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新たな草木が靡く風の章
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ゴロゴロと外から聞こえる雷の音に私は一瞬心配した。
だけどそれよりも、目の前の机の上に置かれた山の様に高く盛られたホイップクリームとホットケーキの上にはまるで湖の様にハチミツがたっぷりとかけられた美味しそうだった。
ユリウスの方に森の恵みスープと呼ばれた少し薄い緑色に染まるスープ、それにお冷を2人分を置いた。
見たことの無い色彩のスープに驚いているとのんびりとした声で夫人は話していた。
「おまちどおさま、これねぇ。外が雷聞こえているから、帰り道は気をつけてねぇ。雷といえば……」
「ふふっ」
私は夫人の雷の日の夫との思い出話を聞きながら、ナイフを持ちサクッと切り分ける。
片手はユリウスと握り繋がっているために不自由ではあるが、それもまた楽しいな。
「ブーギルズ夫人!追加注文良いか!」
端の席に座っていたカップルの男性が手を挙げて夫人を呼んだ。
「あらあら……そろそろ行かないとねぇ。ごゆっくり~」
のほほんとした声をかけて、夫人はカップルの男性の方へと歩いていった。
私は聖地盛り湖畔ホットケーキをクリームつけてフォークで刺して、口に運ぶ。
口の中に甘いホイップクリームとハチミツの味とホットケーキの味が混ざり、至福のひと時に包まれた。
スープを食べているユリウスにあげようと、ふとユリウスの方へ見ると水を飲んでいたらしくコップに口をつけていた。
目線はなぜか私の口の方に向いており、なんでだろう?と思っていると、ユリウスはニヤッと微笑み、顔を近づけた。
慣れた行為に私は自然と目を閉じて口の端を舐められ口にもたらされた唇の感覚にフッと心は踊る。
自然と口を開いていき、入り込んできた熱い舌が私の口の中を探る様に入り、歯並びを確認したユリウスの舌は私が追っていた舌を容易く絡ませて柔らかでしっとりとした熱い舌とキスを楽しんだ。
やがて、離れていく事がせつなくて、まだしたいと求める目線を向けてしまい、片手を繋いでいた手を外して、私のフード上からゆっくりと撫でてくれた。
「頬についてた、クリーム美味しかった。それに、そんな可愛い顔はしないでくれ……襲いたくなるだろ?」
「んっ……」
私は後半はひっそりと小声で言われ、そうだったここはカフェだったと今更気がついて、顔に熱が集まる。
少しユリウスもすっかり時々チラリと視線を浴びているからか、少し顔が赤く染まっており、ほんのりと潤んでいる瞳は他の人に見せたく無いと言えるほど色っぽくて思わずキュゥと私の口からどこからそんな声が出たと言いたくなる様な出てしまい、私は口を隠して笑って誤魔化した。
「ユリウス、はい。あーん」
フォークに同じく、ホットケーキとクリームハチミツが乗せて差し出すとスッと彼が食べて美味しそうにしていて喜んでいるのが嬉しかった。
「スープはどう?美味しい?」
「なんと言うか……美味しいけどなんの味かわからないのが不思議だな。」
差し出してくれたスプーンを口に含み、引き抜かれて具材の酸味とスープの甘味が混ざり合い、絶妙な美味しさに驚いた。
口の中に噛み締めると広がる変わる味に私はなんとも言えない表情をしていたのか、ユリウスが、ははっと笑う声がして視線を向けるとユリウスは楽しそうに微笑みを浮かべ、スプーンで再び、スープをすくい、食べ続けて私はただ日常的な事に幸せを感じた。
もっと長く居たくなるけど、少し風が出て来たのか、ごおごおと鳴る風の音に現実に引き戻された。
すっかり無くなった皿を少し残念に思いながら、立ち上がる。
ユリウスがカウンターへと行き、代金を夫人へと渡してなにかを言っている。
