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呪いの先を探り出せ
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枯草熱の症状は、少し鼻水が出た程度で熱も咳もなく、念のために食事を私室で食べる以外にはなにも問題がなかった。
出してくれたのは、野菜のポタージュにパンだった。それを用意しながらエリゼさんが教えてくれた。
「バジルから、あなたの症状は大丈夫かとひどく気を揉んでおりました。原因はおそらくは生の果物を拭くだけだったからだろうと。洗ったものならば、そこまで気にすることなく食べられましたし、屋敷の人間も無事です」
「そうですか……あまりバジルさんを責めないでくださいね」
野菜を洗う、皮を剥く、それだけで充分枯草熱から遠ざかるはずなんだ。果物の場合は、そのまんま食べるものが多いから、実をあまり水っぽくしないように洗わないで布でそのまま拭くだけで終わってしまう場合が多いから、そこで私がかかってしまったんだろう。
鼻水も既に治まったし、そこまでたくさんの反応はなかったんだろうけど。
問題は枯草熱の原因を潰さないことには、どうにもならないってこと。風評被害はあとで考えるにしても、枯草熱の原因を探さないと、今はクレージュ領の人たちは無事でも、いつ発症するかがわからない。
私は食べながらエリゼさんに尋ねた。
「あのう、神殿のほうに呪いの発症者はどれだけ運ばれたか確認取れますか?」
「一応は確認しますが。どうなさるおつもりで?」
「この土地の人たちが枯草熱にかかってないのに、よそから来た人たちだけかかっているということは、この土地にはなくて、よそから来た土地にはあるものが原因じゃないかと思いまして」
「……待ってください、奥様。普通はクレージュ領では慣れ親しんでいて、よその土地にはないものではないですか? 逆ではなくて、ですか?」
「ええっと。私も神殿で神官さんから教わったことですから、詳しくはないんですけれど」
きっと、聖女様みたいにもっとあちこちに出ずっぱりな人だったら、もっと正しい知識を有しているだろうし、一介の巫女レベルの知識では足りないんだろうけれど。それこそクレージュ領の神殿の神官さんの知識が必要なんだろうけれど、それは一旦置いておいて。
私は思い返しながら口を開いた。
「枯草熱の原因は花粉じゃないかと疑われているのはお話ししましたね」
「はい……ですから、花粉を浴び続けている人間には影響がないのかと」
「最初は神殿でも、枯草熱対策にわざと花粉を浴びせるべく花粉を溜め込んでそれをかける対処法が取られたそうなんですけれど、それで悪化の一途を辿ったので、危険だからと中断されたんです。むしろ逆に、花粉を落とすよう、浴びないように勤めた結果、完治はせずとも改善はしたそうです。クレージュ領では、枯草熱の季節ではなるべく肌を出さないようにと対策が取られていましたから、この土地の方が枯草熱にかからないのはおそらくそれが原因です」
「なんと……」
「ですから、クレージュ領の方々は枯草熱にはかかりにくいかと思います。ですけれど、よそから来た人たちはクレージュ領で枯草熱の対策が取れてないのです」
「それは、普通に顔を出し、皮膚もさらしているというクレージュ領の農民たちと逆の行動をしているからでは」
「枯草熱は鼻水高熱で困り果てて寝込む方も多いですから、原因がわかっていたら対策は取られるはずです。でもそれを取らずに発症しました。だから、なにが原因かを探らないといけません」
正直、よその土地の作物が原因で枯草熱になったんじゃ、こちらは対処しようがないし、風評被害だって退けられない。でも、先によそから来た人たちがなにが原因で枯草熱になっているかを調べないといけないのだ。
結果、エリゼさんがすぐに神殿に早馬を送ってくれたから、これでわかると信じたい。
本当に念のため、私は顔をよく洗ったあと、私室で眠ることとなったのだ。ジル様が心労にかからないといいけれど。私にはそれが気がかりだった。
