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逃れられない刺客

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「それで、この人がシルベスターさん。お爺ちゃん……?」

呆然と口を開けているランドルフお爺ちゃんは、譫言の様になにかを呟いていた。

「ツェーザルなのか?」
「……すみません、それは私の父親の名前になります。私は紹介していただいた通り、シルベスターです。」
「やはり血縁だったか。」

ユリウスは私の手を握って、私はユリウスの顔を見ると、微笑んで優しく頭を撫でた。

「ということはえーと親戚なのか。」
「弟のツェーザルにそっくりだ……あいつは今はどこに?」
「番で私の母親のビビアナが亡くなり、連れそう様に亡くなりました。今は共に土の下に。」
「あやつは馬鹿なんじゃ。山好きの大馬鹿もんじゃ。キャロルは名乗っておったか?」
「いえ……父は家を出た身で、ほぼ本家の兄とは喧嘩別れした身だと名乗っておりませんでした。」
「そうか……ほんと大馬鹿もんじゃ……」

シルベスターははめていた指輪を見せてお爺ちゃんに渡した。

ポツリと静かな雨の様に涙を流していた。

扉から紅茶を運んできたエミーリアおばあちゃんは机に置いた後、ソファーに座りハンカチでお爺ちゃんの目元を優しく拭いながら背中をさする。

「と言う事はシアの伯従父にあたるのか。」

ソファーに座りながら、ユリウスはそっと私に言いながら、腰を引き寄せられて静かな時間が流れた。



それから私達は帝国で会った事や今までの事を話していたりとしていた。

「ふむ、ではこれからはキャロルを名乗りなさい。分家ではあるが、ちゃんとした血族なのだから。今日泊まる所は決めてないだろう?泊まって行きなさい。」
「……そうさせていただきます。しばらくは王都周辺を番を探そうと思います。今朝方、薄らとは感じたので居るとは思うのですが。」
「……それは行幸。」

エミーリアおばあちゃんは書類をスッと差し出して、シルベスターは書き込んでいる。
紅茶を飲んだ後に、ユリウスの手が腰からゆっくりと太ももを撫でている事でチラッと見上げると素知らぬ振りをしていて私はひじでクイッとこづいた。

「そろそろ、私達は戻るね。」
「色々王都も新しい店とかできたから行ってみたらどうかしら?」
「ええ、行ってみるわ。」

ユリウスは早く戻ろうとジッと見つめてきたが、私は少し帰ってきた実感から王都を見たいという気持ちもあったし、屋台も買い食いするのもしたいという欲もあった。
ユリウスの手を握り、引っ張って街へ歩き出した。




フードを被り街で屋台に並んで買った串焼きの肉を食べ終わりゴミ箱に捨てて、ふとユリウスはあっちへ行こうと示したが男性はユリウスを見つけて手を振った。

「ユリウスじゃねぇか。おっその人がお前の番か!」
「ジャン……見るな、減る」
「ユリウス、減るもんじゃねぇだろ?これは……お前が隠したがるのもわかるけどな。」
「は、初めまして。シアと申します。」 

赤髪茶色の瞳の竜人族の男性は布服でぼさっとした髪型でいかにも休日で、服の盛り上がり様から筋肉がかなりあると言う事がわかる。

「シア……こいつは冒険者仲間のジャンだ。こいつは構わなくて良いから。シアは俺の番だ。手は出すなよ……」
「出す訳がねぇ、俺も竜人族の端くれだ。それくらいはわかってる。しかし、良い女なのはわかるがな。」
「ジャン……」
「睨むなよっ……ただの感想だ!」 

ユリウスが番だと知っていて尚、普通に接してくれてるのでかなり仲が良いとわかる。

「そうだ、御礼に最近できた今人気巷で人気のお店を紹介してやるよ。早めに行った方が良いぜ。」
「……碌でもない店じゃないよな?」
「まさか、俺が少し前に連れて行った大人の店じゃ……」  
「ジャン!お前!」
「ユリウス?」

