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駆け巡る普天率土の章
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「それで……ユリウス聞いてる?」
「あぁ、ごめん。少し考えていた。」
「少し疲れてる?」
私はユリウスのおでこを触るといつも通りの体温で病気という感じではないが、少し元気のない様子を見て、私は心配した。
「いや……最近色々忙しくてな。式典が近いのもあって、今回は出るのかと問い合わせが多くてな……返信するのも手間だが、懇意にしている相手だったり、世話になった人とかだと無視したり、同じ文を返す訳にもいかないからな。」
「今日は早めに帰ってみれば?一日ぐらいなら、迷惑もかけないでしょ?」
「そうだな……シア最近式典近いからか色々騒がしいから余り外に行くなら、俺に伝えてくれよ?寝ても送ってくれたら起きるから。」
「ちょっと、それはまずいでしょ。そうそう出ようとは思わないから、ちゃんと寝てよ。なにかあったら家で話すし、後日にしてもらうわ。」
「本当か?……ならいいが。だいぶ落ち着いては来ているからそんなに気にしないでくれ。」
ユリウスは金髪の頭を少しかいた後、またなと言い残し、ふらふらと帰って行った。
「大丈夫かしら?」
私は昼休憩を終わりにしようと立ちあがると目線の端に懐かしい人がいて、目を見開いた。
「ケッセルリング君、お久しぶり」
「はい、久しくお目にかかります。今去られたのが……」
「あ、ユリウスね。少し執務で寝不足が続いたらしくて……帰らせたの。どうしたの?なにかようかしら?」
「それが……とても急ぎではありませんが……キャロル様に来て頂きたく思う所がありまして。遠出になるので、月末の連休にどうかと。」
「あぁ、建国祭と式典が重なっている所ね。」
建国祭と土日と式典が続いたウィークであり、農家は収穫祭として各地で祝っている事もあり、国中が活気に満ちていると聞いた。
酒を飲み高らかに歌い奏でる。
吟遊詩人が酒場で音楽を奏で、人々の疲れと癒しと好奇心を満たす。
建国祭は出歩き楽しもうと思っていたが、ユリウスに危ないからと止められていて、残念である。
外国からの旅行客も多く、昔話に沿って仮装パーティーを楽しむ事が多いらしい。
銀色の髪色に染めたり、金髪に染める人々が増えて、建国祭を盛り上げる。
花々が窓際に彩られて、青と金のスターティアーブルーの花を飾る家々も多い。
古い昔話を舞台として、公演したりそれに関しての演奏会もある。
「……それはユリウスに聞かないとだめね。私だけでは決められないもの。」
「一応……キャロル様に用があるので……」
「ダメよ?ユリウスが居ないと遠出はできないわ。」
私はユリウスが居なくても良いと言いそうな雰囲気を出している彼に私は首を振った。
少し前のオリエンテーリングと時とは違う思い詰めた様な表情をしている彼の助けになってはあげたいけれど、勝手に行くと言えばユリウスに責められるだろう。
私だけが移動するとなれば……
火に油である。
「それより、なんで私に用なのかしら?私は特に権限もないし、これと言った得意な事は少ないわよ?」
「いえ、貴方様が一番適任だと私の中で判断しました。それに………様のご要望でもあるので。」
何かの名前を言ったが、風の音で聞き取れず、聞こうとしたが彼はチャイムの音にびっくりして、では、詳しくは後日に、下旬にはぜひ来てくださいねと言っており、去っていった。
「文化祭が中旬でしょ?下旬には建国祭があって。忙しくなりそう。」
私は塔の方へ歩きながら、思い詰めた彼の顔を考えた。
「それが行くと言っておりましたよ。この前偶然家に帰宅した時にお会いしたから聞いてみたので。学園の事が前から気になっていたと。」
「ほんとですの?それは良いですわね。ダメだとは思いますけど、少し期待しておきますわ。ふふふっ……番こいこいこい」
ぶつぶつと言いながら、コルネリアさんは羽ペンを持ち、カリカリカリと猛烈な速さで筆写している。
