愛が重いなんて聞いてない

音羽 藍

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凱歌と嘗ての栄光の章

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「ユリウス」

噴水広場で待っていたフードを被ったユリウスが、私の声に気がついて目が合うと、花が綻ぶ様に喜んで手を振ってくれた。

少しばかり離れていただけなのに、寂しく思っていた自分の心に気がついて、とても愛おしく感じて、駆け寄り抱きしめると背に手に回して抱きしめ返してくれた。

……やっぱりもう私は。 

──ユリウス無しじゃ居られない心と身体だな。少し離れるだけでこんなに寂しく感じる。

どっぷりと浸かる様な深い愛が好きなんだ。

「シア……無事で良かった。」
「なによ、ユリウスは心配し過ぎよ。少しお買い物しただけで。」
「変な男とか居なかった?」
「キーラさん達といたんだから大丈夫よ。」
「……なら良いけど。」

すごく好きだ、会いたかったと正直に言えない私を許してほしい。

抱きしめていると、誘う様な良いユリウスの匂いがして、幸せになる。

あぁ、これが安心する。

今伝えたら、きっと。

恥ずかしさで悶える自信があるし、私自身ですら、後になって思い出してから火を吹く様な想いをしてしまうかもしれない。

少し冷静になって考えるべきだ。

ユリウスを再び見上げると、少し彼は離れていた事を不満げに眉を寄せて、もう少し一緒に居たかったと小声で言っていた。

私は聞いてしまった恥ずかしさと同じ想いの嬉しさが混じり、段々と顔に熱が上がってくる。
赤くなった顔を隠す様に、後ろを向くとキーラさん一家は買った物を見せたりと団欒している。


その姿を嘗ての追憶に重ねて見てしまって、私はドクンと胸が締め付けられる。

あの後、息子は元気に育ったのだろうか。

見て見たかったなと切なく思う。
思わずユリウスの服を強く握りしめてしまった。

「シア、どうした?」

ユリウスの驚いた声を聞いてハッとして手を離した。

「ううん、なんでもないよ。」
「いや、だ」
「俺たちはこれから家に戻るからまたな。」
「教えていただき、ありがとうございました。」

ユリウスが心配している声がしたがちょうど私達に気がついたキーラさん達がお別れを言っていたので、ユリウスはチラリと心配そうな顔を私に向けた後、キーラさん達にお礼を言って手を振った。

私もキーラさん達に手を振る。

「…しくじるんじゃねぇぞ、お前の健闘を祈る。」
「ッ…大丈夫です。」

なにか鍛錬場であったのだろうか。
思ったより仲が良かった様で、男のこぶしの仲ってやつかな。

私が靴屋に行きたいと言い、寄れなかった靴屋により、歩きやすい靴を買う。

彼がドレスにも合う靴も買おうといわれ青と金の装飾のある靴なども彼が買ってくれた。

店から出て、本屋に行こうとしたが、お腹が空いたので、カフェに入る事にした。

軽食を食べ終わり、どこの行こう本屋にするか話していた。

「《ナギタの本屋》が良いぞ、幅広い本の種類に最新の人気物語まで揃えてる。学生向けの本もあるし。」
「なんで学生?」
「…ぁあ、そうだ。俺は色々な事情もあったし、後婚約者もいなかったから、見送っていたんだ。シアも学園には通ってなかっただろ?一年だけ通うかなり詰め込みの授業中になるけど、ヒルデガルトさん……ヴィーラントの王太子妃に熱望されてな。」
「……うん。たしかに、通ってない。でもなんで?」
「ヒルデガルトさんが君の事を息子のローベルトから聞いて心配していたらしく、王太子……ヴィーラントから君が古城にいた事を聞いたらしくてな。」
「そっか、あの転移の時に近くにいたからか。」
「あぁ、しかもそれがローベルトが持っていた……いや持たされたのが正しいか。それが原因だからな。色々こってり叱られたのと、彼自身落ち込んだらしい。それで、ヒルデガルトさんが総譜の事や色々期待しているようでな。やはり、式典や様々な面において本来在るべきの正しい楽譜が無いのはだめだろう。民もいつかは弾けると期待していて祈り待ち続けて者もいる。シアを利用してすまないが、総譜を写す事を前向きに進めたいと思っている。」
「うん、それは良いよ。大人数を入れるのは色々……怖いから難しいけど、少人数なら大丈夫。」

