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学園抗争編
新しいバイト
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秋も深まり、町には獲れ立ての果物を使ったケーキが出回るようになった。
もっとも、スピカは高くて買えない上、ルヴィリエが「おごるよ」と言っても首を横に振って断ってしまったが。食堂では季節の野菜を使った料理を出してくれているおかげで、旬の味を味わうことができているので、なんとかなっている。
その中で、スピカは購買部でどうにか便箋を買って手紙を書こうとしているが、何度も書き損じている。
「うーん……」
学園アルカナに入ってひと月。
叔父のシュルマが心配しているだろうから手紙を書きたいが、なにをどう書けばいいのか迷って、自室で書けずに図書館で書いている。
いくら寮以外のありとあらゆるところに監視が施されているらしい学園アルカナでも、授業を受けることだけは推奨されているのだから、自習場所である図書館だったら多少なりともマシだろうというスピカの推測であった。大事なことは全部文字を通してやりとりをしているため、スピカが【運命の輪】だということは、アレスと革命組織の面々以外には今のところ漏れてはいない。
『拝啓 シュルマおじさん
お元気ですか。私は学園アルカナに入って元気に生活しています。
学園内に店どころか町があるのに驚き、大アルカナばかりいるために大アルカナが魔法をばんばん使うのに驚き、変わった人オンパレードな学園内に驚き、毎日驚き続けていましたけれど、さすがにひと月も驚き続けられないので、いい加減に慣れました。
友達もできました。
なにかと兄貴風を吹かせてくるアレスは、意地が悪いけれど全体的にはいい奴です。同じくスルトはなにかあったら全部実力行使で解決させようとするけれど、それ以外はなにかと気遣ってくれて優しいです。女友達のルヴィリエは男子に対しては冷たいけれど、女子の私には世話を焼いてくれて優しいです。
なんとか無事にやっていますから、どうかおじさんもお体に気をつけて教会で働いてください。私は本当に、大丈夫ですから。
スピカ』
毒にも薬にもならず、スピカが無事だということ以外、なにもわからない内容だが。この学園では寮以外でプライバシーがほぼない上、何故か【世界】は学園内のことを監視しているのだ。もしかしたら送った手紙だって中身を開封して覗き込むかもわからないので、当たり障りのないことしか書けなかった。
(とりあえず、おじさんには私の無事を知らせられたらいいとしても。次がなあ……)
スピカが現在悩んでいることは、大まかに言えば三つだった。
ひとつ。魔力量がなかなか増えない。
このひと月間、毎日のように魔力量を増やす特訓をしていた。さすがに毎朝行ったら授業中に魔力不足で倒れる恐れがあったために、寝る前に重点的に行っていたが、彼女の魔力量はなかなか増えることがなかった。
そもそも小アルカナとして育ってきたスピカは、自身のアルカナの秘匿以外にはほぼ魔力を使わず生活してきたのだから、増やすことも使うことも未だに下手くそだったのである。
ひとつ。授業がさっぱりわからない。
上記とも重なるが、そもそもスピカは王都出身ではないため、魔法に対して触れたことがほぼなく、王都では当たり前に習っていたことも知らないのだから、人よりも周回遅れで勉強しないといけなかった。そのためスピカは図書館で自習して遅れている分を取り戻さなかったら付いていくことすらできていないのである。
まだギリギリ落ちこぼれてはいないが、少し自習を怠ったらもう落とされそうなのだから、頑張るしかないのであった。
(まさかアレスにまで「俺が勉強教えてやろうか?」とからかわれるとは思わなかった……アレスだって平民仲間なのに……)
