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解放編-5

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「リッタさんおはようございます!」

今日も元気よく働くぞ!
っていっても、働くって感じがしないんだよね

家のお手伝いをしているような感覚だ

「おはよう~マキアちゃん!ピアノ素敵ね~」

昨日運んでもらったピアノが窓際の奥に置いてある

「ですよね~!少し壊れていたのでシェイクが修理してくれるって張り切ってくれています」
シェイクちょうどいい部品みつかったかな?

「そうなの?今日聞けるかと思ったんだけど、残念ね~」
あらあらと耳がたれている

「音はなるんです。後で少し弾いてみますか?」

本当?!うれしいわ!とリッタさんはそそくさと朝の準備を始めた

「さっさと終わらせて、ゆっくり聞かないとね~」
フフフうれしい!



カップケーキを焼いている時間を使って、開店前の休憩だ

「じゃぁ、ちょっと明るい曲で」

シューベルトの8つのレントラー

小学生の時にクラスにあった小さなピアノでこれを弾いたら、みんな上手だねってほめてくれた曲
リズムもいいしわくわくしてくる感じが好き


ターラッラ~ターラッラ~♪
そうそうこの感じ、強弱をつけて

ああ~調律していないから音が微妙かな

あれ・・そういえば私こんなに音の区別わかったっけ?
犬属になった効果かな??

今ならよくわかる
一音一音がはっきりと聞こえる


~~~♪
5分ほどの曲

「ご清聴ありがとうございました」
終わってペコリとリッタさんに頭を下げる

「リッタさん??」
リッタさん泣いてる

「大丈夫ですか??!!」

「大丈夫よ~ちょっと感動しちゃって・・・」

「ええ~~そんな大げさです!すごいへたっぴなんですよ!」

「そんなことないわ!とても感動したの!
生きているうちにこんな素晴らしい音楽を聴けるとは思わなかったわ」

そんな・・・大げさな!

「いつでも弾くので言ってください!」

リッタさんのためなら!とムキ!っと右腕に力こぶをつくる
最近体力も筋力もついてきた
こぶはでないがな

「ふふ、ありがとう~うれしいわ。みて、外」



・・・すごい

みんなこっち見ている
そりゃそうだよね

朝からいったいなんだろうって思ったよね




開店してからはさらにすごかった

いらっしゃいませをいう間もなく、お客さんがどんどん入ってくる

「さっき!外まで聞こえてきたのはなに!?」
「もう一度聞かせてもらえないの?」

てんやわんやになっている

「みなさん、ピアノを入れたんですが、まだ調子が悪くて今修理中なんです
直りましたら、お店でマキアちゃんに弾いてもらいますね」

「ピアノ?!」
「あれが!!」

ガヤガヤとすごい

「はいはい!ご注文の方はこちらへ~」

すでに営業モードに切り替えるリッタさん
その日はここ最近で一番売れた




それから3日後、シェイクが来てくれた

「マキアちゃん、こんにちは」

「シェイク!いらっしゃい!この間はありがとう!」
いえいえ、とカウンターに座りバックから部品を出し始めた

ピアノの部品?!なおったんだ!!

ぱぁ!って笑顔になる私を見てにっこりしたシェイク

「まだ混雑しているので、人が少なくなってきたら修理に取り掛かりますね」
それまでちょっとここの席おかりしますと書類を取り出し仕事をしはじめた

おっと、邪魔しないようにしなきゃね
コフェアをそっとだして、すぐにさがった

いそがしいはずなのにわざわざきてもらってありがたいわ




長い腕を伸ばして器用にカチャカチャと修理する

ああ・・ちょっと大きいですねとガリガリと削ったり
ねじが・・入りませんね・・と何種類か取り出したり

弦は・・・これですねと

すでに職人顔負けだ

いろいろ持ってきてよかったですと1時間ほどピアノにくっついている



「どうですか?」
左から音をだしていく

そこまで極端に壊れてはいなかったのが幸いだ

「はい!大丈夫です!音もきれいに出ています」

「ああ、よかったです」
ほっとしているシェイク

すごい、この人
この難しい構造を見て理解して何が必要かと瞬時に判断して適確に修理した

ピアノを知らないはずなのに

「これなら何でも弾けます!すごいです!!」
興奮してしまう

「マキアちゃん直った~??」
リッタさんが奥から叫んでいる

「はい!シェイクが直してくれました!」

やったわ~とリッタさんも大喜びだ

少し残っていたお客さんもなに?なに?と興味津々

「本当にありがとうございます!こんな絶対私じゃ直せなかった!何かお礼をしたいです!」

お金もたくさん貯金しているので大丈夫だ
何か食べたいっていうなら作ろう

「そうですね。では、せっかくなので何か聞かせていただけませんか?」

「え!それはお礼にはならないですよ?!」

私のピアノにそんな価値はない

「いえ、ぜひお願いします」
ええ~そこまでいうなら

じゃぁお礼は別に何か考えるとして・・・

とりあえず何か弾くか

「リッタさん、今弾いてもいいで・・・」
「もちろん!大丈夫よ~」
かぶせてきたぞ


「じゃぁ・・・きらきら星弾きますね」

きらきら星・・懐かしい

幼稚園できらきら星をうたって
これをピアノで弾いていた先生がかっこよくて

自分もピアノを弾きたいなって思った瞬間だった

まぁ実際弾いたきらきら星はまさかの変奏曲のほうだったけどw

あんな子供向けの曲がこんなかっこよくなるの?!って衝撃がすごかったな

発表会で弾きたいとすごい練習した思い出がある
頭の中に楽譜が浮かんでくる