婚約者……

私どうなるだろう。

彼と結婚できるのかな……

少しチクリと胸に刺さり、不安になった。

彼の事は誰にも渡したくない。
クラウディアの時は……結婚できなかった。
だから…今回こそはしたい。
良い人がいたら他の人でもいいからとしようとさえ、前は思っていた事もあったけど、ユリウスに愛されるまでは。

今はもう……ユリウスが良い。

「シア、どうした?」
「あっいやどんな本があるか楽しみで考えてた。」
「……そうか。」

ユリウスは私の顔をみて眉を上げて不信げな表情をしているが内緒だ。

少し前にしたいと言ってくれたし、まだ時間が必要なのかもしれない。
だから待つしかできないけど。

……子供ができる前にしたいかな。

する度に、たっぷり中に出されているので、竜人族は出来にくい身体だから、ほぼ直ぐにはできないとは思うけど、若干可能性はある。

「じゃその一年コースに私行く事になったのね?」
「あぁ、俺と一緒にな。」
「必要な物ってあるの?」
「それも本屋で買うよ。」
私は彼に連れられて、本屋に向かった。





本屋の中へ入るとかなり広い本屋だった。
若い子からカップルまで様々な客層、人種がいる。

ユリウスと別れて本を集める。
ユリウスは学園で必要になりそうな本を揃えてくれるらしい。


本屋の中はまるで迷宮の様で広く、所狭しに本がある。
この本屋は特徴があって新品と中古本両方ともに並んでいる。
中古本には赤い栞が挟まれている。

確かにここの本屋さんはすごい。
蔵書数がえげつない。

この本全てを読み終わるまでどのくらいかかるのかわからない。

インクの良い匂いや中古本から香る木やチョコレートの様な匂い。

少しこの匂いは図書館の空気に似てて好きだなと思う。

これとこれ。
後はこれ。

色々な本を取って、巡っていくと、奥まったエリアに入る。

人もまばらで一人、人族のおじさんが中古本らしき本を読んでいるくらいだ。

周りからも壁や本棚で遮られて周りからは見えにくく、関係者用だろう施錠されているだろう閉じられたドアがあるくらいだ。

チラリと本棚を眺めて気になる本がないか調べていると見た事がない題名で、気になった。

本棚が扉や通路から見えないコの字形になってて奥まった部分で一番上にあった本を手に取ると、隣で中古本を読んでいたおじさんがギョッとして手に取った本と私の顔を二度見して赤らめて去っていった。

ん?

本の題名をみても冒険物ぽいし、そんなに変な物ではないはずだよな。


うーん、これは初めてみる。気になるし買ってみようかな。

「決まったか?」

突然声をかけられて、びっくりして、振り向くとユリウスで安心した私は抱えた本を見せる。
足音無いのは本当に心臓に悪い。
わざとなのかはわからないけど。

ユリウスはなぜか棚をチラッとみて怪訝な表情を浮かべているのでそれが謎である。

「うん、後は会計。」
「どんな本にした?シア、見せて」
「……普通の本達だよ……それが気になる?『ギオルギーの夜の冒険物語』一番上の棚の端にあって、読んだことないから気になった。」
「少し読んでみるか……いやこれはだめだ。」

え?