私は少し前に祖父達のいるキャロル家に戻った時に番に会えず、悩んでいたシルベスターに会って伝えた。
彼も学園の中から匂いが微かにするらしく、追ったが当然外部の人は入れず、困っていたらしい。
まさか……
ふたりが番だとは思わないけれど、それでもこの機会に可能性があるなら、回っていたら会える可能性が増えるだろう。
文化祭ならたくさんの人々が来るので、可能性は高い。
「しかしながら、聖地に関しては不明瞭な事が多いですな。当時の記録が突拍子のない様な摩訶不思議な記録だったり、信じられません。」
「サイクス殿、あながち間違ってはいないのかもしれませんぞ。こちらの文献では、星のゆりかごから舞い降りる、星降る湖の辺りで乙女と金竜は出会うと。星のゆりかごがなにかはわからないが、星降る湖は記録上に残っていますな。ここが……」
「そんな!そんな事が……」
盛り上がっているなとアルトゥルさんとジェリーさんを横目に見ながら、私は写し済みの重ねられた本を持ち上げ、片付けに向かった。
「それで、保留にしたのは良いがな。誘われたと。」
「そうなのよ……」
夕食を食べ終え風呂も終わり、私達は日々の疲れから、ベッドに入り、彼が甘えてきたのを同時に今日会ったことを伝え忘れかけていたのを思い出して伝えた。
イチャイチャしようとしていた所に水を差す様に言ったので、彼がムッとしていたのは失敗したなと思った。
「行きたくないな。」
ボソリと嫌な表情をした彼を私は軽く彼の頬をつねる。
それを彼が頬を少し赤らめてなぜか嬉しそうにしたのはなんでかわからない。
「ダメでしょ、見かけで判断したら。」
「あのな……あいつは貴族派なんだぞ?それにお呼ばれするって事はかなり巻き込まれる事が簡単にわかる。それ以外の理由でも、予想できる事はあるがこの前シアが危ない目に遭ったのに……飛んで火に入る夏の虫にはなりたくない。」
がっしっとユリウスが私の方を向き、私の胸に顔を埋めて深呼吸しているのはやめて欲しい。
もがもがとその後なにかを言っているが埋めているせいか聞き取れない。
「つまり、ダメって事?」
「……ぁあ、やめておけ。」
ようやく、胸から話した彼の青い瞳を見ながら、私はため息をつこうとした瞬間、ふと思い出した。
「ねぇ……あのさ。」
「なんだ?」
私が切り出しそうになった言葉をとても嫌な表情を浮かべた彼が珍しく、笑いながら私は言った。
「夏場結局どこも行けなかったでしょ?だから良いと思うのよ。建国祭もダメでしょ?私このままどこも行かなかったら……ね?」
「シアそれは……ずるくないか?」
夜着の裾をひらひらと彼がめくろうとする度に、私は嫌々と手を振り追い払う。
「少しくらいは遊びに行くのも悪くないでしょ?少しの危険も楽しいと言うし。嫌な事もあるかもしれないけれど。南の穀倉地帯と言われるぐらい彼のお家の辺りは有名だし。秋のシーズンは忙しいかもしれないけれどね?」
「……あのな、少し報告から余り良い事を聞かない。寧ろ、悪い方向しか。」
「でも、だから助けを求めて来てくれたのでしょ?私は彼が助けてくれた恩もあるし。」
「あぁ、オリエンテーリングの事か……仕方ないな。もし……また同じ様な事があったら絶対に危険な事はしないでくれ。」
「約束するわ、ちゃんと報告するから。」
「そこはしないって言ってくれると安心するんだがな。」
苦々しい表情を浮かべた彼を抱きしめて背中をさすった。
ギュッと私を抱きしめ返してくれた彼をこれ以上は苦しめたくはないのでなるべく危ない事はしないつもりではある。
サブクエの様にたぶん彼の実家の事だろう。
その事はわかっている。
大方、大変な目に遭う事は予想できるがそれを彼に伝えるべきか。
だけど、伝えたら彼は私が一番なので、見捨てる選択肢を推してくるし、私も彼が一番なのでそうしたいのもあるが、そのサブクエを蹴ると竜王国の民からバッドステータスを得るのでこなしたいと思っている。
所謂、逃れられないクエストだ。
