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忍び寄る闇
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あれからスイート王国の方で、買い物をしたりしてまともな格好になったユリウスと共に地上で久しぶりに飯屋でご飯を食べたりした。
「あいつがいるのは…」
「流刑地ヴァルター。」
私は遠くを眺め、フードを抑える。
「あそこなら、普段人は近寄らない。瘴気に塗れてても、誰も気にしない。定期的に供物は届くからね。」
「あー、罪人か。」
ユリウスを待っていた時に一度クリスタルで見た事がある。
地下深くの縦穴にいる。
だけど、私が近寄ったら出てくるかもしれない。
「…シアは安全な所にいてくれないか?」
私はユリウスの方へ向くと、ユリウスは真剣な表情をしてぎゅっとテーブルの上に置いた私の手を握った。
「ううん、だめよ。ユリウスの力は温存して。私が餌となり、近寄ってきた所を神力で動きを封じるわ。そこを攻撃して。そして、弱った所にユリウスの全力で叩き潰して確殺して。」
「………ぐっ」
ユリウスは口を歪ませて耐えてくれている。
私を安全な所へ居させる方法を考えてくれてるけど、それは十分に諸刃の剣だ。
あいつは私が行かないとのこのこ出てこないだろう。
そして、危ないと感じたらさっさと配下の者を身代わりにして去ろうとする。
あいつは狡猾な奴だ。
それくらいする。
「だから、お願いよ。ユリウス、必ず一緒に来て。」
「わかった………君を危険なめに合わせたく無いのに……それが最適な事が口惜しい。」
私は優しいユリウスに笑ってほしくて、片手をユリウスの頬に手を伸ばし触る。
「ねぇ、ユリウス。戦いが終わったら…」
「だめだ、縁起でも無い事言うな。」
「えー」
……確かに余り良く無いか。
そう思っていると、拗ねた私を見て笑ったユリウス。
「必ず勝つからその時な。」
「うん、勿論!」
―――――――――――
金竜ユリウスに乗せられ、飛行してむかう。
ようやく辿り着いた島…
流刑地ヴァルター。
異様に生暖かく湿っぽい風と陽の差さない曇天。
あいつがいるだろう中央の所は、赤黒く瘴気に蝕まれ呪いに満ちている。
異様な大気の中の魔力帯だと思いながらユリウスに速度を落としてもらい、私は大地に降り立つ。
瘴気のせいで木々は朽ち果て、いつの時代だがわからないが残骸の遺跡も瘴気に飲み込まれ、気持ちが悪い。
瘴気がぶぁっと私の方に流れてきて、私の制御は崩れて、神力と魔力は解放された。
きらきらと私の身体から光が溢れ、奥の方の縦穴からソレは現れた。
黒く染まった髪に、赤い瞳。
屈強な筋肉を持つ身体は瘴気で赤黒く脈打ち、背中には堕天使の様に黒い瘴気の羽根を広げている。
「《ようやく…現れたかクラウディア》」
「《顕現せよ、其れは瞬く光の柱》」
「《諦めて我が元へ来たかと思えば、まだ足掻くか》」
魔法を放ち、光の柱がヴァルターを包み封印した。
「《我が天から堕ちても尚、お前を求めるのに…早く我の手に堕ちよ。しかしだが、クラウディアも動けんだろう。》」
ニヤリと笑い、瘴気を放ち瘴気で包まれた遺跡が宙に浮き、それが私の方へ落ちようとしている。
「構わずやって」
雷鳴の如く、天から一直線の光のブレスがヴァルターを貫き、その後人の姿に戻ったユリウスは視線だけ此方にめを向けて、助けたいと言う表情をしているが私は微笑みを浮かべた。
大丈夫だよ。
ユリウスは、ヴァルターの心臓の辺りを剣で貫いた。
私の上から瓦礫が崩れて落ちてきた。
「シアッ」
焦ったユリウスは刺しながら振り向いた。
私は笑って、魔法を使う。
「《顕現せよ、凍てつかせ氷壁の障壁》」
ばきばきっ
私の頭上に、瞬く間に凍りつき氷壁を作り出し、それに当たり、残骸は崩れた。
少し魔力持ってかれた。
封印の為に神力と氷壁の魔力を使ったから少しくらくらとする。