パラリと読むと、彼は氷点下の様な冷たい表情を浮かべ、首を振った。

「絶対だめだ、必要ない。」

そう言って元の棚に戻した。
勝手に決めつけないで欲しいんだけどなぁ。

それともそんなに危険そうな魔本(魔法書や魔導書)だったかな。
題名的には普通だったけど。

「なんでよ?」
「あれは……夜間営業の店や……その性関係の店巡りのおすすめを綴った物だ。」
「……なんつーものを。」

じわじわと私は恥ずかしくて、赤くなっていく。

普通に買おうとしちゃったよ。

そりゃ、本棚から取った時、隣にいたおじさんびっくりするはずだよな。

女性が楽しそうに本取るんだもの。

「シアはそれとも欲しかった?俺じゃ足りない?」

ヴァイオリンの音のようにせつなく震わせた哀愁を帯びた声は自信が無さそうに私に訴えてくる。

ユリウスの顔を見れない。

恥ずかしい。

めちゃっ恥ずかしい。

ユリウスの両手で、私の頭と顎を強制的に向かされて、青い瞳と目が合う。
少し征服されている様で、ぞくぞくとしてくる。

「ちょっと……やめ……はぁ……」

私はきゅんとお腹の底が疼くのを無視して、止めようとしたが、いとも簡単にその決意は脆く崩れ去った。

ついつい目がユリウスの美しい青い瞳を追いかけてしまう。

顔に熱が集まり、ぼぉーっとしてしまう。

あぁ

なんてユリウスの瞳は美しいのだろう。
ずっと……見ていられる。

女子の様に金色のまつ毛がバサバサしてて、ミッドナイトブルーサファイアを閉じ込めた様だ。
室内のランプの光に照らされて、角度によって星の煌めきの様に見える。

なんて、美しいのだろう。
いつも見ているのに。
美人は見飽きるって言うけど、ぜんぜん慣れない。

むしろ、見つめると沼にはまる。
奈落に落ちる様に終わりが無い。

ジッと私を見つめて今にも泣きそうに揺らす瞳はとても私の心に刺さる。
魔法が解けた様にハッとして真実を話した。

「し、知らなかったの。本当よ!ユリウスだけが良いもの。今でも溺れそうなのにこれ以上ユリウスに愛されたらまともに生活できない。」
「シア……俺だけを見ろ良い顔だ……もっとどろどろに俺に溺れていいよ。」
「ユリウス……」

フッと笑って、鼻に軽くキスをされて、他の本も見せてと言われて、私は本を渡した。
ひとつずつ彼は確認して、ぱらぱらと開いている。

私はひとつひとつ確認されるのを、恥ずかしいと思いながら、ユリウスは私が持っていた本全てを取られてしまった。

そこまで監視?しなくても。


後は普通の新旧載ってる竜王国名所案内とか最新の見た事がない楽譜とか最新の冒険物語とかだ。
値段も中古本で安めの物あるし、少し楽しみである。

「ユリウス……心配し過ぎだって。」
「……シアの事が知れて嬉しいし、別に気にしなくて良い。それに……さっきみたいな本あったら困るから。」

ユリウスは顔を赤らめて、ムッとした表情で私をチラリと見て信じてなさそうだ。

「シアは本当に、純粋過ぎて困る。」
「もう……あれは本当に中身見てなかったの!」 
「だから……ここの棚辺りはそういうのが集められているからだ。見たら大体わかるはずだぞ。」
「ぇ?」
「……大人向けの官能小説とか閨事指南の書物とかだ。題名を見れば遠回しに書いてあるのもあるけどな。」
「う、うそ」

私は確かに人がいたので、ユリウスがいた側はよく見てなかったけど、確かに言われてみれば破廉恥なタイトルなどあった。

「本当だ、こっちは人がいたから見てなかった。」
「あ?人いたの?」

ずりっと、少し怒ったユリウスがまた近づいてきたので慌てて手をユリウスの胸に手で防いで止める。

やばっ

またユリウスの嫉妬メーターが上がちゃう。

「なんにもないよ、本当に。私が来たら去ったから!」
「なら、良いけど……今度からは気をつけて。」
「ごめん、ユリウス。本当にその沢山本があって楽しくてぼーっと見ていたから、そういう本だって気がつくのに遅れた。」
「シアにはそんなに怒ってないよ……今度から注意はしてほしいけど。俺のシアをおかずにしているかもと思うと虫唾が走る。」
「そ、そんな事はないんじゃない?普通にすれ違っただけだし。奥さんいるのかもしれないし。」
「シア……鏡を見てそれを言ってくれ。」
「は?どう言う事よ。」

意味がわからない。

「優雅で目も魂も惹き寄せられるほど美しいシアをそういう目で見ないはずがない。」
「ぅ……ちょっと言い過ぎ……ばかっ」

せっかく治ってきた顔の熱はまたカァっと上がってきている。
私はたまらなくなり、手を口元を抑える。

「ほら、そんな可愛い顔をして……絶対わかってない。」

……女主人公になるくらいゲーム時代はそこそこ良い顔立ちなのは、客観的にわかっているけど、現在中身に入っているのは私だし。

……少し良い過ぎだって。

ユリウス自身が番だから余計にそう思うだけなんだから。

「でも、本当に沢山ね。」

私はこの話をしていると、更に気まずいし、恥ずかしいし、足がつかない様でたまらないので話を逸らす事にした。
明らかに男性向けそうな酒池肉林のハーレム物など沢山なそういう本が並んでて確かに色々様々な客層向けでもある。
ユリウスが一つずつ確認している間、色々見ていた。