アレスに「なんでこんなのもわかんないの?」とストレートで言われるのも、ルヴィリエに「一緒に勉強しよう!」とナチュラルにわからない部分から勉強するのもストレスになるために、ひとりで勉強するしかなかった。
ひとりで勉強しても全然わからないから、どこかで勉強教えてくれる人を見繕いたいスピカである。
そして最後のひとつ。
「勉強もだけど、お金もだよ……」
あと一週間に控えたダンスパーティーだが、未だにスピカはドレスを見繕えていなかった。というより。
ドレスを買うお金が高過ぎて、二の足を踏んでいるのである。
そもそもドレスだけを買えばいいものではなく、ドレスに合ったアクセサリーやら靴やらを買ったら、一度ぽっきりのバイト代だけでは足りない。だからと言って学園内でそんな割のいいバイトも見つからず、スピカは悩んでいた。
いくらルヴィリエが貴族の出だからとは言えど、お茶代だけならともかく、こんな高いものまでたかることはできない。スピカはそうひとりで困り果てていた。
「おや、いつも周りが賑やかな君は、今日はひとりでポエムの執筆かな?」
聞き覚えのある声が聞こえ、スピカは顔を上げる。
日頃は寮の食堂でばかり出会う彼が、学園内にいると違和感しかないが、いる以上はいるのだろう。
相変わらずの白塗りの化粧におかっぱ頭を揺らしながら、杖を携えてナブーがやってきて、スピカの隣に座った。
スピカは胡散臭く思いながらも、とりあえずシュルマ宛ての手紙を封に押し込んでから振り返った。
「実家に手紙を送りたかっただけですよぉ。ポエムじゃないです」
「ポエムを馬鹿にする気はないのだけれどねえ。しかし、ひとり浮かない顔じゃないか。君は友達が多いのに、頼らないんだね?」
「うーん……頼るところは頼りますけれど、勉強のことや魔力のことは私の問題ですし、友達にはお金を借りちゃ駄目だと思うんですよ」
「ふうむ?」
「んー……ナブー先輩はお金持ちだからわからないかもですし、実家が教会だからわかると言いますか……。お金って簡単に人間関係破壊しますから。借金するんだったらちゃんとした契約しないと駄目ですし、友達だからって甘えるのはよくないと思うんですよ」
貴族の金勘定はどうなっているのかは知らないが、教会への寄付で高圧的になっている商家やら、懺悔にやってきた人々がお金の貸し借りで人間関係を壊していっているのを見ていたスピカは、折角できた友達をそんなことでなくしたくはなかった。
それにナブーは「なるほどなるほど……」と頷く。
「そうかい。ならわたしの店で働くかい?」
「わたしの店って……ナブー先輩の店って町ですか? 私……貴族相手に仕事なんてできるのかなあ」
町はほぼ貴族ご用達の店だし、スピカの感覚ではそんな簡単に支払えない金額が動いているので、めまいを起こしそうなのだ。そんなところで働いて万が一のことがあったらと思うと、スピカは尻込みしているが、ナブーはからからと笑う。
「なに、君はあちこちからアルカナ集めで襲撃を受けても、きっちり迎撃して君の尊厳を守っているじゃないか。それだけ度胸があるのならば充分さ。わたしはこれでもね、君のことを買っているんだ」
「ナブー先輩……ん?」
一聞すると大変にいいことを言っているようだが、スピカはそこで喉を詰まらせた。
正面ではにこやかにナブーが笑っているが、スピカは聞き逃さなかった。
「待ってください。私、アルカナ集めしてる人たちから襲われた際、たしかに迎撃してますけど、どうしてそれをナブー先輩は知っているんですか?」
「そりゃあもう。見物していたからねえ」
「どうして助けてくれないんですか!? 普通に危なかったですし、最悪死ぬと思いましたけど!?」
「そりゃあもう。観戦しているのに手を出すのはどちらに対してもフェアではないだろう?」
「後輩が、可愛くないんですかね!?」
「そりゃあもう」
ナブーはにこにこにこと笑った。
「これだけ鑑賞するのが楽しいアルカナ同士の戦いは、久しぶりだと思っているよ?」
(駄目だこの人、早くなんとかしないと)
そうスピカは思ったが、口にしなかった。