私は忘れ物は無いかと確認した後、ユリウスの方へと急ぐとユリウスは私の手を取り、足早に外へと続く扉へ向かう。
「ありがとうございました、またいらしてね。」
私は首のみを下げ軽く会釈した後、彼に引かれるまま扉を開けると風が吹き、曇天の空模様は今にも雨が降り出してくるかと言うところだった。
私達は足早に駆けて木道を歩き、数えられるほどの人数しか同じ道を歩いている人を横目に見ながら小走りで走る。
風に揺れて、動く木々は昼間見た風景よりも、何処か恐ろしく暗く見えた。
ようやく辿り着いた広場で私は荒れた息を整えていた。
「はぁ………後はノンストップでお家に帰れば良いよね。」
「いや……雷があるから……酷くなったら一旦雨宿りするかもしれない。雷雲の下を飛べば運悪ければ直撃するからな。だから俺がもし高度を下げたら合わしてくれ。王都への距離は近いから間に合うと良いんだが。」
「わかった………」
ざわざわと揺れる風の音に不安は高まる。
ユリウスは少し離れて竜化していく。
私もそれに習って、竜化していく。
身体が大きく変わり、視線の位置が高くなった。
ギュルギュルと鳴いた金竜の鳴き声は羽ばたいて、飛び立っていく。
私は風の魔法を無詠唱を使用して羽ばたきと共に上昇した。
空を駆けて行く事は楽しいけど、遠く聞こえていた雷音はだんだんと近づいてきており、雨が降り出してきた。
鱗に当たる雨粒が冷たい。
ゴロゴロと鳴る雷音は近く鳴り響き、一際ピカッと光り、少し遅れて驚く程轟音が近くで鳴り響く。
ギュルギュルと甲高く鳴いた前を飛んでいた金竜は鳴いて高度を下げた。
それに合わして私も高度を下げようと下に視線を向けると、開けた草原の先に古びた家と崩れかけた家々が並ぶ村跡だろうか?
そこに降りていく金竜の後を追った。
ドシンと降り立ち、私も続いて降り立ち姿を元に戻すと雨粒がびしゃと当たり雨が本降りになっていく。
しとしとと濡れて行く服が不快で、ユリウスの方へ向くと、ユリウスは私の方へ駆けてきてくれて、びちゃりと濡れている金髪をかきながらきてくれた。
「そこの家に雨宿りしよう。明日は晴れてくれると良いが。」
「うん、雷が鳴ってなければまだ飛べたけど……」
ユリウスに手を取られ、走りながら廃屋の方へと走った。
ゴロゴロと再び鳴りだした音に、私は当たりません様にと願いながら走り、崩れかけ苔むした木の板の壁の崩れかけた所から入り、なんとか廃屋の元へと辿り着き、ユリウスは軋む扉を開けて中に入った。
中は退去してから然程経っていないのか、カビや虫は居なく、私は少し安堵しながらすっかり濡れてびちょびちょになってしまった。
扉を閉めたユリウスは暖炉へと近づき、使えそうだと中を覗きながら言った。
テーブルや椅子だろうかの残骸を割り、暖炉にいれてユリウスは魔法を使い火を起こしているのを横目で見ながら、私は服を乾かそうと脱ぎ始めた。
ふとローブを取り視線を感じてユリウスの方へ向くと、少し顔を赤く染めたユリウスの表情をなんでだ?と思いながらも、濡れてびちょびちょなローブを端で、水気を絞り暖炉の近くのフックに吊るして置いた。
「……透けてて色っぽいな。」
「ユリウス……」
お尻をそっと撫でて触ってきたユリウスを振り返り睨むとフッと笑い、ごめんと言ったユリウスは腕輪からマントを取り出して地面の上に置いた。
「まさか、天気が崩れるとはな。明日にするべきだったか。」
轟々となる風の音と、ゴロゴロとなる雷の音に私はそうねと言いながら笑った。
「でもこう言うのも旅の楽しみじゃない?」
「どう言う事だ?」
ユリウスは私を見て、不思議そうにしていた。
「だってさ、雨宿りしたねって思い出になるでしょ?2人だけの。私こういうのも、楽しいよ?」
「それは盲点だった。良いな…….俺とシアだけの思い出か。」
