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6章 足りないのは我慢なのか適性なのか
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「皆さんおはようございます!」
ハンターギルドに入ると、ルーシャが元気いっぱいの挨拶で迎えてくれた。
「おう、おはよう。例の見積もりは終わってるか?」
「はい!それとアンジェラさんが申請していた許可証も準備できてますよ!」
「まあ!仕事がはやいわね、ルーシャちゃん。」
「私が…というよりもアレナド兄弟の名前のおかげです。商業ギルドの審査もアッサリ通りました!」
「そりゃあ良かったじゃねえか。ソレも含めて書類とか揃えてオレの部屋まで来てくれ。オレらは先に行く。」
「了解です!」
よく分からないが、どうやらメルヴィンの執務室で説明してくれるらしい。
執務室に入るとソファに座るように促された。
わざわざギルドでする話だ、きっと重要なことに違いない。
そう思うと幾分背筋が伸びる。
が、それよりも気になることがある。
メルヴィンとジェイデンは当然のように二人並んで同じソファに座っている。
俺はその正面のソファに一人…。
俺だって一緒のソファが良いし、どうせなら二人に挟まれて座りたい…もしくは抱かれてくっついていたい!
いや、分かってはいるんだ。
真面目な話しをするなら正しい位置だって。
でも何となく寂しいんだ。
我慢するけど!
一人で勝手にぐぬぬ…と唸っているとノックの音がする。
メルヴィンが入室を許可すると、ルーシャがトレイに何やら乗せてやってきた。
それを机に置いてメルヴィンの後ろに控える。
「ご苦労さん。お前も座って良いぞ。」
その言葉でルーシャがロッカーから折りたたみ椅子を出して腰を下ろした。
俺のメルヴィンは部下にも優しい。
「まずは化物の件だな。お前さんのおかげで被害を出さずに済んだ。ギルマスとして礼を言う。本当によくやってくれた。ありがとうよ。」
「メルヴィンが俺ならできるって言ってくれたからな。それを信じただけだ。」
真正面から褒められると照れるけど、期待に応えられたことがすごく嬉しい。
「それでな、化物関連でお前さんにまだ説明してなかったことがあるんだ。予定ではAランクになったら魔境の森に連れて行って、はじめはオレかジェイデンと一緒に討伐しようと思っていたんだ。まあ、そんなこと必要なかったみたいだが…。
次にこの書類を見てくれ。」
言われたとおりにすると、そこには『化物2体の討伐を確認した。Cランクハンター・シオンに討伐報酬として金貨2枚(200万円)を支払う』と書いてあった。
にひゃくまん…。
剣を二振りしただけで…?
いや、めちゃくちゃ真剣に集中して頑張ったけど!
「えっ…と、もらい過ぎなんじゃ…?」
「そんなことはねえよ。普通はパーティで討伐するから、一人分は割の良い小遣いみたいな額になるんだ。
それに化物を狩るためには相応の装備や魔道具が要る。そういった物に対する補助金みたいな側面もあるからな。
はぁ…、こんなことになるならちゃんと説明しとくんだった。魔境に入れるのはAランクからだと思って後回しにしたらコレだもんな。」
「そういえば出会った日に、魔境の森は物入りになったハンターの狩り場になってるって言ってたな…。」
「そうだなあ…。あれから何日も経ってねえのに、お前さんの引きの強さは何なんだ。普通こんなにはやく化物とエンカウントなんかしねえっての。」
そんなこと言われても…。
だが、だからこそメルヴィンとジェイデンと出会えたんじゃないか?
それを言えばフェイトとラースもだけど。
「なあ、メルヴィン。化物ってそんなに出現しないものなのか?」
「まあな。魔境に隣接してる辺境伯領は別だが、それ以外だとこの国全体でも月に数件から多くて20件くらいだ。
お前さんの引きの強さが分かったか?」
「何となく…?」
「まあそれはいい。で、狩った化物の素材だがどうする?」
「どうするって、メルヴィンが回収したからそれで終わりじゃないのか?」
わざわざ俺に聞くほど選択肢があるのか?
