愛が重いなんて聞いてない

音羽 藍

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新たな草木が靡く風の章

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「目を閉じて……ユリウスお願い」
「嫌だ……シアの可愛い所見れるのに、目を瞑るなんて、もったいない事はしたく無い。」
「ユリウス言い過ぎだから……」

私はだんだんと頭に熱が上がり、ただの彼のからかって言っているはずなのに、ジッと見られて私の名前を呼ぶ彼の声音はいつもベッドの上で語る時の様で、昼間の学園のベンチなのに、錯誤した環境下で言われている事に私は恥ずかしさと嬉しさの狭間に戸惑う。

「からかわないでっ」
「え、どこかからかってるんだ?」

狼狽えていたが、ようやく彼の視線を合わせるとその言葉に何を言っているんだ?と言う様な不思議そうにしている事にあれ?普通なはずなのに、彼が言う事がおかしいはずなのにと常識的に考えようとした。

「シア……早くしないと昼休み終わるよ?俺はこのまま終わらせて早退しても良いんだけどな?」
「ユリウス……それはダメでしょ。」

その堕落した方向性へ行かせようとしている蠱惑的な笑みを浮かべたユリウスは私を見ていた。
私は半笑いして仕方ないなと思いながら、ユリウスに近づいて顔を傾けて、ユリウスの頬を持ち、唇を重ねた。

「……ッん」

口を合わせ舌をユリウスの方へ伸ばし、絡ませて舌を動かした。
チュックチュと生々しい音を立てながら私達は行為にのめりこみここが学園であるという事も忘れていった。

唇をようやく離して、ユリウスの柔らかな金髪の頭を撫でながら、軽くおでこや耳にキスを落とした。

「ユリウスすきっ……だからこんな事するのよ。あなた以外は嫌だから。」

ふと視界の端にどこかで見た気がする女子生徒が、なにかラッピングされた袋をギュッと胸に抱きしめてぐしゃりとさせて見られていた。
その事に気がついて私はカッと顔が熱くなる。
なにかもごもごと震えながら言っていたが距離が離れていたから聞こえない。
その後その人族の女子生徒は走り去り、居なくなった。

「良いな……恥ずかしそうしながらシアがしてくれる……これは癖になる。」
「……見られたじゃない。」

私はウッと思いながらも、顔を近づけてユリウスの耳を仕返しに舐めた。
耳介外縁を舌先でゆっくりとなぞる様に舐めていく。

耳の後ろへ舌を移動して肌を舐め吸い上げたが、慣れてないからか跡はついてなくて、残念だなと思い彼がしていた事を思い出して、その後少し痛くならない様に祈りながら優しく噛んだ。

「………ん」

彼が低く小さく声をだしているのを、なにか新鮮だなと思いながら、吐息を耳の穴にかけながら、私は手を彼の胸の辺りの服の上から、下へと下がりベルトで抑えられた下半身の中へ手を入れようとしたが、スッと彼に止められる。

「……これ以上ダメだよ。シアが帰宅しても良いならするけどさ。」
「……ユリウス満足してくれた?」
「あぁ、予想以上だった。このまま押し倒したいけどそれは先生に怒られそうだからな。色っぽい君も可愛いかったよ……」

ギュッと抱きしめられて、お返しだと言わんばかりに耳元に囁かれて私はドキドキと胸を高鳴らせた。

ユリウスの顔が私の唇方へと近づいて、口先だけで啄ついばむ様に合わせて、何度も何度も唇を重ねる。

優しく、穏やかな時間が流れていった。

キスをしながら、午前中の事を思い出していた。

今日は首後ろを隠す様に下ろした髪型をしているからか時々ユリウスがそれを教室で触ってくるのでなに?と問いかけるとなぜか意味深なモナリザの様な微笑みを浮かべて頬杖をついていた。

