愛が重いなんて聞いてない

音羽 藍

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紅蓮の烈火の章

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愛しているシアには見せられない、超悪人面で口の端を釣り上げた。

「……これで心も俺だけのもの、狙い通り」
「ん、ユリウスどうしたの?」
「ううん、なんでもない。」


愛するシアの前では少し女々しいけど、優しい王子様でいたい。

まぁ……閨事は別だが。

たくさんやりたい事はある。

俺がやりたい事をしたら、目を丸くして、恥ずかしがって困った表情が見たい。

慌てながら、恥ずかしそうして、俺の為に頑張って命令をこなす姿をみたい。

そして……どろっどろっに快楽に堕としたい。
自分からもっとしてと強張り下品な淫語を言うシアが見たい。
俺と一緒に、快楽と肉欲の世界に堕ちて欲しい。


俺はシア育成計画のまた新しい一歩を踏み出している事に嬉しく思いながら、今度こそはうまく立ち回ってみせる。

結婚式後に俺が地球の幼馴染の佐藤だと明かそうと思う。
そしたら嫌でも逃げられないだろう。
もし……嫌われていた場合に備えて知らない振りも予定に加えよう。
たぶん嫌われてはいないと思うが。


前世の……
立っている事さえ難しくなった虚無感に包まれた舞の葬式はもう二度と出たくない。
葬式をした後、舞のいた部屋に舞の家族に頼んで入らして貰って……

コンビニで買った酒を持ち込んで、ヤケ酒をしながら泣いた。

コトリとあいつに渡そうとした指輪の入った箱を置いた。
恋人さえ通り越して、焦った俺は結婚をしようとしていた。
あいつは母親に急かされて、婚活パーティーにもでようかと考えていたらしいかったし。
酒を浴びる様に飲みつつ、小さな鏡に映る俺は顔や腕が真っ赤になり、熱いのか汗もかいてきた。

舞のいた痕跡を見ながらどんな最後だったか調べた。
きゅるきゅると音を立てていたのを不思議に思って音を頼りに探していたらベッドの端にメガネ型のVRガジェットに繋がれたゲーム機を見つけた。

ビニール袋の中にはダウンロード用のネームが書いてある。

調べると舞の亡くなっただろう死亡推定時刻の日にちょうど発売されたゲームが映っているようだった。
確か待望の次回作とネームされていたので最初の作品はとふらつく足取りだけど、本棚をみると分厚い設定集を見つけた。
いくつか書き込みがしてあり、乙女ゲームのようで主要キャラクターの名前の一覧の隣にはレ点がついてるのと、ついてない者があった。
クリア?したのか?

チリッと胸の奥に燻る嫉妬。

レ点の特徴を探そう。
舞の心の中を覗き見る様な高揚感。
これがなにに繋がる事もないが。
これが終わったら、この行き場の無い心の奥底で燃え上がる業火を沈めるために。

イケメン王子様キャラ。
メインパッケージの真ん中らしく分岐点があり、王太子ルートはレ点はなし。
もう片方の駆け落ち冒険者ルートはレ点あり。
楽しかったと薄く消しゴムで消した後。
なよなよした商人ルートはレ点あり。
眉目秀麗だが、やんちゃな一面のある騎士団団長で公爵のルートレ点あり。
凄腕冒険者ルートはレ点あり。
隠し攻略対象の帝国皇太子ルートレ点あり。

付箋のある所は戦闘RPG? 

わかった。
舞はなぜか乙女ゲーム且つRPG要素が好きなんだとわかる。
レ点のあるキャラはRPG要素のあるキャラクター。

どんな声が好きだったんだ?

そう思ってゴーグルをかけた。

オープンニングを開始しますか?

と出ていて、それは消して。

最初のセレナーデをデータを入れ替えてトライした。

さすがやりこんでいただけあってレベルカンスト。

……少しどういう風なのか気になるが。

ストーリースチル閲覧モードを選択し、それぞれのスチルやムービーを見た。

さすが待望されるだけよくできてる。

低く渋い声の青年や涼やかな声の青年。

目眩がして閲覧モードを止めた。

目頭を押さえ、少し飲み過ぎたかと思いつつ、最後の付箋をみると楽譜集とかあってたくさんの曲目一覧の隣にレ点があった。

あいつ音楽好きだもんな。

曲目オールコンプリートしたらしくそれを見て、俺は床に仰向けで寝転がる。

ずるずると鼻水を啜った。

どっどっどっ

心臓がうるさい。
音が強く感じて、速く感じた。

眠くなって俺は目を閉じた。

時折考えてしまう
もし……
小さい頃すきだと言ってくれたあの時素直に手を取れたらと。

運命が変わっていたのでは。

転生して二度目のクラウディアが俺達の子供を守って亡くなった早すぎた死。
結婚前に彼女が産んだから、まだ結婚式でさえあげてなかったのに。


今度こそはシアと。

寿命尽きるまでたっぷり……
一緒に暮らす。


「ユリウス、なんでか聞こえないけどなにか叫んでるよ」

ちょいちょいと太ももをゆすられ、我に帰ったユリウスはパチンッと防音結界を解いた。


―――――――――――――――――


招待されて夕食を食べるが、考えていた事を思ったがオーウェン殿下を見ようとしたが、さっき言われたユリウスの言葉を思い出して、ハッして見ない。

呪いの浄化の可能性がある。

私の神力を使えば。

だけど、この力を使えば、帝国の教会にバレる可能性がある。

まだ竜王国の教会なら穏健派の司教だったし、ユリウスのいる竜王国だから、なんとかなる。
楽器の方から神力がしていたとか、始祖に似ていた私に免じてなにも見なかった事にしてくれている可能性もある。

帝国派教会の教えでは、高職の人は大概、表向き生涯独身とされている。
万が一力が判明して連れて行かれ、聖女候補として連れてかれた場合、ユリウスとは……婚約破棄になってしまう可能性がある。

だから、なにも言わないのが賢明か。

目の前で苦しんでいる青年には悪いが。

食べ終わり、ふとユリウスの方を見ると考えている事がわかってしまったか顔に出てたか駄目だよとムッとした表情をいるので大丈夫だよ、しないと言う風に微笑む。

しかしながら、目的がわからない。

私達が来たのは偶然帝都にしただけだし、まさか竜王国にスパイが入り込んでて帝都に行く事を知っていた?

