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薄氷上のダンス

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「見慣れない冒険者の一団ね。」
「冒険者ギルドでクエストを受ける事はなく、情報収集のみをして去ったか。」
「そうよ、真新しい装備で新調したの?と聞いたら、違うと言っていたと。丁寧な口調、祝詞を語尾に着けていた信心深い。隊長と呼び、兵士崩れの冒険者ではないか……」

怪しいと村人の話を纏めた紙を見ながら、私はその一団は泉のある森の中へと進んでいるらしく、遭遇する可能性が高い。

「……車輪の跡があるわ。」
「正門ではなく……町の逆側へか?」

怪しい跡に私達は唸って、考えていると奥の方でなにやら数人が道の真ん中で話し合っている。

「だから立ち入り禁止だ。」
「あんたら、なにもんだ?街の衛兵では無さそうだし。禁止する権限ないだろ?」
「……構わない、やれ……チッ!他のお客きた、さっさとお前らは去れ!」

ざわざわと数人が引き返し、どこかへと行こうとしていたが、私達を見て、ハッとして近づいてきた。

「あんたらも、散策か?この先には行けない様だな。」
「領主の軍ではないわ。何者なのかしら?」
「なんで断定できるだろうか?」
「私が領主の娘だからよ。そんな事父から聞いてないわ。不当に占拠しているのでしょうね……厄介だわ。占拠していると言う事は相当な数が中にいる可能性がいるわ。」
「後日にするのかしら?」
「いえ、それは難しいわ。今月中にと精霊様とも約束していたから……約束の不履行になってしまうもの。」

「だったら……巫女様?」

ぼそぼそとさっきの彼等はなにかを集まって話し合っている。

「私達も奥へと向かいたいのです。ついでに行っても良いだろうか?」
「それがこの泉は……」
「それなら前提は既に知っている。私達は其々が婚約者だったり夫婦なのだ。」

まるで、調べてきた様な徹底されている彼等はお会いできるとはとなぜか私とユリウスの方をまるで珍しい物を見た様に見られて居た堪れない。

髪色でも見えたのだろうかと謎に思いながらも、ユリウスの方に少し引かれた。

「シア……もう少し近寄ってくれ。」
「う、うん。」

私はユリウスの方へと向くと少し険しい表情をしている。

私先程からなにかドクドクと嫌な予感しかしてなくて、ツキツキと胸の奥が少し痛い。

ざわざわと神聖なはずの森もどこか暗くどんよりとしている。

「……余り良い雰囲気ではないな。」
「そうね、昔来た事あったけど、こんなにジメッとしてなかったわ。おかしいの。」

シャルロッテは木の幹に手を当てて、触りながらも、目を細めている。

少し離れた所には道を塞ぐ彼等が見えている。

「もし……奥にいかれるのでしたら私達も同行させていただきたい。」
「それは構いません。あの道を塞ぐ彼等と戦闘になるかもしれませんが大丈夫でしょうか?」
「こう見えても冒険者ですから……神々のご加護あらんことを。」

全員はまるで慣れている様に、同じタイミングで祝詞を唱えた。
それを見ながら、変だなと思いながらも、私達は別の小道から向かおうと言う事になった。



「……ぅ、だ、だれか」
「ぁれ?今誰か喋ってました?」
「いえ、私達は違いますね。」

「ここだっ、誰か」
「今そっちの方からだなっ……大丈夫か?酷い傷だっ」

駆け寄ると村人のようで頭から血を垂らしている。

村人から話を聞く事になり、私が傷を癒そうと思ったが、冒険者?らしき一団の一人が私が癒しましょうと言われて治療されている。

「……つまり、背後から殴られたと。家族は?」
「家族とは離れた位置で農作業をしていたので、私がいた範囲で見てはいないな。それよりここはどこなんだ?」

シャルロッテさんは村人にこの先に行くと町がそこで匿ってもらう様にと言いながら、この事は大事になるからと余り口外しない様にとなった。

「貴方を攫った犯人の一団がまだ潜伏しているかもしれません。人質を取られたら領軍も動きにくいでしょうし。これを父に……領主の館に届けて下さい。シャルロッテが至急だと伝えていたと。」
「えぇ、わかりました。まさかシャルロッテ様でしたか……お久しゅうございます、まだこんなに膝ぐらいの背丈の時にお会いしました。」
「えぇ、私も顔を見るまでは気が付かなかったわ。ナルリタ村の牧場のアンドンよね?」
「そうです!ぃててて、叫んだらまた痛みが……」
「足も怪我されてましたか。」
「これくらいは慣れてますよ、私より奥にいる他の者に使ってやってください。まだあの時かなり……悍ましい光景でした。私は運良く隣にいた大男の死体の背後に隠れられたから見つかりにくかったですが……」

ぞくりとその事を聞いて、私達一同に緊張が走る。
本当に行って大丈夫なのだろうか。

領軍が到着してからの方が良いのでは?とユリウスの方へと向くと、シャルロッテさんから服を掴まれる。

「ごめんなさい、巻き込んでしまって。でも……これはやらないと……この領主の一族として、そして精霊の友としても。」
「ええ、わかったわ。私もここまで来たら気になるもの。本当に危なくなったら、安全第一で逃げましょう。竜化するなりね。」

シャルロッテさんのキリッとした真剣な表情と目線に私は頷きながら返した。

ツイッとユリウスに服の裾を引かれて、目線を向けると、心配そうな表情をしており、嫌そうだなと私は苦笑いした。










「……様、あともう一息といった感じでしょう。やはり、大精霊のリソースは効率が良い。」
「あぁ、全てを変換し終わったらすぐに撤収だ。なにやら、きな臭い動きが町に来ている。」
「残念ですな……なかなかここのリソースは良いものでしたが。」
「もしだ……暁の巫女が手に入ったら……リソース的にはどうなる?」

フードを被った男はゆっくりと振り返り、まるで明日の天気を聞く様に軽く言った。

「……あの話が誠なるならば、無限大の可能性を秘めておりますな。大精霊とは格別ですな。だがしかし、ハイリスクでもありますな。さすが、真なる娘は監視されている可能性もあります。」
「だが、最近の兆候では降臨した記載はない。ならば興味がないのでは?」


男達は、目の前でごぶりと泥の中へと沈んでいく大精霊を見ながら、せせら笑いながら話し合っていた。







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