****
ほとんど寝る必要はなくても「念のためです」とエリゼさんに念押しでベッドに押し込められ、私は寝る寝ないを繰り返していたら、扉が叩かれた。
「はい」
「シルヴィさん、大丈夫ですか」
「ジル様……はい、どうぞ」
私が上半身を起こすと、扉が開いてジル様が寄ってきた。そのままガバリと抱き締められる。
「あの、ジル様?」
「……正直、連絡をいただいたとき、血が引く思いがしました。本当に、無事でよかった……」
「ジル様こそ、今日の視察は」
「一応は。ただ、学者の皆さんにも伺いましたけれど、呪いがいよいよ広がってですね。今神殿は呪いで倒れた方々が運び込まれています」
「そんなに……ですか?」
「ええ。商人が倒れたのがまずいですね。それで呪いが広がっていると風潮されたら」
「……また風評被害ですか。あの、倒れた商人さんたちが普段どこから来たとか伺うことは可能でしょうか?」
「出身地とか、普段商売している範囲とかですか?」
「はい。神殿のほうには、エリゼさんが情報収集してくださいますよう早馬を出してはくれましたけれど」
「一応エリゼからの手紙で、確認を取ってみましょうか……」
そうこうしていたら、またしても扉が叩かれた。
「奥様、もう起きられていますか? おや、夫婦の蜜時をお邪魔して大変申し訳ございません」
私を抱き締めたままだったジル様が、顔を火照らせてぱっと手を離した。
一応夫婦なのに、本当になにも変わらないなあと思わず笑いながら、私はエリゼさんのほうを見た。
「神殿にだいぶ担ぎ込まれていると伺いましたが」
「ええ……神殿に枯草熱じゃないかと確認したところ、大方枯草熱じゃないかと」
「でも、枯草熱だとわからなかったということなんですね」
「はい。商人たちの素性については、神殿が荷造りから確認してきましたけれど、王都経由ですね」
「王都ですか……」
王都なんてきらびやかな場所から来た人たちが、皆こぞって枯草熱で倒れているって、いったいなんでだろう。
そもそも神殿にずっと暮らしていた人間が王都なんて知る訳もないから、想像だけでとにかくピカピカしているのだけ考えていたら、それにジル様が「ああ、王都ですか……」と少しだけ感慨深げに声を上げた。
「ジル様?」
「家督を継ぐ前に、三年ほど王都の学校に通っていたことがあります。今でもあのときにできた友人とは手紙でやり取りしていますが、皆それぞれ家督を継いで忙しく、まめに会いに行ったりはできませんね」
「それは素敵ですね……」
私は還俗した身の上だから、そう神殿でできた友達に会いに行く訳でもいかないし、そもそも結構時間をかけないと行けないしなあと思っていたら、エリゼさんはうんざりした顔をした。
「私はあそこ嫌いですよ。女はドレスを着ろ、男の前に立つなみたいなのが流行っていますから。うちだとそんなこと言ってられないじゃないですか」
「エリゼさんも王都に行かれたことがあるんですか?」
「ええ。執事教育の一環で一年だけ。私は旦那様と違っていい思い出ありませんから」
王都って女執事を嫌がるものなのかな。私がそんなこと考えていたら、珍しくエリゼさんの愚痴が続く。
「ええ。あそこ、どこもかしこもダリヤが咲いていて、目がチカチカするんですよね。それをいかに美しく咲かせるかで、皆が競争していて」
「え……ダリヤ?」
「一応王都の花ってことになっていますよ。まあ、土の都合上、この辺りじゃ咲いてませんけどね」
「ダリヤ……多分それです!」
「シルヴィさん?」
「ジル様、この辺りって、ブタクサ生えている場所ってありますか!?」
「ちょっと待ってください。ダリヤとブタクサのなんの関係が」
「これ、私も神殿で聞きかじった話なんですけれど。枯草熱にかかる人たちって、大概はブタクサで起こすんですよ」
「……この辺りはたしかに雑草として生えてはいますが、それでそこまで熱を出す人は……」
「王都の方々です! 王都でダリヤを触っている方々は、少し通りすがっただけでも発症する場合があります! ええっと、私よりも学者の方々に伺ってください!」