ユリウスは眩しそうに目を細めて笑った。私は脱ぎながら、釣られて笑った。
だけどそれよりも、目の前の机の上に置かれた山の様に高く盛られたホイップクリームとホットケーキの上にはまるで湖の様にハチミツがたっぷりとかけられた美味しそうだった。
ユリウスの方に森の恵みスープと呼ばれた少し薄い緑色に染まるスープ、それにお冷を2人分を置いた。
見たことの無い色彩のスープに驚いているとのんびりとした声で夫人は話していた。
「おまちどおさま、これねぇ。外が雷聞こえているから、帰り道は気をつけてねぇ。雷といえば……」
「ふふっ」
私は夫人の雷の日の夫との思い出話を聞きながら、ナイフを持ちサクッと切り分ける。
片手はユリウスと握り繋がっているために不自由ではあるが、それもまた楽しいな。
「ブーギルズ夫人!追加注文良いか!」
端の席に座っていたカップルの男性が手を挙げて夫人を呼んだ。
「あらあら……そろそろ行かないとねぇ。ごゆっくり~」
のほほんとした声をかけて、夫人はカップルの男性の方へと歩いていった。
私は聖地盛り湖畔ホットケーキをクリームつけてフォークで刺して、口に運ぶ。
口の中に甘いホイップクリームとハチミツの味とホットケーキの味が混ざり、至福のひと時に包まれた。
スープを食べているユリウスにあげようと、ふとユリウスの方へ見ると水を飲んでいたらしくコップに口をつけていた。
目線はなぜか私の口の方に向いており、なんでだろう?と思っていると、ユリウスはニヤッと微笑み、顔を近づけた。
慣れた行為に私は自然と目を閉じて口の端を舐められ口にもたらされた唇の感覚にフッと心は踊る。
自然と口を開いていき、入り込んできた熱い舌が私の口の中を探る様に入り、歯並びを確認したユリウスの舌は私が追っていた舌を容易く絡ませて柔らかでしっとりとした熱い舌とキスを楽しんだ。
やがて、離れていく事がせつなくて、まだしたいと求める目線を向けてしまい、片手を繋いでいた手を外して、私のフード上からゆっくりと撫でてくれた。
「頬についてた、クリーム美味しかった。それに、そんな可愛い顔はしないでくれ……襲いたくなるだろ?」
「んっ……」
私は後半はひっそりと小声で言われ、そうだったここはカフェだったと今更気がついて、顔に熱が集まる。
少しユリウスもすっかり時々チラリと視線を浴びているからか、少し顔が赤く染まっており、ほんのりと潤んでいる瞳は他の人に見せたく無いと言えるほど色っぽくて思わずキュゥと私の口からどこからそんな声が出たと言いたくなる様な出てしまい、私は口を隠して笑って誤魔化した。
「ユリウス、はい。あーん」
フォークに同じく、ホットケーキとクリームハチミツが乗せて差し出すとスッと彼が食べて美味しそうにしていて喜んでいるのが嬉しかった。
「スープはどう?美味しい?」
「なんと言うか……美味しいけどなんの味かわからないのが不思議だな。」
差し出してくれたスプーンを口に含み、引き抜かれて具材の酸味とスープの甘味が混ざり合い、絶妙な美味しさに驚いた。
口の中に噛み締めると広がる変わる味に私はなんとも言えない表情をしていたのか、ユリウスが、ははっと笑う声がして視線を向けるとユリウスは楽しそうに微笑みを浮かべ、スプーンで再び、スープをすくい、食べ続けて私はただ日常的な事に幸せを感じた。
もっと長く居たくなるけど、少し風が出て来たのか、ごおごおと鳴る風の音に現実に引き戻された。
すっかり無くなった皿を少し残念に思いながら、立ち上がる。
ユリウスがカウンターへと行き、代金を夫人へと渡してなにかを言っている。
私は忘れ物は無いかと確認した後、ユリウスの方へと急ぐとユリウスは私の手を取り、足早に外へと続く扉へ向かう。
「ありがとうございました、またいらしてね。」