「大丈夫だよ、ユリウス。それよりもあいつは…」
残骸の埃で前が見えないが、肉体の方は倒せたか。
「《グッまたこの剣が……だが我はまた蘇る》」
埃がようやくはれて、前を見ると黒くなった人間だったものは抜け殻となり瘴気はでようとしている。
ここだ、正念場。
私は体内に残るいや、それ以上の神力を込めて魔法を唱える。
「《顕現せよ、光よ集い我と共に 明星》」
ゴフッ
瘴気のせいでコントロールが……
力を使い過ぎたか。
血が口から大量に溢れ落ちた。
だが、その代わり溢れ出た瘴気は元の人間へと収束した。
天から舞い落ちる流星群の様な大量の光が周りの瘴気を一帯事消し去っていく。
未だ持続的に雨の様に降り続けるそれは、幻想的で美しい。
これでどこにもあいつは行けない。
「ッ大丈夫か?」
「…ぃいから、はやく」
「ぅっ……」
全ての力不足で、視界すら保てなくなりそうな中、ユリウスは私を見て心配して、それから耐える様に口を噛み締めて、収束したヴァルターを見た。
ユリウスは剣を引き抜き、竜化した。
光沢を持った金の鱗と覆い隠す程の巨大な翼。
翼を大きく展開し、ブレスを放つ。
光が瞬いて空気を引き裂いて光線が駆け抜けて、ヴァルターを包む。
キン
甲高い音が聞こえた瞬間、ゴロゴロと真二つに裂いた様な音を立て鳴る。
更に強いブレスだったのか、爆風が吹き、近距離にいた私の身体は衝撃で木の葉の様に吹っ飛んだ。
倒せたのだろうか。
吹っ飛ぶ中、神力と魔力をほぼ使いきってむしろ無理してしぼり出したせいで、ゆらゆらと視界が揺れて意識が保てない。
ユリウスが私の名前を叫ぶ声が聞こえたが、私は疲れた私は目を閉じた。
…もうこれで…ようやく終わったから。
疲れたよ、ユリウス。
なにかに抱えこまれたのを最後に気を失った。
―――――――――――――
目覚めるとどこかのベッドの上の様だ。
微かに痛む身体、知らない天井。
白い天蓋付いており、どこだここ。
まさか転生した?
ゆらりと白いレースのカーテンが揺れ、ユリウスの沈んだ顔と目が合って、青い瞳から涙が溢れ落ちた。
「ユリウス…髪伸びたね…なんで泣いてるの?」
「ばっかだなぁ…シア…寝坊助過ぎるぞ。どんだけ心配したかぁ」
ユリウスの肩につかない短さだった髪は、今はもう束ねてリングで止めるほど長い。
ユリウスの手は震えながら、私の少し痩せた手を取り軽くキスを落とした。
「あいつは倒せた?のどかわいた。」
「……倒せたよ、シアのおかげで完璧に。」
ユリウスは私を起き上がらせてくれて、スプーンを使いスープを少しずつ飲ませてくれた。
染み渡る様に美味しくて、全てを食べてしまった。
「…ううん、決定打はユリウスがしてくれたから、助かった…」
うつろうつろとしてきてまた眠たくなる。
「ちょっと…まだねむたい」
「シア…はやく今度は起きてね。早く起きないとイタズラするから。」
「う…ん」
なにか言っていたが、意識が虚な私はまた眠気に包まれて眠った。
時折なにかを会話する声……ユリウスの寂しそうな声や時折瞼にキスをされたり、ユリウスのなにか聞き取れなかったけど声がして身体を舐められる感覚がしたりして変な気分がしたりしたが、眠気が勝って、少し経ってからようやく起きた。
ん……
私は目を開けるとベッドの側には本を読んでいるユリウスが居て、私は手をユリウスのひざに伸ばした。
ちょんっと触れると、びくんっと震えて、がばっと首を降り、目を丸くして驚くユリウスが見えて笑う。
「驚いた?ユリウス。おはよ」
「おはよう、シア」
少し痩せたユリウスがいて心配した私は声をかける。
「ユリウス、ご飯ちゃんと食べてる?」
「………………べてるよ。」
ものすごい間が空いているのはわかっているのだろうか。
起きようとするとユリウスが支えてくれた。
「ちゃんと食べてよ、心配する。」
「俺だって、シアがずっと寝てるからっ」
ぎゅっと私の手を握り、うるうると涙を溜めているユリウスが愛おしくて手でこっちこっちと誘った。
「ん?」
