ>
<よろしく頼むって……>
<ああ、そういうことだ。万一俺が暴走し始めたら止められるのはお前だけだ。アンジェリカ、その時は俺の機能を破壊してくれ>
もし魔核に脳を侵され暴れ出したら、スバルは自分に銃を向けることができないだろう。共倒れにならないために、ブラストはアンジェリカにその時は自分を殺してくれと頼んだ。
<わかったわ。ワタシはAIですからね、必要なことは躊躇なく行うわ。たとえ誰かの命を奪うことであっても>
アンジェリカは、時空Aの人類存続という目的のために100億の命を奪った。ブラスト1人の命のことで躊躇うことはあり得なかった。
<この赤線に沿って深さ30センチまで切り裂いて頂戴>
WO-2は言われた通り怪鳥の皮膚と肉を切開して行った。
<ここからは手作業ね。切り口を広げて、中の臓器を取り出して>
言われるまま、WO-2は魔核と言われる臓器を切除した。
<オーケー。それじゃ上半身裸になって、ここに寝てもらえる?>
<ここで移植するのか? おいおい、WW2の野戦病院だってもう少しまともだったろうぜ>
<ごちゃごちゃ言わないで早くして。そうよ。横になったら体の制御をこっちに預かるわ>
覚悟を決めたWO-2は上半身裸になって、怪鳥の背中で横たわった。
<緊張する必要は無いわ。あなたたちの場合はメスなんかで体は切れないんだから。セキュリティコードを入力してメンテナンス・ハッチを開けるだけよ>
<止してくれ。聞けば聞くほど、自分が化け物に聞こえて来るぜ>
WO-2の肉体を直接制御したアンジェリカは、両手を使って瞬く間に魔核を胸に埋め込んだ。
それは「手術」という名には程遠く、「部品交換」と呼ぶのがふさわしい手軽さであった。
<これで終了よ。体の制御を返すわ。燃料タンクや燃焼エンジンは要らなくなったので取り外した。体は前より軽くなったはずよ>
<けっ! 旧車のエンジン交換みたいに言いやがるぜ>
<実際に性能は改善しているはずなんだから、文句を言わないで>
移植手術なら器官が馴染んだり傷口が癒えるのに何週間か必要であろうが、「部品交換」ならば必要なのは「慣らし運転」だけである。
<こいつはすぐ使えるのか?>
<いきなり超音速はお勧めできないわ。ベースのパワーを考えれば亜音速までなら問題ないと思う>
<はっはっは。良いねえ、「音速」って言葉の響きは。使い方は今までと同じで良いんだな?>
<制御システムはレガシー・ベースに統合したわ。パワーが上がっていることだけ注意して>
WO-9は怪鳥の死体の上に立ち上がり、防護服の上着を纏った。
<マジかよ? 本気で体が軽いぜ。足元なんかタップダンサーになれそうだ>
<使いすぎに注意してね。魔核を長く使うってことは、魔核からのフィードバックがたくさん脳に流れ込むってことなんだから>
<へへっ。今更健康に注意される日が来るとは思わなかったぜ。スバル、聞こえるか?>
<感度ありだ。どうした、ブラスト? 姿が見えないんで見捨てられたかと思ったよ>
<元気そうだな。オレちゃんがブラザーを見捨てるわけないだろう? ちょっとヘアーをセットし直してただけさ>
<そいつは余裕だね。こいつ僕を咥えたままおしゃぶりみたいに離してくれないんだ。そろそろ合流してほしいんだけど>
WO-2はWO-9が連れ去られている位置をレーダーマップ上で把握した。
<オーケー、ブラザー。3秒だ。3秒後に合流するから待っててくれ>
<3秒って、ブラスト。どういうこと?>
<じゃあ、行くぜ!>
WO-2はエンジンに見立てた魔核を起動した。ブーツ内に魔力が充填され、炎魔法「フレア」として火を噴く。ブーツは細かくパーツを動かし、噴射流の制御により瞬間的に姿勢を安定させる。
10センチの浮上。静かな燃焼音だけを立て、WO-2は空中に制止した。
<うはははは。静かだな、こいつは。爆発音なんか無いんだな? 振動もほとんど感じない。これならデート中でも使えるんじゃねえの?>
<3秒立ったわよ?>
<もう合流したさ>
<え?>
<スバルは今、空にいる。「すべての空」は俺の物だ。だったら、もう合流したってことさ>
その言葉を合図に、白昼の空間を真っ白に染め尽くすほどの光を発し、WO-2は空中に飛び出した。
