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駆け巡る普天率土の章
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小道を私達は先頭のウルが剣を使い、下草を軽く切りながら進んでいく。
冬も近いからか、下草は枯れ気味で思ったよりは邪魔にはならない。
「泉についたら私は祈りの儀式の為の準備をするけれど、あなたは祈りを捧げて欲しいわ。その前に邪魔が入りそうだけど……」
「荒らされてないと良いんだが……」
ため息をつきながら進むと人の気配が有り、私達はその漂ってくる血の匂いと近寄りたくない気配に慄いた。
「……これは儀式は無理そうだな。」
「……大精霊様が……」
ガラスの容器に沈められ泥の中で蠢くそれが大精霊だと気がついた。
黒いフードを被った一団は中を覗きながら、なにかを黒光する石の着いた杖に装填していた。
「アレはしかしながら、竜化した方が早そうだな。」
「だけど、敵の正体がわからないのに、特攻したら危ないのでは。」
「下手に隙を見せてなにかを繰り出してきたら危ないだろ?ウルはシアを守ってくれ。俺が大暴れしてアレを破って、敵の攻撃を引きつけるからそれを君たちはその間に大精霊やその他の助けられる人を優先して助けてくれ。」
「ふむ、確かに。少し離れた位置にある檻には人が数名見えるな。この国は犯罪奴隷以外はほぼ禁止されているから、助けだした方が得策だろう。下手に人質に取られたら厄介だ。」
他に良い方法はないのだろうか。
私はユリウスから離れる事に少しの不安が胸に湧いた。
遺跡群は半壊されており、番以外を弾くという効果は無いに等しくなっており、泉はどんよりとした色へと変わっている。
この禍々しい気配では、無理だろうと浄化しなければならない事は明白だ。
泥の中でもがいている大精霊と私の目が合いごぼりと泡を立てた。
「……後少しだと言うのに……抗うなどくだらない。リソースの回収はまだか?」
「最後の抵抗の奴ですな。未だ終わりません。純度が低いですが、人から集めた方で消費しつつ、呪いの魔石を追加で入れましょうか?そうすれば、最後のひとおしになりましょう。」
「まだ数名残っているからな……本来ならば素早い移動の為に残しておきたがったが……」
敵の会話を聞いていると更に悪事をしようとしているらしく、私達はこっそりと木の背後へ隠れながら話し合った。
「……だったら始めようか。シアは隠れていてくれ。大精霊を助け出した後移動して、無事で……」
大丈夫よと私はユリウスの方に微笑みながら、頷いた。
ギュッと軽く抱きしめてられてから、ユリウスの名残惜しそうな青い瞳と目が合い、離れていった。
竜化したユリウスが飛び立ち、暴れ回りガラスの容器からこぼれ落ちた大精霊をその後をこっそりと隠れながら走っていくシャルロッテさんやあの冒険者の一団が動き助け出した。
私は未だここで隠れているが、そろそろ出るべきだと思い立ち上がる。
ユリウスの竜化している辺りでは魔法やなにやら異様な雰囲気のする杖から放たれた魔法を避けたりして、とても危険そうだ。
「くそっ、後少しだというのに!」
「引き上げるぞ……ん?」
なにかを話している一団を横目に見ながら私は駆けて、助け出された大精霊に近寄った。
唯一、頭部、首や胸だけが残り他は無くなってしまっていた。
果たしてこれを癒しても治せるのだろうか?
