サイボーグ召喚――時空を超えた戦士

藍染 迅

文字の大きさ
上 下
13 / 35

第13話 魔物の氾濫

しおりを挟む
 紅蓮の炎であるはずのフレアが白い炎に飲み込まれていた。胸を縫い留めていた鉄槍が、飴のように溶かされていく。

「何だ、あの温度は? あれは……フレアではない?」

 中央の柱を失って、シヴァのいましめも力を失って消えた。
 魔物は傷つきながらもゆらりと立ち上がった。

「くそっ! しぶとい野郎だ。もう一度足元だ! 氷魔法、撃て!」

 号令を発するドーソンに向かって、魔物は煙と炎を上げ続ける胸を突き出した。

 しゅーーーっ!

 大量の空気を吐き出す音をさせながら、胸の炎が勢いを増す。
 その色は真っ白で、眼を焼くほどに明るかった。

「そ、そうか! あれは、『白熱流』!」

 それがドーソンの最後の言葉となった。

 魔物とドーソンを結ぶ直線。その上を白熱の光がほとばしった。

 ドーンッ!

 ドーソン諸共防壁の上部をもぎ取って、魔物が放った白熱流は天井に深い穴を穿うがった。

「だ、団長ーっ!」
「何だ? 何があった?」

 あまりにも一瞬のことで、ドーソンが討ち取られたことに気付かぬ者がほとんどであった。

「団長が~! 団長が~!」
「団長がどうした? どこに行ったんだ?」

「団長がやられたーっ!」

「何だとっ? そんな馬鹿な!」

 命令系統を失い、団員たちは混乱した。まずいと見たイメルダが走り出し、壁の上部へと駆け上がる。

 その間、魔物は一歩一歩、第1の壁に近付いていた。

「団長は負傷した! わたしが指揮を代わる! うろたえるな! 氷魔術準備、足元に集中! 3、2、1、てーっ!」

 再び魔物の足元に氷魔法が集中する。ぴたりと足を停めた魔物は、足元の氷を見下ろした。

 ぱかり。

 顔半分に切れ目が入るほど大きく口を開けると、魔物は白熱した溶岩を口からだらだらと垂れ流した。
 氷も、足も、地面まで燃やして、溶岩は真っ赤な炎を上げた。

「GrrrrrrrrRRRR!」

 とろけた足を踏み出して、魔物は再び前進を始める。

「ええい、怯むな! 氷魔法! 3、2、1、撃て―っ!」

 魔物の足元に氷魔法が飛んだが、凍るより先に魔物を包む炎に溶かされてしまった。

「続けろ! 3、2……」

 ぶしゅううううっ!

 轟と空気を震わせる音と共に、魔物の胸から白光が迸った。

 どーーーーんっ!

 イメルダがいたはずの場所には、円く切り取られた穴しか残っていなかった。

「うわわわわわっ! 副団長がやられたぁーっ!」
「うわーっ! 攻撃が通じねぇーっ!」
「だめだっ! 逃げろ!」

 相次いで指揮者を失ったレイド・チームは総崩れとなった。
 
 どーーんっ!
 どーーんっ!

 続けざまに洞窟を揺るがす大音響が走り、ついに4つの防壁はガラガラと音を立てて崩れ落ちた。

「もうだめだ! 逃げろ――!」

 振り向いた団員は走り出そうとしていた足を停めた。

 指揮者2人を打ち倒した魔物が、体中から炎を上げながら燃え落ちて行く。

「Gmmmmm……」
 
「あ、ああ。団長ー! やりましたよーっ!」
 
 助かったと息を吐き出そうとした時、魔物の背後に通路が見えた。
 「塞いだはず・・・・・の通路」が黒々と口を開けていた。

「えっ? 嘘だ……。嘘だー。そんなことぉー……」

 がくがくと膝を震わせながら金縛りにあって動けない団員は、うぞうぞと通路から這い出て来る魔物の群れを見た。

 さっき燃え尽きた魔物にそっくりな黒い巨人。巨大なさそり。口元から炎を拭き出すオオトカゲ。5メートルを超える大蛇……。そんなバケモンがひっきりなしに穴から這い出て来る。

「う、うわあああ。助けてくれー!」

 ようやく身を翻して走り出した男の頭上に黒い影が差した。咄嗟に地面に身を投げて回転しながら立ち上がると、嘴が1メートルもある翼竜が飛び抜けて行った。

 男の片腕をくわえて――。

「ぎゃぁああっ!」

 肩口を抑えて倒れた男に大蛇が食らい付き、一息に飲み干した。

 
 その日、レイド・チームは誰一人として街には帰り着かなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

エンシェントソルジャー ~古の守護者と無属性の少女~

ロクマルJ
SF
百万年の時を越え 地球最強のサイボーグ兵士が目覚めた時 人類の文明は衰退し 地上は、魔法と古代文明が入り混じる ファンタジー世界へと変容していた。 新たなる世界で、兵士は 冒険者を目指す一人の少女と出会い 再び人類の守り手として歩き出す。 そして世界の真実が解き明かされる時 人類の運命の歯車は 再び大きく動き始める... ※書き物初挑戦となります、拙い文章でお見苦しい所も多々あるとは思いますが  もし気に入って頂ける方が良ければ幸しく思います  週1話のペースを目標に更新して参ります  よろしくお願いします ▼表紙絵、挿絵プロジェクト進行中▼ イラストレーター:東雲飛鶴様協力の元、表紙・挿絵を制作中です! 表紙の原案候補その1(2019/2/25)アップしました 後にまた完成版をアップ致します!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

処理中です...