ダメな方の異世界召喚された俺は、それでも風呂と伴侶を愛してる

おりく

文字の大きさ
上 下
158 / 170
6章 足りないのは我慢なのか適性なのか

15

しおりを挟む
「次はわたしの番ね!ルーシャちゃんお願い。」

「はい、アンジェラさん。シオンさん、こちらをどうぞ。」

ギルドカードのような物とニ枚の書類、それにナイフとペンだ。
心当たりは無いし、何だろう。

「それはね、ハンターギルドと商業ギルドが管理運用している転移陣ゲートの使用許可通知よ。商会からの採取依頼や行商、商隊の護衛依頼を受けるならあった方が良いかと思って、転移陣の許可証ライセンスの取得を申請しておいたの。
後はシオンがそこにサインして、カードに血液を垂らすと転移陣が使えるようになるわ。」

「え…っと、申請って本人じゃなくてもできるのか?」

思わず出てきた言葉はこれだった。
元の世界じゃ本人抜きでそんなことできないよな。
こっちはそのへんはどうなんだ?
個人情報の扱いがガバガバだと『エンジェルスマイル』以外では気が抜けないのが辛い。

ジェイデンが善意で準備してくれているのは分かるが、ちょっと気持ちがついていかない。

あ、でもやっぱり転移魔法があるんだな!
俺にも使えるだろうか?

「わたしの説明が足りなかったわね、ごめんなさい。本人以外の申請は保証人に限りできるわ。そこにメルヴィンとわたしのサインがあるでしょう?
それでも本人の同意なく許可証ライセンスの発行はできないから安心してね。」

「それは分かった。でもこれ、手数料とか申請料金とかかかるんじゃないのか?」

「ハンターギルドの転移陣だけの許可証の相場で金貨1枚(100万円)ってトコだな。」

「金貨っ!?」

想像以上に高価いぞ!
しかも商業ギルドの分は入ってないのに金貨!

「それについてはオレがギルマスとして説明しよう。
お前さんなら分かると思うが、転移ってのは危険な魔法だ。人と物を一瞬で移動させられるってことは、犯罪や不正な武力行使に使われると被害がえらいことになる。
そのために最低限だが本人、家族、友人の犯罪歴や他にも必要なことを調査するんだ。
金貨1枚ってのも、それくらいポンと出せれば賄賂なんかに靡かねえ、コツコツ貯めるなら先を考える頭がある、ってことだろ?そんな感じでカネでなヤツをふるい落とすために設定されてる。
保証人は居なくても許可証は発行できるが信用度が上がる。特にお前さんは誘拐の被害者だから調査のやりようがねえ。オレらの名前で信用が買えるから安いモンだ。」

「それでね、本当は最初に言わなきゃいけなかったのだけれど、これは例の大皿の代金なの。フェイトちゃんとお値段の相談をしたときに、お安く見積もっても1枚につき大銀貨(10万円)の価値があるって結論になったわ。
でもあなたはきっとここまでの値段がつくとは考えていなかったんじゃないかしら?それでお金よりもあなたの役に立つもので支払うことにしたの。
あ、でも、誓ってお皿の代金よりも高価ではないわ。」

許可の通知書は二通だし、合わせて金貨2枚にならないのか?
皿が大銀貨1枚✕30枚なら金貨3枚だろ?
代金は付けた値段の半額って約束だったから、金貨1枚と大銀貨5枚か。
それだと許可証の方が高価いよな?

「あなたの考えていることは分かるわ。許可証の方が高価いと思っているのでしょう?」

「うん。違うのか?」

「ハンターギルドと商業ギルドに同時申請すると安く上がるんだ。重複する審査を省けるし、そもそもお前さんは調査する意味がねえから調査費もかかってねえ。
さらにオレとジェイデンが保証人だから、少しだが値引きされてる。
詳細は言えねえが、ジェイデンから聞いてる皿の代金よりも安いことは間違いねえ。
本当はジェイデンの名前だけでも十分なんだ。それでもオレが保証人になった理由が分かるか?」

うーん、何でだろう。
仲間はずれがイヤだった…とか?
そんなわけないか。
きっとギルマスとしてそっちの方が都合の良いことがあるのだろう。

「お前さんはまだCランクだが、化物を単騎で狩れるハンターだ。ってことは今後は遠方にも討伐に出てもらうことになる。
一応、一回限りの許可証もあるんだが、やたらと面倒な書類が何枚も必要でな。緊急時なんかは最悪だ。書類書かせたりそれを処理するよりも、オレが討伐に行った方が早いくらいだ。
許可証があれば必要なのは転移先を書いた書類が1枚だけだ。その書類さえ緊急時は事後で済む。
転移陣の危険性を考えれば手続きが複雑なのは仕方ねえことだが、ギルドを助けると思って許可証を持ってくれ。
まあ、メルヴィン・アレナド個人としては、オレらの願いを叶えるために頑張ってくれてる恋人に、できることは何でもしてやりてえって気持ちもある。もちろん犯罪とかギルドの規則に抵触するようなことはしねえけどな。」

俺に期待してそんなふうに思ってくれてるなんて…。
どうしよう、すごく嬉しい。

「メルヴィン…。ジェイデンも?」

「ええ。でもわたしはもっと自分勝手な理由もあるの。一番はあなたと離れている時間を少しでも減らしたくて…。
転移陣を使うにはね、許可証と、使用料と、動力…魔石や魔力が必要なの。それでも一秒でもはやくわたしたちのところへ帰って来て欲しかったの。ごめんなさい。」

「謝らないで、ジェイデン。この国に連れて来られて日が浅い俺のために手配してくれたんだろ?
でも次からは相談してほしいな。そのときに申請の仕組みや制度を俺に教えながら進めてくれるか?俺もに馴染めるように努力するから。」

元はと言えば俺がギルドでメルヴィンといちゃついたせいだ。
急に団体客を迎えることになった『エンジェルスマイル』の皆んなの負担を減らさなきゃ!って焦って勝手にやったことが発端だからな。

俺もちゃんと相談してから行動しないと押し売りになってしまう。
魔力ゴリ押しで割と何でもできてしまうけど、反省しなければ。

「旦那様…。はい、次からはそういたします。」

「ありがとう、俺もちゃんと相談するから。全部準備してもらうより、一緒にやった方が楽しいよ、きっと。」

「ふふ。一緒に、ですものね。」

「うん。」

それだけで嬉しそうに微笑んでくれる。
ジェイデン、大好きだ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

転生したら同性から性的な目で見られている俺の冒険紀行

BL
ある日突然トラックに跳ねられ死んだと思ったら知らない森の中にいた神崎満(かんざきみちる)。異世界への暮らしに心踊らされるも同性から言い寄られるばかりで・・・ 主人公チートの総受けストリーです。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...