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第一話:探し物
【19】
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嫉妬心に胸をちりちり焼かれながらも、事務所に戻った一美と寿幸。
「おかえりなさい。っていうのも、変ですけど」
律儀に事務所の前で待っていた要と陽に出迎えられる。
『おかえりなさい。寿幸探偵』
離れる際にはふくれっ面だった陽もすっかり機嫌を直していた。
「どうもどうも。ていうか、中で待ってくれてよかったのに。鍵開いてたでしょ?」
「いや、さすがにそれは……。ていうか、俺が言うことじゃないでしょうけど、戸締りはちゃんとしたほうがいいっすよ」
「もっと言ってやってください、要君」
要のもっともな意見に一美が同調する。不利な立場に立たされて、寿幸は頭を掻きつついつものように誤魔化した。
「いやあ、今の若い子たちはしっかりしてるねえ」
そして一足先に事務所内に逃げ込む。
一美はため息を吐きつつ、要たちを室内に案内した。
四人で席に着いたところで(うち一人は相変わらず自由自在に空を泳いでいるが)九条から受け取った封筒を開いた。
中には捜査資料とともに、一枚の写真が入っていた。家族から提供された写真だ。
『あっ、この子!』
陽が写真を注視してから確信した様子でうなずく。
『この子です。間違いない』
「いきなりビンゴだったわけか。まあ、年数も絞ったし、一つの学校で失踪なんてそう何件も起こらないよね」
寿幸が拾い上げた写真を、一美も横からのぞき込む。
夕焼けに染まる街並みを切り取る窓を背景にした一枚だった。
寝台が一台、その向こうにはテレビを乗せた棚があり、手前側には点滴をぶら下げるための点滴スタンド、心電計が並んでいる。
「病室、でしょうか」
「そうみたいだねえ」
件の少年は寝台に腰掛け、カメラに向かってぎこちない笑顔を向けていた。やせ細っており、あまり健康そうには見えない。軽い症状ではないのだろう。しかし。
「彼は病死ではないですよね」
「うん。移植手術が成功して退院できたみたいだね。そして、記念すべき一日目の登校日に失踪してる」
一瞬、部屋の中が静まり返った。
彼の身に何が起こったのかは分からないが、なんと残酷なことだろう。
苦しい治療とリハビリに耐えて、ようやく普通の生活に戻れると思った矢先の事件だ。あまりにも痛ましい。
『彼の探し物ってなんなんでしょうね』
沈黙を破ったのは陽だった。そういえば彼は昨日、この少年が探し物をしていたとの情報をくれたのだった。
「それは、病院に行ってみたらわかるかな」
捜査資料には、彼がかつて入院していた病院名も記載されていた。
「でも、数年前の事件ですし、警察も散々聞き込みをしたのではないですか?」
「まあ、生きている人にはしたみたいだよ。でも俺たちが話を聞く相手は、生きている人たちじゃないからね」
寿幸が日常会話のように語る内容に、要は身震いをした。
『あっ、ねえ、要』
いつの間にやら寿幸の背後から捜査資料を覗き見ていた陽が驚いたような声を出した。
「おかえりなさい。っていうのも、変ですけど」
律儀に事務所の前で待っていた要と陽に出迎えられる。
『おかえりなさい。寿幸探偵』
離れる際にはふくれっ面だった陽もすっかり機嫌を直していた。
「どうもどうも。ていうか、中で待ってくれてよかったのに。鍵開いてたでしょ?」
「いや、さすがにそれは……。ていうか、俺が言うことじゃないでしょうけど、戸締りはちゃんとしたほうがいいっすよ」
「もっと言ってやってください、要君」
要のもっともな意見に一美が同調する。不利な立場に立たされて、寿幸は頭を掻きつついつものように誤魔化した。
「いやあ、今の若い子たちはしっかりしてるねえ」
そして一足先に事務所内に逃げ込む。
一美はため息を吐きつつ、要たちを室内に案内した。
四人で席に着いたところで(うち一人は相変わらず自由自在に空を泳いでいるが)九条から受け取った封筒を開いた。
中には捜査資料とともに、一枚の写真が入っていた。家族から提供された写真だ。
『あっ、この子!』
陽が写真を注視してから確信した様子でうなずく。
『この子です。間違いない』
「いきなりビンゴだったわけか。まあ、年数も絞ったし、一つの学校で失踪なんてそう何件も起こらないよね」
寿幸が拾い上げた写真を、一美も横からのぞき込む。
夕焼けに染まる街並みを切り取る窓を背景にした一枚だった。
寝台が一台、その向こうにはテレビを乗せた棚があり、手前側には点滴をぶら下げるための点滴スタンド、心電計が並んでいる。
「病室、でしょうか」
「そうみたいだねえ」
件の少年は寝台に腰掛け、カメラに向かってぎこちない笑顔を向けていた。やせ細っており、あまり健康そうには見えない。軽い症状ではないのだろう。しかし。
「彼は病死ではないですよね」
「うん。移植手術が成功して退院できたみたいだね。そして、記念すべき一日目の登校日に失踪してる」
一瞬、部屋の中が静まり返った。
彼の身に何が起こったのかは分からないが、なんと残酷なことだろう。
苦しい治療とリハビリに耐えて、ようやく普通の生活に戻れると思った矢先の事件だ。あまりにも痛ましい。
『彼の探し物ってなんなんでしょうね』
沈黙を破ったのは陽だった。そういえば彼は昨日、この少年が探し物をしていたとの情報をくれたのだった。
「それは、病院に行ってみたらわかるかな」
捜査資料には、彼がかつて入院していた病院名も記載されていた。
「でも、数年前の事件ですし、警察も散々聞き込みをしたのではないですか?」
「まあ、生きている人にはしたみたいだよ。でも俺たちが話を聞く相手は、生きている人たちじゃないからね」
寿幸が日常会話のように語る内容に、要は身震いをした。
『あっ、ねえ、要』
いつの間にやら寿幸の背後から捜査資料を覗き見ていた陽が驚いたような声を出した。
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