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6章 足りないのは我慢なのか適性なのか
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「次はわたしの番ね!ルーシャちゃんお願い。」
「はい、アンジェラさん。シオンさん、こちらをどうぞ。」
ギルドカードのような物とニ枚の書類、それにナイフとペンだ。
心当たりは無いし、何だろう。
「それはね、ハンターギルドと商業ギルドが管理運用している転移陣の使用許可通知よ。商会からの採取依頼や行商、商隊の護衛依頼を受けるならあった方が良いかと思って、転移陣の許可証の取得を申請しておいたの。
後はシオンがそこにサインして、カードに血液を垂らすと転移陣が使えるようになるわ。」
「え…っと、申請って本人じゃなくてもできるのか?」
思わず出てきた言葉はこれだった。
元の世界じゃ本人抜きでそんなことできないよな。
こっちはそのへんはどうなんだ?
個人情報の扱いがガバガバだと『エンジェルスマイル』以外では気が抜けないのが辛い。
ジェイデンが善意で準備してくれているのは分かるが、ちょっと気持ちがついていかない。
あ、でもやっぱり転移魔法があるんだな!
俺にも使えるだろうか?
「わたしの説明が足りなかったわね、ごめんなさい。本人以外の申請は保証人に限りできるわ。そこにメルヴィンとわたしのサインがあるでしょう?
それでも本人の同意なく許可証の発行はできないから安心してね。」
「それは分かった。でもこれ、手数料とか申請料金とかかかるんじゃないのか?」
「ハンターギルドの転移陣だけの許可証の相場で金貨1枚(100万円)ってトコだな。」
「金貨っ!?」
想像以上に高価いぞ!
しかも商業ギルドの分は入ってないのに金貨!
「それについてはオレがギルマスとして説明しよう。
お前さんなら分かると思うが、転移ってのは危険な魔法だ。人と物を一瞬で移動させられるってことは、犯罪や不正な武力行使に使われると被害がえらいことになる。
そのために最低限だが本人、家族、友人の犯罪歴や他にも必要なことを調査するんだ。
金貨1枚ってのも、それくらいポンと出せれば賄賂なんかに靡かねえ、コツコツ貯めるなら先を考える頭がある、ってことだろ?そんな感じでカネで転びそうなヤツをふるい落とすために設定されてる。
保証人は居なくても許可証は発行できるが信用度が上がる。特にお前さんは誘拐の被害者だから調査のやりようがねえ。オレらの名前で信用が買えるから安いモンだ。」
「それでね、本当は最初に言わなきゃいけなかったのだけれど、これは例の大皿の代金なの。フェイトちゃんとお値段の相談をしたときに、お安く見積もっても1枚につき大銀貨(10万円)の価値があるって結論になったわ。
でもあなたはきっとここまでの値段がつくとは考えていなかったんじゃないかしら?それでお金よりもあなたの役に立つもので支払うことにしたの。
あ、でも、誓ってお皿の代金よりも高価ではないわ。」
許可の通知書は二通だし、合わせて金貨2枚にならないのか?
皿が大銀貨1枚✕30枚なら金貨3枚だろ?
代金は付けた値段の半額って約束だったから、金貨1枚と大銀貨5枚か。
それだと許可証の方が高価いよな?
「あなたの考えていることは分かるわ。許可証の方が高価いと思っているのでしょう?」
「うん。違うのか?」
「ハンターギルドと商業ギルドに同時申請すると安く上がるんだ。重複する審査を省けるし、そもそもお前さんは調査する意味がねえから調査費もかかってねえ。
さらにオレとジェイデンが保証人だから、少しだが値引きされてる。
詳細は言えねえが、ジェイデンから聞いてる皿の代金よりも安いことは間違いねえ。
本当はジェイデンの名前だけでも十分なんだ。それでもオレが保証人になった理由が分かるか?」
うーん、何でだろう。
仲間はずれがイヤだった…とか?
