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6章 足りないのは我慢なのか適性なのか
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「事務職員としてはやっぱりこういう物があった方が安心だよな?」
「そうですね。やっぱり戦闘職の人には大きな声を出されただけでも結構怖いですし。手を出してくる人はほとんどいないですけど、もし殴られても痛い思いをしなくて済むのはありがたいです。アレックスはどう?」
「僕もありがたいと思います。ギルド内ならギルマスが来てくれるまで我慢すれば良いけど、通勤中に絡まれたこともあるので…。そんなときにこれがあれば安心ですし、個人的に購入したいくらいです。」
メルヴィンの質問に答えるルーシャとアレックスさんを見ると真剣な表情だ。
やっぱり自分より大きな人に良からぬことをされると怖いよな。
俺も経験したことがあるからよく分かる。
「そうなのね…。うちにも寮住まいじゃない子たちがいるから他人事じゃないわ。それに厨房の子たちもよく火傷してるのよ。お薬も常備しているけれど、忙しいときは手が離せないし治癒魔法みたいにすぐには治らないから…。」
「なあ、コレはオレやジェイデンよりお前さんにも必要なんじゃねえか?」
眉間に皺を刻みながら言われても結界なら自力で張れるしな。
ただ加減がまだ上手くできないけど、攻撃を防ぐなら問題無い。
「んー…子どもの頃なら必要だっただろうけど、今は要らないかな。いろいろ経験して自衛できるようになったし。あ、でもちゃんと警戒はするから。」
「それを分かってるなら煩く言わねえよ。」
厳しかったメルヴィンの表情が柔らかくなる。
成人男性としてこういうやり取りはくすぐったいけど、心が暖かくなる。
「ありがと。あとニコルたちにも世話になったから、治癒を付与したチャームを渡そうと思ってたんだ。だから俺があの三人に贈り物をしても誤解しないでくれ。」
「はいよ。」
「ええ、分かったわ。」
メルヴィンとジェイデンよりも先に他の人に贈り物するのはどうかと思っていたが、これで大丈夫だろう。
それに魔法使いのラーナだが、回復系の魔法が苦手らしく軽い切り傷が治せる程度だと本人が言っていた。
それでも治癒ができるだけすごいことなんだそうだ。
だからいざというときのために強力な治癒魔法を付与した魔石を使ったチャームを贈ることにした。
三人のチャームには化物の魔石をカットしたものを使っているから骨折くらいなら治せるし、切断されていなければ深い傷でも大丈夫だと思う。
その代わり魔石に負荷がかかるから使い捨てになるそうだ(フェイト談)。
「それでコレに付与されてる治癒魔法だが、どの程度の怪我を治せるんだ?」
「職員さん用のは怪我した直後で、パーツがあれば切断された指を接合できるってフェイトが言ってた。」
こちらは魔獣の魔石を使っているので、ニコルたちの物程効果は高くない。
だが、メルヴィンとジェイデンの見解は違ったようだ。
「ということは上級から特級の魔法薬と同等かしら。」
「だな。またやべえ魔道具を作ったモンだぜ…。しかも職員用のはって言ったな。オレとジェイデンのは違うのか?」
「うん。二人のはもげた腕がくっつくくらいだって。」
こちらも化物の魔石だから付与は強力だ。
しかもサイズも少し大きいから内包する魔力も多い。
「はぁっ!?………なあジェイデン、オレは喜んでいいのか頭を抱えるべきなのか分からなくなってきたぞ。」
「わたしもよ…。手放しでは喜べないけれど、シオンのやることだものね。もう愛されてるってことで良いんじゃないかしら。」
散々な言われようだが、どこか嬉しそうだ。
てことは喜んでくれているんだな…。
材料集めとか頑張った甲斐があったというものだ。
「そうだなぁ…。ああ、それとオレとジェイデンのバッジに使われる魔石の色が他のと違うのにも意味があったりすんのか?」
ふふふ…。
良くぞ聞いてくれたな、メルヴィン!