私の言葉になにか感じ入ったのか、ジル様は「エリゼ」と頼む。エリゼさんはすぐに学者の人たちの召喚の打診をはじめた。
もしかすると、もしかするかもしれない。枯草熱の突破が。
私は祈る思いで学者さんたちの召喚を待つことにした。
出してくれたのは、野菜のポタージュにパンだった。それを用意しながらエリゼさんが教えてくれた。
「バジルから、あなたの症状は大丈夫かとひどく気を揉んでおりました。原因はおそらくは生の果物を拭くだけだったからだろうと。洗ったものならば、そこまで気にすることなく食べられましたし、屋敷の人間も無事です」
「そうですか……あまりバジルさんを責めないでくださいね」
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鼻水も既に治まったし、そこまでたくさんの反応はなかったんだろうけど。
問題は枯草熱の原因を潰さないことには、どうにもならないってこと。風評被害はあとで考えるにしても、枯草熱の原因を探さないと、今はクレージュ領の人たちは無事でも、いつ発症するかがわからない。
私は食べながらエリゼさんに尋ねた。
「あのう、神殿のほうに呪いの発症者はどれだけ運ばれたか確認取れますか?」
「一応は確認しますが。どうなさるおつもりで?」
「この土地の人たちが枯草熱にかかってないのに、よそから来た人たちだけかかっているということは、この土地にはなくて、よそから来た土地にはあるものが原因じゃないかと思いまして」
「……待ってください、奥様。普通はクレージュ領では慣れ親しんでいて、よその土地にはないものではないですか? 逆ではなくて、ですか?」
「ええっと。私も神殿で神官さんから教わったことですから、詳しくはないんですけれど」
きっと、聖女様みたいにもっとあちこちに出ずっぱりな人だったら、もっと正しい知識を有しているだろうし、一介の巫女レベルの知識では足りないんだろうけれど。それこそクレージュ領の神殿の神官さんの知識が必要なんだろうけれど、それは一旦置いておいて。
私は思い返しながら口を開いた。
「枯草熱の原因は花粉じゃないかと疑われているのはお話ししましたね」
「はい……ですから、花粉を浴び続けている人間には影響がないのかと」
「最初は神殿でも、枯草熱対策にわざと花粉を浴びせるべく花粉を溜め込んでそれをかける対処法が取られたそうなんですけれど、それで悪化の一途を辿ったので、危険だからと中断されたんです。むしろ逆に、花粉を落とすよう、浴びないように勤めた結果、完治はせずとも改善はしたそうです。クレージュ領では、枯草熱の季節ではなるべく肌を出さないようにと対策が取られていましたから、この土地の方が枯草熱にかからないのはおそらくそれが原因です」
「なんと……」
「ですから、クレージュ領の方々は枯草熱にはかかりにくいかと思います。ですけれど、よそから来た人たちはクレージュ領で枯草熱の対策が取れてないのです」
「それは、普通に顔を出し、皮膚もさらしているというクレージュ領の農民たちと逆の行動をしているからでは」
「枯草熱は鼻水高熱で困り果てて寝込む方も多いですから、原因がわかっていたら対策は取られるはずです。でもそれを取らずに発症しました。だから、なにが原因かを探らないといけません」
正直、よその土地の作物が原因で枯草熱になったんじゃ、こちらは対処しようがないし、風評被害だって退けられない。でも、先によそから来た人たちがなにが原因で枯草熱になっているかを調べないといけないのだ。
結果、エリゼさんがすぐに神殿に早馬を送ってくれたから、これでわかると信じたい。
本当に念のため、私は顔をよく洗ったあと、私室で眠ることとなったのだ。ジル様が心労にかからないといいけれど。私にはそれが気がかりだった。
****
ほとんど寝る必要はなくても「念のためです」とエリゼさんに念押しでベッドに押し込められ、私は寝る寝ないを繰り返していたら、扉が叩かれた。
「はい」
「シルヴィさん、大丈夫ですか」
「ジル様……はい、どうぞ」
