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ギルドへの報告とジーンの憂鬱

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◇◇ユージーン◇◇

ギルドを出たときには夕刻が迫っていて、デカいベッドと広い風呂付きの部屋を確保できるか不安だったが、どうにかなった。
いつも一人部屋だったから忘れていたが、部屋は料金が高いからイベントなんかが無いと満室にはならないらしい。

宿で夕飯を済ませ、いざ話しをしようと思うと憂鬱な気分になる。
二人を悲しませることも伝えなくてはならないと思うと、なかなか踏ん切りがつかない。
どうやら自分で感じていた以上にジルとランが大切らしい。

「あー、じゃあ、そろそろ俺のことを話してもいいか?」

「ああ。」
「うん。」

「先ず、お前らが呼んでる俺の名前だが……悪いが本名じゃねえ。」

「「っ!」」

すまん、ショックだよな。

「だが偽名でもねえ。愛称だ。家名も教えたいが、今はまだ待ってくれ。理由は、俺の実家が厄介な相手から乗っ取りっつーか、いろいろと横槍を入れられてるからだ。それが片付いたらちゃんと教える。
それで、その厄介な相手だがなかなかの権力者でな。俺との関係を知られたらお前らの実家が黙っていないだろう。大事な『ヴァイオレット』でもあるしな。
俺の一族は親父が頭領だ。このまま行くと俺が継ぐことになる。だから最悪の場合、ジルとランには実家を捨ててもらうことになる。
その覚悟はあるか?」

「当然だ。わたしはジーンなしでは生きて行けぬ。」

「私もだ。ジーンと愛し合う幸せを知ってしまったら他のことは瑣末事だよ。それに私もジルも家を出ている。安心してほしい。」

「そのとおりだ。今は平民だから遠慮は必要ない。」

迷いなく言い切るなんてすげえな。
そんな二人に、これからもっと酷いことを告げなきゃならんのが心苦しい。

「ありがとうよ。だがそう言ってくれたからこそ言わなきゃならねえことがある。
俺の一族はちょっと特殊でな、絶対に血を絶やすワケにはいかないんだ。だが、さっき教えた厄介な相手のせいで親父の子は俺だけだし、俺の血は薄くはないが特別濃くもない。」

この先が言い難い。
俺は立場もあって割り切れるが、こいつらは……。

「だから……場合によっちゃあ、一族の中から相手を選んで次代を残さなきゃならなくなるかもしれん。俺にその気はないし、親父が無理強いすることもないから大丈夫だとは思う。
だが可能性がある以上、お前らに伝えないワケにはいかねえ。
それでも俺と来るか?」

「当然だ。」
「もちろん。」

即答かよ。
うれしいがちゃんと考えてんのか?

「確かにジーンに我ら以外の相手ができることを瑣事とは言えぬ。」

「だけど私たちは元貴族の『ヴァイオレット』だよ?誰よりもジーンの気持ちが分かる自信があるよ。今までどれだけ好意の欠片もない相手に子種をよこせ、孕ませろって言われてきたと思う?」

「ランディの言うとおりだ。ジーンに出会って、共に在るために我らは家との別離を決めた。そのおかげで望まぬ子を持たずにいられる。『ヴァイオレット』の苦しみから解放されるきっかけをくれたのはジーン……そなただ。」

「それに、ジーンのためになるなら受け入れられるよ。変わらずに愛してもらえるなら、だけれどね。」

「お前ら、二人揃ってイイ男だな。」

俺に褒められてうれしそうにしているところなんかは、こんなに可愛いのにな。

だがジルの表情が曇ってしまった。

「しかし大丈夫だっただろうか…?」

「何がだ?」

「いや、そのような立場にあるジーンを40日もダンジョンで過ごさせてしまった。考えなしに延長してしまったし、御父上は心配しているに違いない。」

「それなら心配いらねえ。親父は俺が生きてることを分かってるし、そのおかげで超級になれるなら安いもんだ。それにお前らみたいに優秀な伴侶を二人も連れて帰ってみろ。きっと喜ぶぜ。」

「「伴侶……。」」

二人揃ってポカーンとしてしまった。
マヌケなカオすんなよな。

そんなに変なこと言ったかね?
ああ、俺とのことだからか。
ホント、可愛いやつらだよ。
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