<ヒャッハー! 何だこの加速ー! キタ、キタ、キタ、キターっ!>
<ブラスト~? 真面目にやってる?>
<スバルか―? 悪い、お前のスピードが遅すぎて見落としちまったよー!>
<調子に乗ってると、落ちるからね? どうしたのその燃料?>
ほんの一瞬で怪鳥に追いつき、WO-2は出力を絞って速度を合わせた。
<話は後さ。今は俺のカッコよさに見惚れておきな>
<何だかエンジンが静かになったね。口数が増えてうるさくなってるけど>
WO-2は怪鳥から離れて上昇し、高度を取った。
<スバルさんよー、当機は乱気流に入るので衝撃に注意してください、だぜ>
<乱暴なことをする気だね? いいけど、後の面倒はちゃんと見てね?>
<そういうとこだぞ、スバル。シートベルトをお締めくださいー!>
言うや否やWO-2は垂直に怪鳥目掛けて突っ込んだ。
鳥の目は地上を見下ろすのには向いているが、頭上を警戒するようにはできていない。
怪鳥はノーマークでWO-9の急襲を受けた。
頭部への「鉄拳」である。
「『オレの空』で偉そうな顔をすんのは、100年早いんだよーっ!」
これだけは肉声で叫びたかったブラストであった。
インパクトの瞬間、怪鳥の嘴をこじ開けていたWO-9は衝撃で空中に投げ出された。すぐさま姿勢を調整し、降下態勢に入る。
怪鳥はパンチの衝撃で頭蓋骨が潰れ、脳が液体化して眼窩から飛び出した。翼が脱力し、たちまちぼろ雑巾のようになって落下していく。
<あ、畜生ー>
<何だい、ブラスト?>
<間違えたぜ。フライド・チキンにするつもりが、鳥のミンチにしちまった>
<あのさ、そういうのは僕を回収してからやってくれる?>
自由落下中のWO-9が口を尖らせた。
<あー、悪い、悪い。キミって飛べないんだっけ? そりゃあ不便だろう>
<マウントの取り方が幼稚だよ。まだ仕事が残ってるだろう?>
1羽のつもりだった怪鳥が実は2羽いた。
3羽めがいないか、周辺の確認が必要であった。
<わかってるって。ちょっとしたジョークじゃねえか。オ・ア・ソ・ビ>
ぶつぶつ言いながら、WO-2はWO-9の上に飛び、わきの下に両手を入れてすくい上げた。
<いったん地面に下ろすぜ? 男2人抱き合ったままで偵察飛行ってのも外見が悪いだろう?>
<ああ、頼むよ>
WO-2はWO-9を抱えたまま急降下し、最後はふわりと地上に降り立った。
目の前にはWO-2が倒した怪鳥が、無惨にも地面に叩きつけられた姿で死んでいた。爆発したように飛び散った死体は、元の形がわからない状態であった。
「うわあ。これはひどいね。WO-6がいれば燃やしてもらうんだけど、現地の人に片づけてもらうしかないか?」
「う、うん。ちょっと倒し方がまずかったかな? 空の上で偉そうにされて頭に来ていたからな」
「下に人がいたら大変なんだから、その辺も確認してよ?」
「わかってるよ! 次から気を付ける!」
WO-2は両手を上げて降参した。
「じゃあな。10分ほど周囲を偵察してくる。お前のビーコンを頼りに戻るから、地上の警戒を頼む」
「ロジャー。街に戻って要救助者を探すよ」
WO-2は再び空に飛び上がり、WO-9は街に向かって走り始めた。
<アンジェリカ、見ていたか?>
<もちろんよ。噴射装置は正常に作動しているわね? 脳系統はどう?>
<どうと言われてもな。何も異常はないぜ。頭痛も吐き気もなしだ>
<それは良かったわ。どんな小さな異常でも気が付いたら教えてね。手遅れになったら困るでしょ?>
<今となってはお前が頭の中にいるってことが、心の支えだぜ。何かあったらよろしく頼む。スバルの重荷になるわけにはいかないんだ>
<よろしく頼むって……>
<ああ、そういうことだ。万一俺が暴走し始めたら止められるのはお前だけだ。アンジェリカ、その時は俺の機能を破壊してくれ>
もし魔核に脳を侵され暴れ出したら、スバルは自分に銃を向けることができないだろう。共倒れにならないために、ブラストはアンジェリカにその時は自分を殺してくれと頼んだ。
<わかったわ。ワタシはAIですからね、必要なことは躊躇なく行うわ。たとえ誰かの命を奪うことであっても>
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