私が上半身を起こすと、扉が開いてジル様が寄ってきた。そのままガバリと抱き締められる。
「あの、ジル様?」
「……正直、連絡をいただいたとき、血が引く思いがしました。本当に、無事でよかった……」
「ジル様こそ、今日の視察は」
「一応は。ただ、学者の皆さんにも伺いましたけれど、呪いがいよいよ広がってですね。今神殿は呪いで倒れた方々が運び込まれています」
「そんなに……ですか?」
「ええ。商人が倒れたのがまずいですね。それで呪いが広がっていると風潮されたら」
「……また風評被害ですか。あの、倒れた商人さんたちが普段どこから来たとか伺うことは可能でしょうか?」
「出身地とか、普段商売している範囲とかですか?」
「はい。神殿のほうには、エリゼさんが情報収集してくださいますよう早馬を出してはくれましたけれど」
「一応エリゼからの手紙で、確認を取ってみましょうか……」
そうこうしていたら、またしても扉が叩かれた。
「奥様、もう起きられていますか? おや、夫婦の蜜時をお邪魔して大変申し訳ございません」
私を抱き締めたままだったジル様が、顔を火照らせてぱっと手を離した。
一応夫婦なのに、本当になにも変わらないなあと思わず笑いながら、私はエリゼさんのほうを見た。
「神殿にだいぶ担ぎ込まれていると伺いましたが」
「ええ……神殿に枯草熱じゃないかと確認したところ、大方枯草熱じゃないかと」
「でも、枯草熱だとわからなかったということなんですね」
「はい。商人たちの素性については、神殿が荷造りから確認してきましたけれど、王都経由ですね」
「王都ですか……」
王都なんてきらびやかな場所から来た人たちが、皆こぞって枯草熱で倒れているって、いったいなんでだろう。
そもそも神殿にずっと暮らしていた人間が王都なんて知る訳もないから、想像だけでとにかくピカピカしているのだけ考えていたら、それにジル様が「ああ、王都ですか……」と少しだけ感慨深げに声を上げた。
「ジル様?」
「家督を継ぐ前に、三年ほど王都の学校に通っていたことがあります。今でもあのときにできた友人とは手紙でやり取りしていますが、皆それぞれ家督を継いで忙しく、まめに会いに行ったりはできませんね」
「それは素敵ですね……」
私は還俗した身の上だから、そう神殿でできた友達に会いに行く訳でもいかないし、そもそも結構時間をかけないと行けないしなあと思っていたら、エリゼさんはうんざりした顔をした。
「私はあそこ嫌いですよ。女はドレスを着ろ、男の前に立つなみたいなのが流行っていますから。うちだとそんなこと言ってられないじゃないですか」
「エリゼさんも王都に行かれたことがあるんですか?」
「ええ。執事教育の一環で一年だけ。私は旦那様と違っていい思い出ありませんから」
王都って女執事を嫌がるものなのかな。私がそんなこと考えていたら、珍しくエリゼさんの愚痴が続く。
「ええ。あそこ、どこもかしこもダリヤが咲いていて、目がチカチカするんですよね。それをいかに美しく咲かせるかで、皆が競争していて」
「え……ダリヤ?」
「一応王都の花ってことになっていますよ。まあ、土の都合上、この辺りじゃ咲いてませんけどね」
「ダリヤ……多分それです!」
「シルヴィさん?」
「ジル様、この辺りって、ブタクサ生えている場所ってありますか!?」
「ちょっと待ってください。ダリヤとブタクサのなんの関係が」
「これ、私も神殿で聞きかじった話なんですけれど。枯草熱にかかる人たちって、大概はブタクサで起こすんですよ」
「……この辺りはたしかに雑草として生えてはいますが、それでそこまで熱を出す人は……」
「王都の方々です! 王都でダリヤを触っている方々は、少し通りすがっただけでも発症する場合があります! ええっと、私よりも学者の方々に伺ってください!」
私の言葉になにか感じ入ったのか、ジル様は「エリゼ」と頼む。エリゼさんはすぐに学者の人たちの召喚の打診をはじめた。
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