「聞こえますか?」
「酷いわ……これでは治せられないでは」
冒険者の一団の方は囚われていた人の方へと助け出されており、横目で見ながら安心した。
《…我……存在………》
生きていた
私はハッと頭の中に響いた声に驚きながらも、私は浄化と癒しを開始しなくてはと考えて手をかざした。
「ねぇ……君が《暁の巫女》なのか?」
「こいつ、いつのまにっ!」
背後からいきなり声をかけられて、驚いていると隣にいたシャルロッテさんが魔法を使おうとした。
私は振り向くと、遠くから聞こえたユリウスの咆哮と共に、ウルさんは剣を男へと向けて、切り裂こうとしていた。
「危ないじゃねぇか、俺に向けないでくれるか?」
フードをつけた男は一歩下がり、剣の切先を軽く避けた。
「仕事だから……それはできない。」
「チッ、金竜が気がついたか。」
「これを……お使いになりますか?真の完成ではありませんが、使い物にはなるでしょう。」
「そうだな……」
ウルさんは剣を構えて男に近寄り切り裂こうとしたが、男へと剣が突き立てられる前に瞬く間に移動しており、私の方へ一歩近寄ってきている。
男へと杖を渡した男は低く笑い楽しそうに顔を歪めた。
「なにを求めて……いるかはわからないけど、私は違うと思うわ。なにも……特別な事は出来ないもの。容姿は少し変わってるぐらいよ。」
「シアッ」
速度を弱めて、ずるずると着地した際の土が飛び散り、ユリウスが隣へと降り立ち、粗方他の敵は倒し尽くしたのか地面には他の人の焼き死んだ死体や人だったのだろう破片の肉塊や血が飛び散っていたり、ブレスを使ったのか焼けた臭いがしてきた。
「俺のシアに近寄るなっ」
「ふッ……俺のねぇ?」
フードを取り、ハハッと乾いた笑いをしながら後ろへと男は少し下がった。
その声に私は嫌な予感がしていた。
聞いたことのある声で、目の前に立つユリウスは毛の一本が逆立つ様な静電気の怒りでピリピリとしており、私を庇っている。
私はようやく合流できた事に安堵して息を吐いた。
余り状況は良く無い。
相手は未知の(余り良く無い気配のする)力を持ち、そして失う物はない。
逃げれば勝ちの状況下だ。
対してこっちは、シャルロッテさんと私と瀕死の大精霊を護衛しつつ、浄化して癒していかなければならない。
大精霊が居るので逃げられない。
「《縺ゅ?縺昴?縺シ繝シ》」
フードの男はゆっくりと低く笑いながら、理解できない言葉を言うと黒い瘴気が渦巻きそれを此方へ手を向けられた。
風の様な早さで流れてきたそれにユリウスが私を庇い前に立っていたが、狙いは私達ではなく、ウルさんだった様で、驚いた瞬間彼女は包み込まれた後、呻きながら地面に片足を伏していたが、再びよろよろと立ち上がった。
「き、きもちわるいな……これは」
「闇への誘いはどうかな?」
「色々な声が聞こえて……」
「そうだ、声に従えば良い。ほら此方へ」
にやりとフードの口元は笑いながらてをこまねく。
「……なんで私だけが……愛されない。私は尽くしてきたのに。」
「そうだ、闇は全て包み込んでくれる。」
私は大精霊とウルさんを交互にみながらどちらを先に助け出すべきか悩みながら考えていた。
冬も近いからか、下草は枯れ気味で思ったよりは邪魔にはならない。
「泉についたら私は祈りの儀式の為の準備をするけれど、あなたは祈りを捧げて欲しいわ。その前に邪魔が入りそうだけど……」
「荒らされてないと良いんだが……」
ため息をつきながら進むと人の気配が有り、私達はその漂ってくる血の匂いと近寄りたくない気配に慄いた。
「……これは儀式は無理そうだな。」
「……大精霊様が……」
ガラスの容器に沈められ泥の中で蠢くそれが大精霊だと気がついた。
黒いフードを被った一団は中を覗きながら、なにかを黒光する石の着いた杖に装填していた。
「アレはしかしながら、竜化した方が早そうだな。」
「だけど、敵の正体がわからないのに、特攻したら危ないのでは。」
「下手に隙を見せてなにかを繰り出してきたら危ないだろ?ウルはシアを守ってくれ。俺が大暴れしてアレを破って、敵の攻撃を引きつけるからそれを君たちはその間に大精霊やその他の助けられる人を優先して助けてくれ。」
「ふむ、確かに。少し離れた位置にある檻には人が数名見えるな。この国は犯罪奴隷以外はほぼ禁止されているから、助けだした方が得策だろう。下手に人質に取られたら厄介だ。」
他に良い方法はないのだろうか。
私はユリウスから離れる事に少しの不安が胸に湧いた。
遺跡群は半壊されており、番以外を弾くという効果は無いに等しくなっており、泉はどんよりとした色へと変わっている。
この禍々しい気配では、無理だろうと浄化しなければならない事は明白だ。
泥の中でもがいている大精霊と私の目が合いごぼりと泡を立てた。
「……後少しだと言うのに……抗うなどくだらない。リソースの回収はまだか?」
「最後の抵抗の奴ですな。未だ終わりません。純度が低いですが、人から集めた方で消費しつつ、呪いの魔石を追加で入れましょうか?そうすれば、最後のひとおしになりましょう。」
「まだ数名残っているからな……本来ならば素早い移動の為に残しておきたがったが……」
敵の会話を聞いていると更に悪事をしようとしているらしく、私達はこっそりと木の背後へ隠れながら話し合った。
「……だったら始めようか。シアは隠れていてくれ。大精霊を助け出した後移動して、無事で……」
大丈夫よと私はユリウスの方に微笑みながら、頷いた。
ギュッと軽く抱きしめてられてから、ユリウスの名残惜しそうな青い瞳と目が合い、離れていった。
竜化したユリウスが飛び立ち、暴れ回りガラスの容器からこぼれ落ちた大精霊をその後をこっそりと隠れながら走っていくシャルロッテさんやあの冒険者の一団が動き助け出した。
私は未だここで隠れているが、そろそろ出るべきだと思い立ち上がる。
ユリウスの竜化している辺りでは魔法やなにやら異様な雰囲気のする杖から放たれた魔法を避けたりして、とても危険そうだ。
「くそっ、後少しだというのに!」
「引き上げるぞ……ん?」
なにかを話している一団を横目に見ながら私は駆けて、助け出された大精霊に近寄った。
唯一、頭部、首や胸だけが残り他は無くなってしまっていた。
果たしてこれを癒しても治せるのだろうか?
