影の聖女として頑張って来たけど、用済みとして追放された~真なる聖女が誕生したのであれば、もう大丈夫ですよね?~

まいめろ

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43話 襲来 1

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「アルゴン国王陛下、ルシエル王妃、今回の公式会談が有意義なものでなりますよう、私も努力してまいります」

「はい、お互いに国家繁栄を目指して参りましょう」

「はい、その通りですな」


 シャラハザード王国の首都アムリタ。その正門のところでは、両国の最重要の人物たちが集まっていた。アルゴン国王陛下とフレデリク国王陛下……その護衛たちも含めて、アムリタの住民たちは近づけない状況になっている。


 2日間の会談が終了し、二人の最高権力者が別れの挨拶をしている中、周囲は厳戒態勢になっている。私もその中に加わり、緊張感を持っていた。


「まあ、この場で襲って来る輩は皆無だとは思うが一応な」


 リキッド様は自慢の三重の壁を展開し、警戒に当たっている。彼を中心に重武装兵が3重に展開されている布陣……通称、三重の壁か。こうして見るのは久しぶりな気がする。


 彼ら以外にもシャラハザード王国の魔導士も警戒体制になっている。基本的にはそれぞれの国の重鎮を守ることを最優先に行動しているので、相手側の守りに頼るということはしない。それは私でも2年間、守護方陣を展開してきた経験で分かっている。


 両国の守りに加えて、私の守護方陣が正門周辺に展開されている。もちろん、中央宮殿をすっぽりと覆っている守護方陣も維持した上で。リキッド様が怪しくても、自らの国の重鎮を守ることには最大限の忠誠を誓っているはず。だからこそ、彼はあの位置に立てるわけで……。


「会談はもうすぐ完全に終了するが、こうして見ると……なんというか、壮観だな」

「はい、私もそう思います」


 レヴィン様はお互いの最高権力者が別れの挨拶を交わしている中、そのように言った。隣に立っている私も同意見だ。何事も起きないのが勿体ないと思えるほど、今、この場は安全地帯になっている。非常に不謹慎な発言になってしまうので、口には出さずに心の中に留めておくけれど。


「それではまた、いずれお会いしましょう、アルゴン国王陛下」

「畏まりました。またいずれ……フレデリク国王陛下」


 二人の挨拶は終了したみたい。結局、ユルゲン王子殿下からの正式な謝罪はなかったけど、彼は今、どのような気持ちなんだろう? そんなことを考え、彼らが馬車に乗ろうとしたその時だった。


「レヴィン王子殿下! 敵襲でございます!」

「なに……?」


 アムリタ正門に設けてある見張り台からの怒号だった。そこに詰めていた兵士の一人が大きな声で鐘を鳴らしている。


「きゃああああ!」


「魔物の襲来だ! みんな、家の中に入れ!」


 周囲を歩いていた国民はパニック状態になっていた。どうやら、正門の外から魔物が現れたみたいね。リンバール王国でもこういう事態はあった。


「不味いな……公式会談の時に。運が悪い……」


「丁度いい、三重の壁の力を見せられるチャンスが到来したというわけだ。平和的な話し合いで終わり、少々、退屈していたからな」


 リキッド様はなんだか問題のある発言をしていた。でも、状況が状況だけに不問になるでしょうね。それはともかくとして、正門の外からは魔物大群が迫って来ていた。想像よりも多い……しかも、強力な魔物も紛れているような……。


 会談の終了……その最後を飾るイベントは想定よりも大きそうだ。

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