どうしてナブーのことを、生徒会も五貴人も革命組織さえも仲間にしたがらないのか、よくわかった。
こんな愉快犯な人を仲間に引き入れたら、なにをどう引っかき回されるかわかったもんじゃないからだ。
スピカは悩む。バイトはしたい。ものすごくしたい。が、この人の元でバイトして大丈夫なんだろうか。しかし彼は一応は豪商の家の人間だと聞いているから、彼自身はともかく彼の実家は信用できないだろうか。
ナブーの人間性と当面のパーティー用の資金を天秤にかけ、皆と一緒にパーティーに出たいのほうが天秤を傾かせた。
「……危ないこととか、したくないです」
「そりゃあもう、アルカナ集めをしたいって面子が客人にでもならない限り、危ないことにはならないと思うよ? 町で暴れたら普通に生徒会執行部が飛んでくるから、生徒か執行部を敵に回したい生徒もそう多くはないと思うがね」
「貴族の人たちの相手ができるかどうかは、わかりません」
「君は最低限の敬語は使えるみたいだしね、それだけしゃべれるんだったら充分さ」
「ぶっちゃけた話、なんの仕事ですか?」
「うん、うちの服飾店の店員をして欲しいんだよ。ほとんどは既に注文していた服を取りに来るだけだし、ほとんどの客人は生徒が連れてきている使用人だから、生徒と直接話をしなくてもいいと思うよ」
ここまで聞けば、さすがに何度も何度も襲撃を受けているスピカからも安心だという気持ちが傾いてくる。
(さすがに生徒会も、大アルカナじゃない使用人さんたちを危ない目に遭わせないだろうし、生徒だって生徒会執行部を的に回したがらないよね……革命組織じゃあるまいし。それに貴族の接客だったら怖いと思っていたけれど、使用人さんたちだったら多少はましそうだし……うん)
スピカはナブーに対して、ぺこりと頭を下げた。
「お仕事したいですし、お金が欲しいです。どうぞよろしくお願いします」
「うん、よろしく頼むよ。是非とも。さて、フロイライン。そろそろ寮に帰ろうか」
「あ、はい」
こうして新しいアルバイトを取り付けたスピカ。
しかしまたも厄介ごとのほうが彼女のほうに襲いかかってくるとは、この時点では彼女も気付いてはいない。
もっとも、スピカは高くて買えない上、ルヴィリエが「おごるよ」と言っても首を横に振って断ってしまったが。食堂では季節の野菜を使った料理を出してくれているおかげで、旬の味を味わうことができているので、なんとかなっている。
その中で、スピカは購買部でどうにか便箋を買って手紙を書こうとしているが、何度も書き損じている。
「うーん……」
学園アルカナに入ってひと月。
叔父のシュルマが心配しているだろうから手紙を書きたいが、なにをどう書けばいいのか迷って、自室で書けずに図書館で書いている。
いくら寮以外のありとあらゆるところに監視が施されているらしい学園アルカナでも、授業を受けることだけは推奨されているのだから、自習場所である図書館だったら多少なりともマシだろうというスピカの推測であった。大事なことは全部文字を通してやりとりをしているため、スピカが【運命の輪】だということは、アレスと革命組織の面々以外には今のところ漏れてはいない。
『拝啓 シュルマおじさん
お元気ですか。私は学園アルカナに入って元気に生活しています。
学園内に店どころか町があるのに驚き、大アルカナばかりいるために大アルカナが魔法をばんばん使うのに驚き、変わった人オンパレードな学園内に驚き、毎日驚き続けていましたけれど、さすがにひと月も驚き続けられないので、いい加減に慣れました。
友達もできました。
なにかと兄貴風を吹かせてくるアレスは、意地が悪いけれど全体的にはいい奴です。同じくスルトはなにかあったら全部実力行使で解決させようとするけれど、それ以外はなにかと気遣ってくれて優しいです。女友達のルヴィリエは男子に対しては冷たいけれど、女子の私には世話を焼いてくれて優しいです。
なんとか無事にやっていますから、どうかおじさんもお体に気をつけて教会で働いてください。私は本当に、大丈夫ですから。
スピカ』
