21 / 59
ギルドへの報告とジーンの憂鬱
03
しおりを挟む
◇◇ユージーン◇◇
ギルドを出たときには夕刻が迫っていて、デカいベッドと広い風呂付きの部屋を確保できるか不安だったが、どうにかなった。
いつも一人部屋だったから忘れていたが、そういう部屋は料金が高いからイベントなんかが無いと満室にはならないらしい。
宿で夕飯を済ませ、いざ話しをしようと思うと憂鬱な気分になる。
二人を悲しませることも伝えなくてはならないと思うと、なかなか踏ん切りがつかない。
どうやら自分で感じていた以上にジルとランが大切らしい。
「あー、じゃあ、そろそろ俺のことを話してもいいか?」
「ああ。」
「うん。」
「先ず、お前らが呼んでる俺の名前だが……悪いが本名じゃねえ。」
「「っ!」」
すまん、ショックだよな。
「だが偽名でもねえ。愛称だ。家名も教えたいが、今はまだ待ってくれ。理由は、俺の実家が厄介な相手から乗っ取りっつーか、いろいろと横槍を入れられてるからだ。それが片付いたらちゃんと教える。
それで、その厄介な相手だがなかなかの権力者でな。俺との関係を知られたらお前らの実家が黙っていないだろう。大事な『ヴァイオレット』でもあるしな。
俺の一族は親父が頭領だ。このまま行くと俺が継ぐことになる。だから最悪の場合、ジルとランには実家を捨ててもらうことになる。
その覚悟はあるか?」
「当然だ。わたしはジーンなしでは生きて行けぬ。」
「私もだ。ジーンと愛し合う幸せを知ってしまったら他のことは瑣末事だよ。それに私もジルも家を出ている。安心してほしい。」
「そのとおりだ。今は平民だから遠慮は必要ない。」
迷いなく言い切るなんてすげえな。
そんな二人に、これからもっと酷いことを告げなきゃならんのが心苦しい。
「ありがとうよ。だがそう言ってくれたからこそ言わなきゃならねえことがある。
俺の一族はちょっと特殊でな、絶対に血を絶やすワケにはいかないんだ。だが、さっき教えた厄介な相手のせいで親父の子は俺だけだし、俺の血は薄くはないが特別濃くもない。」
この先が言い難い。
俺は立場もあって割り切れるが、こいつらは……。
「だから……場合によっちゃあ、一族の中から相手を選んで次代を残さなきゃならなくなるかもしれん。俺にその気はないし、親父が無理強いすることもないから大丈夫だとは思う。
だが可能性がある以上、お前らに伝えないワケにはいかねえ。
それでも俺と来るか?」
「当然だ。」
「もちろん。」
即答かよ。
うれしいがちゃんと考えてんのか?
「確かにジーンに我ら以外の相手ができることを瑣事とは言えぬ。」
「だけど私たちは元貴族の『ヴァイオレット』だよ?誰よりもジーンの気持ちが分かる自信があるよ。今までどれだけ好意の欠片もない相手に子種をよこせ、孕ませろって言われてきたと思う?」
「ランディの言うとおりだ。ジーンに出会って、共に在るために我らは家との別離を決めた。そのおかげで望まぬ子を持たずにいられる。『ヴァイオレット』の苦しみから解放されるきっかけをくれたのはジーン……そなただ。」
「それに、ジーンのためになるなら受け入れられるよ。変わらずに愛してもらえるなら、だけれどね。」
「お前ら、二人揃ってイイ男だな。」
俺に褒められてうれしそうにしているところなんかは、こんなに可愛いのにな。
だがジルの表情が曇ってしまった。
「しかし大丈夫だっただろうか…?」
「何がだ?」
「いや、そのような立場にあるジーンを40日もダンジョンで過ごさせてしまった。考えなしに延長してしまったし、御父上は心配しているに違いない。」
「それなら心配いらねえ。親父は俺が生きてることを分かってるし、そのおかげで超級になれるなら安いもんだ。それにお前らみたいに優秀な伴侶を二人も連れて帰ってみろ。きっと喜ぶぜ。」
「「伴侶……。」」
二人揃ってポカーンとしてしまった。
マヌケなカオすんなよな。
そんなに変なこと言ったかね?