不思議そうにしながら近づいたユリウスの頭にキスをした。
「大好き……ユリウス」
そっと耳元に囁くと、ぱぁぁっと赤くなっていくユリウスの顔を見れて幸せだと思う。
口元を抑えて、だめだだめと口惜しそうにもぞもぞとしている姿はただ、可愛い。
「……シア可愛い事は今しないで…襲ってしまう。病み上がりの君に無理はしたく無い。」
そう言って、ユリウスは私の左手を取り、薬指の付け根を舐める。
「……ッんくすぐった」
まるで子犬の様にユリウスは舐めて、ちゅっと吸い付き、舐めて吸い付きを繰り返している。
段々と私の身体は熱ってきて、さすがに恥ずかしくて止めた。
「ユリウスっ…それ以上は…んっ」
ぴくんっ
快楽に揺れてしまい、もう濡れてる気がする。
ようやく離されてはぁっと息を吐く。
ふと手に気がつくと、先程左手の薬指を舐められていた部分が赤くなり、跡になっている。
ふとその意味にようやく気がついて段々と顔が赤くなってしまう。
ユリウスに抱っこされ、まるで赤ちゃんの様に世話をされ、ご飯やら水も世話をされた。
終始恥ずかしさで悶える私をにっこりと笑って楽しそうにしてるユリウス。
寝て食べ生活のせいですっかり体重も増えて、元の体型に戻っていった。
ユリウスも肌も艶々としていて、朝日に照らされてきらきらと輝く金髪は美しい。
少し痩せていたのも、解消されて時折外で鍛錬している姿を窓からチラ見するのがお気に入りだ。
勿論、バレない様にこそこそしてるけど、時折訝しげに窓を振り返るので心臓ばくばくである。
城のメイドさん達も黄色い声を上げて廊下の窓から見ているらしい。声が聞こえてびっくりした。
……ユリウスかっこいいもんね。
ちょっと独占欲がわいて見ないでって言いたくなるけど、かっこいいし、騒いでみたくなる気持ちもわかるのでそこはなにも言わない。
内面はちょっと…ドン引きする様な事もするので……愛されてると思えばまぁ…いいか。よくないけど。
ベッドの住人の時にその…便器での放尿を見られたとか。
余り鍛錬の支障をきたしても悪いかなと振り返ったら覗きを止める様にはした。
ユリウスが仕事や鍛錬で居ない間に、私はサプライズの剣帯に着ける御守りの刺繍だったり、ハンカチに軽く刺繍をしたりなど、これがバレずにやるのが中々大変だけど楽しい。
「おかえり、ユリウス。」
「ただいま…どうした?」
私はくんくんと匂いを嗅いだけど、なぜか長い間行為をしてないはずなのに、少し匂いが治っててなんでだ?と疑問に思った。
「いや、最近寝込んでてしてないのに、匂いしないなぁって」
「…………ごめん、先に謝っておく。余り起きないシアに世話しながら、起きて欲しくて色々舐めたり睡姦してた」
「へ?」
私は予想外の言葉で呆然とした。
…長い事してなかったし、溜まるのもわかるちゃわかるのだけどなんて言葉を返せばいいかわからなくて思考が止まってた。
「意識ないシアも可愛いかった」
「だからか…なんか微睡んでいる時に舐められてるなって思ったの。眠気が勝ったけど。」
「次また倒れたらまたするから倒れないで」
ユリウスに心配そうな顔して釘をさされた。
「う、うん。なるべく気をつける、ごめん。」
「わかってくれれば良いよ。シアが悪いんだ。」
じっとりとした視線をユリウスから見られて、その後仕事してくると言われて出ていった。
私はその後、あれ?なんで私悪いんだと思いながら、刺繍をしたけど。
数日後ようやくベッドの住人から解放され、街に行く事になった。
因みに私達がいた場所は王城の離れの塔だったらしい。
ユリウスの家は改装と補修工事などしていたらしく、私の回復を終わった段階で帰るとの事。
「本屋と服屋、後菓子屋にもよりたい。」
二人で街を歩き、色々な店を外から眺めて、あーでもこーでもないと言い合って歩くのは楽しい。
《時空の狭間》で手に入れたいらない素材や魔獣の素材を売り払い、私は資金を手に入れた。
ユリウスが買いたいもの全て買ってくれると言ってくれたけど、ずっと払ってもらうのも気が引けるし。