時折、私の方を見た人族の男子生徒は何故か顔を少し赤くさせていて、なにかわからない。

ふざけていた様に見られて怒っていたのかなと考えて私は、やめてと少し怒り、彼の太ももをつねり上げて勉強していたな……

リーンと予鈴の鐘の音がして私達はそろそろと顔を外して、身体を離して、ユリウスは私の目線を合わせて、少しせつなそう表情をして、口を開いた。

「時間だ、家で会えるのを楽しみにしてるから……またな……」
「えぇユリウス、またね。」

私達が離れるのと同時に知らない先生だろうか、かなりとしをめいた女性の先生だろうかが道を通りかかり、彼が立ち上がって私はそれに合わせて立ち上がり手を振って別れた。
復旧作業頑張らないとと思いながらも、塔に向かった。



「これで……手間が一つ省けて更にシアの可愛い姿が見れて、鴨が葱を背負ってやって来たな。」
「何を言ってるんだ……」

意味がわからないと呟きながら隣の席に座ったらリーンハルトを見ながら、最近いつもチラチラと俺の方を眺めてきていた編入生の女子生徒は欠席していた。

先生が授業を開始する中で、俺の方を耳の後ろ側を見たリーンハルトは訝しげに見て遠い目をした。







「よっこいしょ」

どすんと書物の束をテーブルの上に置き、スッと髪を触られた感覚がして、振り向き、私は顔を歪めた。

「あぁ……おいたわしい。こんな絹の肌にこんな跡をつけられて。」
「触らないでっ」
「すみません、少し髪に紙の破片がついていたもので。」
「うそっ……まさか破いちゃったかしら」

サミュエルはまるで害虫をみた様な表情をしていた。
私は慌てて束を確認したが、どれも破けてはおらず一安心した。

「そろそろ時間ですね……帰りましょうか。一旦完成品をそろそろ学会に提出しましょう。」
「ええ、そうですね。これとこれはかなり改変なので、かなり荒れますね。」
「あぁ……」

フリューア親子は荷物をしまいながら、明日の学会は忙しくなると言っていたのを私は聞いて、其方へ向かった。

「……そろそろ期限か……」

なにか後ろで言っていたサミュエルの言葉の真意はわからず、私はそれよりも楽しみに待っていてくれた方々に届けられると喜んだ事に考えを向けた。





「あれ……フリューアさん達は?」

荷物を置きに行くという二人の後からサミュエルに、置いた後に全員で打ち上げをしましょうと話しかけられて、余り長い時間は居られないけれど、それに全員ならと私はユリウスのせつなそうな表情を思い出しながら了承した。

学園の裏口外で待っていたが、サミュエル一人であり、フリューアさん達の姿はなく、夕暮れの街が更に寂しく見える。

「二人は少し手続きに時間がかかるそうなので、先に食べながら待っていて下さいとの事でしたよ。」
「そうなのね………」

嫌な人と二人きりになってしまい、帰りたいなと思っていたが、彼等が来るならまたないとと思いながらも、私は腕輪で連絡する事にした。
いつもより帰宅が遅れるとユリウスが心配するし、嫉妬されると困るから。

連絡した後すぐにいつもならなにか送ってくるはずなのに、なぜか返信が無く珍しいなと考えていた。
サミュエルに導かれて歩いて行く。

夕暮れの街並みを歩き、少し歓楽街の方向へと進んだのを見て私は歩きながら、尋ねた。

「本当にこっち?こっちは……」
「ええ、もうつきますよ。隠れ家の様な佇まいの名店なんですよ。見かけは普通の民家に見えますが。」
「………本当にフリューアさん達来るのよね?」

私は扉を開けていたサミュエルに聞くと彼は振り向かずにええと返して、私を招いた。

どくんと胸の音が響く。

薄暗い室内、そして嫌な予感が薄らとしていて、私はユリウスの甘えて良いという言葉が脳内でリフレインした。

「さぁ……夜の宴の始まりですよ」
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