上 下
7 / 25

東京へ

しおりを挟む
5月3日、憲法記念日の沖縄の天気は晴天だった。

千鶴が『東京へ行っちゃえ!』と言ってから4日後、麻琴は一人、機上の人となった。

東京へは那覇空港から東京羽田空港間の片道切符しか取れなかった。

那覇空港までの帰りの航空機チケットはいつ取っても良かった。

梨沙と何度も身体の関係もある。今さら、一緒に夜を過ごせないとは言わないだろう。

沖縄那覇空港から東京羽田空港へはおおよそ二時間半。

彼はこの旅行に心を踊らせていた。

「やっと。梨沙に会える。」

胸が熱くなる。この時をどれだけ待っていたか・・・

そう思うと涙さえ零れてくる。彼は那覇発東京行きの一番機。つまり、早朝の便で飛び立った。

午前11時には羽田空港に着ける。

この日、梨沙に会いに行くことは、梨沙本人には絶対に秘密だった。

彼女を驚かせたいというのもあったが彼女の生活感のある部屋をまた、見たいと思ったのだ。

彼女は片付けが上手とは言えなかった。梨沙の部屋に行ってベッド下を覗くとセクシーなミント色の下着の上下が転がっていたこともあったし、部屋も散らかっていた。

ーーそれでも、先輩を、梨沙を愛した。

根路銘の家はとにかく部屋を片付けること、身だしなみを整えること、学業に身を入れることを徹底させられた。

窮屈な家だった。逃げ出そうにも逃げられなかった。早く大学を卒業して自由を手に入れたかった。なんなら、大学は奨学金を借りて、アルバイトをしながら梨沙と生活するのもいい。

彼の家は旧家の家で代々、教員の家柄だった。父親も中学校の英語科の教員だった。母親とは職場結婚で中学社会科の教員だった。

両親は麻琴にも教員になることを望んでいたが、教員という職業も彼には疎ましく、根路銘の家を嫌で嫌で仕方がなかった。

そんなとき、梨沙が現れた。

梨沙は煌めく太陽のような笑顔で、麻琴にどんな嫌なことがあっても。

『なんくるないさ~(何でもないよ、大丈夫。大丈夫。)。』

慰めてくれた。彼は梨沙に甘えた。男の若さの捌け口として彼女自身が使われても。

「大丈夫。大丈夫。なんくるないさ~。」

といって、何度も何度もキスしてくれた。

その優しさで彼は梨沙を愛した。男にとっては、全くの都合のいい女に変耀した。

フェミニスト逹にとっては酷く、頭の痛い話だろうけれど。

飛行して一時間もすると雲の切れ間から雨がパラついてきて、着陸45分前になるとザーザー降りになった。房総半島を迂回して東京都内に入る頃には雨が更に強くなった。

ーー傘を持って来なかったな・・・

麻琴はそんな事を漫然と考えていた。

間もなく、梨沙のいる東京に着く。羽田空港に着いたら彼女の住む池袋までリムジンバスが出ているそうだ。電車より時間がかかるが、乗り継ぎがないため、田舎者の麻琴には都合がいい。

胸が高鳴るが、やはり、その前に空港のコンビニでビニール傘を買わなくてはならないだろう。ローソンがあると聞いている。

女性客室乗務員からシートベルトの着用のアナウンスがあった。一様に乗客達はカチリカチリとベルトを締めた。

今日は朝早い便だったが機内食が出ない事を麻琴は酷く残念に思っていた。

羽田空港の旅客ターミナルに着いたらMacに行こう。地下一階にあると聞いている。

いや、やはり、梨沙に会いに行くのが先だ。

麻琴はポシェットに入れていた半分食べられた残りのスニッカーズを口にした。











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

山縣藍子のくすぐりシリーズ

藍子
大衆娯楽
くすぐり掲示板したらばの【君の考えたくすぐりシーン】スレで連載していた大人気?(笑)シリーズの藍子のくすぐり小説です。

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

入れ替わり家族

廣瀬純一
大衆娯楽
家族の体が毎日入れ替わる話

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

バスト105cm巨乳チアガール”妙子” 地獄の学園生活

アダルト小説家 迎夕紀
青春
 バスト105cmの美少女、妙子はチアリーディング部に所属する女の子。  彼女の通う聖マリエンヌ女学院では女の子達に売春を強要することで多額の利益を得ていた。  ダイエットのために部活でシゴかれ、いやらしい衣装を着てコンパニオンをさせられ、そしてボロボロの身体に鞭打って下半身接待もさせられる妙子の地獄の学園生活。  ---  主人公の女の子  名前:妙子  職業:女子学生  身長:163cm  体重:56kg  パスト:105cm  ウェスト:60cm  ヒップ:95cm  ---  ----  *こちらは表現を抑えた少ない話数の一般公開版です。大幅に加筆し、より過激な表現を含む全編32話(プロローグ1話、本編31話)を読みたい方は以下のURLをご参照下さい。  https://note.com/adult_mukaiyuki/m/m05341b80803d  ---

処理中です...