そんなわけないか。
きっとギルマスとしてそっちの方が都合の良いことがあるのだろう。
「お前さんはまだCランクだが、化物を単騎で狩れるハンターだ。ってことは今後は遠方にも討伐に出てもらうことになる。
一応、一回限りの許可証もあるんだが、やたらと面倒な書類が何枚も必要でな。緊急時なんかは最悪だ。書類書かせたりそれを処理するよりも、オレが討伐に行った方が早いくらいだ。
許可証があれば必要なのは転移先を書いた書類が1枚だけだ。その書類さえ緊急時は事後で済む。
転移陣の危険性を考えれば手続きが複雑なのは仕方ねえことだが、ギルドを助けると思って許可証を持ってくれ。
まあ、メルヴィン・アレナド個人としては、オレらの願いを叶えるために頑張ってくれてる恋人に、できることは何でもしてやりてえって気持ちもある。もちろん犯罪とかギルドの規則に抵触するようなことはしねえけどな。」
俺に期待してそんなふうに思ってくれてるなんて…。
どうしよう、すごく嬉しい。
「メルヴィン…。ジェイデンも?」
「ええ。でもわたしはもっと自分勝手な理由もあるの。一番はあなたと離れている時間を少しでも減らしたくて…。
転移陣を使うにはね、許可証と、使用料と、動力…魔石や魔力が必要なの。それでも一秒でもはやくわたしたちのところへ帰って来て欲しかったの。ごめんなさい。」
「謝らないで、ジェイデン。この国に連れて来られて日が浅い俺のために手配してくれたんだろ?
でも次からは相談してほしいな。そのときに申請の仕組みや制度を俺に教えながら進めてくれるか?俺もここに馴染めるように努力するから。」
元はと言えば俺がギルドでメルヴィンといちゃついたせいだ。
急に団体客を迎えることになった『エンジェルスマイル』の皆んなの負担を減らさなきゃ!って焦って勝手にやったことが発端だからな。
俺もちゃんと相談してから行動しないと押し売りになってしまう。
魔力ゴリ押しで割と何でもできてしまうけど、反省しなければ。
「旦那様…。はい、次からはそういたします。」
「ありがとう、俺もちゃんと相談するから。全部準備してもらうより、一緒にやった方が楽しいよ、きっと。」
「ふふ。一緒に、ですものね。」
「うん。」
それだけで嬉しそうに微笑んでくれる。
ジェイデン、大好きだ。
「はい、アンジェラさん。シオンさん、こちらをどうぞ。」
ギルドカードのような物とニ枚の書類、それにナイフとペンだ。
心当たりは無いし、何だろう。
「それはね、ハンターギルドと商業ギルドが管理運用している転移陣の使用許可通知よ。商会からの採取依頼や行商、商隊の護衛依頼を受けるならあった方が良いかと思って、転移陣の許可証の取得を申請しておいたの。
後はシオンがそこにサインして、カードに血液を垂らすと転移陣が使えるようになるわ。」
「え…っと、申請って本人じゃなくてもできるのか?」
思わず出てきた言葉はこれだった。
元の世界じゃ本人抜きでそんなことできないよな。
こっちはそのへんはどうなんだ?
個人情報の扱いがガバガバだと『エンジェルスマイル』以外では気が抜けないのが辛い。
ジェイデンが善意で準備してくれているのは分かるが、ちょっと気持ちがついていかない。
あ、でもやっぱり転移魔法があるんだな!
俺にも使えるだろうか?
「わたしの説明が足りなかったわね、ごめんなさい。本人以外の申請は保証人に限りできるわ。そこにメルヴィンとわたしのサインがあるでしょう?
それでも本人の同意なく許可証の発行はできないから安心してね。」
「それは分かった。でもこれ、手数料とか申請料金とかかかるんじゃないのか?」
「ハンターギルドの転移陣だけの許可証の相場で金貨1枚(100万円)ってトコだな。」
「金貨っ!?」
想像以上に高価いぞ!
しかも商業ギルドの分は入ってないのに金貨!