かたん

私の膝が偶然本に当たり、パタンと本が落ちた。

「あら、おちちゃった。」

落ちた拍子に本が開き、甘美な濃厚な挿絵を見てしまった。

大人の女性が、鎖で動けなくされて、大男にいい様にされている構図だった。


カーッと段々上がっていく私の顔が熱くなる。

ハッとしてすぐに拾い元に戻そうとして、本棚にしまおうとすると、ユリウスがいつのまにか背後にいて本や身体を止められてしまった。

「俺が見てない間になんて、なんて良い顔してんの。どこのページみた?」 
「みてないっからっ」
「……嘘つきな悪い子はお仕置き必要だね?」 

彼は本を棚に立てかけて、私の身体を背後からがっつりと抱え込まれる。

「ユリウスっちょっと」
「そんな大きい声出したら、ここにみんなくるぞ?」

するすると服の隙間から、ユリウスの手が入り込んだ。

びくんっ

身体が意思とは別に跳ねる。

私はコの字の内側で見られない環境下ではあるが、本棚の向こうにはドアもあるし、もしお客さんが来たら見られてしまうと最悪な事に気がつく。

そんな事を考えていたからか、いつまにか服の下のユリウスの手は下着をかきわけて敏感な乳首をわざと避け、円を描く様にじれったく撫でる。

「……ぅん」

小さい声が出てしまい、焦りながらなんで本屋でこんな辱めされている状況がわからない。

「ほら、どのページ?早く言ってくれないともっと長くなるよ。」

するすると肝心な部分は触らず揉まれたり、腹の上を撫でられたり、首裏を舐められた。

私は余りの気持ち良さと羞恥と背徳感で、下半身はかなりトロトロになってしまっていると破廉恥な自分が恨めしい。

「……鎖でっ…縛られてるのっ」

とうとう焦らされもっと続くと困る私は観念した。

「これか?」

ぺらべらとページを捲っていくたびに、どれも想像以上に甘美な世界が広がっていて、私は目を背けたくなった。

「シア……ちゃんと見ないとページ過ぎるぞ。」

耳元で優しく言われながら笑う彼の声にキュンと子宮がうずく。

「そ、それっ」

偶然本を見るとちょうどユリウスがページを進めていくと見た挿絵があった。

はぁ……ようやくこれで解放される。

運が悪かった。

「これを見てそんな可愛い顔したんだ、シアはこうされたい?」
「いやっ痛いのは嫌」

さすがに鎖で痛そうだし。

「んじゃ……痛く無いのは好きか?」
「へ?」

私は忘れていたユリウスの手が、やっと乳首をつまんでくれ、声が出そうになって唇を噛み締める。

「んっんん、気持ち良いのはすきっ」
「シア……そんなに噛み締めたら怪我する。口を開けて。」

命令されて、私は何故かヒクヒクとした心の奥底で喜ぶ私の心があり、ユリウスの頼みなら、なんでも叶えてあげたいという気持ちになり、口を開ける。

くちゅくちゅ

ユリウスの舌が私の唇を舐めて、そのまま口の中にユリウスの舌が入ってきた。

だめなのにっ

でも、次第にユリウスに与えられる気持ち良さに私はなんにも考えられない。

私を必要としてくれて幸せだと感じて恍惚としてきた。
焦点が合わなくなり、ぼぉーっとして眉が下がる。

ちゅぱっとようやく許された口からユリウスの口の間には銀の糸が伸び、まるでベッドでしてる時の様だと思った。 

「ぁあ、いつか鎖も買いに行こうか。痛くはしないから安心して。それに……シア……君を閉じ込めておきたい。誰にも……会わせなくない。」

私のだらしなく開いた口から少し荒い息と共に、はぁとまるで閨事の時の様な甘い声が出てしまい恥ずかしい。

ユリウスのまるで闇を見た様な深い暗い声にびくっとして、教えたし良いでしょと言い離れようとしても、がっしり掴まれてて動けなかった。

時折私の身体は、ぴくんと揺れる身体は正直過ぎて、足は無意識にもぞもぞとスカートの中で、はしたなく足を擦り合わせてしまった。

「動かないで…もっと感じてシア」
「はぁ……い」

少し荒い息を私は吐き、彼に言われ従ってしまう。
服従している気さえしてきた。

なんで。

私自身でさえ、この感情がわからない。
気持ち良いと思ってしまった。

ユリウスに命令され全てを支配され、服従しているという甘美なひと時はなんて罪深くて甘美なのだろう。

ユリウスの為ならちょっと破廉恥な事も叶えてあげたいと言う気持ちと、いや痴女でしょという正論の心の声に私は混乱する。

ユリウスはそんな私を見て、うっとりとした表情になった。

「やぁ……もう許して……っ」
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