「ああ、そこからだったか。簡単に言うと手元に残すか売るか、売るならどこに売るか、だな。武器屋や防具屋に素材を持ち込むこともあるか。まあそんなもんだ。
今回はエイプとウルフだから主に毛皮、牙、爪、それと魔石が売れる。化物の外皮は防具の素材として人気だが、お前さんにはもっと上等な装備があるから売るのが良いだろう。
残念ながらエイプもウルフも肉は食用に向かないが、質の良い肥料に加工できるぞ。」
「えっ!?化物の肉って食べられるのか!?」
あんな不吉そうな黒い靄まみれだったのに、食べて呪われたりしないのか?
「ん?すげえ美味いぞ。当然、食べるのは浄化したり瘴気を吸い取る魔道具を使ったりして処理した物だけだがな。王道のブルやボア、他にもシープにラビットやバード系も人気だ。」
「へ、へぇ…。」
まじかぁ…。
俄には信じられなくて、飲食店オーナーのジェイデンを見つめてしまう。
「ふふ、シオンとの記念日にはわたしが魔境で美味しいお肉を狩って来るから、楽しみにしていてちょうだいね?」
ニコッといい笑顔で言われたら頷くしかない。
いや、もう、これは「異世界だから」で割り切ろう。
美味しいは正義だ、うん。
「脱線したが全部ギルドで買い取りで良いか?」
「いや、魔石は売らない。あと肥料も興味があるから自分で業者さんに持ち込むよ。紹介だけしてもらえるか?」
「そうか。ルーシャ、聞いてたな?計算を頼む。」
「はい!ちょっとお待ち下さいね!」
「後は報酬と買い取りした代金だが口座に振り込むか?現金で受け取るか?」
聞けばギルドカードを作ると同時に口座も開設される仕組みで、店舗を構えているところでは概ねカードで決済できるらしい。
屋台は現金のみが多いので化物の討伐報酬は口座に、それ以外は現金での支払いをお願いした。
まあ俺は空間収納が使えるから、全額現金払いでも良かったんだけどな。
ハンターギルドに入ると、ルーシャが元気いっぱいの挨拶で迎えてくれた。
「おう、おはよう。例の見積もりは終わってるか?」
「はい!それとアンジェラさんが申請していた許可証も準備できてますよ!」
「まあ!仕事がはやいわね、ルーシャちゃん。」
「私が…というよりもアレナド兄弟の名前のおかげです。商業ギルドの審査もアッサリ通りました!」
「そりゃあ良かったじゃねえか。ソレも含めて書類とか揃えてオレの部屋まで来てくれ。オレらは先に行く。」
「了解です!」
よく分からないが、どうやらメルヴィンの執務室で説明してくれるらしい。
執務室に入るとソファに座るように促された。
わざわざギルドでする話だ、きっと重要なことに違いない。
そう思うと幾分背筋が伸びる。
が、それよりも気になることがある。
メルヴィンとジェイデンは当然のように二人並んで同じソファに座っている。
俺はその正面のソファに一人…。
俺だって一緒のソファが良いし、どうせなら二人に挟まれて座りたい…もしくは抱かれてくっついていたい!
いや、分かってはいるんだ。
真面目な話しをするなら正しい位置だって。
でも何となく寂しいんだ。
我慢するけど!
一人で勝手にぐぬぬ…と唸っているとノックの音がする。
メルヴィンが入室を許可すると、ルーシャがトレイに何やら乗せてやってきた。
それを机に置いてメルヴィンの後ろに控える。
「ご苦労さん。お前も座って良いぞ。」
その言葉でルーシャがロッカーから折りたたみ椅子を出して腰を下ろした。
俺のメルヴィンは部下にも優しい。
「まずは化物の件だな。お前さんのおかげで被害を出さずに済んだ。ギルマスとして礼を言う。本当によくやってくれた。ありがとうよ。」
「メルヴィンが俺ならできるって言ってくれたからな。それを信じただけだ。」
真正面から褒められると照れるけど、期待に応えられたことがすごく嬉しい。
「それでな、化物関連でお前さんにまだ説明してなかったことがあるんだ。予定ではAランクになったら魔境の森に連れて行って、はじめはオレかジェイデンと一緒に討伐しようと思っていたんだ。まあ、そんなこと必要なかったみたいだが…。
次にこの書類を見てくれ。」
言われたとおりにすると、そこには『化物2体の討伐を確認した。Cランクハンター・シオンに討伐報酬として金貨2枚(200万円)を支払う』と書いてあった。
にひゃくまん…。
剣を二振りしただけで…?
