愛が重いなんて聞いてない

音羽 藍

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凱歌と嘗ての栄光の章

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王城にいるヨハン竜王と王妃に婚約の報告をしに私達は緊張しながら報告を終えた。

ユリウスの伯父に当たるので、気にしていたらしい。

私はローベルト君に竪琴の約束をしていたので、ユリウスが用意してくれた竪琴をケースに入れて持ち運んでいる。

この竪琴はアイテムボックスに入れられないのが難点ではある。
後は私が部屋の外などかなり離れた位置に移動したりすると、古城の定位置の場所に勝手に転移してしまう。
風呂場から脱衣室くらいの距離感なら大丈夫だが、寝室から廊下の奥まで移動して、見えない所に移動すると消えてしまった。

私とユリウス以外にはたぶん持てないと予想している。

ゲーム時代に運の数値が悪いと強盗にあって財産が減るというハプニング演出の所でなぜか盗まれなかったりしていた。

「ユリウス疲れた……」
「っ……緊張しずきだ。」

私の頭を優しく撫でてくれて、私は……はぁと深呼吸をした。

「シアちゃーん!」

ヒルデガルトさんが手を振って迎えてくれた。

私達は歩き、ヒルデガルトさんの元へ向かう。

「ようやく、会えたわ!楽しみにしてたの。案内したい場所があるから来て欲しいのだけど、良いかしら?」

ユリウスを見ると頷いた。

「ローベルトと約束しているのだが。」
「それなら大丈夫よ、あの子また抜け出して遊ぼうとしていたから、今はお説教の後に勉強中なのよ。だから私ときてから少し後ぐらいで調節したから問題ないわ。少しまともになったと思ったらまたなのよね……私も結構怒ってはいるのだけど、あの子全く懲りてないというか……あ、そうだったわ、あの子の事ではなくて。行きましょうか。」
「しかしながら、どこへ向かうのです?」

見せたい物があるとヒルデガルトさんに案内されて、王城にある教会に来て欲しいとの事だった。

行く途中も、実は教会は元々あるぐらい古い建物で教会があったから古城が消失した後、候補地として選ばれた理由の一つでもあるのよと、それは興奮しながらヒルデガルトさんは教えてくれた。

なんでも、歴史や音楽に関しては歴史マニアらしく、古い時代ものやその当時の想いや追憶が感じられるのが新たな発見があって今までの歴史を覆すのも楽しいと語るヒルデガルトさんに招かれて教会に向かう。

「私は追憶は見た事はないから、ローベルトが見たって聞いてとても羨ましいわ。今から見せる物は普段は保存と修復の為に人目から隠しているから見れないけど、特別な奉納祭などの式典の日しか見れないのよ。その古い絵画を今日は見て欲しくて。ユリウスは数回見ているかもしれないけど。」
「あ、あれか。しかしなぜ。」

ユリウスは不思議そうにヒルデガルトさんに聞いた。
いったいどんな絵画なのか。

「私は貴方達二人はとても……普通ではないと感じるのよ。見た目もそうだけどね。だからこそ……見て知って欲しいの。民は……いえ私も貴方達に期待したり、惹かれるの。これは病とも言っても過言ではないわ。大昔から血に刻み込まれた想いが伝わってくるのかもしれないわ。追憶はたとえ見れなくても。」
「それは……」

ヒルデガルトさんは少し追憶を見れる人が羨ましいわと溢し、前を歩いた。
やや後方からは護衛の騎士とお付きのメイドは静かに付き添って来ているのを気配で感じる。

「でも……追憶は意思とは関係なく見なくて良かったと思えるくらい残酷な事も見る事になるので……見ない方が幸せだと言える事もありますよ。私は見て幸せな記憶も、見てしまって教訓になった事もありますが。」

私はクラウディアの記憶で見た鮮烈なあの記憶を未だに忘れられない。
とても幸せなひと時もあるが、夢で見ると飛び起きて目覚める程に恐ろしい事もある。
リディアという女性の続きも恐ろしくてその先を見れない。
まるで……身体と心が拒否する様に見るなという様にその追憶が来ると自動的に汗だくになって飛び起きる。
私は思わず、怖くてユリウスの手を強く握ってしまった。

「シア……大丈夫か?それに顔色が少し悪い。」

私を案じてユリウスが歩きながら、手を外した。
腰を引き寄せてくれて、頭を少し肩に傾けるとユリウスの匂いに包まれると安心感が増して、この人の隣にいれば大丈夫と勇気付けられる。