神力は表向きには使ってないけど、王城内では彼の怪我を治すのに使ってた事がある。

後は、雪原にいたのでそこにユリウスが来るまでに見られていて監視されていたか。

それとも街についてからなにかしらでバレたのだろうか。

嫌な予測を立てたが……
当たってないと思いたい。

使用人達が食器を下げていく。
時折私の髪色を見た使用人は、驚いてカタカタと食器を揺らした。

カメロン殿下は戦利品を片付けてくるわと言って、去っていった。 

コンラッド殿下も下がろうとしたが、オーウェン殿下に止められ着席した。

「なぜ君達を呼んだかという質問だが、これをヨハン竜王に渡して欲しいからだ。」

テーブルの上にパタンと羊皮紙が置かれた。封はしていなく、開けれそうでもある。

「見てもいいぞ、封はその為にしてない。」
「わかりました、拝見する。」


ふたりで読むと。

ようやくすると竜王国の学園の方にコンラッド殿下を入学させたいとの事だった。

「これはチャーリー皇帝の許可は得ているのか。」
「あぁ、もちろんとってある。今は陛下は北西部の視察で出て居られているから会えなくてすまないな。」
「ふむ、何故帝国にある学園ではなく、此方の学園にした?」
「……ここからは内情を言うが、帝国は幾つかの民族がいる。数ヶ月前に起きた事件なのだが、メイドが黒赤い瘴気を纏った後突如倒れてな。起きてから聞いてみると瘴気に操られていた時の事を少し覚えていた事を話してな。記憶の大半はぼんやりとして覚えていない事も多いらしく。瘴気が突如消えたと話している。北西部のとある民族の過激派の里長に決定したらしくてな。他の民族の過激派の結託して襲撃すると言う予定だったらしい。メイドがここに招き入れる予定だったのがメイドは正気に戻ったが、他に過激派が隠れている可能性もある。安全な他国へコンラッドだけでも一応避難させておきたい。つまりは内乱だ。」
「なぜ僕だけなんです!姉様や兄様は?」
「私はここを任されてる。……それに私は呪われている身故に他国へ行き国際問題となれば陛下に顔向ができん。多少の毒なら慣らしてある。祝福の効果で即死級の毒薬なら見ればわかるから避けられる。力で押し潰そうものなら心得はある。持久戦なら蓄えはあるからな。私1人の身なら暗殺も対処できるが。」
「では姉様は?」

大方信用できる人たちは皇帝と一緒に留守してしまったのかと私は思いながら、油断していたと苦渋の表情をしている彼を眺めた。
ガチャリと入ってきた彼女は、微笑んだ言った。

「それは良いのよ、私は女だし、継承権はないもの。5日後にはスイート王国の第一王子に婚姻で向こうに向かうから安心してちょうだい。直前まで内緒にしてごめんなさいね、別れを告げたらコンラッドまた別れるまでずっと泣いちゃうでしょ?」

がたりと扉を閉めた彼女は幾つかの本と剣などが入った箱を抱えてコンラッドに渡した。

大泣きしているコンラッド殿下とカメロン殿下は抱きしめ合っている。

「少し別の部屋でユリウスと話してきて良いですか?」
「あぁ、そこの扉を開けて右の部屋を使え。」
「失礼します。」

ガチャリと扉を開けてシアとユリウスは外へ出て扉を閉めて、右の部屋に入る。

扉を閉めて、中を見ると談話室の様でソファーとテーブルがある。

「《密やかに》」

ユリウスが防音の魔法をかけた。
私は魔道具の盗聴器がないか確認の為、テーブル下を覗きこんだ。

「盗聴器なら大丈夫だ。この魔法を使った瞬間にハウリングから位置特定と自動的に壊れる。」
「そうなの!?すごいわね。」

私はソファーに座り、ユリウスは向かいではなくわざわざ隣に座る。

「どっちだ?どっちの方をシアは、使おうとしている?」
「よくわかったわね。でも浄化はしないわ。そこまでこの国に入れ込むメリットもないし、それに第一にユリウスと別れたくないもの。」
「は?どうしてそうなった?」

ユリウスの手が私の手首からするすると触りながら滑って、私の手の上から手を指先を絡ませて握る。
まるで夜の閨事の様な触り方に、私は身体をぴくりと震わせた。

すっかりユリウスに調教されて嫌ではないけど、突然昼間なのにこんな触り方されると顔が赤くなってしまう。

「どうしてそうなった?」

ユリウスは私をうっとりと眺めた後、剣呑な雰囲気を漂わせている。

私は考えていた事を全部話すとなるほどとユリウスは言い帝国では神力はしばらく封印だと語る。

「それで、《天幻の間》経由で手紙を運べば、すぐに意思疎通できるでしょ?《天幻の間》の事は伏せるけどどうかしら?」
「……リスクあるな。」
「元から密入国してるし、なにか手段があるってわかるんじゃないかな。」
「うーん……竜人族は竜になれるからそこの辺は諸外国は昔から寛容的な所はあるが。」
「ユリウス、そうしましょ。」
「……貸しだぞ。俺は嫌だからな。」
「……もう。」

私はジト目をしつつユリウスが部屋から出ていった。

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