毒にも薬にもならず、スピカが無事だということ以外、なにもわからない内容だが。この学園では寮以外でプライバシーがほぼない上、何故か【世界】は学園内のことを監視しているのだ。もしかしたら送った手紙だって中身を開封して覗き込むかもわからないので、当たり障りのないことしか書けなかった。
(とりあえず、おじさんには私の無事を知らせられたらいいとしても。次がなあ……)
スピカが現在悩んでいることは、大まかに言えば三つだった。
ひとつ。魔力量がなかなか増えない。
このひと月間、毎日のように魔力量を増やす特訓をしていた。さすがに毎朝行ったら授業中に魔力不足で倒れる恐れがあったために、寝る前に重点的に行っていたが、彼女の魔力量はなかなか増えることがなかった。
そもそも小アルカナとして育ってきたスピカは、自身のアルカナの秘匿以外にはほぼ魔力を使わず生活してきたのだから、増やすことも使うことも未だに下手くそだったのである。
ひとつ。授業がさっぱりわからない。
上記とも重なるが、そもそもスピカは王都出身ではないため、魔法に対して触れたことがほぼなく、王都では当たり前に習っていたことも知らないのだから、人よりも周回遅れで勉強しないといけなかった。そのためスピカは図書館で自習して遅れている分を取り戻さなかったら付いていくことすらできていないのである。
まだギリギリ落ちこぼれてはいないが、少し自習を怠ったらもう落とされそうなのだから、頑張るしかないのであった。
(まさかアレスにまで「俺が勉強教えてやろうか?」とからかわれるとは思わなかった……アレスだって平民仲間なのに……)
アレスに「なんでこんなのもわかんないの?」とストレートで言われるのも、ルヴィリエに「一緒に勉強しよう!」とナチュラルにわからない部分から勉強するのもストレスになるために、ひとりで勉強するしかなかった。
ひとりで勉強しても全然わからないから、どこかで勉強教えてくれる人を見繕いたいスピカである。
そして最後のひとつ。
「勉強もだけど、お金もだよ……」
あと一週間に控えたダンスパーティーだが、未だにスピカはドレスを見繕えていなかった。というより。
ドレスを買うお金が高過ぎて、二の足を踏んでいるのである。
そもそもドレスだけを買えばいいものではなく、ドレスに合ったアクセサリーやら靴やらを買ったら、一度ぽっきりのバイト代だけでは足りない。だからと言って学園内でそんな割のいいバイトも見つからず、スピカは悩んでいた。
いくらルヴィリエが貴族の出だからとは言えど、お茶代だけならともかく、こんな高いものまでたかることはできない。スピカはそうひとりで困り果てていた。
「おや、いつも周りが賑やかな君は、今日はひとりでポエムの執筆かな?」
聞き覚えのある声が聞こえ、スピカは顔を上げる。
日頃は寮の食堂でばかり出会う彼が、学園内にいると違和感しかないが、いる以上はいるのだろう。
相変わらずの白塗りの化粧におかっぱ頭を揺らしながら、杖を携えてナブーがやってきて、スピカの隣に座った。
スピカは胡散臭く思いながらも、とりあえずシュルマ宛ての手紙を封に押し込んでから振り返った。
「実家に手紙を送りたかっただけですよぉ。ポエムじゃないです」
「ポエムを馬鹿にする気はないのだけれどねえ。しかし、ひとり浮かない顔じゃないか。君は友達が多いのに、頼らないんだね?」
「うーん……頼るところは頼りますけれど、勉強のことや魔力のことは私の問題ですし、友達にはお金を借りちゃ駄目だと思うんですよ」
「ふうむ?」
「んー……ナブー先輩はお金持ちだからわからないかもですし、実家が教会だからわかると言いますか……。お金って簡単に人間関係破壊しますから。借金するんだったらちゃんとした契約しないと駄目ですし、友達だからって甘えるのはよくないと思うんですよ」
貴族の金勘定はどうなっているのかは知らないが、教会への寄付で高圧的になっている商家やら、懺悔にやってきた人々がお金の貸し借りで人間関係を壊していっているのを見ていたスピカは、折角できた友達をそんなことでなくしたくはなかった。