「聞こえますか?」
「酷いわ……これでは治せられないでは」
冒険者の一団の方は囚われていた人の方へと助け出されており、横目で見ながら安心した。
《…我……存在………》
生きていた
私はハッと頭の中に響いた声に驚きながらも、私は浄化と癒しを開始しなくてはと考えて手をかざした。
「ねぇ……君が《暁の巫女》なのか?」
「こいつ、いつのまにっ!」
背後からいきなり声をかけられて、驚いていると隣にいたシャルロッテさんが魔法を使おうとした。
私は振り向くと、遠くから聞こえたユリウスの咆哮と共に、ウルさんは剣を男へと向けて、切り裂こうとしていた。
「危ないじゃねぇか、俺に向けないでくれるか?」
フードをつけた男は一歩下がり、剣の切先を軽く避けた。
「仕事だから……それはできない。」
「チッ、金竜が気がついたか。」
「これを……お使いになりますか?真の完成ではありませんが、使い物にはなるでしょう。」
「そうだな……」
ウルさんは剣を構えて男に近寄り切り裂こうとしたが、男へと剣が突き立てられる前に瞬く間に移動しており、私の方へ一歩近寄ってきている。
男へと杖を渡した男は低く笑い楽しそうに顔を歪めた。
「なにを求めて……いるかはわからないけど、私は違うと思うわ。なにも……特別な事は出来ないもの。容姿は少し変わってるぐらいよ。」
「シアッ」
速度を弱めて、ずるずると着地した際の土が飛び散り、ユリウスが隣へと降り立ち、粗方他の敵は倒し尽くしたのか地面には他の人の焼き死んだ死体や人だったのだろう破片の肉塊や血が飛び散っていたり、ブレスを使ったのか焼けた臭いがしてきた。
「俺のシアに近寄るなっ」
「ふッ……俺のねぇ?」
フードを取り、ハハッと乾いた笑いをしながら後ろへと男は少し下がった。
その声に私は嫌な予感がしていた。
聞いたことのある声で、目の前に立つユリウスは毛の一本が逆立つ様な静電気の怒りでピリピリとしており、私を庇っている。
私はようやく合流できた事に安堵して息を吐いた。
余り状況は良く無い。
相手は未知の(余り良く無い気配のする)力を持ち、そして失う物はない。
逃げれば勝ちの状況下だ。
対してこっちは、シャルロッテさんと私と瀕死の大精霊を護衛しつつ、浄化して癒していかなければならない。
大精霊が居るので逃げられない。
「《縺ゅ?縺昴?縺シ繝シ》」
フードの男はゆっくりと低く笑いながら、理解できない言葉を言うと黒い瘴気が渦巻きそれを此方へ手を向けられた。
風の様な早さで流れてきたそれにユリウスが私を庇い前に立っていたが、狙いは私達ではなく、ウルさんだった様で、驚いた瞬間彼女は包み込まれた後、呻きながら地面に片足を伏していたが、再びよろよろと立ち上がった。
「き、きもちわるいな……これは」
「闇への誘いはどうかな?」
「色々な声が聞こえて……」
「そうだ、声に従えば良い。ほら此方へ」
にやりとフードの口元は笑いながらてをこまねく。
「……なんで私だけが……愛されない。私は尽くしてきたのに。」
「そうだ、闇は全て包み込んでくれる。」
私は大精霊とウルさんを交互にみながらどちらを先に助け出すべきか悩みながら考えていた。
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