「うん、ありがとうユリウス。少し落ち着いたわ。」
「どの記憶だ?」

私は頭を戻し歩きながら、ユリウスの方へ顔を向けた。
真剣な表情をしたユリウスの顔には少し憂いが混じっていた。

私はそれを見てから、目が泳ぐ。

頭に浮かぶどの選択肢を選んで言ってもなにか納得できない気がした。

言ったら彼が心配するだろうし、あるいは、彼がとても気にして彼が傷つくかもしれない記憶も。

私は目線を先を歩き、それは嫌ねと苦虫を噛み潰したような顔をして言葉を溢したヒルデガルトさんと静かに後方歩いてくる人達を見て答えに悩む。

どう伝えたら大丈夫だろうか。

私はため息をついてから情け無く微笑んだ。

「シア……」

チラリと周りを見た視線の先を見てユリウスは察した様で私が見た内容を察したらしく、ユリウスは腰に置いた手を頭を優しく撫でてくれた。

「今度こそは……失わないから。」

そう言ってくれたユリウスの真剣な眼差しに私は……うんと言って肩に頭を傾けた。

一般的にはクラウディアのその後は、昔話では語られてはいない。

学者が周辺国との事を詳しく書き込んだ古い歴史書を読む事でその当時合った最悪の出来事が判明する。

民の中で伝わる、幸せに暮らしました
という理想を壊さない為に、大々的には発表されない。

暗黙のルールがそこにある。


「魔獣由来の特殊な塗料と保護の上薬と魔法や魔道具で、現存しているのよ。当時は珍しかったみたいで、使われた作品数は少なくて……戦果で焼失した作品も多いけど、現存する作品はどれもそれが理由らしいわ。私はそんなに絵画専門ではないからアバウトだけどね。」

……数える事が億劫になる程前に描かれているらしい。

今日はローベルト君が渡したモノで迷惑をかけた2人の為に御礼として、ヒルデガルトさんが教会側の人と学園(修復を担当している)の人の話し合いで、ちょうど決まったらしい。
本来ならば、これは礼拝堂の奥に飾られた品物だったらしい。

どんな美しい絵なのだろうと、期待して、礼拝堂の奥へと入る。

いつもは、絵の経年劣化防止の為に日の当たらない保存性が良い宝物庫に置かれてるか、もしくは、修復の為に学園に運ばれているらしい。

「今日は特別で本来在るべき場所で飾られている状態で見て欲しいのよ。」

礼拝堂の正面玄関ホールで、聖歌隊が礼拝しに来た参拝に来た人々に向けて合唱をしている様で遠くから声が聞こえる。

王城にある教会だが、一般公開もしているとの事だった。

天井のステンドグラスの天窓から差し込む光が入り込み幻想的だ。

しんしんとした静けさと、薄く厳かでせつなく、懐かしい音調の聖歌が聞こえ、確かにこれはだからこそこの時間帯に招待したというヒルデガルトの思惑にも賛同する。

目の前に設置された始祖とされるジークフリートとクラウディアが細密に描かれいた。

今はケースに入っている同じ竪琴を持ち、クラウディアはそれは楽しそうに微笑み、クラウディアを大事そうに腕の中に納めて挑戦的な微笑みを浮かべた美丈夫のジークフリート。

一瞬、美しいなぁと惹かれた。

絵を見た者へ、クラウディアを奪うのなら受けて立つぞと副音声がまるで聞こえて来そうだ。

見れて良かった。 

「シア……話しがある」
 
ジト目でユリウスに見られた。
ねっとりとした視線と腰をゆっくりと触る手。
まるで夜の気配がする触り方に私は身体が揺れた。
 
「シア、過去より今だよな?」

なぜか見惚れていたのがバレてると私は驚愕した。
ユリウスは怒っていそうではある。

「ごめんごめんって」

私は笑うとユリウスはじめっとした視線と目が合い、少ししくじったなぁと思った。



――――――――――――――――


はやくはやく行こうと精霊と精霊が競争する様に駆けていく。

それを見てエリオット司教は微笑ましく思いながらも珍しいと思い、ふと聖堂の方から澄んだ神力を感じて不思議に思った。

今は先程まで遠くから聞こえていた正面ホールの聖歌隊の合唱も終わり布施を回っている所をだと思いいつ、確か一般公開はしていない時間帯だから不思議に思った。

催事は行っていないと思いつつ、聖堂の方から話し声が微かに聞こえた。

確か今はあの絵画を見せている時間帯である。
扉を開けるとヒルデガルトさんと後2人の姿を見て驚いた。
まるで絵画から抜け出してきて、若くなった様なそっくりの二人組。

銀髪の女性の方が大事そうに抱える竪琴から神力が漂ってきたのだと理解した。
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