「それについてはオレがギルマスとして説明しよう。
お前さんなら分かると思うが、転移ってのは危険な魔法だ。人と物を一瞬で移動させられるってことは、犯罪や不正な武力行使に使われると被害がえらいことになる。
そのために最低限だが本人、家族、友人の犯罪歴や他にも必要なことを調査するんだ。
金貨1枚ってのも、それくらいポンと出せれば賄賂なんかに靡かねえ、コツコツ貯めるなら先を考える頭がある、ってことだろ?そんな感じでカネで転びそうなヤツをふるい落とすために設定されてる。
保証人は居なくても許可証は発行できるが信用度が上がる。特にお前さんは誘拐の被害者だから調査のやりようがねえ。オレらの名前で信用が買えるから安いモンだ。」
「それでね、本当は最初に言わなきゃいけなかったのだけれど、これは例の大皿の代金なの。フェイトちゃんとお値段の相談をしたときに、お安く見積もっても1枚につき大銀貨(10万円)の価値があるって結論になったわ。
でもあなたはきっとここまでの値段がつくとは考えていなかったんじゃないかしら?それでお金よりもあなたの役に立つもので支払うことにしたの。
あ、でも、誓ってお皿の代金よりも高価ではないわ。」
許可の通知書は二通だし、合わせて金貨2枚にならないのか?
皿が大銀貨1枚✕30枚なら金貨3枚だろ?
代金は付けた値段の半額って約束だったから、金貨1枚と大銀貨5枚か。
それだと許可証の方が高価いよな?
「あなたの考えていることは分かるわ。許可証の方が高価いと思っているのでしょう?」
「うん。違うのか?」
「ハンターギルドと商業ギルドに同時申請すると安く上がるんだ。重複する審査を省けるし、そもそもお前さんは調査する意味がねえから調査費もかかってねえ。
さらにオレとジェイデンが保証人だから、少しだが値引きされてる。
詳細は言えねえが、ジェイデンから聞いてる皿の代金よりも安いことは間違いねえ。
本当はジェイデンの名前だけでも十分なんだ。それでもオレが保証人になった理由が分かるか?」
うーん、何でだろう。
仲間はずれがイヤだった…とか?
そんなわけないか。
きっとギルマスとしてそっちの方が都合の良いことがあるのだろう。
「お前さんはまだCランクだが、化物を単騎で狩れるハンターだ。ってことは今後は遠方にも討伐に出てもらうことになる。
一応、一回限りの許可証もあるんだが、やたらと面倒な書類が何枚も必要でな。緊急時なんかは最悪だ。書類書かせたりそれを処理するよりも、オレが討伐に行った方が早いくらいだ。
許可証があれば必要なのは転移先を書いた書類が1枚だけだ。その書類さえ緊急時は事後で済む。
転移陣の危険性を考えれば手続きが複雑なのは仕方ねえことだが、ギルドを助けると思って許可証を持ってくれ。
まあ、メルヴィン・アレナド個人としては、オレらの願いを叶えるために頑張ってくれてる恋人に、できることは何でもしてやりてえって気持ちもある。もちろん犯罪とかギルドの規則に抵触するようなことはしねえけどな。」
俺に期待してそんなふうに思ってくれてるなんて…。
どうしよう、すごく嬉しい。
「メルヴィン…。ジェイデンも?」
「ええ。でもわたしはもっと自分勝手な理由もあるの。一番はあなたと離れている時間を少しでも減らしたくて…。
転移陣を使うにはね、許可証と、使用料と、動力…魔石や魔力が必要なの。それでも一秒でもはやくわたしたちのところへ帰って来て欲しかったの。ごめんなさい。」
「謝らないで、ジェイデン。この国に連れて来られて日が浅い俺のために手配してくれたんだろ?
でも次からは相談してほしいな。そのときに申請の仕組みや制度を俺に教えながら進めてくれるか?俺もここに馴染めるように努力するから。」
元はと言えば俺がギルドでメルヴィンといちゃついたせいだ。
急に団体客を迎えることになった『エンジェルスマイル』の皆んなの負担を減らさなきゃ!って焦って勝手にやったことが発端だからな。
俺もちゃんと相談してから行動しないと押し売りになってしまう。
魔力ゴリ押しで割と何でもできてしまうけど、反省しなければ。
「旦那様…。はい、次からはそういたします。」
「ありがとう、俺もちゃんと相談するから。全部準備してもらうより、一緒にやった方が楽しいよ、きっと。」
「ふふ。一緒に、ですものね。」
「うん。」
それだけで嬉しそうに微笑んでくれる。
ジェイデン、大好きだ。
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