聞いてないのですけど?
私はチラッとユリウスの方を向いてぶんぶんぶんと首を高速で振った。
ユリウスはギュッと私の手を握りしめた。

「信じてくれ、俺はその店には一歩たりとも入ってない。」
「あぁ、歓楽街に入ろうとした瞬間にキックされて逃げられちったからな。」
「なら、良いけど。」

浮気を少し疑ってしまって、いつの事だがわからないけど。
私と再び出会う前なら仕方ない………よね。

男の人って欲望をその……発散したいと思うから。
本当は嫌だとわがままな私が心の奥底から声が聞こえる。

「本当に入ってないから、心配しないで。俺にはシアだけだから。」
 
顔に出ていたのか、少し沈んだ私の表情を見て、軽く唇にキスをしてくれた。

青い瞳は大丈夫だよと言っている様に熱を感じる様に見ている。

「す、すまねぇ。カップルで行くと、仲が更に高まるって噂でな。東地区のダイアス横丁の三番地にあるから行ってみたら良いぜ。俺はそろそろ串焼きを買いに行ってくるわ。」
「……またな。」
「あぁ」

ジャンさんは手を振って行列に向かった。
家に戻ろうとユリウスは言ってくれたが、せっかく少し気分も落ちたし、後教えてくれた店も気になった。

「行ってみても良い?」
「……本当に行きたいのか?」
「少し気になる」

ユリウスは渋っていたが、私は行きたいとお願いして、東地区に向かいながら歩いた。

「ダイアス横丁か。三番地だとこのへんだろうが………」
「ぁ……やっぱり無さそうだし帰ろうか。」

ようやく辿り着いたその風景はゲーム時代に見た事がある気がして焦った。

「都市伝説の様な胡散臭さだ。」
「家に帰ろうよ。」

ユリウスはうーんと悩んでいたが、私が帰ろうと言った事で、チラッと私の方を見て、私の腕を掴んだ。

「シアはなにか知っている?」
「特になにも。ただわからないなら闇雲にさがしてもって。」

ゲーム内設定集と言えないので、ごまかせた。

看板には《極楽鳥の止まり木》と書かれており、扉にはオープンの文字のある小さな看板がかけられている。
入ってみると、唇を重ねていた夫婦がいた。

「あぁ……すまない、いらっしゃい。」

彼等は店主の様でお店を営んでいた。

私は棚に並ぶいかにも、とろみある液体が入った瓶やピンクの瓶などが並ぶ棚など、早く帰りたいとユリウスを見たが目が爛々としているユリウスは口の端が上がり、見ようかと言いながら笑っていた。

「私はアレイヌよ。こっちは旦那のエグモント。夜を加速させ更に楽しむ為にお客様に提供しているわ。」

よいしょと筋肉がいかつい身体をした刈り上げた頭のエグモントさんを押し除けて、アレイヌさんは笑っておすすめはと指差した。

「魔道具系はあちらにあるわ。惚れ薬はいらなそうだし、催淫剤もいらなそうだけどそこの棚にあるわよ。」

壁の棚には男のペニスの様な形の器具や丸い玉が段々と細くなって重なって続いていた道具など多彩に揃っていた。
ユリウスは私を引きずり、色んな見た事ない器具を眺めては欲しいといった。

「この好きな形にカスタマイズできるというのは?」

紙に書かれていたカスタマイズ可能という文字に、店主に聞いたユリウスは私の腰を撫でながら絶対に良くない事を考えていそうで怖かった。

「あぁ、それか。例えば、前のお客様は短期出張になり、自分と同じ形にして妻にプレゼントしていたぞ。」
「それは面白いな。少し……」

ユリウスはにやりと笑いながら、店主達と話し、私はユリウスの笑っている姿に冷や汗をかきながら無事に過ごせます様に祈った。
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