愛が重いなんて聞いてない

音羽 藍

文字の大きさ
上 下
2 / 191
序章

竜と乙女の約束

しおりを挟む
昔々。

神力と魔力に満ち溢れ、作物がみのり豊かであり、精霊や妖精達が踊り歌う素晴らしき楽園がありました。

その名をシンフォニア。

一つ竜が降りました。

友である竜に裏切られ、瀕死の竜は楽園を初めてみて感動しました。

竪琴を持った乙女と精霊達の舞いや歌、奏でる曲。

モノクロだった世界が色鮮やかな世界へと変わっていきました。

ふと竜の鼻息が荒くなった事で、ようやく乙女は竜に気がつきました。

瀕死の竜を癒そうと近寄りましたが、裏切りにあったばかりの竜は心を許せなかったのです。

近寄るなと警戒の声をあげました。

寂しげな表情した彼女が離れていくのを見て、申し訳ない、離れないでと気持ちになった竜は許しました。

乙女は癒しの力を使い、竜を癒しました。

その時にかけられていた呪いも解かれ、ようやく人の姿へとなる事もできるようになれました。

しかしながら竜にはしなければならないことがありました。
だけど、愛する乙女とは離れたくありませんでした。

竜は治っても側を離れ難いとねっとりと彼女の側に居ながら問いました。

なぜ竜である自身を癒してくれたのかと。

乙女は微笑んで言いました。

目を見たら綺麗だった。
こんなにも良い匂いをしてるのに、助けないなんてあり得ないと。


竜は決意し、乙女と約束しました。

またここで、会おうと。

長い年月が経ち、ようやく二人はまた出会い仲良く暮らしました。
乙女が演奏する音色は祝福となり、人々を癒し、更なる豊穣へと。

その豊穣の楽園にはやがて人々が集い国が生まれました。


それから長い年月が経ちながら竜と乙女の血筋は語り継がれていきました。

しかしながら、時が経つにつれ豊穣の地を狙い人々は争いました。

……それからの伝説の竜と乙女である金竜と銀竜を見た者はいません。

ある人はどこか遠くの国々へと旅して行ったと言い、ある人は流行病にかかり死んだという者もいました。
ある者は誰かに殺されたと。



城も戦乱の中、幻の様に姿を消しました。

焦った人々は大地に新しく城を建て暮らしていきました。

伝説は歴史の中へ消えていきました。

竜と乙女の持っていた竪琴の紋章が古い墓や遺跡にある事が歴史には残るのみでした。

……人々はひっそりと噂がありました。

またいつか二人が現れたらどこかで今も暮らしているという吟遊詩人が語り継ぐ物語を人々は神話の様に頭の片隅に覚えていました。

いつかまたあの祝福の音色を聞きたいと。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:10,164pt お気に入り:1,594

ひとりぼっちの180日

BL / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:36

【完結】愛玩動物

BL / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:617

魔術士チームオセロの結論

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:5

処理中です...