愛が重いなんて聞いてない

音羽 藍

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新たな草木が靡く風の章

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「これはこうなっていたのか……大幅な修正が必要だ。」

アルトゥルさんはうなりながら古い文献を読みながら、ノートに書き記している。

ヒルデガルトさんは天幻の間の壁画を写しており、ここにはいない。

コルネリアさんはインク壺の中身がなくなりそうになるくらい忙しなく、何枚もの厚みになるぐらいの総譜を模写している。
スキルを行使しているからこの速さである。ほとんどはインクが乾くのを待っており、私はあらかじめに彼らに頼まれていた物をリストアップしてくれたメモを見ながら楽譜系統のエリアから取り出して、インクの乾いた紙から纏めている。

壁にある大時計がボーンボーンと音が鳴り、ハッとして振り返ると二人は項垂れていた。
扉が開き、ヒルデガルトさんが現れて二人を同じく見て微笑んでいる。

「クッ……もう時間か……まだいたい……居させてくれっ」
「アルトゥル、気持ちはわかりますがダメですよ。シアちゃんが運ぶのですから明日も頑張りましょう。」
「父様……今までのかなり覆す発見ですわ。早速これを学園に持ち帰り他の奏者に渡して論議する事になるかもしれませんわ。私は書き記しを優先しますが……歓喜!ここはまさに宝の山……」

私は三人がバッグにそれぞれの成果をしまっている事を確認した。

歩いているとヒルデガルトさんが隣に来て話しかけられた。

「そういえば……学園生活はどうかしら?楽しんでるかしら?」
「ええ、ユリウスにも少し心配をかけていたようで……友達も一人できて嬉しかったです。ミレディさんって方で。」
「確かバイルシュミット伯爵家のご令嬢ね。アメルハウザー辺境伯の子息の番の子だったわね。ユリウスの親戚になるのだから仲良くなっておいて正解よ。」
「そういえば……親戚どちらの血縁なのでしょうか?私まだ無知ですみません。」
「良いのよ、番の関係でかなり養子だったり養女だったりが多発しているのがこの国だから……全て網羅しろとは誰も追求しないから。ユリウスの母方の方ね。ユリウスの祖母カサンドラさんの旧姓はアメルハウザーなのよ。だからユリウスとイザークは幼少期に少し年代も近いし、会っていた事もあったの。」
「そうなのですね……そういえばカサンドラさんにまだ会った事無かったです。」
「確かカサンドラさんはかなりお年なのよ。ユリウスが働き始めてからは訃報が来て、地方に戻られたわ。旦那さんの容態が少し悪いらしくて……ユリウスの母方にあたる祖父ね。気丈な方だけど……手紙が来て私がそこにいわさせいたのだけど、かなり落ち込んでいらっしゃって……だから今はそっとしてあげて。だからユリウスも少し最近はあまり会っていないと思うし、もちろん、ユリウスの番で婚約した事はカサンドラさんには伝えてはあるから。安心してね。」
「そうだったのですね……」
「治せるものではないから……寿命よ。だからシアちゃんは気にしないで。竜人族の最後は番と過ごすものよ。相方に引きずられるからね。そして相方を引きずってしまうのもあるから。」
「お、そろそろ壁画のある大広間だったか。」

私とヒルデガルトさんの話が少し沈んだ表情だったが、顔を上げるとアルトゥルさんの声がしてたどり着いた事に気がついた。
そういえば……アルトゥルさん達の苗字どこかで聞いた事のある様などこだっけ?

