52 / 184
紅蓮の烈火の章
52
しおりを挟む
「シア許してくれ……」
「ヤりすぎなの……食堂もギリギリの時間で怒られたし。」
ぷぃと私はユリウスの方向を見ずに、違う方向を見る。
朝からユリウスの猛攻は凄まじく足がガクガクしても終わらない。
許してと言っても、彼はもっとと言って更にもう一戦繰り広げてようやく終わったと思ったらかなりの時間が過ぎてしまった。
宿を引き払った時に彼が防音効果がある魔法を解除してていつのまにかけたのだろう。
寝ている時にかけたのかもしれない。
しょんぼりとしている彼を横目に見て、許してあげようかなと片隅に思った。
……いやいや私がユリウスに甘いのをわかっている。
ここは許しちゃだめだ。
彼の腕の服を掴んでいるけど、これもさっき外そうとしたら隣から唸り声が聞こえたので渋々掴んでいる。
今は東地区に向かう乗り合い馬車に乗っている。
ごどんと揺れる度にお尻が少し痛い。
馬車内は少し空いていて端に砂糖を煮詰めた様なカップルが二組と私達。
目の前には誰も座って居ないので、多少小声で離しても聞こえずらいだろうけど、少し話したくないのでさっきから沈黙が続いている。
横目でカップルの方向を見るとだーりん♪っと言いながらキスをしている光景を見てしまい、私はウッとなりながらも、なんで私は少し喧嘩しているだろうと思ってしまった。
許せばいいのだけど。
それは気が晴れない。
ユリウスの事は好きだし……
朝して欲しかったのは私もだけど。
限度があるのよ。
ごどん
一際揺れて、私は足を踏ん張り、揺れに耐える。
動きが止まり着いた様だ。
料金はあらかじめ払ってあるので、ドアからぞろぞろと出て行く。
私達も立ち上がり、馬車から降りる。
大きなホールはあるけど、目当ての登り旗は端の方に飾ってあった。
そこに案内している劇団員なのだろうか。
客と話しているので聞きに向かう。
劇を見てから、後はユリウスの買い物が終わったら帝国の旅も終わるなと少し寂しさを感じる。
でも、あの安心の屋敷に戻ればユリウスも少しは安心してくれるかな。
今はもう首輪はユリウスが外してくれたけど、それを私に着けさせるぐらい不安に思っていたのは気にしていたから、今日の朝もそうだったけど、少し彼が不安そうにしている感じがしていたから、首輪をすれば少し彼が安心するなら別に良いかな。
……少し首輪をしているとユリウスの支配下に置かれてるのが割り増しして少しドキッとするのは内緒であるけど。
「午後の公演は昼の鐘がなったら始まりますよ。それまでに客席に座っていただけると幸いです。」
「鐘より後は入れないって事かしら?」
「ええ、ステージ上と花道の安全上、後からの再参加は不可にしております。お手洗い等のご退場は客席端にいる係員に声掛けしていただくとホール出入り口まで案内しますが、再入場は不可になるのでなるべく、先に済まされる事をおすすめしておきます。これもお客様に楽しんでいただくためにステージ上と花道以外は暗闇ですので、安全上ご理解いただけますようお願いしております。」
がやがやとそんな再入場不可なの!?と騒いでいたりと賑やかではある。
「シア……本当にみるの?」
「うん、見るよ。楽しみにしていたし。」
「やっと……俺を見てくれた。」
「ぁまだ……許してないから。」
視線が合った事の安堵と心配とせつなそうに眉をへにょんと下げているユリウスの伏せた青い瞳を私はツキリと痛む胸を他所目に、時間まで近くの店を軽く見ようと引っ張った。
「時間まで近くの店を見よう。」
「……シアすまない、この近くに予定していた店があってそこに寄ろうと思ってる。」
「それって間に合う?」
「時間かかる様なら後でくるから問題ない。」
ユリウスにジッと見られているが私はそっぽを向いて折れそうになる心を引き留める。
「シア……約束は守ってくれよ。どんな事があっても君を手放すことはもうできないから。」
「……ユリウス?」
グイッと手を掴まれ、まるで離さないと言わんばかりに強く引っ張られて、私はあたわたとどうしようと混乱する。
ユリウスはゼロか百過ぎる。
怒ってしまっただろうか。
私は少し悪いなと思っているけど、謝るのも違う気がして、口を閉じた。
しばらく歩いていると工房の様な建物の扉へ彼は歩いていく。
私はその後を少し不安になりながらついていく。
扉を入って閉めて、中を見ると、アクセサリーの店なのか、キラキラとアクセサリーの光る眩い光が美しい。
「シアはここで待っていて……すみません、こちらで扱っていると聞いて。」
私は入り口で手を離されて、ユリウスの寂しそうな瞳は、私と目が合い少し訴える様にジッと見ながら、店員さんがいる奥の方へと歩いていった。
それに少し寂しさを感じてしまうくらい、私も引きずられてるなと思いながらも少しなんでだろうと不思議に思った。
彼自身が着けるのだろうか?
でも、ユリウスは装飾品を多く着けるタイプではないからうーんと悩んだ。
婚約指輪は貰ったし、婚約者の証も既に貰っている。
……他の人にあげるとか?
チクリと胸に刺さる嫉妬が湧き上がり、いや彼の家族とか、知り合いかもしれない。
でもアクセサリーだよね?
矛盾した楽観的な考えは少し間違ってそうだけど、判断材料は手元にない。
少し照らされたアクセサリー達が色褪せた気がした。
なんで、私はこんなにユリウスの事を考えてしまっているのだろうか。
その事にさえ、少し私はため息をついて、窓辺にあるベンチに座り、窓の外を眺めた。
気にしすぎだ。
ユリウスへの気持ちが愛を求めて彷徨っている。
少し冷静になるべきだ。
窓から外を眺めていると、ふと外を立ってこっちを見ている人がいた。
フードを被った男性?だろうか。
顔はほぼ仮面をしていて見えない。
仮面の唯一見える目と私の視線が合い、ざわりとした心の動揺が起きる。
その瞳を知っている様な気がする。
だけど、思い出せない。
まるで白い服の上に黒い汚れがある様な嫌なモヤっとした気持ちが湧き上がる。
……求めているのはコレではない。
「ええ、これで大丈夫です。ではこれで。」
ユリウスの嬉しそうな声が聞こえて、ハッとそっちを見ると、カウンターで袋を渡して、代わりに袋を受け取る彼がいる。
ふと再び、窓へ見るとフードの男性は既に居なく幻とか見間違えだったかな?
「……お待たせ……シア?」
ユリウスの方をむこうとして、ガシリとユリウスに肩を掴まれて、え?と思っていると、唇を噛み締めるユリウスの顔がキスができる様な至近距離にあって驚く。
「どうしたの?」
「……大丈夫だよな?俺の事一番好き?」
「ユリウス、どうして?一番だよ。」
すんなりと言葉はこぼれ落ちて私はそんな自分の状況が恥ずかしくて顔に熱が上がる。
「いや……君が離れてしまう気がしたから。良かった。」
「そんな事ある訳ないでしょ……ユリウスは心配し過ぎなの。」
ユリウスが嬉しそうに笑って、そっと抱きしめられて安心感が増して、ほんのりと香る番の香りにさっきまでざわりとしたスッキリしない気持ちは癒されていった。
すぅーと彼の背中を撫でていると、私なんであんなにモヤモヤしていたのかわからなかった。
なんでだろ?
「……許してくれる?」
「それは話しが別だから……」
「シア……」
「ほら、行きましょう?」
ユリウスは渋々離してくれて、恨めしそうに私を見ないで欲しい。
お腹も空いてきたし、私は笑いながら、ユリウス連れてレストランへ向かった。
……きっと許したら今日も溺れてしまいそうだから。
「ヤりすぎなの……食堂もギリギリの時間で怒られたし。」
ぷぃと私はユリウスの方向を見ずに、違う方向を見る。
朝からユリウスの猛攻は凄まじく足がガクガクしても終わらない。
許してと言っても、彼はもっとと言って更にもう一戦繰り広げてようやく終わったと思ったらかなりの時間が過ぎてしまった。
宿を引き払った時に彼が防音効果がある魔法を解除してていつのまにかけたのだろう。
寝ている時にかけたのかもしれない。
しょんぼりとしている彼を横目に見て、許してあげようかなと片隅に思った。
……いやいや私がユリウスに甘いのをわかっている。
ここは許しちゃだめだ。
彼の腕の服を掴んでいるけど、これもさっき外そうとしたら隣から唸り声が聞こえたので渋々掴んでいる。
今は東地区に向かう乗り合い馬車に乗っている。
ごどんと揺れる度にお尻が少し痛い。
馬車内は少し空いていて端に砂糖を煮詰めた様なカップルが二組と私達。
目の前には誰も座って居ないので、多少小声で離しても聞こえずらいだろうけど、少し話したくないのでさっきから沈黙が続いている。
横目でカップルの方向を見るとだーりん♪っと言いながらキスをしている光景を見てしまい、私はウッとなりながらも、なんで私は少し喧嘩しているだろうと思ってしまった。
許せばいいのだけど。
それは気が晴れない。
ユリウスの事は好きだし……
朝して欲しかったのは私もだけど。
限度があるのよ。
ごどん
一際揺れて、私は足を踏ん張り、揺れに耐える。
動きが止まり着いた様だ。
料金はあらかじめ払ってあるので、ドアからぞろぞろと出て行く。
私達も立ち上がり、馬車から降りる。
大きなホールはあるけど、目当ての登り旗は端の方に飾ってあった。
そこに案内している劇団員なのだろうか。
客と話しているので聞きに向かう。
劇を見てから、後はユリウスの買い物が終わったら帝国の旅も終わるなと少し寂しさを感じる。
でも、あの安心の屋敷に戻ればユリウスも少しは安心してくれるかな。
今はもう首輪はユリウスが外してくれたけど、それを私に着けさせるぐらい不安に思っていたのは気にしていたから、今日の朝もそうだったけど、少し彼が不安そうにしている感じがしていたから、首輪をすれば少し彼が安心するなら別に良いかな。
……少し首輪をしているとユリウスの支配下に置かれてるのが割り増しして少しドキッとするのは内緒であるけど。
「午後の公演は昼の鐘がなったら始まりますよ。それまでに客席に座っていただけると幸いです。」
「鐘より後は入れないって事かしら?」
「ええ、ステージ上と花道の安全上、後からの再参加は不可にしております。お手洗い等のご退場は客席端にいる係員に声掛けしていただくとホール出入り口まで案内しますが、再入場は不可になるのでなるべく、先に済まされる事をおすすめしておきます。これもお客様に楽しんでいただくためにステージ上と花道以外は暗闇ですので、安全上ご理解いただけますようお願いしております。」
がやがやとそんな再入場不可なの!?と騒いでいたりと賑やかではある。
「シア……本当にみるの?」
「うん、見るよ。楽しみにしていたし。」
「やっと……俺を見てくれた。」
「ぁまだ……許してないから。」
視線が合った事の安堵と心配とせつなそうに眉をへにょんと下げているユリウスの伏せた青い瞳を私はツキリと痛む胸を他所目に、時間まで近くの店を軽く見ようと引っ張った。
「時間まで近くの店を見よう。」
「……シアすまない、この近くに予定していた店があってそこに寄ろうと思ってる。」
「それって間に合う?」
「時間かかる様なら後でくるから問題ない。」
ユリウスにジッと見られているが私はそっぽを向いて折れそうになる心を引き留める。
「シア……約束は守ってくれよ。どんな事があっても君を手放すことはもうできないから。」
「……ユリウス?」
グイッと手を掴まれ、まるで離さないと言わんばかりに強く引っ張られて、私はあたわたとどうしようと混乱する。
ユリウスはゼロか百過ぎる。
怒ってしまっただろうか。
私は少し悪いなと思っているけど、謝るのも違う気がして、口を閉じた。
しばらく歩いていると工房の様な建物の扉へ彼は歩いていく。
私はその後を少し不安になりながらついていく。
扉を入って閉めて、中を見ると、アクセサリーの店なのか、キラキラとアクセサリーの光る眩い光が美しい。
「シアはここで待っていて……すみません、こちらで扱っていると聞いて。」
私は入り口で手を離されて、ユリウスの寂しそうな瞳は、私と目が合い少し訴える様にジッと見ながら、店員さんがいる奥の方へと歩いていった。
それに少し寂しさを感じてしまうくらい、私も引きずられてるなと思いながらも少しなんでだろうと不思議に思った。
彼自身が着けるのだろうか?
でも、ユリウスは装飾品を多く着けるタイプではないからうーんと悩んだ。
婚約指輪は貰ったし、婚約者の証も既に貰っている。
……他の人にあげるとか?
チクリと胸に刺さる嫉妬が湧き上がり、いや彼の家族とか、知り合いかもしれない。
でもアクセサリーだよね?
矛盾した楽観的な考えは少し間違ってそうだけど、判断材料は手元にない。
少し照らされたアクセサリー達が色褪せた気がした。
なんで、私はこんなにユリウスの事を考えてしまっているのだろうか。
その事にさえ、少し私はため息をついて、窓辺にあるベンチに座り、窓の外を眺めた。
気にしすぎだ。
ユリウスへの気持ちが愛を求めて彷徨っている。
少し冷静になるべきだ。
窓から外を眺めていると、ふと外を立ってこっちを見ている人がいた。
フードを被った男性?だろうか。
顔はほぼ仮面をしていて見えない。
仮面の唯一見える目と私の視線が合い、ざわりとした心の動揺が起きる。
その瞳を知っている様な気がする。
だけど、思い出せない。
まるで白い服の上に黒い汚れがある様な嫌なモヤっとした気持ちが湧き上がる。
……求めているのはコレではない。
「ええ、これで大丈夫です。ではこれで。」
ユリウスの嬉しそうな声が聞こえて、ハッとそっちを見ると、カウンターで袋を渡して、代わりに袋を受け取る彼がいる。
ふと再び、窓へ見るとフードの男性は既に居なく幻とか見間違えだったかな?
「……お待たせ……シア?」
ユリウスの方をむこうとして、ガシリとユリウスに肩を掴まれて、え?と思っていると、唇を噛み締めるユリウスの顔がキスができる様な至近距離にあって驚く。
「どうしたの?」
「……大丈夫だよな?俺の事一番好き?」
「ユリウス、どうして?一番だよ。」
すんなりと言葉はこぼれ落ちて私はそんな自分の状況が恥ずかしくて顔に熱が上がる。
「いや……君が離れてしまう気がしたから。良かった。」
「そんな事ある訳ないでしょ……ユリウスは心配し過ぎなの。」
ユリウスが嬉しそうに笑って、そっと抱きしめられて安心感が増して、ほんのりと香る番の香りにさっきまでざわりとしたスッキリしない気持ちは癒されていった。
すぅーと彼の背中を撫でていると、私なんであんなにモヤモヤしていたのかわからなかった。
なんでだろ?
「……許してくれる?」
「それは話しが別だから……」
「シア……」
「ほら、行きましょう?」
ユリウスは渋々離してくれて、恨めしそうに私を見ないで欲しい。
お腹も空いてきたし、私は笑いながら、ユリウス連れてレストランへ向かった。
……きっと許したら今日も溺れてしまいそうだから。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
92
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる