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6章 足りないのは我慢なのか適性なのか
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「はい、旦那様…。あなた様を信じているのです。それなのにお顔を見るまで安心できなくて…。ごめんなさい。」
「メルヴィンにも同じようなことを言われたよ。」
「メルヴィンも…ですか?」
ああ、久しぶりに見るジェイデンのきょとんとした表情が堪らなく可愛い。
「うん、信じてるのと心配するのは別みたい。
あと、俺が落ち込みかけているときに、何が大事か忘れなければ大丈夫だって言ってくれたんだけど…。俺の大事なもの…ジェイデンは分かるか?」
「………わ、わたしと、メルヴィン……でしょうか?」
しばらく考えて、躊躇いがちに口を開いて正確を当ててくれた。
そんな自信がなさそうに、勇気を振り絞るように答えなくても、俺はジェイデンが好きなのに。
でもここで自分の名前を言えたことは良い傾向だと思う。
自分を愛せるようになってほしいというメルヴィンと俺の想いが届いてるってことだから。
「そうだ、ジェイデン。あなたたちと生きる未来だ。だから何があっても、どんなに情けない姿になっても、必ず生きて帰る。俺を信じて待っていてくれ、愛しいひと。」
手を繋ぐだけでは足りなくて、そっと強張った身体を抱き寄せる。
ジェイデンより小さくて薄い俺の身体だけど、少しでも安らぎを感じてもらえるように包み込みたい。
すると思いが通じたのか、うっとりした表情で抱きしめ返してくれた。
「はい、旦那様。そのように言っていただけるだなんて夢を見ているようです。」
「夢じゃないよ。それとジェイデンが俺に心配をかけないように敢えていつも通りに接してくれたって分かってる。俺を気遣ってくれてありがとう。」
「……結局、上手くはできませんでしたけれど。
ハンターとして苦しいとき、わたしにはメルヴィンが、メルヴィンにはわたしが隣にいました。ニコルさんたちに不満があるわけではないのですが、旦那様を護りたいと思ったら居ても立っても居られなくなってしまって。
今回はご無事でしたが、旦那様がいなくなってしまったらどうしようかと不安で…。
こんな思いをするのは初めてだったので取り乱してしまいました。もういい歳なのに恥ずかしい話です。」
メルヴィンから聞いていたのもあるけれど、おかえりのキスが無い時点でいつもどおりじゃないからな。
ジェイデンからしてくれるおかえりのキスは嬉しいし大好きだ。
それが無いなんて俺にとっては一大事だからな。
「年齢は関係ないし、ジェイデンは愛情深い人ってことだよ。」
「そう…なのでしょうか?」
ピンときていない表情だけど、アレナド兄弟はどちらも情に厚いと思うし、深い愛情を注いでくれている。
その対象になっている俺が言うのだから間違いない。
「そうだよ。ねえ、ジェイデン。睡眠不足で顔色の悪いあなたにこんなことを言うのはどうかと思うんだけど、俺の我儘を聞いてくれないか。」
「もちろんです。わたしが叶えられることなら何でもどうぞ。」
そんな無防備に返事をして…。
嬉しいけど俺とメルヴィン以外にはそんなこと言ってないよな?
もし他に言われた奴がいたらすり潰すけど。
「ありがとう。今夜はもうジェイデンと離れたくない。こうしてずっと触れ合っていたい。抱かせてとは言わないから、朝まで一緒にいてくれないか。」
「そのようなことは我儘とは言いません。むしろ嬉しいばかりです。それと、わたしも我儘を言ってもよろしいでしょうか?」
花の蕾が綻ぶように微笑んで、目もとを染めながらそんなことを言ってくれる。
せっかく我慢しているのに、この可愛いひとを啼かせたくなって困ってしまう。
「何だろう?俺にできることなら何でも言って。」
「ありがとうございます。あの……一緒にいるだけでなく、その……わたしを…愛してくださいませんか?お疲れの旦那様にお願いすることではないのですが、旦那様をもっと感じていたくて。」
「それこそ我儘なんかじゃないし、むしろご褒美だ。誘ってくれてありがとう。嬉しいよ。このまま部屋に招いてくれるか?」
「はいっ!……あ、でも、…どうしましょう…。」
せっかくの花のように微笑んでくれたのに、その笑顔が萎れてしまった。
浮気の心配はしていないけど、何か不都合でもあるのだろうか?
「落ち着いて、ジェイデン。疚しいことがあるわけじゃないんだろ?」
「もちろんです!……わたしの部屋なのですが、今日は整えていなくて。シーツも換えていませんし…。」
「それくらい気にならないけど、シーツなら魔法でキレイにできるんじゃないか?」
一月も交換していないわけじゃないし、一日二日くらい気にしなくても…。
「おっしゃるとおりなのですが、やはり洗濯をしたシーツの方がさらさらで触り心地も良いですし、旦那様にはできるだけ気持ち良く過ごしてもらいたいですから。」
ジェイデン!
なんて良妻っぷりなんだ!
もちろんメルヴィンもだが、自分の得意分野で俺のことを支えてくれる二人には感謝してもしきれない。
「ありがとう、ジェイデン。いつも気遣ってくれて。せっかくだし、一緒にシーツを交換しないか。」
「そうですね…そうしましょう。一緒に、ですから。」
一緒に、というだけで喜んでくれるなんて、どれだけ健気なんだ。
本当に堪らない気分にさせられる。
「これから二人で汚すためにシーツを換えるなんて、すごく興奮するな。」
「えっ!?………あっ!はっ、はいっ!」
気付いてなかったのか?
そんなところも可愛いけれど。
「メルヴィンにも同じようなことを言われたよ。」
「メルヴィンも…ですか?」
ああ、久しぶりに見るジェイデンのきょとんとした表情が堪らなく可愛い。
「うん、信じてるのと心配するのは別みたい。
あと、俺が落ち込みかけているときに、何が大事か忘れなければ大丈夫だって言ってくれたんだけど…。俺の大事なもの…ジェイデンは分かるか?」
「………わ、わたしと、メルヴィン……でしょうか?」
しばらく考えて、躊躇いがちに口を開いて正確を当ててくれた。
そんな自信がなさそうに、勇気を振り絞るように答えなくても、俺はジェイデンが好きなのに。
でもここで自分の名前を言えたことは良い傾向だと思う。
自分を愛せるようになってほしいというメルヴィンと俺の想いが届いてるってことだから。
「そうだ、ジェイデン。あなたたちと生きる未来だ。だから何があっても、どんなに情けない姿になっても、必ず生きて帰る。俺を信じて待っていてくれ、愛しいひと。」
手を繋ぐだけでは足りなくて、そっと強張った身体を抱き寄せる。
ジェイデンより小さくて薄い俺の身体だけど、少しでも安らぎを感じてもらえるように包み込みたい。
すると思いが通じたのか、うっとりした表情で抱きしめ返してくれた。
「はい、旦那様。そのように言っていただけるだなんて夢を見ているようです。」
「夢じゃないよ。それとジェイデンが俺に心配をかけないように敢えていつも通りに接してくれたって分かってる。俺を気遣ってくれてありがとう。」
「……結局、上手くはできませんでしたけれど。
ハンターとして苦しいとき、わたしにはメルヴィンが、メルヴィンにはわたしが隣にいました。ニコルさんたちに不満があるわけではないのですが、旦那様を護りたいと思ったら居ても立っても居られなくなってしまって。
今回はご無事でしたが、旦那様がいなくなってしまったらどうしようかと不安で…。
こんな思いをするのは初めてだったので取り乱してしまいました。もういい歳なのに恥ずかしい話です。」
メルヴィンから聞いていたのもあるけれど、おかえりのキスが無い時点でいつもどおりじゃないからな。
ジェイデンからしてくれるおかえりのキスは嬉しいし大好きだ。
それが無いなんて俺にとっては一大事だからな。
「年齢は関係ないし、ジェイデンは愛情深い人ってことだよ。」
「そう…なのでしょうか?」
ピンときていない表情だけど、アレナド兄弟はどちらも情に厚いと思うし、深い愛情を注いでくれている。
その対象になっている俺が言うのだから間違いない。
「そうだよ。ねえ、ジェイデン。睡眠不足で顔色の悪いあなたにこんなことを言うのはどうかと思うんだけど、俺の我儘を聞いてくれないか。」
「もちろんです。わたしが叶えられることなら何でもどうぞ。」
そんな無防備に返事をして…。
嬉しいけど俺とメルヴィン以外にはそんなこと言ってないよな?
もし他に言われた奴がいたらすり潰すけど。
「ありがとう。今夜はもうジェイデンと離れたくない。こうしてずっと触れ合っていたい。抱かせてとは言わないから、朝まで一緒にいてくれないか。」
「そのようなことは我儘とは言いません。むしろ嬉しいばかりです。それと、わたしも我儘を言ってもよろしいでしょうか?」
花の蕾が綻ぶように微笑んで、目もとを染めながらそんなことを言ってくれる。
せっかく我慢しているのに、この可愛いひとを啼かせたくなって困ってしまう。
「何だろう?俺にできることなら何でも言って。」
「ありがとうございます。あの……一緒にいるだけでなく、その……わたしを…愛してくださいませんか?お疲れの旦那様にお願いすることではないのですが、旦那様をもっと感じていたくて。」
「それこそ我儘なんかじゃないし、むしろご褒美だ。誘ってくれてありがとう。嬉しいよ。このまま部屋に招いてくれるか?」
「はいっ!……あ、でも、…どうしましょう…。」
せっかくの花のように微笑んでくれたのに、その笑顔が萎れてしまった。
浮気の心配はしていないけど、何か不都合でもあるのだろうか?
「落ち着いて、ジェイデン。疚しいことがあるわけじゃないんだろ?」
「もちろんです!……わたしの部屋なのですが、今日は整えていなくて。シーツも換えていませんし…。」
「それくらい気にならないけど、シーツなら魔法でキレイにできるんじゃないか?」
一月も交換していないわけじゃないし、一日二日くらい気にしなくても…。
「おっしゃるとおりなのですが、やはり洗濯をしたシーツの方がさらさらで触り心地も良いですし、旦那様にはできるだけ気持ち良く過ごしてもらいたいですから。」
ジェイデン!
なんて良妻っぷりなんだ!
もちろんメルヴィンもだが、自分の得意分野で俺のことを支えてくれる二人には感謝してもしきれない。
「ありがとう、ジェイデン。いつも気遣ってくれて。せっかくだし、一緒にシーツを交換しないか。」
「そうですね…そうしましょう。一緒に、ですから。」
一緒に、というだけで喜んでくれるなんて、どれだけ健気なんだ。
本当に堪らない気分にさせられる。
「これから二人で汚すためにシーツを換えるなんて、すごく興奮するな。」
「えっ!?………あっ!はっ、はいっ!」
気付いてなかったのか?
そんなところも可愛いけれど。
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