「ユリウスさまぁ」
とても甘い砂糖菓子の様な声が背後から聞こえ、私は新たなトラブルが来たと振り返る。
「あいつがいるのは…」
「流刑地ヴァルター。」
私は遠くを眺め、フードを抑える。
「あそこなら、普段人は近寄らない。瘴気に塗れてても、誰も気にしない。定期的に供物は届くからね。」
「あー、罪人か。」
ユリウスを待っていた時に一度クリスタルで見た事がある。
地下深くの縦穴にいる。
だけど、私が近寄ったら出てくるかもしれない。
「…シアは安全な所にいてくれないか?」
私はユリウスの方へ向くと、ユリウスは真剣な表情をしてぎゅっとテーブルの上に置いた私の手を握った。
「ううん、だめよ。ユリウスの力は温存して。私が餌となり、近寄ってきた所を神力で動きを封じるわ。そこを攻撃して。そして、弱った所にユリウスの全力で叩き潰して確殺して。」
「………ぐっ」
ユリウスは口を歪ませて耐えてくれている。
私を安全な所へ居させる方法を考えてくれてるけど、それは十分に諸刃の剣だ。
あいつは私が行かないとのこのこ出てこないだろう。
そして、危ないと感じたらさっさと配下の者を身代わりにして去ろうとする。
あいつは狡猾な奴だ。
それくらいする。
「だから、お願いよ。ユリウス、必ず一緒に来て。」
「わかった………君を危険なめに合わせたく無いのに……それが最適な事が口惜しい。」
私は優しいユリウスに笑ってほしくて、片手をユリウスの頬に手を伸ばし触る。
「ねぇ、ユリウス。戦いが終わったら…」
「だめだ、縁起でも無い事言うな。」
「えー」
……確かに余り良く無いか。
そう思っていると、拗ねた私を見て笑ったユリウス。
「必ず勝つからその時な。」
「うん、勿論!」
―――――――――――
金竜ユリウスに乗せられ、飛行してむかう。
ようやく辿り着いた島…
流刑地ヴァルター。
異様に生暖かく湿っぽい風と陽の差さない曇天。
あいつがいるだろう中央の所は、赤黒く瘴気に蝕まれ呪いに満ちている。
異様な大気の中の魔力帯だと思いながらユリウスに速度を落としてもらい、私は大地に降り立つ。
瘴気のせいで木々は朽ち果て、いつの時代だがわからないが残骸の遺跡も瘴気に飲み込まれ、気持ちが悪い。
瘴気がぶぁっと私の方に流れてきて、私の制御は崩れて、神力と魔力は解放された。
きらきらと私の身体から光が溢れ、奥の方の縦穴からソレは現れた。
黒く染まった髪に、赤い瞳。
屈強な筋肉を持つ身体は瘴気で赤黒く脈打ち、背中には堕天使の様に黒い瘴気の羽根を広げている。
「《ようやく…現れたかクラウディア》」
「《顕現せよ、其れは瞬く光の柱》」
「《諦めて我が元へ来たかと思えば、まだ足掻くか》」
魔法を放ち、光の柱がヴァルターを包み封印した。
「《我が天から堕ちても尚、お前を求めるのに…早く我の手に堕ちよ。しかしだが、クラウディアも動けんだろう。》」
ニヤリと笑い、瘴気を放ち瘴気で包まれた遺跡が宙に浮き、それが私の方へ落ちようとしている。
「構わずやって」
雷鳴の如く、天から一直線の光のブレスがヴァルターを貫き、その後人の姿に戻ったユリウスは視線だけ此方にめを向けて、助けたいと言う表情をしているが私は微笑みを浮かべた。
大丈夫だよ。
ユリウスは、ヴァルターの心臓の辺りを剣で貫いた。
私の上から瓦礫が崩れて落ちてきた。
「シアッ」
焦ったユリウスは刺しながら振り向いた。
私は笑って、魔法を使う。
「《顕現せよ、凍てつかせ氷壁の障壁》」
ばきばきっ
私の頭上に、瞬く間に凍りつき氷壁を作り出し、それに当たり、残骸は崩れた。
少し魔力持ってかれた。
封印の為に神力と氷壁の魔力を使ったから少しくらくらとする。
「大丈夫だよ、ユリウス。それよりもあいつは…」
残骸の埃で前が見えないが、肉体の方は倒せたか。
「《グッまたこの剣が……だが我はまた蘇る》」
埃がようやくはれて、前を見ると黒くなった人間だったものは抜け殻となり瘴気はでようとしている。
ここだ、正念場。