~~~~♪
きーらーきーらーってはいって

「今日の曲はかわいらしいですね」
シェイクが横でにこにこしている

ふふふ・・子供っぽいよね~

最初はね・・

いくぜ!こっからよ!

~~~~♪
みよ!この指の動き!!

~~~~♪
キラキラ~って感じじゃなくてもうゴージャスな黄金降ってるイメージw

左手の流れる動きが好き
途中ではいるのコミカルな和音も好き

~~~~♪
~~~~♪
もう全部の音を使いたい!とばかりに動く指

にたような部分も多いし、ちょっと長い曲なので、途中端折って・・・

最後は静かにおいて終了

「ありがとうございました」

イスから立ってペコリとみんなに頭をさげる



しーん・・・・



ん・・?

「あの??」みんな呆然としている

シェイクがパチパチと拍手してくれた
それに続いて店内で拍手が沸き上がった

へへ
ピアノの発表会みたい
照れてしまう

「すごいわ!!マキアちゃん!!」
リッタさん号泣w

いやいやいや、泣かないでください~


「ああ~・・もうだめ・・年かしら」

涙腺崩壊状態のリッタさんを落ち着かせる

お客さんも初めて聞きました!って喜んでくれて

「マキアちゃん、すごい魔力だだ漏れです」
シェイクに苦笑いされて

もうピアノを弾くときには魔力を抑えられません~

「とても素晴らしかったです。また来ますので、ぜひその時も聞かせてください」

その素晴らしいっていってくれる音を出せるようにしてくれたのはシェイクだよ

たくさんこれでもかとお礼を言ったけど、まだまだ足りない
何かお礼、考えないとな





「私ね、最近忙しいしちょっと寝不足だったりしたの」
閉店後の掃除のときにリッタさんにうちあけられた

確かにお店はすごい忙しい

最初に来た時の午後のまったりとした時間がうそのようだ

「でも、さっきピアノをきいて、すごく張っていた疲れがとれたわ」
心が洗われるようだったわ~とうっとりしている

癒の魔力の効果は絶大だったようだ
音楽ってだけでも癒しがあるしね

「リッタさん、少しの間お店を閉めて、ゆっくり休んでみませんか?」

定休日はあっても、GWのような特別な連休がない

毎日必死に開ける必要もないと思う

「そうよね~充電期間をつくっちゃいましょうか??」

リッタさんもリフレッシュする時間が必要だと感じていたようだ

じゃぁ、来週からかしら・・と考え始めた


仕入れた材料や作っておいたカップケーキのことも考えると明日からとは言えないよね
張り紙もつくっておかなくちゃ




長期休暇か~

前の会社ではブラックに近くてw

なかなか休みなんてもらえないし、残業当たり前
休日出勤もしないと月末が大変だったりと結構ひどかったな
長期休暇なんてそれこそ何年ぶりだろう



私もゆっくりしよう
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