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1話 公共の場にて
しおりを挟む私はダーテハル王国の子爵令嬢のライラ・レミウェスト。年齢は今年で17歳だ。
私はダーテハル王国の大貴族の一人である、ブルース・カインズ公爵と婚約することが出来た。ブルース様には第一夫人がいらっしゃるので、私は第二夫人候補として教育を受けているの立場だけれど。
子爵令嬢という貴族の中では中堅より下の立場で、公爵家に嫁ぐことが出来たのは奇跡と言えるだろう。私の両親も喜んでくれたし、私としても信じられなかった。
「ライラ、お前とは婚約破棄だ」
「えっ……?」
突然、そんな言葉を聞くまでは、私は確かに幸せだったのだと思う。思考が追い付かなかった……婚約破棄? おかしい……だってこの場所は舞踏会の会場なのに。
「子爵令嬢でしかないお前を妻に迎え入れるのはやはり、私の格的に問題がある。済まないが破棄という形を取らせてもらおうか」
「そ、そんな……! ブルース様……このような場所で、おっしゃる言葉ですか!?」
「どこで言おうと私の自由だろう。何を言っているのだ?」
「……!?」
今のブルース様は全く私の顔を見ていなかった……実際には視線は合っているのだけれど、何かがおかしい。彼は公共の場で行った婚約破棄を、微塵も悪いことだとは認識していないのだ。こんなことってあり得るのだろうか? 私が子爵令嬢だから? いえ、それにしても……。
「ぶ、ブルース様……!」
「そういうわけだ、それではな」
私の言葉などまったく聞かずに、彼は舞踏会会場から去って行った。残されたのは、私とその使用人……そして、周囲の貴族達による、蔑みの声だけだった。憐みの声もあったのだろうけれど、私の耳には少なくとも届いてはいなかった……。
「お、お嬢様……」
使用人の一人が私に声を掛けているけれど、私は言葉を返すことはしなかった。そんな余裕がなかったからだ。
……私はその後屋敷に戻り、お父様に婚約破棄の報告をした。しかし……。
「そうか……ライラ、それは本当に気の毒だったな」
「お、お父様……私は、私は……!」
とても厳しい辱めを受けてしまった……公共の場での婚約破棄など、本来はあり得ない事態だ。そのあり得ない事態を多くの貴族に見られてしまった。私は明日からどうやって過ごせば良いのだろうか。
「ライラよ、まずは静養をするのだ。おそらくお前に一番必要なのは、心の静養だろう」
「お父様、ありがとうございます。しかし、ブルース様の件は……」
「済まない、ライラ。ブルース・カインズ公爵は私よりもはるかに強権の持ち主だ。私程度では何かを訴えたとしても、簡単に潰されてしまうだろう……本当に済まない」
「いいえ、お父様のせいではありません。私がいけないのです……」
私はブルース様の第二夫人に適合しなかったのだ。だからこそ、婚約破棄をされてしまった。そのように考えないと、精神がおかしくなってしまいそうだった。
私は気を抜けばその場に崩れ落ちてしまうかのような状態だった。ギリギリの力を振り絞り、立っている状態だ。
あまりに衝撃的な婚約破棄は、このように言い渡されたのだった……。
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