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第77話 やっぱドラゴンでしょう!

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 ドーンと扉を押し開けて、ストーン5はボス部屋に突入した。俺は俺ダンの中から状況を監視する。
 石像のようにじっと立っていたグレート・ドラゴンの目に光が灯り、ストーン5を睨みつけた。

「Grrrrr」

 喉を唸らせる口元から、ちろりと炎が漏れる。

 ドドーン、ドーン!

 ストーン5は基本ルーティーンのスタン・グレネードと催涙弾のコンボを発射し、グレート・ドラゴンの動きを封じようとした。

「GaAAH!」

 グレート・ドラゴンは一発ファイアーブレスを飛ばし、翼を羽ばたいてガスを吹き飛ばそうとした。
 直径2メートルもある火球がストーン5に襲い掛かった。

「ま゛っ!」

 先頭に立つダイヤマンは盾を構えて腰を落とした。防御姿勢を固めたところで火球がダイヤマンに襲い掛かる。
 頭を低く下げたダイヤマンは、濁流に襲われる杭のように炎に飲み込まれた。

「肺活量半端ねえな! 肺で息してるかどうか知らんけど……。撃ち返せ、ダイヤマン!」

 俺とストーン5はゴーレム&ゴーレム・マスターという絆で結ばれている。よって、異空間にいようとも声が届くようになっているのよ。

 シュコーンと軽快な音を立てて、ダイヤマンの両肩から液体窒素弾が発射された。これに気付いたグレート・ドラゴンはブレスを中断して、尻尾を振り回した。

 巨体に似合わぬ素早さで、宙を走った尻尾が液体窒素弾を弾き飛ばす。尻尾もデカいから適当に振っただけで当たっちゃうのか。

「休むな! 上下に打ち分けろ! 1番、3番、5番、上部にプラズマ放電! 2番、4番、下半身に液体窒素弾!」

 こっちは5人いるからね。数の威力を見せつけてやれ。

 しかし、さすがはグレート。大きく翼を羽ばたいて、打ち込まれる砲弾を吹き飛ばそうとする。

「踏ん張れ! 交互に発射! 敵を休ませるな! 翼の止まる瞬間が奴の最後だ!」

 こちらは5人、翼は2枚。打ち込む弾頭をすべて吹き飛ばすなんてことはできっこないのだ。
 1発の液体窒素弾が風の防御を突破すると、後は脆かった。ひびの入った堤防が決壊するように、グレート・ドラゴンはストーン5の軍門に下った。

「撃ち方止め! 十分凍り付いたろう。爬虫類の悲しさで、それだけ冷やされたら動けまい」

 ドラゴンはモンスターだから爬虫類かどうか、定かではないけどね。哺乳類ってことはないでしょう。

「我トーメーの名において命ずる。下僕しもべとなりて我に従え。テイム!」

 気合を入れて宣言すると、ピッカーンと光が走り、グレート・ドラゴンがビクンと震えた。

「ダイヤマン。弱火の火炎放射で氷を溶かしてあげて」
「ま゛っ!」

 俺の指示を受けてダイヤマンが火傷しない程度の火加減で、グレート・ドラゴンを封じ込めた氷を溶かしてくれた。随分繊細な作業ができるようになったのね、ダイヤマン。

「Grrrrr」

 氷が解けて息を吹き返したグレート・ドラゴンが、俺の前で跪いた。いや構造的に跪くのは無理だけど、それっぽく体を低くした。

「ご挨拶恐縮。ウチは堅苦しいのはなしだから、気楽に行こう。よろしくな」

 テイマーだゴーレム・マスターだと偉そうにしても、ウチには菩薩のアリスさんがいらっしゃいますからね。世俗の権力など通用しません。

 さて、敵のギブアップでボス戦はこちらのTKO勝ちですな。ということは……?

 ピカーン!

 出ました! 宝箱。相手がドラゴンですからね。ドラゴン・シリーズの武器・防具とか、金銀財宝の類などいかがでしょうか?

 安全確認後蓋を開けてみると――。

「何だ? 何かの書付が入ってるね」
「臓器提供承諾書ニャ」
「どういうこと?」

「ワタクシ、グレート・ドラゴンは死亡した暁には臓器一切をマスターであるトーメー氏に提供することをここに承諾致します?」
「何じゃそりゃ?」
「これはあれニャ。生きている間には鱗や牙、内臓なんかを渡せないが、死んだら好きに使ってくれと言う遺言状ニャ」

 ふうん。随分と慎重なことで。
 生きてるうちには提供できないってのはわかりますよ。鱗だから剥がしても大丈夫ってわけにはいかんでしょうよ。牙や爪も同じだよね。

「きっと過去に人間ともめた悲しい歴史があるニャ」
「長く生きていればそういうこともあるかもしれないね」

 ところで、ドラゴンの寿命ってどれくらいあるの? 長そうな気がするんだけど。

「美麗、こいつの寿命って何年くらい?」
「短くて1000年ですね」
「たっぷりだな、おい!」

 ダンジョンが地表に出てから600年でしょ? それが誕生時期と考えると、後400年は生きるんじゃない?

「400年先の話を合意書にされてもねぇ」
「自分も不老不死ニャから、取り立ては可能ニャ」

 そうは言ってもねえ。
 冒険者は浮草稼業。明日の命も知れねえもんでございます。

「別にいいけどね? ドラゴンの体に興味があるわけじゃないから。たまにドラゴン・ライダーごっことかさせてもらえれば十分かな」
「戦力としては考えないニャか?」
「うーん。体がデカすぎるし、人には見せられないし……。ちょっと戦線投入は難しいかなあ。あくまでもペット的ポジションで考えてるよ?」

 それに適材適所って意味じゃ美麗のどこダンに「ラスボス」としてすえて置くポジションがあるじゃない。前のボスもドラゴンだったご縁があるしさ。

 ……落盤には気を付けてね。
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