愛が重いなんて聞いてない

音羽 藍

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駆け巡る普天率土の章

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「どうして?貴方、お金は払うから!私の従者になってよ!」
「すみません、お客様。それはそれはできません。」
「ふん!せっかく友達のいる王都の文化祭に来たのに、まだ遊べないから暇つぶしで、きたら良い人に巡り会えたと思ったのにっ」

私より少し若い年頃だろうか……
女性はぷりぷりと怒っているらしく、隣に座って話していたユリウスの手を取ろうとしていたが手を引かれてしまい、ふんふんと更に怒っている。

ユリウスに触ろうとしていて、少し胸の奥底がざわざわモヤモヤとしている。

ユリウスがビクッとして、ハッとした私は物陰に隠れた。


「……シア?」
「ちょっと、もう終わりなの?」
「えぇ、そろそろお時間ですので……」

私は慌てて下がり戻った。

なんか私に見せる姿とは別の姿で、また違う姿だ。

フロックコートを着て、髪を整えている彼を見て少しドキドキした。

「シアちゃん、大丈夫?」
「えぇ、ユリウス揉めていたらしいけど、戻れそうだったから。」
「なら、良かったわね。あ、また出番ね!」

私はばたばたと忙しく、注文された品物をカートに載せて運んだ。

今度はどんな人だろうか。
全ては平等にくじなので、性別以外は誰が当たるかはわからない。

今の時間帯の出る人が人気な人がいたらしく、さっきまではのほほんとしていたけど、外に行列があるらしく人気過ぎるだろと数人が従業員用廊下で話しているを聞いた。

垂れ幕をくぐると、若い年頃の少年で私を見てぼーっとしていた。

「いらっしゃいませ、担当のシアと申しますわ。語りコースを選択していただきありがとうございます。」
「やったっ……狙ってた人きたっ!」
「あら、それは御光栄ですわ。」
「前から話聞いててっ話してみたかったんだ。」
「あらそうなのですね、お隣失礼しますね。」
「僕、小さい頃から絵本読んでて……憧れてたんだ。余り周りには言えないけど少し興味があって!」

私は咄嗟に手を掴まれて、うん?と考えているとカタンと音がして振り向くとなにもなく、ハッとして手を離してもらう様に言った。

「そうなのね、すみません。少し手を……」
「あっ、ごめんなさいっ僕ついつい興奮すると見境ないから……」

シュンとした表情がどこかの金髪の彼に似ていて私は大丈夫よと微笑んだ。

ようやく手を離してもらうとカタカタといっていた音が止み、だからなんだろうと振り向いたがやはりわからない。

「それでっシアお姉さんは乙女みたいに癒せるの?俺それをみたいなっ」
「使えるけど、それは難しいわ。お店のルールなの。」
「ええぇっ、見たいなぁ」

ずいずいと赤毛の少年は私の方へと近寄り、ジッと見上げてきている。

カタカタカタカタと背後からなにかが揺れる音がうるさいと振り向きたいが、近寄ってきている少年を宥めているのに精一杯だ。

「そろそろお時間なので……」
「ええっもう?追加で払うからさ。」
「すみません、追加注文はできません。ありがとうございました。」

私は立ち上がり、まるで捨てられた子犬の様に見つめてくる瞳がどこかの誰かを思い出して少し名残惜しいけれど、すんすんと番の匂いが近くから香ってきて、ユリウスが近くにいたなと今更思いながらも、どこらへんなのかはわからなかった。

隣のブースだろうか?

そんな事を思いながらも私はようやく、ふと頼まれていた時間が終わりを告げた鐘の音を聞きながら、その事を考えていたら、ガッと抱き締められて私は何事!?と驚き、低く呻いた。

「シア……大丈夫?」
「ユリウスか、びっくりしたよ。急に来たから……」
「さっき、詰め寄られてただろ?」
「それはそう………ってユリウス見ていたの!?見ないって約束は?」
「どこかの誰かさんも俺の事見てたよな?」

臀部をドレッシーなワンピースの上から撫でるゆるりとした手の動きに私はユリウスここは学園よ?と思いながらもユリウスの番の匂いを嗅いでいるとさっきまで鼻についた他の男性の匂いが薄れて安心してきたのは事実だった。

「み、見てないから。」
「本当か?嘘はダメだぞ。」

耳元で囁かれ、私はウッと思いながらも首筋を舌先で舐められ、ビグっと跳ね上がる。

「ちょっ……だめってっ」
「ふーん?嘘を言うシアにお仕置きしてるだけたけど?」
「嫌だって……ぁっ」

吸われ、逆鱗付近を舐め上げられて、本当にこれ以上はと無理だからとガグガグと揺れた身体に私はユリウスの背中を力無く叩いた。

「ユリウス君!時間変わるから……」
「今、良い所なんだけど?」
「……シアちゃんお疲れ様。」

ミレディさんが慌ただしくやってきたが、抱きしめられている私を見て、半笑いしながら言われてようやく離して貰えた。

跡になってそうだと思いながらも、ユリウスの問い詰める様なジロリとした青い瞳を見て、整えられたいつものとはちがう貴公子の様な髪型を見て、ドキドキと心臓がうるさい。

いつもとは違う服装や髪型、たったそれだけで私はグラグラとする様なふつふつとしてくる性欲に負けそうだった。

口元を軽く抑え、ミレディさんの方をまともに見れない。

「シアちゃんもお疲れ様、後はもう大丈夫よ。時間帯変わると言えば、行列も引くだろうから。」
「……やはりシアが。」
「ユリウス君もよ?貴方達の人気は計り知れないんだから。」
「ミレディさん達も、そこそこ人気だって聞いたけど?」
「それはやめてくれ。俺のミレディを触られるのはごめんだ。」
「それは俺もだ。だから嫌なんだよ。」

チリっと臀部を軽くつねられて、んっと呻いて隣のユリウスを睨めあげると、まるで、ジワジワと責められ、なんでと思った。

イザーク君がミレディさんをゆるやかに抱きしめた事で、ビシビシと払う動きをしたミレディさんに半笑いであしらわれて喜んでいるイザーク君を見て私はふふと笑う。

「だったら、これから抜けても遜色ないって事か。少し俺らは抜けるからまたな。」
「あぁ、これからは後は午後の班が担当するし、終了の鐘が鳴るまでは自由にしていいらしい。それからは片付けがあるから平服で戻ってこいよ。」
「あぁ、イザークまたな。」
「またな、さてと俺たちは……」

ユリウスに連れられて、着替えや準備などを行う空室の方へと引っ張られていき、部屋に入り、内鍵を閉められた。

「シア……今日の服装も似合ってて、可愛よ。言いたかったけど、中々会わなかったから言えなかったけど。」
「忙しかったからね。」

私は少し褒めてくれた事に、喜び微笑んで着替えようして止金を取ろうとするとユリウスに抱えられ運ばれてしまい、ん?と戸惑った。

「シア、少し罰を渡さないとな……」
「へ?どういう」

なにか気に触る様な事をしたっけと思い、改善に努めようとは思ったが、ユリウスのまるで寝屋へと誘う様な声音に私はここは学園だってと思った。

ドキドキと止まらない熱い欲望にかられながらも息を吐いた。


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