へっぽこ人形師は完全無欠な彼氏が欲しい

石田空

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人形のつくりかた

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 こうして、私は教会で人形づくり教室を開くこととなった。教会の神官は最初は驚いたように聞いていたものの「魔女は今でも普通に郊外にいるから」「今は人形師として生活している人たちが、最初の仕事として魔女人形をつくるのはさすがに抵抗がある」という旨を話したら、意外なほどに親身になって聞いてくれた。

「そうですねえ……大昔こそ、魔女狩りが行われましたけど、今はそんな時代じゃありませんし。人形を焼くのは、せめて自分たちでつくったほうがよろしいですね」
「はい……ありがとうございます」
「いえいえ。こちらこそ、考えればわかる話でしたのに行事でしたから惰性で続けておりました。ありがとうございます」

 若い神官は思っているより柔軟性があった。

「そっかあ……」

 シリルさんに何気なく言われたことが、少しだけくすぐったい。
 私は王都に逃げてきたけれど、それでもまだ、ほんの少し人間が怖いんだ。店のカウンター越しにしゃべるのだったら、そこまで怖くはない。でも、そこから一歩踏み出すのは、同じ人形師たち以外はちょっと怖い。
 昔はもうちょっとだけ尊敬されて、もうちょっとだけ自由だったけれど、それでもずっと魔女は攻撃されてきた。でも今はそんな時代じゃない。それがわかっただけでも、私にとっては温かい。
 こうして、私は夏至祭に合わせて、材料を持ち込んで人形づくりを教えることとなった。
 意外なことに、婦人会だけでなく、地元の子供たち、暇を持て余している隠居済みの老人と、比較的バリエーション豊かに参加者が来てくれた。
 本当は服だってミシンで縫うし、人形だってもっと整えるけれど、今回は教えやすいように全部紐で結ぶやりかたを教えることになった。

「これもやすの?」
「そう、燃やすの」
「人形もやしたらいたくない?」
「そうだねえ、痛いかもしれないね」

 教会に来てくれた子供たちは、皆スポンジのようによく作り方を吸収して、オリジナルの人形をつくってくれた。
 本当に時代が変わったんだなあと、しんみりとしてしまった。
 赤い髪、そばかす、魔女っぽい格好。それのせいでさんざん苦渋を舐めていたはずなのに、王都の人たちは本当に気にも留めないし、魔女人形づくりも熱心に行ってくれる。結局夏至に使う人形は、人型サイズの大ぶりなものから、もっと小さくて可愛い人形になった。そのほうが燃えやすいし、罪悪感がないからだ。
 昔は魔女サイズの人形を燃やすのが観光的にもよかったらしいが、今はこのご時世だ。おまけに教会で教室を開いて参加した子供たちが一生懸命つくったものを燃やすほうが、なんとなく和み要素がある。
 もしかしたら、大昔の魔女狩りの再現ではなく、また別の祭りに変わるかもしれないと、私はそれを願っている。
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