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第二章 ノアは絶対死なせない!

第十九話 ノアと

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 「明日は入学式ね。全寮制だなんて‥‥寂しくなるわ。お父様もノアがいなくなったら大変でしょうね。」

 私は扉が開いたままになっているノアの自室を覗き込み、話しかけた。

 教科書や衣類等はもう既に学院に運ばれている為、ノアは明日着て行く制服と筆記具の確認を行っていた。

 「4ヶ月たったら夏休みになるから、また帰ってくるよ。でもここを離れるのは寂しくなるな。1番辛いのはマリアンヌに会えなくなることだよ‥‥。」

 そう言うとノアはベッドの端に座り、微笑みながら私を手招きした。

 ‥‥あそこへ行くの!?

 「‥‥‥‥‥‥。」

 私が中に入るのを躊躇していると、ノアが「心配しなくても、何もしないよ?」と吹き出して笑った。

 ‥‥恥ずかしっ! ノアにキスされたことがあるから、変に意識してしまったわ。

 ‥‥私達、義兄妹なんだし、おかしなことがあるわけないよね‥‥?

 私はノアに渡すプレゼントを握りしめ、中に入った。ノアがベットの隣に座るよう促すので、ちょこんとそこに座る。

 ノアはこちらをじっと見つめて微笑んでいる。至近距離で見ると、肌は綺麗だし、容姿端麗で、改めて美男子なんだと実感した。

 ‥‥何故か緊張する‥‥。

 「あっ、ノア。これ私からのプレゼントよ。あまり上手くはないかもしれないけど、ノアに危険が及ばないよう安全祈願しながら刺繍したの。魔力も注いだから少しは役に立つかな?お守り代わりに持っていてくれると嬉しいな。」

 私はおずおずとノアの名前とカランコエの花が刺繍された青いハンカチを渡した。

 カランコエには『あなたを守る』『幸福を告げる』という花言葉のある星形の花。青いハンカチに映えるよう白で刺繍し、ノアの名前は銀で刺繍した。

 ノアは何も言わずハンカチを見つめ、指で刺繍をなぞっていた。

 「‥‥どうかな?やっぱり変‥‥?」

 ノアが何も言わないので不安になってノアの顔を覗き込んだ。その瞬間、ノアは私をぎゅっと抱きしめ、「ありがとう。大切にするよ。」と言った。

 ノアからは甘い石鹸のような香りがする。抱きしめられると、嫌な感じはせず、寧ろ安心する‥‥。これは幼い頃から一緒にいる兄妹だから‥‥?

 ‥‥明日からは一緒に過ごせないのね‥‥。寂しいな‥‥。

 暫くぎゅっと抱きしめられたままでいるとノアが「嫌じゃない?」と唐突に聞いてきた。「何が?」と聞き返すと、「僕にこうやって抱きしめられるのは嫌?」と言うので、嫌じゃないよと答えた。

 するとノアは「それじゃあ、これは?」と言い、私の顔に自身の顔を近付けてきた。

 !? ‥‥これは唇にキスするつもりかしら!?

 「‥‥これは駄目!」と慌てて唇を手で隠す。

 しかしノアはその手をそっとはがし、私の唇に優しく触れるキスをした。

 !?‥‥私達、義兄妹なのにいけないことしてるんじゃないかしら‥‥!?

 

 

 
 

 

 

 

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