私は体内に残るいや、それ以上の神力を込めて魔法を唱える。
「《顕現せよ、光よ集い我と共に 明星》」
ゴフッ
瘴気のせいでコントロールが……
力を使い過ぎたか。
血が口から大量に溢れ落ちた。
だが、その代わり溢れ出た瘴気は元の人間へと収束した。
天から舞い落ちる流星群の様な大量の光が周りの瘴気を一帯事消し去っていく。
未だ持続的に雨の様に降り続けるそれは、幻想的で美しい。
これでどこにもあいつは行けない。
「ッ大丈夫か?」
「…ぃいから、はやく」
「ぅっ……」
全ての力不足で、視界すら保てなくなりそうな中、ユリウスは私を見て心配して、それから耐える様に口を噛み締めて、収束したヴァルターを見た。
ユリウスは剣を引き抜き、竜化した。
光沢を持った金の鱗と覆い隠す程の巨大な翼。
翼を大きく展開し、ブレスを放つ。
光が瞬いて空気を引き裂いて光線が駆け抜けて、ヴァルターを包む。
キン
甲高い音が聞こえた瞬間、ゴロゴロと真二つに裂いた様な音を立て鳴る。
更に強いブレスだったのか、爆風が吹き、近距離にいた私の身体は衝撃で木の葉の様に吹っ飛んだ。
倒せたのだろうか。
吹っ飛ぶ中、神力と魔力をほぼ使いきってむしろ無理してしぼり出したせいで、ゆらゆらと視界が揺れて意識が保てない。
ユリウスが私の名前を叫ぶ声が聞こえたが、私は疲れた私は目を閉じた。
…もうこれで…ようやく終わったから。
疲れたよ、ユリウス。
なにかに抱えこまれたのを最後に気を失った。
―――――――――――――
目覚めるとどこかのベッドの上の様だ。
微かに痛む身体、知らない天井。
白い天蓋付いており、どこだここ。
まさか転生した?
ゆらりと白いレースのカーテンが揺れ、ユリウスの沈んだ顔と目が合って、青い瞳から涙が溢れ落ちた。
「ユリウス…髪伸びたね…なんで泣いてるの?」
「ばっかだなぁ…シア…寝坊助過ぎるぞ。どんだけ心配したかぁ」
ユリウスの肩につかない短さだった髪は、今はもう束ねてリングで止めるほど長い。
ユリウスの手は震えながら、私の少し痩せた手を取り軽くキスを落とした。
「あいつは倒せた?のどかわいた。」
「……倒せたよ、シアのおかげで完璧に。」
ユリウスは私を起き上がらせてくれて、スプーンを使いスープを少しずつ飲ませてくれた。
染み渡る様に美味しくて、全てを食べてしまった。
「…ううん、決定打はユリウスがしてくれたから、助かった…」
うつろうつろとしてきてまた眠たくなる。
「ちょっと…まだねむたい」
「シア…はやく今度は起きてね。早く起きないとイタズラするから。」
「う…ん」
なにか言っていたが、意識が虚な私はまた眠気に包まれて眠った。
時折なにかを会話する声……ユリウスの寂しそうな声や時折瞼にキスをされたり、ユリウスのなにか聞き取れなかったけど声がして身体を舐められる感覚がしたりして変な気分がしたりしたが、眠気が勝って、少し経ってからようやく起きた。
ん……
私は目を開けるとベッドの側には本を読んでいるユリウスが居て、私は手をユリウスのひざに伸ばした。
ちょんっと触れると、びくんっと震えて、がばっと首を降り、目を丸くして驚くユリウスが見えて笑う。
「驚いた?ユリウス。おはよ」
「おはよう、シア」
少し痩せたユリウスがいて心配した私は声をかける。
「ユリウス、ご飯ちゃんと食べてる?」
「………………べてるよ。」
ものすごい間が空いているのはわかっているのだろうか。
起きようとするとユリウスが支えてくれた。
「ちゃんと食べてよ、心配する。」
「俺だって、シアがずっと寝てるからっ」
ぎゅっと私の手を握り、うるうると涙を溜めているユリウスが愛おしくて手でこっちこっちと誘った。
「ん?」
不思議そうにしながら近づいたユリウスの頭にキスをした。
「大好き……ユリウス」
そっと耳元に囁くと、ぱぁぁっと赤くなっていくユリウスの顔を見れて幸せだと思う。
口元を抑えて、だめだだめと口惜しそうにもぞもぞとしている姿はただ、可愛い。