いや、めちゃくちゃ真剣に集中して頑張ったけど!
「えっ…と、もらい過ぎなんじゃ…?」
「そんなことはねえよ。普通はパーティで討伐するから、一人分は割の良い小遣いみたいな額になるんだ。
それに化物を狩るためには相応の装備や魔道具が要る。そういった物に対する補助金みたいな側面もあるからな。
はぁ…、こんなことになるならちゃんと説明しとくんだった。魔境に入れるのはAランクからだと思って後回しにしたらコレだもんな。」
「そういえば出会った日に、魔境の森は物入りになったハンターの狩り場になってるって言ってたな…。」
「そうだなあ…。あれから何日も経ってねえのに、お前さんの引きの強さは何なんだ。普通こんなにはやく化物とエンカウントなんかしねえっての。」
そんなこと言われても…。
だが、だからこそメルヴィンとジェイデンと出会えたんじゃないか?
それを言えばフェイトとラースもだけど。
「なあ、メルヴィン。化物ってそんなに出現しないものなのか?」
「まあな。魔境に隣接してる辺境伯領は別だが、それ以外だとこの国全体でも月に数件から多くて20件くらいだ。
お前さんの引きの強さが分かったか?」
「何となく…?」
「まあそれはいい。で、狩った化物の素材だがどうする?」
「どうするって、メルヴィンが回収したからそれで終わりじゃないのか?」
わざわざ俺に聞くほど選択肢があるのか?
「ああ、そこからだったか。簡単に言うと手元に残すか売るか、売るならどこに売るか、だな。武器屋や防具屋に素材を持ち込むこともあるか。まあそんなもんだ。
今回はエイプとウルフだから主に毛皮、牙、爪、それと魔石が売れる。化物の外皮は防具の素材として人気だが、お前さんにはもっと上等な装備があるから売るのが良いだろう。
残念ながらエイプもウルフも肉は食用に向かないが、質の良い肥料に加工できるぞ。」
「えっ!?化物の肉って食べられるのか!?」
あんな不吉そうな黒い靄まみれだったのに、食べて呪われたりしないのか?
「ん?すげえ美味いぞ。当然、食べるのは浄化したり瘴気を吸い取る魔道具を使ったりして処理した物だけだがな。王道のブルやボア、他にもシープにラビットやバード系も人気だ。」
「へ、へぇ…。」
まじかぁ…。
俄には信じられなくて、飲食店オーナーのジェイデンを見つめてしまう。
「ふふ、シオンとの記念日にはわたしが魔境で美味しいお肉を狩って来るから、楽しみにしていてちょうだいね?」
ニコッといい笑顔で言われたら頷くしかない。
いや、もう、これは「異世界だから」で割り切ろう。
美味しいは正義だ、うん。
「脱線したが全部ギルドで買い取りで良いか?」
「いや、魔石は売らない。あと肥料も興味があるから自分で業者さんに持ち込むよ。紹介だけしてもらえるか?」
「そうか。ルーシャ、聞いてたな?計算を頼む。」
「はい!ちょっとお待ち下さいね!」
「後は報酬と買い取りした代金だが口座に振り込むか?現金で受け取るか?」
聞けばギルドカードを作ると同時に口座も開設される仕組みで、店舗を構えているところでは概ねカードで決済できるらしい。
屋台は現金のみが多いので化物の討伐報酬は口座に、それ以外は現金での支払いをお願いした。
まあ俺は空間収納が使えるから、全額現金払いでも良かったんだけどな。
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