私は首のみを下げ軽く会釈した後、彼に引かれるまま扉を開けると風が吹き、曇天の空模様は今にも雨が降り出してくるかと言うところだった。
私達は足早に駆けて木道を歩き、数えられるほどの人数しか同じ道を歩いている人を横目に見ながら小走りで走る。
風に揺れて、動く木々は昼間見た風景よりも、何処か恐ろしく暗く見えた。
ようやく辿り着いた広場で私は荒れた息を整えていた。
「はぁ………後はノンストップでお家に帰れば良いよね。」
「いや……雷があるから……酷くなったら一旦雨宿りするかもしれない。雷雲の下を飛べば運悪ければ直撃するからな。だから俺がもし高度を下げたら合わしてくれ。王都への距離は近いから間に合うと良いんだが。」
「わかった………」
ざわざわと揺れる風の音に不安は高まる。
ユリウスは少し離れて竜化していく。
私もそれに習って、竜化していく。
身体が大きく変わり、視線の位置が高くなった。
ギュルギュルと鳴いた金竜の鳴き声は羽ばたいて、飛び立っていく。
私は風の魔法を無詠唱を使用して羽ばたきと共に上昇した。
空を駆けて行く事は楽しいけど、遠く聞こえていた雷音はだんだんと近づいてきており、雨が降り出してきた。
鱗に当たる雨粒が冷たい。
ゴロゴロと鳴る雷音は近く鳴り響き、一際ピカッと光り、少し遅れて驚く程轟音が近くで鳴り響く。
ギュルギュルと甲高く鳴いた前を飛んでいた金竜は鳴いて高度を下げた。
それに合わして私も高度を下げようと下に視線を向けると、開けた草原の先に古びた家と崩れかけた家々が並ぶ村跡だろうか?
そこに降りていく金竜の後を追った。
ドシンと降り立ち、私も続いて降り立ち姿を元に戻すと雨粒がびしゃと当たり雨が本降りになっていく。
しとしとと濡れて行く服が不快で、ユリウスの方へ向くと、ユリウスは私の方へ駆けてきてくれて、びちゃりと濡れている金髪をかきながらきてくれた。
「そこの家に雨宿りしよう。明日は晴れてくれると良いが。」
「うん、雷が鳴ってなければまだ飛べたけど……」
ユリウスに手を取られ、走りながら廃屋の方へと走った。
ゴロゴロと再び鳴りだした音に、私は当たりません様にと願いながら走り、崩れかけ苔むした木の板の壁の崩れかけた所から入り、なんとか廃屋の元へと辿り着き、ユリウスは軋む扉を開けて中に入った。
中は退去してから然程経っていないのか、カビや虫は居なく、私は少し安堵しながらすっかり濡れてびちょびちょになってしまった。
扉を閉めたユリウスは暖炉へと近づき、使えそうだと中を覗きながら言った。
テーブルや椅子だろうかの残骸を割り、暖炉にいれてユリウスは魔法を使い火を起こしているのを横目で見ながら、私は服を乾かそうと脱ぎ始めた。
ふとローブを取り視線を感じてユリウスの方へ向くと、少し顔を赤く染めたユリウスの表情をなんでだ?と思いながらも、濡れてびちょびちょなローブを端で、水気を絞り暖炉の近くのフックに吊るして置いた。
「……透けてて色っぽいな。」
「ユリウス……」
お尻をそっと撫でて触ってきたユリウスを振り返り睨むとフッと笑い、ごめんと言ったユリウスは腕輪からマントを取り出して地面の上に置いた。
「まさか、天気が崩れるとはな。明日にするべきだったか。」
轟々となる風の音と、ゴロゴロとなる雷の音に私はそうねと言いながら笑った。
「でもこう言うのも旅の楽しみじゃない?」
「どう言う事だ?」
ユリウスは私を見て、不思議そうにしていた。
「だってさ、雨宿りしたねって思い出になるでしょ?2人だけの。私こういうのも、楽しいよ?」
「それは盲点だった。良いな…….俺とシアだけの思い出か。」
ユリウスは眩しそうに目を細めて笑った。私は脱ぎながら、釣られて笑った。
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