他国で暮らすのならば、強制的ではないけれど、私達が暮らすのは竜王国である。
ならば、取るべき選択肢は一つである。
「あぁ、ごめん。少し考えていた。」
「少し疲れてる?」
私はユリウスのおでこを触るといつも通りの体温で病気という感じではないが、少し元気のない様子を見て、私は心配した。
「いや……最近色々忙しくてな。式典が近いのもあって、今回は出るのかと問い合わせが多くてな……返信するのも手間だが、懇意にしている相手だったり、世話になった人とかだと無視したり、同じ文を返す訳にもいかないからな。」
「今日は早めに帰ってみれば?一日ぐらいなら、迷惑もかけないでしょ?」
「そうだな……シア最近式典近いからか色々騒がしいから余り外に行くなら、俺に伝えてくれよ?寝ても送ってくれたら起きるから。」
「ちょっと、それはまずいでしょ。そうそう出ようとは思わないから、ちゃんと寝てよ。なにかあったら家で話すし、後日にしてもらうわ。」
「本当か?……ならいいが。だいぶ落ち着いては来ているからそんなに気にしないでくれ。」
ユリウスは金髪の頭を少しかいた後、またなと言い残し、ふらふらと帰って行った。
「大丈夫かしら?」
私は昼休憩を終わりにしようと立ちあがると目線の端に懐かしい人がいて、目を見開いた。
「ケッセルリング君、お久しぶり」
「はい、久しくお目にかかります。今去られたのが……」
「あ、ユリウスね。少し執務で寝不足が続いたらしくて……帰らせたの。どうしたの?なにかようかしら?」
「それが……とても急ぎではありませんが……キャロル様に来て頂きたく思う所がありまして。遠出になるので、月末の連休にどうかと。」
「あぁ、建国祭と式典が重なっている所ね。」
建国祭と土日と式典が続いたウィークであり、農家は収穫祭として各地で祝っている事もあり、国中が活気に満ちていると聞いた。
酒を飲み高らかに歌い奏でる。
吟遊詩人が酒場で音楽を奏で、人々の疲れと癒しと好奇心を満たす。
建国祭は出歩き楽しもうと思っていたが、ユリウスに危ないからと止められていて、残念である。
外国からの旅行客も多く、昔話に沿って仮装パーティーを楽しむ事が多いらしい。
銀色の髪色に染めたり、金髪に染める人々が増えて、建国祭を盛り上げる。
花々が窓際に彩られて、青と金のスターティアーブルーの花を飾る家々も多い。
古い昔話を舞台として、公演したりそれに関しての演奏会もある。
「……それはユリウスに聞かないとだめね。私だけでは決められないもの。」
「一応……キャロル様に用があるので……」
「ダメよ?ユリウスが居ないと遠出はできないわ。」
私はユリウスが居なくても良いと言いそうな雰囲気を出している彼に私は首を振った。
少し前のオリエンテーリングと時とは違う思い詰めた様な表情をしている彼の助けになってはあげたいけれど、勝手に行くと言えばユリウスに責められるだろう。
私だけが移動するとなれば……
火に油である。
「それより、なんで私に用なのかしら?私は特に権限もないし、これと言った得意な事は少ないわよ?」
「いえ、貴方様が一番適任だと私の中で判断しました。それに………様のご要望でもあるので。」
何かの名前を言ったが、風の音で聞き取れず、聞こうとしたが彼はチャイムの音にびっくりして、では、詳しくは後日に、下旬にはぜひ来てくださいねと言っており、去っていった。
「文化祭が中旬でしょ?下旬には建国祭があって。忙しくなりそう。」
私は塔の方へ歩きながら、思い詰めた彼の顔を考えた。
「それが行くと言っておりましたよ。この前偶然家に帰宅した時にお会いしたから聞いてみたので。学園の事が前から気になっていたと。」
「ほんとですの?それは良いですわね。ダメだとは思いますけど、少し期待しておきますわ。ふふふっ……番こいこいこい」
ぶつぶつと言いながら、コルネリアさんは羽ペンを持ち、カリカリカリと猛烈な速さで筆写している。
私は少し前に祖父達のいるキャロル家に戻った時に番に会えず、悩んでいたシルベスターに会って伝えた。
彼も学園の中から匂いが微かにするらしく、追ったが当然外部の人は入れず、困っていたらしい。
