閉じ込められたらくっついた

おりく

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タウンハウスで急転直下

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◇◇ジルベルト◇◇

その後の顔合わせは和やかに進んだ。
ジーンは忘れずにサリヤさまとミハエルさまに我らの魔法の指導を頼んでくれた。

そのときに「二人ともすげえ使い手だが指導中はおっかねえから気を付けろ」とコッソリ教えてくれたが、それをミハエルさまに聞きとがめられ脇腹を抓られて涙目になっていた。
珍しいジーンを見られてランディと一緒にほっこりした。

夕食の席でヴォルフラムさまは「シルヴィアと親戚になるのか…」とか、「ジーンは小さい頃でさえお父さまと結婚する!とは一度も言ってくれなかったのに、兄上とは結婚するのか…。」などと言って飲み過ぎ、サリヤさまに叱られていた。

クラウスさまとギュンターさまはそれを穏やかな表情で見守っていらっしゃったが、衝撃的なことも教えてくださった。

なんとヴォルフラムさまとジーン、父子揃って初恋はミハエルさまだそうだ。

さらにギュンターさまが教えてくださったが、恋を知らずにミハエルさまを見たサウザンライトの領民の初恋はミハエルさまに捧げられ、そのミハエルさまによって散らされていると。

なんという魔性か…と思ったが、当の本人が羞恥に震えているのを見て毒気を抜かれてしまった。




そして今はランディと共にジーンの私室に招かれている。

「お前らが伯父貴をオレの正室に推したって言ってたが、本当に後悔はねえのか?」

予想どおりのことを聞かれて、正直に答えて良いものか悩んでしまう。
そんなわたしより先にランディが口を開いた。

「後悔なんてしないよ。ただミハエルさまを正室に迎えても変わらずに愛して?そうしたらわたしも伴侶として頑張れるから。」

「そんなの当たり前だ。だがな、ラン。お前の気持ちは嬉しいが、頑張り過ぎて自滅はしてくれるなよ。先は長いんだから少しずつな。…ちゅ。」

「ん…頑張り過ぎたら止めてね、ジーン。」

ジーンに口づけを贈られて上機嫌なランディ。
対してわたしは心を曝すのが怖い。
だがジーンに嘘は言いたくない。

「わたしは……正直に言えば悔しい。ジーンを一人では支えきれぬことがな。しかし、それだけ大きな男の伴侶に望まれたのだから幸せでもある。自分のことだが、ままならぬとも思っている。」

「ジル…。」

「ミハエルさまが正室に相応しいと言ったことに偽りはない。だがそれ以上にあの方の想いを見てみぬふりはできなかった。
ミハエルさまはもう一人のわたしだ。わたしとてミハエルさまやその母上のように扱われてもおかしくない立場だった。
わたしは幸運にもそなたを見つけた。
生涯の友、ランディもいてくれる。
その幸運を他の『ヴァイオレット』……ミハエルさまにも分けて差し上げたいのだ。想い想われる幸せを知って欲しい。
『ヴァイオレット』は持て囃されるばかりで、そのほとんどは幸せにはなれぬ。それに少しでも逆らいたい。
こんなわたしの心のうちを知っても愛してくれるだろうか?」

「それも当たり前だ。正直に教えてくれてありがとうよ。前にも言ったがジル、お前はそのありようがキレイだ。気高くてな…。それを無くさずにいてくれ。オレはそんなお前を愛しているんだ、ジルベルト。…ちゅ…。」

「承知した。そなたに愛されるわたしでいるために邁進しよう。」

「ジーン、私は?」

「お前は勇士だ。オレのためなら何も恐れず前を向く。そのくせどエロくて可愛いお前を愛してる、ランドルフ。……ああ、腹黒いトコも含めてな。」

「ありがとうジーン。…ちゅっ。」

「さあ、ジーン。そろそろミハエルさまのところへ…。」

「……分かった。お前らは用意された客間に行くか?」

「私はジーンの私室ここに居たい。いいかな、ジーン?」

「構わねえよ。ジルはどうする?」

「わたしもここが良い。」

「じゃあ行ってくる。また明日な…ちゅっ、ちゅぅ。」

口づけをもらい、部屋を出るジーンの背中を見送ると、何とも言えない寂寥感に襲われる。
するとランディがわたしの手を取った。

「大丈夫だよ、ジル。ジーンはミハエルさまだけを愛したりしない。私たちのところにも帰ってくる。」

「なぜそう言い切れるのだ?」

ミハエルさまは美しい。
ジーンとて溺れてしまうかもしれない。
それなのにランディには自信があるようだ。

「私はねジル、ジーンの予想どおり、ジーンが神子の『父』に選ばれたと確信しているんだ。それって私たちのどちらか、もしくは両方が、神さまに届くほどジーンに愛されてるってことだろう?だからミハエルさまがどれだけ愛されても、私たちへの愛情が薄れることはない…。そう信じてる。」

「そうか…。いや、そうだな。」

我らが一方的にジーンを想っていた頃とは違うのだ。
ジーンは確かな愛情を向けてくれている。

「ね、ジル。今日はこのまま手を繋いで眠ろうか。ジーンのベッドで、子どもの頃みたいに。」

「……ありがとう、ランディ。」

自分も心中穏やかではないだろうに、わたしを慮ってくれて。

この日は夢も見ず眠り朝を迎えた。
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