37 / 59
タウンハウスで急転直下
02
しおりを挟む
◇◇ユージーン◇◇
ギルドの建物を出て認識阻害を展開すると同時に、マジックバッグから紙とペンを取り出す。
メッセージを書いてタウンハウスの祖父さんに向けて魔法で送った。
「待たせたな。オレん家まで少し遠いが我慢してくれ。」
「大丈夫だよ。それより急ぐなら身体強化して走ろうか?」
「いや、そこまではしなくていい。」
「では手を繋いでも良いだろうか?」
「いいぞ、ジル。ランも。」
二人の手を取り歩き出した。
タウンハウスが見えてくると、いつものように祖父さまが迎えに出てくてれていた。
認識阻害をしていても、祖父さまには何となくだがオレが近くに居ると分るらしい。
祖父さまが合図をすると使用人がやってきた。
そいつらに紛れて門をくぐってから認識阻害を解除する。
オレの存在を王家から隠すための工夫だ。
「ただいま、ギュンター。メッセージに書いたとおりオレの伴侶になる二人を連れてきた。祖父さんは?」
「おかえりなさいませ、若さま。先代さまはホールでソワソワしながらお待ちですよ。ミハエルさまもこちらに。当代さまと夫人もじきにいらっしゃるかと。」
「分かった。行くぞ、ジル、ラン。」
◇◇ジルベルト◇◇
ギュンターと呼ばれた家令のような男性に先導されて邸に入ると、壮年の男性が待っていた。
ホールにいらっしゃるのは御祖父様と言っていたが、御父上にしか見えない。
立ち姿もスッキリとした細身で若々しい方だ。
「急に来て悪いな。こっちはオレが伴侶に望むジルベルトとランドルフだ。あんたらのことだから二人の素性も知ってるんだろ?」
ジーンに頷いて答える男性に名乗りを上げる。
「ジルベルトと申します。」
「ランドルフと申します。平民となりましたので、二人とも家名はありません。」
「ジーン、失礼があってはならぬから教えて欲しい。こちらの御仁は御祖父様で間違い無いか?御父上ではなく?」
「ん?ああ、すげえ若く見えるがオレの祖父さんで間違いねえよ。」
「ジーンのおじいちゃんのクラウスじゃ。二人ともよろしくの。……ギュンター。」
「はい。皆様、応接室にご案内いたします。」
「まだその似合わねえ喋り方してんのかよ。誰がどう見たってオレのオヤジにしか見えねえから諦めろって!」
「いやじゃ!わし、ジーンのおじいちゃんじゃもん!」
「ジジイは「もん!」とか言わねえよ……。祖父さまを見習えって。」
「ぐぬぬ…。」
そんな孫と祖父の会話を聞きながら応接室に通され、勧められたソファに座る。
「さて、改めてじゃな。わしが先代辺境伯クラウス・サウザンライト、ジーンの祖父じゃ。」
御祖父様が後ろに控えていたギュンター殿に視線を送ると、ギュンター殿が隣に腰を下ろした。
「ギュンター・サウザンライトと申します。先代さまの内縁の伴侶で、ジーンの祖父でございます。」
内縁の伴侶……。
先ほどジーンは「ギュンター」と呼んでいた。
顔を会わせていないときは「祖父さま」と言っていたのに。
関係を秘さねばならぬとは、このお方にも辛い思いをさせてきたようだ。
何と我らの罪深いことか。
「わたしが生まれる前のこととはいえ、お二方にはなんとお詫びしてよいか…。」
「私たちの祖父が申し訳ございません。」
ランディと揃って頭を下げて謝罪する。
許されることではないと分かっているが、謝らずにはいられなかった。
「謝罪は受け取ろう。じゃが本来ならば君らが頭を下げる必要はない。これ以後は不要じゃ。良いな?」
「ご厚情を賜わり感謝いたします。」
「ジーンに尽くし支えることでご恩はお返しいたします。」
そのとおりだ、ランディ。
きっと皆に認められる伴侶になり、ジーンを幸せにしてみせよう。
ギルドの建物を出て認識阻害を展開すると同時に、マジックバッグから紙とペンを取り出す。
メッセージを書いてタウンハウスの祖父さんに向けて魔法で送った。
「待たせたな。オレん家まで少し遠いが我慢してくれ。」
「大丈夫だよ。それより急ぐなら身体強化して走ろうか?」
「いや、そこまではしなくていい。」
「では手を繋いでも良いだろうか?」
「いいぞ、ジル。ランも。」
二人の手を取り歩き出した。
タウンハウスが見えてくると、いつものように祖父さまが迎えに出てくてれていた。
認識阻害をしていても、祖父さまには何となくだがオレが近くに居ると分るらしい。
祖父さまが合図をすると使用人がやってきた。
そいつらに紛れて門をくぐってから認識阻害を解除する。
オレの存在を王家から隠すための工夫だ。
「ただいま、ギュンター。メッセージに書いたとおりオレの伴侶になる二人を連れてきた。祖父さんは?」
「おかえりなさいませ、若さま。先代さまはホールでソワソワしながらお待ちですよ。ミハエルさまもこちらに。当代さまと夫人もじきにいらっしゃるかと。」
「分かった。行くぞ、ジル、ラン。」
◇◇ジルベルト◇◇
ギュンターと呼ばれた家令のような男性に先導されて邸に入ると、壮年の男性が待っていた。
ホールにいらっしゃるのは御祖父様と言っていたが、御父上にしか見えない。
立ち姿もスッキリとした細身で若々しい方だ。
「急に来て悪いな。こっちはオレが伴侶に望むジルベルトとランドルフだ。あんたらのことだから二人の素性も知ってるんだろ?」
ジーンに頷いて答える男性に名乗りを上げる。
「ジルベルトと申します。」
「ランドルフと申します。平民となりましたので、二人とも家名はありません。」
「ジーン、失礼があってはならぬから教えて欲しい。こちらの御仁は御祖父様で間違い無いか?御父上ではなく?」
「ん?ああ、すげえ若く見えるがオレの祖父さんで間違いねえよ。」
「ジーンのおじいちゃんのクラウスじゃ。二人ともよろしくの。……ギュンター。」
「はい。皆様、応接室にご案内いたします。」
「まだその似合わねえ喋り方してんのかよ。誰がどう見たってオレのオヤジにしか見えねえから諦めろって!」
「いやじゃ!わし、ジーンのおじいちゃんじゃもん!」
「ジジイは「もん!」とか言わねえよ……。祖父さまを見習えって。」
「ぐぬぬ…。」
そんな孫と祖父の会話を聞きながら応接室に通され、勧められたソファに座る。
「さて、改めてじゃな。わしが先代辺境伯クラウス・サウザンライト、ジーンの祖父じゃ。」
御祖父様が後ろに控えていたギュンター殿に視線を送ると、ギュンター殿が隣に腰を下ろした。
「ギュンター・サウザンライトと申します。先代さまの内縁の伴侶で、ジーンの祖父でございます。」
内縁の伴侶……。
先ほどジーンは「ギュンター」と呼んでいた。
顔を会わせていないときは「祖父さま」と言っていたのに。
関係を秘さねばならぬとは、このお方にも辛い思いをさせてきたようだ。
何と我らの罪深いことか。
「わたしが生まれる前のこととはいえ、お二方にはなんとお詫びしてよいか…。」
「私たちの祖父が申し訳ございません。」
ランディと揃って頭を下げて謝罪する。
許されることではないと分かっているが、謝らずにはいられなかった。
「謝罪は受け取ろう。じゃが本来ならば君らが頭を下げる必要はない。これ以後は不要じゃ。良いな?」
「ご厚情を賜わり感謝いたします。」
「ジーンに尽くし支えることでご恩はお返しいたします。」
そのとおりだ、ランディ。
きっと皆に認められる伴侶になり、ジーンを幸せにしてみせよう。
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる