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6章 足りないのは我慢なのか適性なのか
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改めてだが、俺の職業はハンターだ。
まだまだ駆け出しだけどな。
ありがたいことに討伐のウデを買われて、早くもBランクも目の前だ。
ランクアップのために護衛と採取依頼を熟さないといけないのだが、それよりもピンバッジに使う魔石が欲しい。
ということで優先して何件か魔獣の討伐依頼を受けた。
もちろん身体強化、重力魔法の練習も欠かしてはいないし、転移魔法の訓練も始めた。
中でも身体強化はいい感じに仕上がってきたと思う。
その間にフェイトに付与の相談をすると、助言をくれて作業もしてくれた。
しかしフェイトは本職の魔道具師、タダで手伝ってもらうわけにはいかない。
お礼は何が良いかと尋ねると、俺が作ったピンバッジが欲しいと言われたので、フェイトにも一つ作ることになった。
ちなみにこのピンバッジもレシピ登録することになった。
『コフレ』のアレンさんが「ウチのスタッフにも欲しいな」と言いだしたので、『コフレ』とフェイトと俺の名前で登録するらしい。
俺は欲しかった物はできたので、後はお任せだ。
結界が付与されたピンバッジは、確かに接客業には良さそうだし、俺の不労所得も増える。
これもハンターのランクアップにプラスになると良いのだが、ならないだろうなあ…。
いや、でも、社会貢献の部分では評価されそうだ。
それなら俺の嫁取りにはプラスになるな!
フェイトの指導で付与して気付いたが、指示されて魔法を使うのって楽だ。
猫足バスタブのこともそうだが、余計な事を考えたり、迷うのが良くないらしい。
使用者の願いを叶えるのが魔法だというから、細部の造りとか重量が…なんて考えずに、「メルヴィンと俺が二人で使える猫足バスタブが欲しい!」と単純に魔法を行使する方が良い結果になるのかもしれない。
さらにフェイトには瘴気を浄化する魔道具の開発を持ちかけてみた。
フェイトにいろいろと頼り過ぎている気もするが、案の定話に乗ってくれた。
ただ、教会に難癖をつけられるかもしれないので、俺がAランクハンターになるまでは二人の秘密にしてもらった。
Aランクになれば俺には手出ししにくいし、フェイトのことも守りやすくなるからな。
それに瘴気を吸い取る魔道具って、瘴気を集められる魔道具ってことだろ?
それを悪用するヤツら、絶対に居ると思うんだよ。
そいつらが事を起こしたとき、指揮を取って制圧するのはメルヴィンだ。
きっとジェイデンも作戦に参加する。
俺が側に居られないとき、俺の代わりに《浄化》する魔道具を二人に持っていてもらいたい。
備えあれば憂いなしとか、後悔先に立たずって言うし。
使うことがなければ俺の心配し過ぎだって笑ってくれればそれでいい。
ピンバッジが完成して、ジェイデンが休日、メルヴィンも時間が取れそうな日がやって来た。
余談かもしれないが、二人と使う剃刀も準備はできている。
ギルドに出勤するメルヴィンを見送りに行ったとき、「今日は一緒に行かねえのかよ」と少し寂しそうに言われて俺はすっかりご機嫌だ。
「後でジェイデンと一緒に行くから待ってて」と行ってらっしゃいのキスを贈ってメルヴィンを送り出し、忘れ物が無いか確認してからジェイデンのところへ。
それから家事を済ませたジェイデンと手を繋いでギルドに向かう。
「今日はどうしたの?」
「何がだ?」
「わざわざわたしをギルドに誘ってメルヴィンに会いに行くなんて珍しいじゃない?だから何があるのかなって。」
「ああ、ギルドと宿の従業員さんたちに作った物があるんだ。だからギルマスと宿のオーナーとして話を聞いてほしくて。ジェイデンにギルドに行ってもらうのは、二人同時に話したいと思ってる俺の我儘だけど。」
メルヴィンとジェイデン、二人のために作った物だ。
どちらかが先にじゃなくて、どうせなら一緒に贈りたい。
「あら、そんなこと気にしなくてもいいのよ?従業員たちのためにしてくれたことだもの。
それにこうして手を繋いで歩けるだけでも嬉しいわ。」
少し照れながらジェイデンが言う。
何回か一緒に街歩きしているのに、こんな些細なことを喜んでくれるなんてこっちまで嬉しくなってくる。
歳を重ねて歩けなくなるまで…いや、ジェイデンが歩けなくなったら俺が車椅子を押せばいいから、ずっと一緒に出掛けよう。
大好きな人と一緒だと、どうしてすぐに目的地に到着するのか…あっという間にもうギルドだ。
受付では今日もルーシャが元気いっぱいに迎えてくれた。
「おはようございます!アンジェラさんとシオンさんがお二人でいらっしゃるなんて、どうかされたんですか?」
「おはよう、ルーシャちゃん。」
「おはよう、ルーシャ。今日はギルマスに用があって来たんだ。来客中とかじゃなかったら呼んでもらえるか?あと、少し前に三下っぽいハンターに絡まれてた職員さんがいただろ?できたらその人も。ああ、ルーシャも来てくれると助かる。」
「ギルマスにってことは応接室の方が良いですか?」
「いや、ロビーのテーブルで十分だ。」
「分りました!少しお待ち下さいね!アレックス~!」
大きな声でアレックスさんとやらを呼びながら2階へと行ってしまった。
どうやら絡まれていた職員さんはアレックスさんというらしい。
少し困った顔でこっちに来てくれた。
お互いに自己紹介をしつつ、メルヴィンとルーシャを待った。
まだまだ駆け出しだけどな。
ありがたいことに討伐のウデを買われて、早くもBランクも目の前だ。
ランクアップのために護衛と採取依頼を熟さないといけないのだが、それよりもピンバッジに使う魔石が欲しい。
ということで優先して何件か魔獣の討伐依頼を受けた。
もちろん身体強化、重力魔法の練習も欠かしてはいないし、転移魔法の訓練も始めた。
中でも身体強化はいい感じに仕上がってきたと思う。
その間にフェイトに付与の相談をすると、助言をくれて作業もしてくれた。
しかしフェイトは本職の魔道具師、タダで手伝ってもらうわけにはいかない。
お礼は何が良いかと尋ねると、俺が作ったピンバッジが欲しいと言われたので、フェイトにも一つ作ることになった。
ちなみにこのピンバッジもレシピ登録することになった。
『コフレ』のアレンさんが「ウチのスタッフにも欲しいな」と言いだしたので、『コフレ』とフェイトと俺の名前で登録するらしい。
俺は欲しかった物はできたので、後はお任せだ。
結界が付与されたピンバッジは、確かに接客業には良さそうだし、俺の不労所得も増える。
これもハンターのランクアップにプラスになると良いのだが、ならないだろうなあ…。
いや、でも、社会貢献の部分では評価されそうだ。
それなら俺の嫁取りにはプラスになるな!
フェイトの指導で付与して気付いたが、指示されて魔法を使うのって楽だ。
猫足バスタブのこともそうだが、余計な事を考えたり、迷うのが良くないらしい。
使用者の願いを叶えるのが魔法だというから、細部の造りとか重量が…なんて考えずに、「メルヴィンと俺が二人で使える猫足バスタブが欲しい!」と単純に魔法を行使する方が良い結果になるのかもしれない。
さらにフェイトには瘴気を浄化する魔道具の開発を持ちかけてみた。
フェイトにいろいろと頼り過ぎている気もするが、案の定話に乗ってくれた。
ただ、教会に難癖をつけられるかもしれないので、俺がAランクハンターになるまでは二人の秘密にしてもらった。
Aランクになれば俺には手出ししにくいし、フェイトのことも守りやすくなるからな。
それに瘴気を吸い取る魔道具って、瘴気を集められる魔道具ってことだろ?
それを悪用するヤツら、絶対に居ると思うんだよ。
そいつらが事を起こしたとき、指揮を取って制圧するのはメルヴィンだ。
きっとジェイデンも作戦に参加する。
俺が側に居られないとき、俺の代わりに《浄化》する魔道具を二人に持っていてもらいたい。
備えあれば憂いなしとか、後悔先に立たずって言うし。
使うことがなければ俺の心配し過ぎだって笑ってくれればそれでいい。
ピンバッジが完成して、ジェイデンが休日、メルヴィンも時間が取れそうな日がやって来た。
余談かもしれないが、二人と使う剃刀も準備はできている。
ギルドに出勤するメルヴィンを見送りに行ったとき、「今日は一緒に行かねえのかよ」と少し寂しそうに言われて俺はすっかりご機嫌だ。
「後でジェイデンと一緒に行くから待ってて」と行ってらっしゃいのキスを贈ってメルヴィンを送り出し、忘れ物が無いか確認してからジェイデンのところへ。
それから家事を済ませたジェイデンと手を繋いでギルドに向かう。
「今日はどうしたの?」
「何がだ?」
「わざわざわたしをギルドに誘ってメルヴィンに会いに行くなんて珍しいじゃない?だから何があるのかなって。」
「ああ、ギルドと宿の従業員さんたちに作った物があるんだ。だからギルマスと宿のオーナーとして話を聞いてほしくて。ジェイデンにギルドに行ってもらうのは、二人同時に話したいと思ってる俺の我儘だけど。」
メルヴィンとジェイデン、二人のために作った物だ。
どちらかが先にじゃなくて、どうせなら一緒に贈りたい。
「あら、そんなこと気にしなくてもいいのよ?従業員たちのためにしてくれたことだもの。
それにこうして手を繋いで歩けるだけでも嬉しいわ。」
少し照れながらジェイデンが言う。
何回か一緒に街歩きしているのに、こんな些細なことを喜んでくれるなんてこっちまで嬉しくなってくる。
歳を重ねて歩けなくなるまで…いや、ジェイデンが歩けなくなったら俺が車椅子を押せばいいから、ずっと一緒に出掛けよう。
大好きな人と一緒だと、どうしてすぐに目的地に到着するのか…あっという間にもうギルドだ。
受付では今日もルーシャが元気いっぱいに迎えてくれた。
「おはようございます!アンジェラさんとシオンさんがお二人でいらっしゃるなんて、どうかされたんですか?」
「おはよう、ルーシャちゃん。」
「おはよう、ルーシャ。今日はギルマスに用があって来たんだ。来客中とかじゃなかったら呼んでもらえるか?あと、少し前に三下っぽいハンターに絡まれてた職員さんがいただろ?できたらその人も。ああ、ルーシャも来てくれると助かる。」
「ギルマスにってことは応接室の方が良いですか?」
「いや、ロビーのテーブルで十分だ。」
「分りました!少しお待ち下さいね!アレックス~!」
大きな声でアレックスさんとやらを呼びながら2階へと行ってしまった。
どうやら絡まれていた職員さんはアレックスさんというらしい。
少し困った顔でこっちに来てくれた。
お互いに自己紹介をしつつ、メルヴィンとルーシャを待った。
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