愛が重いなんて聞いてない

音羽 藍

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凱歌と嘗ての栄光の章

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「シア・キャロル……其方のさらなる飛躍を願っている。」

竜王が持つ王笏に私は見た事がある物が着いてて戦慄した。

なんであれが。

蒼天の宝玉が先端に着き、壮麗であり、精巧に装飾された王笏は確かに荘厳ではある。

蒼天の宝玉は、創世の竜神と豊穣の女神が豊穣の土地に国を築く事になった時に、ジークフリートとクラウディアに授けた神器の一つ。

まずい。

焦った私は目線だけを動かして、横にいるユリウスを見ると、ユリウスもその存在感に思い出したらしく、顔が引き攣り、汗をかいている。

言葉の最後の儀礼で肩へ触れる。

そうすれば、私とユリウスの魔力を吸収して本来在るべき事が起きる。

儀式中に力が吸収されると、宝玉に込められた術式で古城の鐘が鳴るのだ。

それが鳴るという事は。

正当なる竜王の帰還を意味する。

そうすれば、もしそのある一定の魔力量が越えれば魔力に反応して封印が解かれる。

確かに前世は竜王たるジークフリート(ユリウス)と妻であるクラウディア(自分)がいるけど、まずい。

そんな事をしたら、せっかく鎮火した王位継承問題が再熱する。

私は目まぐるしく考え、たどり着いた。

神力と魔力がトリガーなので抑える。
後はもし仮に鳴ってしまっても、その意味を知る物がいなければわからない。

ユリウスと繋いだ手の裏に指で文字を書いて伝える。

魔力消せ

魔力を抑え、一ミリも出ない様にコントロールする。

同時にユリウスの方からも先程まで薄くもれていた魔力が収まり消えていく。

目線で頷き、これしか助かる道はない。

「………頭を垂れよ」

ヨハン竜王の言葉に私達は冷や汗をかき緊張しながら、頭を前に下げる。


緊張してその時を待った。

カツン

私とユリウスの間の肩に王笏が当たる。

スッと王笏が去りなにも音が鳴らない事に安心した。

ユリウスが頭を上げるのに、合わして上げる。

王笏は遠のき、元の位置に戻った。

良かったぁぁ

私は達成感に満ち溢れた。

ユリウスにエスコートされて、軽食コーナーへと向かって、ようやく一安心した。

「………危なかった……」
「人生設計狂う所だった……」

ドレスの隠しポケットからハンカチを取り出して、ユリウスの額に垂れた汗をふいた。

「ありがとう……なぜあれが。」
「ユリウスの時は違ったの?」
「あぁ、普通の別の王笏だった。」
「今回だけあれって事?」

皿を手に取り、軽食をトングで取りわける。

「わからない……後で聞いてみるよ。」

軽食を食べていると、ランドルフお爺ちゃんがやってきてワシの可愛い孫がと仲が良い貴族に紹介されたりする。

ピンク色の髪の女性が視界の端に映った気がしたが、私とランドルフお爺ちゃんに群がる人々で見えなくなり見失った。

今までどこにいたとか聞かれたが、両親と外国で暮らしていたと話し、竜人族の故郷であるシンフォニア竜王国に来たかったのと、番であるユリウスに会いたかったと話したりした。


いつのまにか戻ってきたユリウスがちゅちゅと髪にキスをしてくれて、みんなの目の前で恥ずかしい。

「この姿は俺だけ……今すぐにでも閉じ込めておきたい。」

囁かれて、ぱぁぁと赤くなっていく顔を止められない。

それを見られて周りにいた人達は、それぞれの番に目配せしてそれぞれ熱々な雰囲気を醸し出して去っていく。

ギュッとユリウスに抱き込まれて、もう私はばくばくと心臓がうるさかった。

「そんな可愛い顔を他の奴に見せないでくれ。」

優しく言い聞かせるようにユリウスに言われて、私はもう何も言えなくなった。
チラリとユリウスは一瞬、他を見て真剣な眼差しを向けたがすぐに私を見たので気のせいだったかな。

