7 / 13
俺たちに親はない
しおりを挟む
二人にはエッセンシア王国軍から訓練官が派遣され、付きっ切りで指導を行うことになった。
ここでも龍也と大河は訓練プランを細かく聞き出し、自分たち流にプランを改変させた。
「まず座学だ。この世界での戦闘、そして魔王と魔物について詳しく教えてくれ」
「座学が終わるまでは、基礎体力と魔力錬成のみを並行して行う」
「武器を使った訓練や魔法の技術的訓練は、次の段階だ」
神の加護によって兄弟の身体能力は著しく向上していた。体を鍛える必要はない。必要なのは体を慣らす作業であった。
魔力についても加護の恩恵はある。しかし、そもそも魔力を使ったことがないので、錬成や制御の方法を一から学ぶ必要があった。
「若者、特に優秀な若者は基礎を学ぶことを嫌うものだがな」
訓練官の一人、クレイモア大尉は感心して言った。
「優秀な道具でも使い方を知らなければ役に立たない」
顔色も変えずに龍也は訓練に専念した。
「俺達には頭と体しか頼るものがなかったからな」
大河も余念なくランニングや登攀訓練に向き合った。
一か月後、兄弟のペースについていける兵士は一人もいなくなった。
「……聞かせてもらっていいか?」
訓練合間の休憩時間。肩で息をつきながらクレイモア大尉は尋ねた。
「なぜそれだけ努力ができる? 何のために戦う?」
報酬のため、そう言うのは簡単であったが、クレイモアが求めているのはそういう答えではなかった。
「俺たちに親はない。こどもを育てきれず、育児放棄していなくなった」
「こども二人を育てる親はいくらでもいるだろうに……」
「俺たちの一つ下には、4人の妹がいる」
妹は一卵性の四つ子であった。2年の間に6人のこども。両親は育児ノイローゼとなり、経済的にも破綻した。
ここでも龍也と大河は訓練プランを細かく聞き出し、自分たち流にプランを改変させた。
「まず座学だ。この世界での戦闘、そして魔王と魔物について詳しく教えてくれ」
「座学が終わるまでは、基礎体力と魔力錬成のみを並行して行う」
「武器を使った訓練や魔法の技術的訓練は、次の段階だ」
神の加護によって兄弟の身体能力は著しく向上していた。体を鍛える必要はない。必要なのは体を慣らす作業であった。
魔力についても加護の恩恵はある。しかし、そもそも魔力を使ったことがないので、錬成や制御の方法を一から学ぶ必要があった。
「若者、特に優秀な若者は基礎を学ぶことを嫌うものだがな」
訓練官の一人、クレイモア大尉は感心して言った。
「優秀な道具でも使い方を知らなければ役に立たない」
顔色も変えずに龍也は訓練に専念した。
「俺達には頭と体しか頼るものがなかったからな」
大河も余念なくランニングや登攀訓練に向き合った。
一か月後、兄弟のペースについていける兵士は一人もいなくなった。
「……聞かせてもらっていいか?」
訓練合間の休憩時間。肩で息をつきながらクレイモア大尉は尋ねた。
「なぜそれだけ努力ができる? 何のために戦う?」
報酬のため、そう言うのは簡単であったが、クレイモアが求めているのはそういう答えではなかった。
「俺たちに親はない。こどもを育てきれず、育児放棄していなくなった」
「こども二人を育てる親はいくらでもいるだろうに……」
「俺たちの一つ下には、4人の妹がいる」
妹は一卵性の四つ子であった。2年の間に6人のこども。両親は育児ノイローゼとなり、経済的にも破綻した。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

平和国家異世界へ―日本の受難―
あずき
ファンタジー
平和国家、日本。 東アジアの島国であるこの国は、厳しさを増す安全保障環境に対応するため、 政府は戦闘機搭載型護衛艦、DDV-712「しなの」を開発した。 「しなの」は第八護衛隊群に配属され、領海の警備を行なうことに。
それから数年後の2035年、8月。
日本は異世界に転移した。
帝国主義のはびこるこの世界で、日本は生き残れるのか。
総勢1200億人を抱えた国家サバイバルが今、始まる――
何番煎じ蚊もわからない日本転移小説です。
質問などは感想に書いていただけると、返信します。
毎日投稿します。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

異世界でカフェを開くことになりました
ならん
ファンタジー
菜々美は平凡な高校生だったが、ある日突然異世界に転移してしまう。未知の世界で途方に暮れていた彼女を救ったのは、リュウという青年だった。リュウとその仲間たちの助けを借りながら、菜々美は異世界で新たな生活を始めることに決める。趣味のハーブティーを活かし、町に癒しを届けるカフェを開業することを目指す。
カフェの修繕作業は困難を極めたが、リュウやガイデンたちと協力し、少しずつ形になっていく。しかし、順調に思えた生活の中で、一人の常連客エドワードが姿を消すという事件が起きる。エドワードの家を訪れた菜々美とリュウは、彼の日記から古代の遺跡を発見したことを知る。エドワードの行方を追って森へ向かった二人は、怪物に襲われ負傷した彼を救出するが、その後町全体が地震のような揺れに見舞われる。
果たしてこの異世界で、菜々美は平穏なカフェ経営を続けられるのか。そして、エドワードの発見した古代の遺跡とは何なのか。新たな冒険と癒しの時間が交錯する物語が、今始まる。
更新は週1回の予定です。
本作品はAIで生成した文章に加筆修正を加えたものです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる