187 / 243
薄氷上のダンス
187
しおりを挟む
「あなた、これで良いと思う?」
「……少し露出が気になる。」
「これでも、少ない方よ?」
腰を支える彼の爪が少し痛い。
嫌だと言う様に、彼が少し苛立っているのはわかる。
だから、衣装の中でも露出が少なく、尚且つ良さげなのを選んだのだけど。
「他にはないのか?」
「でしたら、こちらはどうでしょう?」
そうして、新品そうな箱から出されたのはどこか見かけた事がある男性の衣服と
胸や足などの一部の上品な光沢と透け感のあるシャンパンゴールドの生地も混ざったワインレッドのドレスだった。
まるで首輪の様なチョーカーと、手枷の様な腕輪が淫靡な雰囲気を醸し出しており、それをチラリと私を見た後彼は頷いた。
目立ちそう。
しかしあの男性の衣装をどこでだろうかと考えていた。
「……それで良い」
「もし、着付けのメイドが必要ならお呼び下さい。」
そう言い残し壁の方へ下がり、目の付近だけを隠す黒いマスクをしたスタッフを横目に見て、私はユリウスに連れられて横の部屋へと入る。
扉を彼が閉めると私はそれまで何処かで見た気がした衣装を彼に聞いた。
「これって何処かで……見た気がして。」
「覚えていないか?『青の王と白雪』だ。」
「あ!あの挿絵と同じね……でもなんでワインレッド?」
確か表紙に描かれていたのは、シャンパンゴールドと青のドレスだった筈だ。
そろりと髪を撫でてきた彼が少し興味深そうに鏡を見ている。
「黒髪だから赤いドレスも似合うだろう。それに読まなかったのか?残りの黒いページの方は?」
「あ、そういえば忘れてたわ。色々忙しくて……まさかそれに登場するの?これ。」
「そうだ、一応あらすじを言うが駆け落ちをしようとした白雪を青王は怒り、監禁……して自身に嫉妬というのも変だが、塔に閉じ込めてこの衣装を着せて愛でたという感じだ……」
首元まで隠れるドレスだったから竜人族だとわからない為にも良かった。
一応髪色は黒色に変えてきている。
なので外観上はエルフ族として、彼と共に振る舞うつもりだ。
仮面もしている為に、どこの誰かはわからないとは思うが、念には念を入れる。
今まで来ていた服を脱ぎ、ドレスに着替えていく。
靴も用意されていたヒールのある靴を履いた。
サイズはちょうど良かったのが幸いだ。
パニエもよしと鏡でチェックしていると、腰を撫でられて鏡を見れば青い礼服を着た彼はダークブルーの髪へと変わっている。
「我だけの白雪、他の男に気をつけろ。」
「大丈夫よ、青の君。私は壁の花になっておくから……やめっ」
「本当にわかっていない……」
彼に胸を揉まれてしまい、振り返ると嫌だと彼の表情が語っているが、私は外していた仮面を手に取り、顔につける。
「青の君も着けて下さい。」
私はユリウスの仮面を手に取り、渡すと渋々彼がそれをつけたのを見て、ユリウスもそれはそうでしょと思う。
ただでさえ、鍛えられた身体、王族たる所作に整った顔立ちでもうコスプレではなくなっている気がする。
「大丈夫かしらこれ。」
私はユリウスの方が危ないんじゃないのかしらと呑気にそう考えていた。
コツコツと、歩いている足音のほかに人々の談笑する声や音楽が聞こえる。
ちらほらと私を見る目線や舐め回す様な視線にげっそりとしながら、酒の匂いがホールの中に充満している。
「ねぇ、あの竜狩りが来ているって」
女性がなにか言い、それにファンだろうか女性が黄色い声を上げてどこよ?と探している様だ。
なにかわからないが、私はそれよりも遠くにユリウスの匂いが微かに感じてそれが一筋の光の様にも感じた。
ユリウスとずっと一緒にいると、不審がられると思い渋るユリウスをどうにか諭し宥めて離れたのだ。
「おお、囚われの白雪。どうか私と一曲。」
「いや、私と一曲。」
私はチラリと離れた位置にいる美女達に囲まれているユリウスと目が合う。
ダメだと視線は物語っているが、流石にこの場に来てから一曲も踊っていないのでは不審がると思ったので、誰でも良いと手を取ろうとした途端、明かりが暗くなり、驚きながらもホールの上段が明るくなり高らかに声が響く。
「お集まりいただき、今宵のお楽しみにされていた方々、まだ知らないという方々もどうか、ご参加頂きたい!最後まで踊りきれた方にはこちらから選びいただけるチャンス!」
ハッとして、私は沢山のワゴンが端にあり、クロスが取られてその景品に目が止まる。
あれだ!
私は一瞬、ユリウスの方へ目線を向けると彼は美女に引っ付かれていて、顔が見れない。
ムッとしたが、これも我慢だと手に持っていたワインが少しシャーベットになったが、明りが落とされていたので、誰も気にしないだろうとテーブルに置いた。
ホールの中庭からは冷気が漂っており、少し肌寒い。
人々の流れが其方へと移動するのに合わせて私も移動した。
ユリウスには悪いが、アレを手に入れる為にここに来たのだ。
「……少し露出が気になる。」
「これでも、少ない方よ?」
腰を支える彼の爪が少し痛い。
嫌だと言う様に、彼が少し苛立っているのはわかる。
だから、衣装の中でも露出が少なく、尚且つ良さげなのを選んだのだけど。
「他にはないのか?」
「でしたら、こちらはどうでしょう?」
そうして、新品そうな箱から出されたのはどこか見かけた事がある男性の衣服と
胸や足などの一部の上品な光沢と透け感のあるシャンパンゴールドの生地も混ざったワインレッドのドレスだった。
まるで首輪の様なチョーカーと、手枷の様な腕輪が淫靡な雰囲気を醸し出しており、それをチラリと私を見た後彼は頷いた。
目立ちそう。
しかしあの男性の衣装をどこでだろうかと考えていた。
「……それで良い」
「もし、着付けのメイドが必要ならお呼び下さい。」
そう言い残し壁の方へ下がり、目の付近だけを隠す黒いマスクをしたスタッフを横目に見て、私はユリウスに連れられて横の部屋へと入る。
扉を彼が閉めると私はそれまで何処かで見た気がした衣装を彼に聞いた。
「これって何処かで……見た気がして。」
「覚えていないか?『青の王と白雪』だ。」
「あ!あの挿絵と同じね……でもなんでワインレッド?」
確か表紙に描かれていたのは、シャンパンゴールドと青のドレスだった筈だ。
そろりと髪を撫でてきた彼が少し興味深そうに鏡を見ている。
「黒髪だから赤いドレスも似合うだろう。それに読まなかったのか?残りの黒いページの方は?」
「あ、そういえば忘れてたわ。色々忙しくて……まさかそれに登場するの?これ。」
「そうだ、一応あらすじを言うが駆け落ちをしようとした白雪を青王は怒り、監禁……して自身に嫉妬というのも変だが、塔に閉じ込めてこの衣装を着せて愛でたという感じだ……」
首元まで隠れるドレスだったから竜人族だとわからない為にも良かった。
一応髪色は黒色に変えてきている。
なので外観上はエルフ族として、彼と共に振る舞うつもりだ。
仮面もしている為に、どこの誰かはわからないとは思うが、念には念を入れる。
今まで来ていた服を脱ぎ、ドレスに着替えていく。
靴も用意されていたヒールのある靴を履いた。
サイズはちょうど良かったのが幸いだ。
パニエもよしと鏡でチェックしていると、腰を撫でられて鏡を見れば青い礼服を着た彼はダークブルーの髪へと変わっている。
「我だけの白雪、他の男に気をつけろ。」
「大丈夫よ、青の君。私は壁の花になっておくから……やめっ」
「本当にわかっていない……」
彼に胸を揉まれてしまい、振り返ると嫌だと彼の表情が語っているが、私は外していた仮面を手に取り、顔につける。
「青の君も着けて下さい。」
私はユリウスの仮面を手に取り、渡すと渋々彼がそれをつけたのを見て、ユリウスもそれはそうでしょと思う。
ただでさえ、鍛えられた身体、王族たる所作に整った顔立ちでもうコスプレではなくなっている気がする。
「大丈夫かしらこれ。」
私はユリウスの方が危ないんじゃないのかしらと呑気にそう考えていた。
コツコツと、歩いている足音のほかに人々の談笑する声や音楽が聞こえる。