それにナブーは「なるほどなるほど……」と頷く。
「そうかい。ならわたしの店で働くかい?」
「わたしの店って……ナブー先輩の店って町ですか? 私……貴族相手に仕事なんてできるのかなあ」
町はほぼ貴族ご用達の店だし、スピカの感覚ではそんな簡単に支払えない金額が動いているので、めまいを起こしそうなのだ。そんなところで働いて万が一のことがあったらと思うと、スピカは尻込みしているが、ナブーはからからと笑う。
「なに、君はあちこちからアルカナ集めで襲撃を受けても、きっちり迎撃して君の尊厳を守っているじゃないか。それだけ度胸があるのならば充分さ。わたしはこれでもね、君のことを買っているんだ」
「ナブー先輩……ん?」
一聞すると大変にいいことを言っているようだが、スピカはそこで喉を詰まらせた。
正面ではにこやかにナブーが笑っているが、スピカは聞き逃さなかった。
「待ってください。私、アルカナ集めしてる人たちから襲われた際、たしかに迎撃してますけど、どうしてそれをナブー先輩は知っているんですか?」
「そりゃあもう。見物していたからねえ」
「どうして助けてくれないんですか!? 普通に危なかったですし、最悪死ぬと思いましたけど!?」
「そりゃあもう。観戦しているのに手を出すのはどちらに対してもフェアではないだろう?」
「後輩が、可愛くないんですかね!?」
「そりゃあもう」
ナブーはにこにこにこと笑った。
「これだけ鑑賞するのが楽しいアルカナ同士の戦いは、久しぶりだと思っているよ?」
(駄目だこの人、早くなんとかしないと)
そうスピカは思ったが、口にしなかった。
どうしてナブーのことを、生徒会も五貴人も革命組織さえも仲間にしたがらないのか、よくわかった。
こんな愉快犯な人を仲間に引き入れたら、なにをどう引っかき回されるかわかったもんじゃないからだ。
スピカは悩む。バイトはしたい。ものすごくしたい。が、この人の元でバイトして大丈夫なんだろうか。しかし彼は一応は豪商の家の人間だと聞いているから、彼自身はともかく彼の実家は信用できないだろうか。
ナブーの人間性と当面のパーティー用の資金を天秤にかけ、皆と一緒にパーティーに出たいのほうが天秤を傾かせた。
「……危ないこととか、したくないです」
「そりゃあもう、アルカナ集めをしたいって面子が客人にでもならない限り、危ないことにはならないと思うよ? 町で暴れたら普通に生徒会執行部が飛んでくるから、生徒か執行部を敵に回したい生徒もそう多くはないと思うがね」
「貴族の人たちの相手ができるかどうかは、わかりません」
「君は最低限の敬語は使えるみたいだしね、それだけしゃべれるんだったら充分さ」
「ぶっちゃけた話、なんの仕事ですか?」
「うん、うちの服飾店の店員をして欲しいんだよ。ほとんどは既に注文していた服を取りに来るだけだし、ほとんどの客人は生徒が連れてきている使用人だから、生徒と直接話をしなくてもいいと思うよ」
ここまで聞けば、さすがに何度も何度も襲撃を受けているスピカからも安心だという気持ちが傾いてくる。
(さすがに生徒会も、大アルカナじゃない使用人さんたちを危ない目に遭わせないだろうし、生徒だって生徒会執行部を的に回したがらないよね……革命組織じゃあるまいし。それに貴族の接客だったら怖いと思っていたけれど、使用人さんたちだったら多少はましそうだし……うん)
スピカはナブーに対して、ぺこりと頭を下げた。
「お仕事したいですし、お金が欲しいです。どうぞよろしくお願いします」
「うん、よろしく頼むよ。是非とも。さて、フロイライン。そろそろ寮に帰ろうか」
「あ、はい」
こうして新しいアルバイトを取り付けたスピカ。
しかしまたも厄介ごとのほうが彼女のほうに襲いかかってくるとは、この時点では彼女も気付いてはいない。
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