愛が重いなんて聞いてない

音羽 藍

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新たな草木が靡く風の章

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「サミュエル……懐柔はできそうか?」
「はい、今はまだ時期尚早ではありますが、探りを入れてみた所噂通り、言葉に詰まっておりました。」
「なるほど……それは良い。全ては闇の象徴たる尊師様に捧げる供物。隣に在るべき者だからな……復活の為にも彼女の力は必須だ。薬と服用させてタラシこんで性の奴隷としておけば御するのも容易いだろう。忌々しいあの金竜もいるが、アレを排除するのは他の議員に気取られる可能性があるからな……」
「はっ必ずしてみせます。」

私は黒地に深緑のローブを履いたこのお方に仕えている。
名前は知らない。ただ、闇の担い手様と呼ぶか、主人様と呼ぶ事しか許されない。
服装から元老院の一人であるのはわかるが。
それに私の自由は余りない。
小さい頃に村に盗賊が現れ、人攫いに運ばれて、売られて今この主人にかなり遠回しに会い、字を学びようやくこうして手足となり働いている。
奴隷の首輪のせいで反する動きをしようとすると通知が主人へと行き、闇に葬られるだろう。

なんでその女だと思っていたが、実際に会ってみてわかった。

溶ける様で、光に当たると輝きのある銀髪に、アメシストの嵌め込んだ様な紫色の瞳。

滑らかな絹の様な触り心地の肌。
目を惹きつけられる美しい顔立ちは、どこか懐かしさを感じた。
どこで見たのだろうと考えたが、わからなかった。

これは手にしたくなる。
まるで甘露だと思いながら、私はそのシアという女性に惹かれた。

しかしながら、シアには婚約者がいるという。その柔らかな肌を楽しんでいる男がいるというだけで、はらわたが煮える。
ぜひ私に振り向いて私の為に夢中になって欲しいものだ。
こんな闇の中の生活でも、少しぐらいは楽しみを感じても良いだろう。
私は廊下を歩きながらも、今後の計画を立てる事にした。



――――――――――――――


「シア……どうした?」
「ううん、少し眠いだけ。」
「そうか?なら良いが。」

なにか肌寒い気がして、一瞬震えた。
がっしりと彼に抱き締められると、肌と肌とくっついて私は彼の体温が肌に移り、ほんわかと温まる。

「あったかくてこうされるの……すき」

顔をユリウスの胸元に寄せると番の匂いがしてホッとした。
さっきシタばかりだというのに、汗もかいていたぐらいだったが、今は少し冷めていたが、ユリウスの体温で少し暖かくなってきた。

「だったら、もう少し運動してあったかくするか?」
「ちょっと……それはせっかくお風呂入って綺麗にしたのに、それは避けたいわ。」

顔を上げてにんまりと笑ったユリウスの顔を見て、私は笑った。

「あんなにしたでしょ?」
「……俺はまだできるけど?」
「私はもう疲れたから……ごめん」

手を回して彼の背を撫でた。
私とは違う肌の感覚に未だ彼の裸の姿に慣れていなくて、下を向くのが少し恥ずかしさと少し触りたくなるけど、前に触ったら触ったんだから勃たせたからもう一戦なと引き摺り込まれてたから今はもうしない。

……時々イタズラしたくなって彼が寝てる時に遊んで勃たせてしまい、彼が起きて付き合ってくれるよね?と同じ結果になってしまったなと思い出した。

「シア……なに考えているんだ?」

頬にクイッと優しく彼の指が当たり、ハッとして彼の舌が私の首筋を舐め吸い始めた。

「んんっ……もうしないって」
「顔を赤くして、唸るシアを見たらなんかそそるからさ。それで何考えてた?」
「ユリウスの事で……思い出していたの。」
「そうか、俺の事か。なら良いけどな。」

カチッと少し軽く噛まれ、私は低くうめいてユリウスの背中を握りしめて耐えた。
私の首筋から背中を伝い、お尻を撫でて揉んでいる彼にそろそろダメって私は離れようとしたが、がっしりと彼の身体に抱かれていて離れられなかった。

「シア……俺以外の奴とするなよ。」
「そんな、番だからできないでしょ?」
「何事にも裏技はあるから……それに、君の首後ろに跡があった。誰かに触られたか?」
「え?」