ちらほらと私を見る目線や舐め回す様な視線にげっそりとしながら、酒の匂いがホールの中に充満している。
「ねぇ、あの竜狩りが来ているって」
女性がなにか言い、それにファンだろうか女性が黄色い声を上げてどこよ?と探している様だ。
なにかわからないが、私はそれよりも遠くにユリウスの匂いが微かに感じてそれが一筋の光の様にも感じた。
ユリウスとずっと一緒にいると、不審がられると思い渋るユリウスをどうにか諭し宥めて離れたのだ。
「おお、囚われの白雪。どうか私と一曲。」
「いや、私と一曲。」
私はチラリと離れた位置にいる美女達に囲まれているユリウスと目が合う。
ダメだと視線は物語っているが、流石にこの場に来てから一曲も踊っていないのでは不審がると思ったので、誰でも良いと手を取ろうとした途端、明かりが暗くなり、驚きながらもホールの上段が明るくなり高らかに声が響く。
「お集まりいただき、今宵のお楽しみにされていた方々、まだ知らないという方々もどうか、ご参加頂きたい!最後まで踊りきれた方にはこちらから選びいただけるチャンス!」
ハッとして、私は沢山のワゴンが端にあり、クロスが取られてその景品に目が止まる。
あれだ!
私は一瞬、ユリウスの方へ目線を向けると彼は美女に引っ付かれていて、顔が見れない。
ムッとしたが、これも我慢だと手に持っていたワインが少しシャーベットになったが、明りが落とされていたので、誰も気にしないだろうとテーブルに置いた。
ホールの中庭からは冷気が漂っており、少し肌寒い。
人々の流れが其方へと移動するのに合わせて私も移動した。
ユリウスには悪いが、アレを手に入れる為にここに来たのだ。
10
お気に入りに追加
148
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】帰れると聞いたのに……
ウミ
恋愛
聖女の役割が終わり、いざ帰ろうとしていた主人公がまさかの聖獣にパクリと食べられて帰り損ねたお話し。
※登場人物※
・ゆかり:黒目黒髪の和風美人
・ラグ:聖獣。ヒト化すると銀髪金眼の細マッチョ
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
婚約破棄目当てで行きずりの人と一晩過ごしたら、何故か隣で婚約者が眠ってた……
木野ダック
恋愛
メティシアは婚約者ーー第二王子・ユリウスの女たらし振りに頭を悩ませていた。舞踏会では自分を差し置いて他の令嬢とばかり踊っているし、彼の隣に女性がいなかったことがない。メティシアが話し掛けようとしたって、ユリウスは平等にとメティシアを後回しにするのである。メティシアは暫くの間、耐えていた。例え、他の男と関わるなと理不尽な言い付けをされたとしても我慢をしていた。けれど、ユリウスが楽しそうに踊り狂う中飛ばしてきたウインクにより、メティシアの堪忍袋の緒が切れた。もう無理!そうだ、婚約破棄しよう!とはいえ相手は王族だ。そう簡単には婚約破棄できまい。ならばーー貞操を捨ててやろう!そんなわけで、メティシアはユリウスとの婚約破棄目当てに仮面舞踏会へ、行きずりの相手と一晩を共にするのであった。けど、あれ?なんで貴方が隣にいるの⁉︎
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ★9/3『完全別居〜』発売
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる