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戦火迫る帝国

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閃光が弾けて、目を閉じる。

「ま、まぶ」

どさっ

ユリウスに抱えられたまま地面に落ちた音と衝撃で目を開ける。
ガッシリと抱えられているので外の景色は見えないけど熱風の感覚で熱い所だというのはわかった。

「あ、あつい」
「シア……残念だけど、ダンジョンに転移したみたいだ。帝国内だといいが。」

そろりと彼が離してくれた事で、ゆっくりと地面に足をつけるがぐらりと熱さで立ちくらみが起きてしゃがんだ。

「シア、大丈夫か?」
「うーん……暑さが苦手で……ごめんたぶん余り戦えないし、お荷物になるかも。」

そういえば、竜化すると水、風、氷属性系統だったのでそれの影響があるのかもしれない。

よろよろと私はなんとか立ち上がり、ぼんやりとした視界の中、赤く流れていくマグマが遠くに見える。

自身に冷気を纏わせる様に魔力を底上げすると、少し状態が緩和してきた。

「……シアなるべく俺から離れない様に行動して。ここのダンジョンは転移トラップあるかもしれない。」
「うん、さっきそれで来たから可能性高いかも。」

私は探知の魔法を使った。
ユリウスはトラップの存在に嫌そうな表情を浮かべ、予想だけど高位ダンジョンだろうと言った。

逆にユリウスの顔は艶々として元気そうである。

「俺たち竜人族は竜の時の名残で持っている属性は底上げされるけど、同時に逆の属性は弱点にもなり得るから諸刃の剣だからな。」

私達は歩きながら進んでいく。
風が少し吹いても暑い熱風で、冷えた感覚はない。
今、自分は冷気を少し纏っているからマシではあるが魔力が切れた瞬間は動けなくなりそう。

この先にあるのが、入り口か最奥へなのかさえわからない。

一応水や食料はあるので、耐える事はできるけど。

ジリジリと頭の隅が痛む。
やはり、このダンジョンは私には余り難しいのだと思いながら進んでいく。

「そことあっちに罠あるから避けて。」

ひょいとユリウスが避けて進み、私もその後を同じく避けて進む。

じわりと汗が額を伝って落ちていく。
別れ道があり、ユリウスは左を選択して、私もそれに続いて歩いていく。

私を心配して時折振り向いて視線が合う度に大丈夫だと笑う。
すっかり汗で服は悲惨な事になっているのが残念ではある。


<hr>

道がたいぶ狭まり、硬質な壁だったり、ぽろぽろと小石が落ちてきている脆そうな壁が所々ある。
魔獣はユリウスが見つけた瞬間に斬って退治してくれるのでなんとかなっているがトラップも多彩になってきて、しんどい。
残存魔力も残りは半分以下になり、そろそろ行動するのが難しいと伝えようと口を開いた。

「……ゃ……」

なにか声が遠くから聞こえた?

「ユリウス、声が……」
「居るね、敵対する可能性もあるから気をつけて。」
「わかったわ。」

ぐらぐらと微かにする視界を頭を振り、水袋から水を飲み、水袋を戻して探知の魔法を使い、トラップを見つけてしまった。

「ユリウス、トラップ複数ありそう。」
「あぁ……先に超えておくか。」

ユリウスは地面に突き出たこんもりとした膨らみのトラップを避けて進み、脆くなったいそうな壁に手をつかない様に行動して飛び越えた。

私も膨らんだ所を避けて進んでいると前方から、二人組の男女の冒険者が魔獣の群れを引き連れてトレインしてこっちにきた。

「くそっ、なんでつれてきている!」
「あっごめんなーさいー」

男性はごめんな!とジャンプして通り過ぎていき、女性はジトっとユリウスを見てから私の肩を押してジャンプして通り過ぎて行く。

へ?

「あっ今のでヘイトが」
「シアッ」

皮膚接触したので仲間判定になったのかはわからないけど、魔獣の群れがこっちへきているなと思っていたら、押された事で壁に手をついてしまった。

ガコン

軽い音がして壁がピキピキと崩れていくのに、体調不良の限界でぐらりとした視界に私は、バランスを崩して壁の方へ倒れていく。

がりがり

壁と共になにかの小部屋に入り込み、キラっとなにかが光った。

「シア!?」

ユリウスの方へ手を伸ばした瞬間にブォンと嫌な音がして閃光が弾けた。





うぅ

私はまた転移トラップに合ってしまったのかと疲れた身体で目を開ける。

気温はかなり低くて快適だと感じる。

手が触っているのは雪だと気がついた。

雪?

真っ白な風景が目の前にはあった。

天を見上げると降りしきる雪はこんこんと降り積もっていく。

風が一際吹くと吹雪で目の前が視界はホワイトアウトしてしまう。

「見えない……」


さっきまで汗で濡れていた身体は冷たくなり、寒いなと思うぐらいで済んでいるのは私の属性が合っているからだろう。

メッセージを送ろうと私は見渡す限り雪山であり、なにも後はわからない。

とりあえず雪山にいる安全で元気と送っておいた。


彼が来ないので、ランダム転移トラップなのか、それともランダム転移トラップだと思いついて、来るのをやめている可能性はある。

ホームに戻ろうかと私はここはダンジョンの様な感覚だなと思っていた。

「《リターン: 《ホーム天幻の間》」

うん?

私は再び同じく唱えても、うんともすんとも動かないのでおかしく思った。

あ?

「まさか、転移不可エリア?」

入るのは大丈夫だけど中からは転移不可になるエリアは時々ダンジョンは見かける。

「うわ、え、最悪。」

私はとりあえず、このままでは辛いと歩く事にした。少しずつ足を踏み、雪原の方へ歩いていく。


びゅびゅうと冷たい風が流れて、行く中で吹雪が一瞬止んだ時に洞窟を発見をした。

とりあえず、あそこで休憩しようと思い疲れた身体をなんとか頑張ろと重たいなと感じながらも歩いた。

ようやくだとりついた洞窟に入り、奥の方へと進む。

壁側に座り込んで、濡れていた服はパリパリと凍りかけており、服を脱いでバッグの中の服へと着替えた。
服をバッグの中へとしまい、ローブを再び着込んだ。
布を地面にひいて座り込んで壁によりかかり、ぼーと考えた。
洞窟の中は大きなつららや美しい青く透き通る様な鉱石で、1年中氷で覆われていそうな氷穴だった。

腕輪の機能を使い、ユリウスのいる方向へ向かう光はグルングルンと回っており、使えない。

寒さで震えるかと思ったが、自身が氷属性系統だったせいか、着替えた今は少し肌寒いけど快適なまでの環境だった。

とりあえず、凍える程ではなくなり、魔法で火の魔法を出して暖をとりながら干し肉のかけらを噛み締めた。

塩の味が口腔に広がり、近くにいないユリウスに会いたいとじんわり涙が込み上げてくる。

メッセージでホームには戻れないエリアだったと伝えた後、私は眠気に負けて目を閉じた。
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