ああ、俺とのことだからか。
ホント、可愛いやつらだよ。
ギルドを出たときには夕刻が迫っていて、デカいベッドと広い風呂付きの部屋を確保できるか不安だったが、どうにかなった。
いつも一人部屋だったから忘れていたが、そういう部屋は料金が高いからイベントなんかが無いと満室にはならないらしい。
宿で夕飯を済ませ、いざ話しをしようと思うと憂鬱な気分になる。
二人を悲しませることも伝えなくてはならないと思うと、なかなか踏ん切りがつかない。
どうやら自分で感じていた以上にジルとランが大切らしい。
「あー、じゃあ、そろそろ俺のことを話してもいいか?」
「ああ。」
「うん。」
「先ず、お前らが呼んでる俺の名前だが……悪いが本名じゃねえ。」
「「っ!」」
すまん、ショックだよな。
「だが偽名でもねえ。愛称だ。家名も教えたいが、今はまだ待ってくれ。理由は、俺の実家が厄介な相手から乗っ取りっつーか、いろいろと横槍を入れられてるからだ。それが片付いたらちゃんと教える。
それで、その厄介な相手だがなかなかの権力者でな。俺との関係を知られたらお前らの実家が黙っていないだろう。大事な『ヴァイオレット』でもあるしな。
俺の一族は親父が頭領だ。このまま行くと俺が継ぐことになる。だから最悪の場合、ジルとランには実家を捨ててもらうことになる。
その覚悟はあるか?」
「当然だ。わたしはジーンなしでは生きて行けぬ。」
「私もだ。ジーンと愛し合う幸せを知ってしまったら他のことは瑣末事だよ。それに私もジルも家を出ている。安心してほしい。」
「そのとおりだ。今は平民だから遠慮は必要ない。」
迷いなく言い切るなんてすげえな。
そんな二人に、これからもっと酷いことを告げなきゃならんのが心苦しい。
「ありがとうよ。だがそう言ってくれたからこそ言わなきゃならねえことがある。
俺の一族はちょっと特殊でな、絶対に血を絶やすワケにはいかないんだ。だが、さっき教えた厄介な相手のせいで親父の子は俺だけだし、俺の血は薄くはないが特別濃くもない。」
この先が言い難い。
俺は立場もあって割り切れるが、こいつらは……。
「だから……場合によっちゃあ、一族の中から相手を選んで次代を残さなきゃならなくなるかもしれん。俺にその気はないし、親父が無理強いすることもないから大丈夫だとは思う。
だが可能性がある以上、お前らに伝えないワケにはいかねえ。
それでも俺と来るか?」
「当然だ。」
「もちろん。」
即答かよ。
うれしいがちゃんと考えてんのか?
「確かにジーンに我ら以外の相手ができることを瑣事とは言えぬ。」
「だけど私たちは元貴族の『ヴァイオレット』だよ?誰よりもジーンの気持ちが分かる自信があるよ。今までどれだけ好意の欠片もない相手に子種をよこせ、孕ませろって言われてきたと思う?」
「ランディの言うとおりだ。ジーンに出会って、共に在るために我らは家との別離を決めた。そのおかげで望まぬ子を持たずにいられる。『ヴァイオレット』の苦しみから解放されるきっかけをくれたのはジーン……そなただ。」
「それに、ジーンのためになるなら受け入れられるよ。変わらずに愛してもらえるなら、だけれどね。」
「お前ら、二人揃ってイイ男だな。」
俺に褒められてうれしそうにしているところなんかは、こんなに可愛いのにな。
だがジルの表情が曇ってしまった。
「しかし大丈夫だっただろうか…?」
「何がだ?」
「いや、そのような立場にあるジーンを40日もダンジョンで過ごさせてしまった。考えなしに延長してしまったし、御父上は心配しているに違いない。」
「それなら心配いらねえ。親父は俺が生きてることを分かってるし、そのおかげで超級になれるなら安いもんだ。それにお前らみたいに優秀な伴侶を二人も連れて帰ってみろ。きっと喜ぶぜ。」
「「伴侶……。」」
二人揃ってポカーンとしてしまった。
マヌケなカオすんなよな。
そんなに変なこと言ったかね?
ああ、俺とのことだからか。
ホント、可愛いやつらだよ。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる