愛が重いなんて聞いてない

音羽 藍

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駆け巡る普天率土の章

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「……恥ずかしいわ。」
「ダメ、このままで居て。」

彼に抱っこされて私は運ばれていた。

フードを被っていた為に誰かは分かりにくいけれど、抱っこされているのはわかるので少々好奇の目線を感じる。

文化祭だからか、なにかのイベントでは?と周りに声をかけて確かめる人など、ざわざわとしていた。

「ねぇ……ユリウス。そろそろ文化祭見て周りたいだけど。一緒に来てくれる?」
「もちろん、それ以外は認めないけどな。わかった、このままの方が良いけど、シアは降りたいか?」
「それはそうよ。」

私はようやく降ろされて、地面に立つ。
身体はアレから魔法で清潔になったけど、中は自分でかき出したけれど、全部出せたか不安だ。

掻き出してる時も彼に見られてしまい、彼がしようとしてくれたが何故かねっとりとした視線と表情がなにかを企んでいそうで、イマイチ信用できずに自分でした。

少し拗ねていたが、シアが自分でしたいのならと処理を任せてくれたけど……

不安を胸の奥において、文化祭の道を歩いた。ユリウスと手を繋いで、呼び込みの方へ近づいて、軽食を売っていたブースへと行った。

「あ、美味しそう。」
「二つくれ。後、果実水も。」
「お、まいどあり!残念だな、俺も乙女様と語り合いたかったのに……だけど、店に来てくれたからぁ……おいおい、」
「あのな……早くしろ。」

私の手を握りしめてじっと見つめてきていた青年をユリウスは虫を払う様に手を退けた。

「しょうがねぇな、学園のマドンナのナイトは器が小さいぜ。ほら、2人分だ。」
「一言多い……」

ユリウスはスンとした表情が面白くて私は、ふふと笑いながらユリウスから軽食のサンドイッチを受け取った。

私達はベンチの方へと行き座った。

パンも外側は軽く焼かれており、カリッとした感覚の後中はふんわりとしていて、中の具材の味付けされたビーフとの相性も良く私は夢中になって、パクパクと食べていた。

果実水を取り、飲んだ所でようやくユリウスがじっと見つめられていた事に気がついて、私は顔が熱くなる。

「ごめんなさい、ついついお腹が空いていて。」
「いや、良いよ。ただ、美味しそうに食べてるなって見ていただけだから。」
「そう?ユリウスも食べてみて、美味しかったから。」
「あぁ、シアが食べている姿を見て美味しそうだった。あの店員をしていた学生は後で……」
「ちょっと、迷惑はかけたらダメよ?文化祭なんだから大目で見てあげて。」

そう言うと少しふくれっ面をして少し遺憾だと態度を取っていたが、私がユリウスの手を軽く触り語りかけると少し態度を和らげた。

「仕方ないな……文化祭だから気を大きくなっていたのかもしれないな。」
「そうよ、普段はみんな番居る相手には必要以上に近寄らないでしょ?」
「それは……過大評価だ。シアはわかっていないな。」
「どう言う事?」
「言わないけど、シアは男をわかっていないんだよ。大半は近寄らないし、限度をわかっているけどな。」

指を絡めてきたユリウスの手は私の手とは違うゴツゴツとした男性の手であり、温かい温もりがあった。

するりと撫でて、片手でサンドイッチを食べ始めた彼の視線を浴び離れていった温もりが少し恋しかった。

それに、彼が言っていた事は気になるけれど、飲食を始めた彼の邪魔をしたくなくて悩んだ。






それから色々なブースを歩きながら、お米をゲットしたり、その中で一際目についた大きなブースを見つけた。

「肝試し?」
「垂れ幕と魔法のブース……番、カップル歓迎?脱出ゲートを使わずに最後まで行けたら景品あり……」
「へいへい、兄ちゃん達来ないかい?」
「きゃー、あなたいきましょ?」

呼び込みの声がしているのを聞きながら少しの行列が並んでいる。
私達は看板を見上げていると前にいた夫婦だろうか2人は列に並んで行った。

「ユリウス、どうする?」
「危険はないらしいけど、別れ道とかあるようだな。もし、途中で別れたらゴールで待っていてくれ。」
「行くの?私余りいきなり脅かし系なの苦手なの。だからユリウスにしがみつくかもしれないわ。」
「大丈夫だけど、本当に苦手ならやめても……」
「おいおい、並ぶのか?並ばないなら離れてくれよ?肝っ玉小さい男は無理だろうけどなぁ?」

仮面をつけた男はヘラヘラと笑い、フードを被っているユリウスを指を指して笑いながらしっしっと他所へ行けと挑発している。
ユリウスは私をチラッと見て、挑発を無視していたが、私は末には力の泉へと送り届けるあのサブクエストもあるのだと、良い予行訓練ができると即座に考えて行こうと目線で了承した。

「並ぶ……これで良いだろ?」
「へぇ、まいどあり!中では魔法は厳禁ですぜ。火事になったり殺傷沙汰にはなりたくないんでな。武器等も使用厳禁ですぜ。飲食物も持ち込み厳禁ですぜ。」
「あぁ、わかった。出口は一つだよな?」
「そりゃそうですぜ。だが、別れ道は書いてある通りあるんで、迷子になったら脱出ゲートを使うのもありですぜ。脱出ゲートと出口は同じ部屋に繋がっているから迷子になっても安心!入る時に一人一つこの魔法のランプを持っていてもらうんだが、中で脅かし役に攻撃といっても傷害のないから攻撃は厳禁な?されるとランプの光が小さくなっていくから消えたら終了と言う事で脱出ゲートを使ってくれよ。出口で魔法のランプを回収するから持ち逃げしたり、無くしたりしたら罰金だからな?脅かし役に攻撃したら、もちろん判断してランプの光は大幅に減る可能性はあるからな。」
「道中は逃げれば良いのか。」
「そうそうだ、逃げるが勝ちという事だ。」

行列を並んでいくととうとう順番は近い。

ユリウスの手を握りしめて私はドキドキと心臓の音がうるさいくらいに鳴っていた。

「シアこれは遊びなんだ。そんなに緊張するな。怖かったら俺に抱きついていてくれ。」
「でもね、私これをそのね……末にあるアレの予行訓練だと思っているのよ。良いと思わない?」
「あぁ…….あれか。本当なら君を危険な目に合わせたく無いから嫌なんだが、恩もあるし、断りにくいのもある。」

ユリウスが私を心配してじっと青い瞳と目が合い微笑んでくれた。
その後、心配そうな表情をしたので、私は大丈夫だと勇気付ける様に微笑み、頷いた。

「きっと、なにもないよ!なんだー楽なぁっんんんっ」
「………っ」

喋っていたら急にユリウスが近づいて唇を重ねてきた。
言葉を紡がせ無い様に私の唇をこじ開けられて荒々しく彼の舌が入り込み、舌先が私の舌先とくっついたと思ったら絡んできて、私は場所など頭の中から吹き飛んでただ行為に耽った。

やっと離された時には荒々しく息を吐いて、震えた足先に力を入れてなんとか立っていた。

「シアそういうのは言うな。またされたいのなら構わないけどな?」
「うぐっ……でも酷くない?」
「シアは身体に教え込んだ方が忘れないってわかったからな?」

そうフードの上から耳元に囁かれ、私はビグっと揺れた。
私はそれすら喜んでしまう私の心に恥ずかしさとすでにそれを理解されているのを嬉しさが混じり、なんとも言えない感情に私は上目遣いで見上げると、彼の青い瞳と口元に弧を描いていた。















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