私は記憶の隅を探しながら、ユリウスの姿を恋しく思った。





「ふー、ちょっと疲れたかな……」

荷物を下ろして、自宅に戻り寝室を見たが誰もまだ居ない様なので少し残念に思っていた。
お風呂に入っておこうと新しい下着や夜着を持ち私は風呂へ向かった。



乾かしてさっぱりした寝室に入るとユリウスと目が合い、声を上げようとした瞬間。

ガシッといつのまにか瞬きしたぐらいの間にで駆け寄ってきていて抱きしめられた。

「おかえりなさい、ユリウスどうだった?楽しかった?」
「ただいま、授業内容は楽しかったが……一緒に受けていた奴が騒いでいてなそれはうるさかったな。」

ギュッと抱きしめられているのを、私も背中を触りながらユリウスの肩に顔を埋めて先程まで欠けていた番の匂いを鼻腔に入ってきて幸せだと思う。

「初日だもんね、盛り上がる気持ちはわかるから仕方ないね。」
「いや……そうとは違うのだが……」
「え?」
「シアはほんと可愛いな、そのままで居てくれ。」

スイッと抱き上げられ、私はびっくりしているとリビングの方へ連れて行ってくれた。

扉の奥からは美味しそうな匂いのする夕食が並び、湯気が上がっている。

「美味しそう!持ってきてくれたの?ありがとうね!」
「あぁ、やはりシアが一番だな……」

私はワクワクしているとユリウスの隣の椅子に下ろしてもらい、私はフォークを手に取るとユリウスが頬にキスをしてきて恥ずかしさと嬉しさに心がふわふわとしていた。

ついつい、にまにましてしまいだらしない顔になってしまっているだろうなと顔に熱が集まるのを感じながら、私は料理を口に運んだ。

私の方は順調で一部誤算というか、苦笑いしながらユリウスに話した。
話しながら食べ終わり、満腹になりながら話していた。

「アルトゥル・フリューアか、北の武家だな。」
「あ、それでなのね。そういえば、教授だから細そうって思っていたけど、結構鍛えていそうながっちりとした体格で予想よりも……」
「シアそれをどこで……」

ユリウスの手が私の太ももを撫で上げられた事で私はビクッと揺れて、やばっと思いながら違う違うと首を振ろうとしたが、ユリウスの方を見ると少し眉間を寄せて頬がぴくぴく動いている。

あ…….

私は失言をしたと思いながら、誤解だからと説明をしようとしたがユリウスが近づいて私の首筋を舐めてきた。

「ちょっ………んっ違うの」
「まさか手だけならって連絡したけど……してないのよな?」
「してな……んっだめって……ぁんっ」

夜着の上から胸を揉まれて私は恥ずかしさと失言を訂正しようとしたのに、ユリウスに与えられる快楽に呑み込まれる。

じわじわと秘部が湿り気を帯びるのを感じながら、私はユリウスに何故そう思ったのか話そうと試みた。

「教授が……熱いって上着を脱いだの……下に来ていたのが白いワイシャツで上のボタンが脱いだ時に外れていたらしくガタイ良いなって思っただけだからっ」

ユリウスが私の握っていたフォークを取り上げてテーブルの上に置き、ずるずると夜着の中へ入り込んで、私は手を身を捩ってかわして逃げようとしていた。

ユリウスの片手が私の乳首を摘まれて、んっと私は甘い声が漏れてしまい、なんでこうなったと思いながらユリウスの目を見つめた。

「わかった……浮気はしてないのはわかるが他人の男の身体を余りジロジロ見るなよ。妬けるだろ?」
「ジロジロは見てない……はず。」
「……シア」
「ユリウスが一番だから!見ていたのはそのほら銅像を見ている感じ?だから。それに娘さんいるし、フリューアさんは愛妻家だってヒルデガルトさんに聞いたから、絶対ありえないから!」
「わかった……シアがそう言ってくれるなら許す。」

下着の上からクリトリスのあたりを撫でられ、指の腹をぐにぐにと押しつけられ私の身体はいとも簡単にびくんと揺れた。

「んっぁ」
「その代わり、今日はヤるからベッドで待っていて。寝ないでくれよ?」

ユリウスの顔が耳に近づいて耳元で囁かれ、私はうんっと口を震えさせながら頷いた。

スッと離れていく手が少し寂しくて足を挟んでしまい、するりと撫でられながら手を引いて行った。

「して欲しいか?少し我慢して、片付けてくる。」

キスを頬にされて、私は違うけど違わない複雑な心境のまま頷いて息を吐いた。

かちゃかちゃとトレーに皿やコップを置き下げて離れていく、ユリウスを見ながら私はありがとうと小声で言いながらずるいなと少し微笑んで去ったユリウスの顔を見ながら寝室へと戻った。

初日だから、普通に疲れて寝ようかなと考えとは真逆の考えに、今の私はすっかり快楽に負けてまな板の上の魚の様に待っているしかない。

ベッドの上で、膝と膝を擦り合わせながら待っているとガタンと音がしてユリウスが扉を開けて、風呂に行ってくると声をかけて行った。

私はうんと言いながら、私は明日も学園があるから手加減してと言わないと考えていた。
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