私は嘘だと思いながら、思い出していた。
一度そういえば、山を整理した際にチリッと痛みが入り、振り向くとサミュエルさんがいつのまにか背後にいてビビった。

そろそろ時間だと言いにきたらしかったけど、油断できない。

「きっと、首が痒くてかいちゃった時に爪が当たって跡になったのだわ」
「……本当に?」

じろっと薄暗いランプの光に照らされた青い瞳が私を見つめる。
私は下手に彼に言うとまた大事になるし、もしかしたら禁止だと言われてしまったら、やっと後少しであの山が終わるのにと考えていたので、言えなかった。
それにいくら男娼ぽいエルフが来たと言っても、彼はスキル持ちで色々な面を除けば、普通に使える。
色仕掛けをしてくる確証は無いから彼を遠ざける事は難しいだろう。
もし彼がしてない、私の妄想だと言われてしまったらどうにもできない。
それをユリウスが強引に排斥を行えば、隙になるかもしれない。

せめてあと2人の前で行ってくれれば、まだどうとしようもあるかもしれないけど。

青い瞳を見続ける事は難しくて、再び彼の胸元に顔を寄せた。

「……君を信じたいから、今は追求はしないけど。もし君が失いそうになったら俺はまた君を閉じ込めてしまうかもしれない。」
「それは……無い事を祈るわ。」
「だから、俺以外をこの身体に余り触れさせないで。最小限……我慢すると言ったが限度はあるからな。」
「大丈夫よ、私が愛しているのはユリウスだけだから。」

疑っている声に顔を上げると、ムッとしている表情のユリウスの唇にそっと触れるキスをした。

「なら良いが……おやすみ」
「おやすみなさい……」

ふわふわとした心のまま、私は眠気に誘われて目を閉じた。

「嘘がつくのが下手だな……益々外に出せない、可愛いな」

私はその言葉を聞いて意識は落ちていった。




目を開けると、重いなと思って身体の方を見るとユリウスの片手と片足が身体の上に乗っかっていて手は腰の方に巻きついていて、足はまるで蔦のように絡んでいる。

起きているのかとユリウスのいる左を向くと、伏せられた金のまつげはふさふさとしていて、人形の様に美しい。
すぅすぅと息をしているのを少し安心して、生きているというのがわかる。

昨日はバレてしまっていて、歯痒いけれど、彼に悪いと思っているけれど、大方知ったら彼は許してくれなさそうなのもある。
もし本当に難しくなったら、延期にしてもらうのも良いし、時間をおいて、再開するのも良いかもしれない。

私は足の位置をなんとか動かして、彼の胸元に額をくっつけて、もう一眠りしようかなと少し重いけれど。

目を閉じかけた時に、さわさわと彼の手が動いて下半身の方へと動きなぜか狙っているかのように秘部をするりと触った。

「んっ」

私はハッとしてもごもごと少し動き、ユリウスの顔を見ると青い瞳と目が合った。

「シアおはよう」
「ユリウス、おはよう……いつから起きてたの?」
「さぁ?……いつからだと思う?」
「ちょっとそこはやめて」
「明日出かけるんだろ?今日は楽しまなくちゃな。」
「今日だったでしょ?明日は疲れてそうだからって。」
「……明日にしないか?俺は家でシアと過ごしているのも好きだ。」
「それは私も好きだけど、楽しみだったでしょ?今またしたら夜しないからね?」
「それはひどくないか?」

彼は戯けた表情を浮かべて私の胸元に顔を埋めた。
チロチロと舐められ吸われて、私はくすぐったさと微かな痛みに悶えた。

「んんっ……それ以上はっ」

ユリウスは首筋までキスをして、逆鱗の触れないギリギリの位置を彼は舐めて吸い上げれた。

「欲しくなったか?」
「だめって……」
「ここ濡れてるけど?」
「んんぁっ」

がぐっと揺れた私の身体。
彼の足に腰を押し付けてしまいそうで、私は離れて荒い息を吐いた。

またなし崩しに始まってしまいそうで、私はユリウスから離れてホッとした。

足元に蹴られまとめられていた毛布を掴み、纏わせて隠れる。

「もう……行きたいからっ」
「わかった……ごめんって」

ユリウスは私を見て笑って謝っているが、油断ならないなとじろっと私は見て息を整えた。

「……ユリウスと湖畔のデート楽しみにしてたんだから……」
「……可愛いすぎ」

ガシッと抱きつかれ頭に何度も軽くキスを落とされ、なし崩しにまた始まりそうになった気配を感じてべしべしっと軽く叩いて離してもらい、着替えに行った。

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