愛が重いなんて聞いてない

音羽 藍

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紅蓮の烈火の章

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沈んだ表情をして、ジッと私の瞳を見つめるユリウスはなんだが深淵の底を見ている様な危なさがあり、私は不安な気持ちでいっぱいだった。
先程からずっと私を見て無言のユリウスは、私の頭を撫でて、せつなそうな表情を見せた。

「……シアは俺だけを愛しているよね?」
「ユリウスだけを愛してるよ。朝からずっとこんなに一緒にいるし、隣りに居て欲しいと思うのはユリウスだけだよ。ユリウスが喜ぶならどんな事をしちゃうかも。」
「良かった……本当に良かった。ねぇ、だったら許してくれる?」
「許すわ。だけど、その代わり絶対終わりって私が助けを求めたら終了して。身体も持たないし……精神的にも好き過ぎて愛されてるのが心臓が辛いの。」

ぎゅっと深く抱きしめられて、反動でフードが脱げて、ユリウスがそこまで心配している理由がなにかわからないけど、とりあえず抱きしめ返した。

ぽんぽんっと私はユリウスの背中を撫でていると髪とユリウスは私のスカーフを取り外して、首の後ろをぺろぺろとまるで子犬の様に舐められてくすぐったい。

「……んっユリウス……恥ずかしいから」
「少し俺のって跡つけるね」

ユリウスの匂いに包まれ、ぽわぽわと気分が昂揚する。
がびっと軽く甘噛みされて、私は舐められて気持ち良くて悦んでしまう快楽と、彼に少し噛まれて痛みが走る。
荒い息を吐いてユリウスの胸に私の胸が当たり押しつぶされ衣服が乱れる。

他国のもしかしたら聞かれたりしているかもしれないという恥ずかしさが込み上げているのにわざわざしてるのか?と思う程、なにか考えていないと、もっと気持ち良くなりたいと良いそうになり頭の思考は、おかしくなりそうである。

少しショーツが濡れている事には不快である。

れろれろと愛おしそうに傷口を舐められ、快楽にふるりと震える。
んっとはしたない声をあげそうになってユリウスの肩に口を埋めた。

余計にユリウスの匂いが更に強く鼻にダイレクトに入り込み、更にどんどんと赤くなっていく顔がわかって負のトライアングルだ。

「ユリウスッ……もう許してっ」
「ふふっ……仕方ないなっ……君が取られてしまうかと少し焦った。あの有名な人だったから。」

スッとユリウスはようやく離れてくれて、ぜぇぜぇと荒い息を吐いた。

ハッとしてすぐそっちへの思考に入ってしまう事を頭を振って思考を散らす。

「早くベッドの上でシアと2人きりになりたいな。」
「もうっ……有名ってどういう事なの?」

ユリウスの青い瞳はトロンとして色欲に呑まれかけてるので、ぺしぺしとユリウスの胸を叩いて正気に戻す。

確かに番の匂いは自然の催淫剤だなと思いながらも聞いた。

「有名な話しだよ、オーウェン殿下の話しは。」

昔帝国の始まりまで遡る。

銀髪のそれは美しいお姫様がいた。夫に愛されて1人の幼児を産む。

その子は夫に髪色と瞳はそっくりであるが、母親の美貌は受け継いだ。

それは可愛らしい子として有名だった。誕生日パーティーを開く事になった。

祝福しに行きたいと声をあげた特別一段と強い力を持つ魔法使い達がいた。

一番始めに声を上げた西の魔法使いに姫は招待状を贈った。

二番目に声を上げた南の魔法使いに姫は招待状を贈った。

三番目に声を上げた東の魔法使いに姫は招待状を贈った。

四番目の最後に声を上げた北の魔法使いに姫は招待状を贈ったはずだった……

正妃の座を姫に奪われた者が妬んで招待状を配達する為の準備をしていた書官を殺害して奪い破り捨てたのだ。

パーティーが始まり三人の魔法使いは祝福を贈った。

嵐の中、最後の北の魔法使いは現れ自分は招待状を貰えなかったと言い、赤子に呪いをかけた。

姫は叫び、言ったのだ、確かに招待状を用意して贈る手筈をしたと。

そんな簡単な嘘は見破れると魔法をかけて調べると確かに姫は嘘をついてないとわかった魔法使いは、招待状を探しに行った。

奪われた者が妬んで招待状を配達する為の準備をしていた書官を殺害して奪い破り捨てた事を魔法でわかり奪った者を王城前に吊るし上げた。

北の魔法使いは呪いをかけた事を謝った。

だがしかしながらかける事はできるが解く事は得意ではないと言い祝福をして去った。

全ての祝福を受け、そして呪われた子として有名になった。

可愛らしい子は成長した。

しかしながら子を見るだけで、異性の者達は媚薬を飲んだ様におかしくなり性の獣を成り果てた。

血の繋がりがある者だけが効果はなく、必死に子を守った。

姫は必死に護るうちに段々と精神と肉体を病んでいき、ある日またしても子を狙う不届者が現れた。
不届者は手に持っていたナイフで突いた。
姫は病んでいたせいで避ける事が出来ず、その代わり胸に刺さった刃で不届者を殺した。

子は嘆き悲しみ、神に母を救ってくれと言ったたが、母親は自分よりも子の呪いを解いてくれと祈りを捧げた。

神は気まぐれに子の呪いを弱めた。

子は絶望し、息絶えた母親を抱えて泣いた。

襲ってくる者はいなくなり、子も大人へと変わり、子孫を増やした。
やがて時折同じ美貌を持つ子が異性を魅了する力を持つ事になる。

「それで……そうなのね。うん?あれ私特に普通だったな……ちょっとかっこいい男性程度……ぁ」
「あ?今、シアなんて言った?」

口を滑らせた結果、青筋を立ててユリウスは怒っている。

ずいずいと近寄ってくる。

元の木阿弥だ。
がたんっとユリウスの両手に挟まれて壁ドンされ逃げられない。

至近距離にユリウスの顔があり、吐息が顔にかかる程近い。

「わかってる?俺がどんなに……君に粉かけようとして近寄ってくる男共を蹴散らせて。」
「え……ほんと?」
「嘘なんかじゃないよ。それをシアは……浮気して。」
「う、浮気じゃないよ!人としてというか、客観的に見てって事だから。」

客観的に見てと言う伝えるべき言葉を言い忘れたというミスと言わなければユリウスはこんなに混乱しなかったと思いが頭に浮かぶ。

「……シアの美しい紫の瞳に他の男を映さければ……俺だけを見てくれるよね?」

え?

ユリウスの昏く澱んだ瞳を見上げて、私はツキんと胸が痛む。
どうして?
そんなにせつない表情をするのだろう?

「他の男の事を言わず見ないで……」

ユリウスは左手でゆるりと、私の首につけた婚約者の証を撫でてから、自身の証を撫でる。

まずい気がする。

どくんどくんと早鐘をたてる心臓の音がうるさい。

ユリウスが買っていた鎖や首輪を思いだして、いやまさかと思いながら、監禁はしないよね。

本当に、今日は厄日だな。

ユリウスの……番のガラスのハートを少しずつ軋ませてしまう言動や行動をしてしまう事が多いのかなと反省した。

「私はユリウスだけのものだよ。」

そう目の前の青い瞳を見ながら言うと、フッとユリウスはトロンと瞳をうるまさせた。

「だったら、俺の好きにしても良いよね?」
「う、うん。」

うん?

あれ?

なにかまずい事を言った気がする。 
じゃらじゃらとまるで鎖をかけられた様な。

「君を痛めつける様なしないから安心して。少し跡をつけてしまうぐらい。俺が今度からお願いしたら言う通りにして……束縛しても良いよね?」
「う、うん。既にユリウスものだから。」

口が勝手に……
だぁぁぁ、でもユリウスが大好きだから!

まぁ、でも束縛と言っても、番だから元々ユリウスだけだし。

「番はユリウスだから。 安心して、ユリウスしか愛せないし愛そうとも思わないよ。」
「わかっている。不安になるんだ。女々しい男でごめん…シアが言ってくれたおかげで安心した。こんな俺でも愛して。」
「私こそ……竜王国で生まれなくて、竜人族の常識とか、番に関して……ユリウスを知らずの内に傷つけていたらごめんなさい。ユリウスはどんなユリウスでも愛してるよ。」
「ほんと?……たくさんしたい事あるんだ。シアは俺のものなんだから。俺なしじゃ生きられないよな?」
「うん、ユリウス居ないのは、辛いよ。」
「シアの意思の為に言えなかった事がある。」

もう私なんでもユリウスのしたい事は、できる事なら叶えたい。

ユリウスは頬赤くさせ、右手で口元隠し、恥ずかしそうに後ろを向いた。


私はふふふっと笑い、早く行こうよと無邪気に考えていた。

ユリウスはまだ馬車の壁の方を向いている。恥ずかしいのかな。
おなかすいたーと思いながら、夕食はなにかなとと呑気に考えていた。
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