「……シア可愛い事は今しないで…襲ってしまう。病み上がりの君に無理はしたく無い。」
そう言って、ユリウスは私の左手を取り、薬指の付け根を舐める。
「……ッんくすぐった」
まるで子犬の様にユリウスは舐めて、ちゅっと吸い付き、舐めて吸い付きを繰り返している。
段々と私の身体は熱ってきて、さすがに恥ずかしくて止めた。
「ユリウスっ…それ以上は…んっ」
ぴくんっ
快楽に揺れてしまい、もう濡れてる気がする。
ようやく離されてはぁっと息を吐く。
ふと手に気がつくと、先程左手の薬指を舐められていた部分が赤くなり、跡になっている。
ふとその意味にようやく気がついて段々と顔が赤くなってしまう。
ユリウスに抱っこされ、まるで赤ちゃんの様に世話をされ、ご飯やら水も世話をされた。
終始恥ずかしさで悶える私をにっこりと笑って楽しそうにしてるユリウス。
寝て食べ生活のせいですっかり体重も増えて、元の体型に戻っていった。
ユリウスも肌も艶々としていて、朝日に照らされてきらきらと輝く金髪は美しい。
少し痩せていたのも、解消されて時折外で鍛錬している姿を窓からチラ見するのがお気に入りだ。
勿論、バレない様にこそこそしてるけど、時折訝しげに窓を振り返るので心臓ばくばくである。
城のメイドさん達も黄色い声を上げて廊下の窓から見ているらしい。声が聞こえてびっくりした。
……ユリウスかっこいいもんね。
ちょっと独占欲がわいて見ないでって言いたくなるけど、かっこいいし、騒いでみたくなる気持ちもわかるのでそこはなにも言わない。
内面はちょっと…ドン引きする様な事もするので……愛されてると思えばまぁ…いいか。よくないけど。
ベッドの住人の時にその…便器での放尿を見られたとか。
余り鍛錬の支障をきたしても悪いかなと振り返ったら覗きを止める様にはした。
ユリウスが仕事や鍛錬で居ない間に、私はサプライズの剣帯に着ける御守りの刺繍だったり、ハンカチに軽く刺繍をしたりなど、これがバレずにやるのが中々大変だけど楽しい。
「おかえり、ユリウス。」
「ただいま…どうした?」
私はくんくんと匂いを嗅いだけど、なぜか長い間行為をしてないはずなのに、少し匂いが治っててなんでだ?と疑問に思った。
「いや、最近寝込んでてしてないのに、匂いしないなぁって」
「…………ごめん、先に謝っておく。余り起きないシアに世話しながら、起きて欲しくて色々舐めたり睡姦してた」
「へ?」
私は予想外の言葉で呆然とした。
…長い事してなかったし、溜まるのもわかるちゃわかるのだけどなんて言葉を返せばいいかわからなくて思考が止まってた。
「意識ないシアも可愛いかった」
「だからか…なんか微睡んでいる時に舐められてるなって思ったの。眠気が勝ったけど。」
「次また倒れたらまたするから倒れないで」
ユリウスに心配そうな顔して釘をさされた。
「う、うん。なるべく気をつける、ごめん。」
「わかってくれれば良いよ。シアが悪いんだ。」
じっとりとした視線をユリウスから見られて、その後仕事してくると言われて出ていった。
私はその後、あれ?なんで私悪いんだと思いながら、刺繍をしたけど。
数日後ようやくベッドの住人から解放され、街に行く事になった。
因みに私達がいた場所は王城の離れの塔だったらしい。
ユリウスの家は改装と補修工事などしていたらしく、私の回復を終わった段階で帰るとの事。
「本屋と服屋、後菓子屋にもよりたい。」
二人で街を歩き、色々な店を外から眺めて、あーでもこーでもないと言い合って歩くのは楽しい。
《時空の狭間》で手に入れたいらない素材や魔獣の素材を売り払い、私は資金を手に入れた。
ユリウスが買いたいもの全て買ってくれると言ってくれたけど、ずっと払ってもらうのも気が引けるし。
「ユリウスさまぁ」
とても甘い砂糖菓子の様な声が背後から聞こえ、私は新たなトラブルが来たと振り返る。
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