まさか……
ふたりが番だとは思わないけれど、それでもこの機会に可能性があるなら、回っていたら会える可能性が増えるだろう。
文化祭ならたくさんの人々が来るので、可能性は高い。
「しかしながら、聖地に関しては不明瞭な事が多いですな。当時の記録が突拍子のない様な摩訶不思議な記録だったり、信じられません。」
「サイクス殿、あながち間違ってはいないのかもしれませんぞ。こちらの文献では、星のゆりかごから舞い降りる、星降る湖の辺りで乙女と金竜は出会うと。星のゆりかごがなにかはわからないが、星降る湖は記録上に残っていますな。ここが……」
「そんな!そんな事が……」
盛り上がっているなとアルトゥルさんとジェリーさんを横目に見ながら、私は写し済みの重ねられた本を持ち上げ、片付けに向かった。
「それで、保留にしたのは良いがな。誘われたと。」
「そうなのよ……」
夕食を食べ終え風呂も終わり、私達は日々の疲れから、ベッドに入り、彼が甘えてきたのを同時に今日会ったことを伝え忘れかけていたのを思い出して伝えた。
イチャイチャしようとしていた所に水を差す様に言ったので、彼がムッとしていたのは失敗したなと思った。
「行きたくないな。」
ボソリと嫌な表情をした彼を私は軽く彼の頬をつねる。
それを彼が頬を少し赤らめてなぜか嬉しそうにしたのはなんでかわからない。
「ダメでしょ、見かけで判断したら。」
「あのな……あいつは貴族派なんだぞ?それにお呼ばれするって事はかなり巻き込まれる事が簡単にわかる。それ以外の理由でも、予想できる事はあるがこの前シアが危ない目に遭ったのに……飛んで火に入る夏の虫にはなりたくない。」
がっしっとユリウスが私の方を向き、私の胸に顔を埋めて深呼吸しているのはやめて欲しい。
もがもがとその後なにかを言っているが埋めているせいか聞き取れない。
「つまり、ダメって事?」
「……ぁあ、やめておけ。」
ようやく、胸から話した彼の青い瞳を見ながら、私はため息をつこうとした瞬間、ふと思い出した。
「ねぇ……あのさ。」
「なんだ?」
私が切り出しそうになった言葉をとても嫌な表情を浮かべた彼が珍しく、笑いながら私は言った。
「夏場結局どこも行けなかったでしょ?だから良いと思うのよ。建国祭もダメでしょ?私このままどこも行かなかったら……ね?」
「シアそれは……ずるくないか?」
夜着の裾をひらひらと彼がめくろうとする度に、私は嫌々と手を振り追い払う。
「少しくらいは遊びに行くのも悪くないでしょ?少しの危険も楽しいと言うし。嫌な事もあるかもしれないけれど。南の穀倉地帯と言われるぐらい彼のお家の辺りは有名だし。秋のシーズンは忙しいかもしれないけれどね?」
「……あのな、少し報告から余り良い事を聞かない。寧ろ、悪い方向しか。」
「でも、だから助けを求めて来てくれたのでしょ?私は彼が助けてくれた恩もあるし。」
「あぁ、オリエンテーリングの事か……仕方ないな。もし……また同じ様な事があったら絶対に危険な事はしないでくれ。」
「約束するわ、ちゃんと報告するから。」
「そこはしないって言ってくれると安心するんだがな。」
苦々しい表情を浮かべた彼を抱きしめて背中をさすった。
ギュッと私を抱きしめ返してくれた彼をこれ以上は苦しめたくはないのでなるべく危ない事はしないつもりではある。
サブクエの様にたぶん彼の実家の事だろう。
その事はわかっている。
大方、大変な目に遭う事は予想できるがそれを彼に伝えるべきか。
だけど、伝えたら彼は私が一番なので、見捨てる選択肢を推してくるし、私も彼が一番なのでそうしたいのもあるが、そのサブクエを蹴ると竜王国の民からバッドステータスを得るのでこなしたいと思っている。
所謂、逃れられないクエストだ。
他国で暮らすのならば、強制的ではないけれど、私達が暮らすのは竜王国である。
ならば、取るべき選択肢は一つである。
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