「ジェイデンの魔石は紫のグラジオラスに紫の魔石だとどうかと思って透明なんだ。グラジオラスとメルヴィンの魔石が紫な理由だけど、俺の二人に対する独占欲の表れだ。紫は俺の好きな色だから。」
「あら、それでうちの子たちのバッジのグラジオラスは淡いピンクなのね。」
「まあな。俺が贈る紫は特別なんだ。」
「ふふっ、そう思ってくれることが一番嬉しいわ。側に来てキスしてちょうだい。」
腕を広げたジェイデンに抱きついてキスをする。
「大好きよ、シオン……ちゅっ、ちゅっ、ちゅーぅ。」
「ん。俺も大好きだよ、ジェイデン。」
「こっちにも顔寄越せ……ちゅう。オレだってお前さんのこと……んちゅ。」
メルヴィンに抱き寄せられてキスをする。
「うん、ありがとうメルヴィン。大好きだ。」
はぁ…二人からのキス、幸せだ。
後日、戦鎚を持った面積広めのビキニアーマーを装備した女性体のハンターに声をかけられて何事かと驚いたが、なんとアレックスさんのパートナーさんだった。
ピンバッジの礼だと焼き菓子をくれて、律儀な人だと思っていたらアレックスさんの自慢が始まった。
俺も負けじとメルヴィンとジェイデンの自慢をしまくった。
それはアレックスさんが気付いて止めるまで続き、彼女とは通じるものがあったので友情が芽生えた。
思いがけず友人ができた日になった。
◇◇放置されたルーシャとアレックス◇◇
「ねえルーシャ、僕らは何を見せつけられているのかな?」
「アレックスは見たことなかった?あの三人はこれが通常よ。むしろギルマスが仕事中だから控え目だと思う!」
「ああ、だから受付の皆んなが騒ぐんだね。理由がよく分かったよ。僕も彼女とシたくなってきちゃった。」
「確か遠出しているんだよね?もうすぐ帰って来るんでしょ?」
「うん。早く会いたいなあ…。」
「恋人がいるだけ幸せよ!」
「そうだね。頑張れ、ルーシャ。モテるんだから選り好みしなきゃすぐだよ。」
「ううぅっ。そうだけど!そうじゃないのっ!素敵な人が良いの!」
✽✽✽✽✽
先日更新できなかったのに加えて話がなかなか進まないのでもう1話。
サッカー見ながら寝落ちする日々…。
眠いです。
「そうですね。やっぱり戦闘職の人には大きな声を出されただけでも結構怖いですし。手を出してくる人はほとんどいないですけど、もし殴られても痛い思いをしなくて済むのはありがたいです。アレックスはどう?」
「僕もありがたいと思います。ギルド内ならギルマスが来てくれるまで我慢すれば良いけど、通勤中に絡まれたこともあるので…。そんなときにこれがあれば安心ですし、個人的に購入したいくらいです。」
メルヴィンの質問に答えるルーシャとアレックスさんを見ると真剣な表情だ。
やっぱり自分より大きな人に良からぬことをされると怖いよな。
俺も経験したことがあるからよく分かる。
「そうなのね…。うちにも寮住まいじゃない子たちがいるから他人事じゃないわ。それに厨房の子たちもよく火傷してるのよ。お薬も常備しているけれど、忙しいときは手が離せないし治癒魔法みたいにすぐには治らないから…。」
「なあ、コレはオレやジェイデンよりお前さんにも必要なんじゃねえか?」
眉間に皺を刻みながら言われても結界なら自力で張れるしな。
ただ加減がまだ上手くできないけど、攻撃を防ぐなら問題無い。
「んー…子どもの頃なら必要だっただろうけど、今は要らないかな。いろいろ経験して自衛できるようになったし。あ、でもちゃんと警戒はするから。」
「それを分かってるなら煩く言わねえよ。」
厳しかったメルヴィンの表情が柔らかくなる。
成人男性としてこういうやり取りはくすぐったいけど、心が暖かくなる。
「ありがと。あとニコルたちにも世話になったから、治癒を付与したチャームを渡そうと思ってたんだ。だから俺があの三人に贈り物をしても誤解しないでくれ。」
「はいよ。」
「ええ、分かったわ。」
メルヴィンとジェイデンよりも先に他の人に贈り物するのはどうかと思っていたが、これで大丈夫だろう。
それに魔法使いのラーナだが、回復系の魔法が苦手らしく軽い切り傷が治せる程度だと本人が言っていた。