「ユリウス……すき」

ユリウスは微笑んで頭にキスをしてくれて、ワルツの音楽が鳴り響き、ユリウスに連れられてホールの真ん中へと導かれる。

最初はデビュタント達が踊り、その後他の参加者達も参加して踊る。

二、三曲連続して踊るのは番や婚約者のみに許されてる。

「一曲でいいよね?」
「せっかくだし、二曲はどうだ?」
「心臓が持ちそうにない。」
「そうか、やはりシアはこの姿に弱いか。覚えておこう。」

不敵に笑われて私は身体中から、ぷしゅーと熱気が溢れてどんどん身体が熱い。

華やかなワルツの曲に合わせて私達はゆらりと踊る。

先生とも練習したけど、ゲーム時代にスキルとして覚えていて良かったと思える。

普通の数ヶ月前まで平民だった女には踊れない。

「足運びは良いよ……もっと俺を見てシア」
「ぅう、それが無理なの」

口元まで行くまでにばくばくと爆音の心臓は、踊りの疲れも合わせて耐えられない。

「ん?じゃもう一曲だ。寂しいな、一番見て欲しい人に見てくれない。」

耳元で囁かれて、曲が終わり歩こうとした足はユリウスに引っ張られてつい、練習で身体に染みついた動きでターンを決める。

「ぁぁ…」

私はそんなと思い、思わず睨みつけ様として目を見てしまった。

途端にユリウスの青い瞳は目尻を下げて、非常に満足そうな表情をした。

いつもとは違う、整髪料をつけて整えられた更に艶のある金髪。
私と目が合い、暗い所ではミッドナイトブルーサファイアの様な深い青さから、頭上の魔道具の強い輝きのシャンデリアの光を浴びて、美しいロイヤルブルーサファイアの様な青さになった瞳は優しそうに見てくれる。

いつもは無造作でかっこいいけど、正装姿はまた別のかっこよさがあってキュンとするのだ。

ずるい

そんな事を考えていると、次のしっとりとした曲が始まり、ぞろぞろと沢山の人が周りでホールドしている。

音楽に合わせてゆらりと身体をくっつけて私達も踊り始める。

「やっと……見てくれたね、寂しかった。」
「ユリウス……」

ユリウスの掌でころころと転がされる私は楽しいかと睨むけど、それさえも楽しいと言う様ににんまりと笑われてしまった。

チラリと外へ真剣な眼差しを向けてから、私の耳元で囁かれる。

「シア……後残り一曲も踊ろう。さっき離れようとしただろ?その時にあいつら…元老院の連中が君を見て近づこうとしていた。クロード枢機卿が君を見て、それから元老院の方へ目配せしたからたぶん一曲終わったら引きつけてくれるとは思う。その間に疲れた振りをして退場しようか。」
「ぇぇぇ」

私はダンスの先生から大概最後の曲は激しかったりテクニックが必要されるからがんばってねと聞いて無理だと思ったけど、それ以上にめんどくさそうな連中と話したくないと考えてため息をついた。

曲もおわりぞろぞろとホール中央部から人々が離れていく。

まだ残っているのは数えるくらいしかいない。

恥ずかしい。

「わかったわ、ユリウスの為に頑張るから、骨は拾ってね」
「ふっそれは…俺がカバーするから。一緒に泥船に乗った気分でいてくれ。」
「そこは大船じゃないの、それ沈むから。」
「君と沈むなら本望だ。」
「私は生きたいから足掻くから。」
「ッ……俺は君と生きたいから足掻こうか。」

道連れなのかと私は笑っていると、高度な技術を持つ奏者が必要とされる華麗な曲が幕を開けた。

最初からフルボリュームで始まる踊りは速さを上げていく。

気分を上げる打楽器群の音が鳴り響き、金管楽器への挑戦的な高らかな音色。

足がもつれそうだ。

転調して、緩やかになったのでなんとか凌ぎ、ターンする。

ふんわりとドレスがたなびく。
視線の端に映る他のダンスを踊る参加者のドレスは綺麗で色とりどりの花々の様で美しい。

あと少しで終わるというところでまた転調して、最初と同じ華麗な音色を奏でる。

音色に合わせて踊りの速さが変わる。

ぁっ……崩れるという所で、ユリウスが腰を押さえホールドしてターンしてくれたのでギリギリ隠せたと思う。

大歓声と拍手に包まれて終わった。

ダンスが終わり、礼をして会場外へ向かう出入り口の方へ向かう。

危なかった……

ユリウスに支えられて歩く。
良かったと満足そうな顔をしているユリウスを見ていたら、崩れかけてしまうし、やはりあの連中には目をつけられていた事やユリウスの掌で転がされるのは、まぁユリウスが幸せそうなら良いか。
私はいつか……ユリウスにイタズラを仕返してやりたいなと少し未来に期待した。
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