それでも治癒ができるだけすごいことなんだそうだ。
だからいざというときのために強力な治癒魔法を付与した魔石を使ったチャームを贈ることにした。
三人のチャームには化物の魔石をカットしたものを使っているから骨折くらいなら治せるし、切断されていなければ深い傷でも大丈夫だと思う。
その代わり魔石に負荷がかかるから使い捨てになるそうだ(フェイト談)。
「それでコレに付与されてる治癒魔法だが、どの程度の怪我を治せるんだ?」
「職員さん用のは怪我した直後で、パーツがあれば切断された指を接合できるってフェイトが言ってた。」
こちらは魔獣の魔石を使っているので、ニコルたちの物程効果は高くない。
だが、メルヴィンとジェイデンの見解は違ったようだ。
「ということは上級から特級の魔法薬と同等かしら。」
「だな。またやべえ魔道具を作ったモンだぜ…。しかも職員用のはって言ったな。オレとジェイデンのは違うのか?」
「うん。二人のはもげた腕がくっつくくらいだって。」
こちらも化物の魔石だから付与は強力だ。
しかもサイズも少し大きいから内包する魔力も多い。
「はぁっ!?………なあジェイデン、オレは喜んでいいのか頭を抱えるべきなのか分からなくなってきたぞ。」
「わたしもよ…。手放しでは喜べないけれど、シオンのやることだものね。もう愛されてるってことで良いんじゃないかしら。」
散々な言われようだが、どこか嬉しそうだ。
てことは喜んでくれているんだな…。
材料集めとか頑張った甲斐があったというものだ。
「そうだなぁ…。ああ、それとオレとジェイデンのバッジに使われる魔石の色が他のと違うのにも意味があったりすんのか?」
ふふふ…。
良くぞ聞いてくれたな、メルヴィン!
「ジェイデンの魔石は紫のグラジオラスに紫の魔石だとどうかと思って透明なんだ。グラジオラスとメルヴィンの魔石が紫な理由だけど、俺の二人に対する独占欲の表れだ。紫は俺の好きな色だから。」
「あら、それでうちの子たちのバッジのグラジオラスは淡いピンクなのね。」
「まあな。俺が贈る紫は特別なんだ。」
「ふふっ、そう思ってくれることが一番嬉しいわ。側に来てキスしてちょうだい。」
腕を広げたジェイデンに抱きついてキスをする。
「大好きよ、シオン……ちゅっ、ちゅっ、ちゅーぅ。」
「ん。俺も大好きだよ、ジェイデン。」
「こっちにも顔寄越せ……ちゅう。オレだってお前さんのこと……んちゅ。」
メルヴィンに抱き寄せられてキスをする。
「うん、ありがとうメルヴィン。大好きだ。」
はぁ…二人からのキス、幸せだ。
後日、戦鎚を持った面積広めのビキニアーマーを装備した女性体のハンターに声をかけられて何事かと驚いたが、なんとアレックスさんのパートナーさんだった。
ピンバッジの礼だと焼き菓子をくれて、律儀な人だと思っていたらアレックスさんの自慢が始まった。
俺も負けじとメルヴィンとジェイデンの自慢をしまくった。
それはアレックスさんが気付いて止めるまで続き、彼女とは通じるものがあったので友情が芽生えた。
思いがけず友人ができた日になった。
◇◇放置されたルーシャとアレックス◇◇
「ねえルーシャ、僕らは何を見せつけられているのかな?」
「アレックスは見たことなかった?あの三人はこれが通常よ。むしろギルマスが仕事中だから控え目だと思う!」
「ああ、だから受付の皆んなが騒ぐんだね。理由がよく分かったよ。僕も彼女とシたくなってきちゃった。」
「確か遠出しているんだよね?もうすぐ帰って来るんでしょ?」
「うん。早く会いたいなあ…。」
「恋人がいるだけ幸せよ!」
「そうだね。頑張れ、ルーシャ。モテるんだから選り好みしなきゃすぐだよ。」
「ううぅっ。そうだけど!そうじゃないのっ!素敵な人が良いの!」
✽✽✽✽✽
先日更新できなかったのに加えて話がなかなか進まないのでもう1話。
サッカー見ながら寝落ちする日々…。
眠いです。
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