148 / 170
6章 足りないのは我慢なのか適性なのか
08
しおりを挟む
食後のお茶を一気に飲み干し、メルヴィンは早々と自室に戻った。
体力の消耗よりも、たくさん頭を使った上に気疲れしたらしい。
肉体的な疲れなら癒やせるのに…と悔しい思いをしたが、何もできないのはもっと悔しい。
だからおやすみのキスをしたときに、一本3000円のアケミさん御用達の栄養ドリンクを差し入れしてみた。
「コレは効くわよっ!」って言ってたし、少しでも元気になってくれると良いけど…。
メルヴィンを見送ってから、もう一人の元気になってほしい人と一緒にソファに座る。
手を繋いで、離れていた間のことをお互いに話していく。
既にメルヴィンから聞いて知っていることでも、きっと俺から直接聞きたいと思っているだろうし、より安心してもらえるだろう。
それに俺だってジェイデンのことを知りたい。
「そのようなことがあったのですね。本当によく無事に帰ってきてくれました。」
「うん。でも加減無しで身体強化できる相手だったから、返ってやりやすかったかも。」
ギルドで微調整ができるように練習しているけど、まだ満足できる域には達していない。
全力で身体強化する方が簡単だ。
「ふふっ、それは頼もしいですね。」
やっといつものジェイデンの笑顔が見られて嬉しい。
穏やかで優しい表情に思わず見入ってしまう。
「どうかされましたか?」
「ん?ジェイデンの笑顔が好きだな…って。ああ、そんなに頬を染めて…。食べてしまいたくなる。
そうだ、今度休日が揃ったら三人で一緒に今回お世話になった農場に行かないか?野菜も果物も美味しかったし、果実酒も漬けているんだって。手紙で収穫を体験させてもらえないか頼んでみるよ。後でもらってきたお土産も渡すから期待してて。」
昨日はメルヴィンが登場してちょっとした騒ぎになったけど、二度目ならそんなに驚かれることもないはず。
ジェイデンのことも知ってるから、三人で訪ねても良いだろう。
「それは嬉しいお誘いです。新鮮な素材を使った美味しい料理を旦那様に食べてもらえますし、今から楽しみですね。」
「そうだな。ジェイデンは料理上手だから期待してる。持たせてくれたフリッターもありがとう。ハンクさんには申し訳ないけど、あれが一番美味しかった。
今日は農場の人が採れたての野菜で朝食を作ってくれたんだけど、ジェイデンの手料理がないとどこか寂しくてな…。
宿のことで忙しくしてるあなたにお願いするのは心苦しいんだけど、泊まりがけで出かけるときには何か一品作ってくれると嬉しい。」
「ええ、喜んで!むしろ手料理なんて重いと嫌がられなくて安心しました。」
ジェイデンの輝く笑顔が眩しい。
俺のことが大好きだって言われてるみたいで少し照れるな。
「ジェイデンが俺のためにしてくれたのに、そんなこと思うわけない。あなたの気持ちが嬉しかった。一回の食事に一つずつ、ちゃんと味わって食べたから。」
「そっ、そうでしたか。そこまで喜んでもらえるなんて、妻冥利に尽きますね。次はどんなものを作りましょうか…。何か要望はありますか?」
「んー…。あ、手間が増えて申し訳ないんだけど、小分けにしてもらえると嬉しいかな。串に刺して一食分とか。あと、日数より少し多めに持たせてほしい。」
弁当の中身全てがジェイデンの手作りじゃなくても構わない。
だが、毎食何かお手製のものを食べたいと思ってしまう。
贅沢だとは思うが是非ともお願いしたい。
「分かりました、料理長にも相談して考えてみますね。参考に教えてほしいのですが、今日の夕食はいかがでしたか?」
「フィッシュフライとタルタルソースの組み合わせも捨てがたいけど、ほうれん草とチーズのラビオリが一番かな。」
どの料理も味は良かった。
でもラビオリは食べたらこう…ほっこりしたんだ。
心身にじんわりと染み渡る感じかな。
評論家じゃないから上手く言えないけど。
「ラビオリはわたしが作りました。お気に召してもらえて嬉しいです。あっ!でも、味付けは料理長がしてくれたので、わたしが一人で作ったものではないのですが…。」
ジェイデンが作ってくれたものが一番美味しく感じるのはどうしてだろう。
愛情が入っているからか?
それとも愛情たっぷりの魔力が何かに作用しているとか?
何にしても愛のなせるワザだと良いな。
「そうだとしても嬉しい気持ちは減ったりしないし、感謝しているよ。大好きで大切な人が俺を思ってくれているんだから。
でもね、ジェイデン。だからこそあなたも自分を大切にしてほしい。」
「っ!旦那様…。」
上手く誤魔化せていると思っていたんだな、ジェイデンは。
こんなに分かりやすいことを俺が見逃すはずがないだろう?
「昨日は眠れた?」
「いえ、落ち着いていられなくて……。」
シュンとさせてしまって申し訳ない。
責めているわけじゃないんだ。
分かってもらえるだろうか…?
「そうか。無理に眠れとは言わない。でも、もし次にそうなったときはベッドに横になって目を瞑って?」
「……分かりました。」
「約束だよ。それと、食事も抜いていたんじゃないか?これも無理に食べろなんて言わない。その代わり水分はちゃんととろう。ハンクさんに頼めば野菜や果物をジュースにしてくれるだろ?
俺の大好きなぷるぷるの唇がひび割れて痛そうだ。それなのにおかえりのキスをねだった俺を許してくれ。」
「もちろんです。いつもどおりに振る舞えていると思っていたのに、旦那様にいらぬ心配をかけてしまうとは…。」
増々萎れてしまった。
そんな顔をさせたいわけじゃないけど、分かってほしいんだ。
「今回はいきなり化物に遭遇したし仕方ないよ。ただ、ジェイデンが俺を大切に思ってくれているのと同じように、俺もジェイデンを大切に思っているのを忘れないでくれ。」
体力の消耗よりも、たくさん頭を使った上に気疲れしたらしい。
肉体的な疲れなら癒やせるのに…と悔しい思いをしたが、何もできないのはもっと悔しい。
だからおやすみのキスをしたときに、一本3000円のアケミさん御用達の栄養ドリンクを差し入れしてみた。
「コレは効くわよっ!」って言ってたし、少しでも元気になってくれると良いけど…。
メルヴィンを見送ってから、もう一人の元気になってほしい人と一緒にソファに座る。
手を繋いで、離れていた間のことをお互いに話していく。
既にメルヴィンから聞いて知っていることでも、きっと俺から直接聞きたいと思っているだろうし、より安心してもらえるだろう。
それに俺だってジェイデンのことを知りたい。
「そのようなことがあったのですね。本当によく無事に帰ってきてくれました。」
「うん。でも加減無しで身体強化できる相手だったから、返ってやりやすかったかも。」
ギルドで微調整ができるように練習しているけど、まだ満足できる域には達していない。
全力で身体強化する方が簡単だ。
「ふふっ、それは頼もしいですね。」
やっといつものジェイデンの笑顔が見られて嬉しい。
穏やかで優しい表情に思わず見入ってしまう。
「どうかされましたか?」
「ん?ジェイデンの笑顔が好きだな…って。ああ、そんなに頬を染めて…。食べてしまいたくなる。
そうだ、今度休日が揃ったら三人で一緒に今回お世話になった農場に行かないか?野菜も果物も美味しかったし、果実酒も漬けているんだって。手紙で収穫を体験させてもらえないか頼んでみるよ。後でもらってきたお土産も渡すから期待してて。」
昨日はメルヴィンが登場してちょっとした騒ぎになったけど、二度目ならそんなに驚かれることもないはず。
ジェイデンのことも知ってるから、三人で訪ねても良いだろう。
「それは嬉しいお誘いです。新鮮な素材を使った美味しい料理を旦那様に食べてもらえますし、今から楽しみですね。」
「そうだな。ジェイデンは料理上手だから期待してる。持たせてくれたフリッターもありがとう。ハンクさんには申し訳ないけど、あれが一番美味しかった。
今日は農場の人が採れたての野菜で朝食を作ってくれたんだけど、ジェイデンの手料理がないとどこか寂しくてな…。
宿のことで忙しくしてるあなたにお願いするのは心苦しいんだけど、泊まりがけで出かけるときには何か一品作ってくれると嬉しい。」
「ええ、喜んで!むしろ手料理なんて重いと嫌がられなくて安心しました。」
ジェイデンの輝く笑顔が眩しい。
俺のことが大好きだって言われてるみたいで少し照れるな。
「ジェイデンが俺のためにしてくれたのに、そんなこと思うわけない。あなたの気持ちが嬉しかった。一回の食事に一つずつ、ちゃんと味わって食べたから。」
「そっ、そうでしたか。そこまで喜んでもらえるなんて、妻冥利に尽きますね。次はどんなものを作りましょうか…。何か要望はありますか?」
「んー…。あ、手間が増えて申し訳ないんだけど、小分けにしてもらえると嬉しいかな。串に刺して一食分とか。あと、日数より少し多めに持たせてほしい。」
弁当の中身全てがジェイデンの手作りじゃなくても構わない。
だが、毎食何かお手製のものを食べたいと思ってしまう。
贅沢だとは思うが是非ともお願いしたい。
「分かりました、料理長にも相談して考えてみますね。参考に教えてほしいのですが、今日の夕食はいかがでしたか?」
「フィッシュフライとタルタルソースの組み合わせも捨てがたいけど、ほうれん草とチーズのラビオリが一番かな。」
どの料理も味は良かった。
でもラビオリは食べたらこう…ほっこりしたんだ。
心身にじんわりと染み渡る感じかな。
評論家じゃないから上手く言えないけど。
「ラビオリはわたしが作りました。お気に召してもらえて嬉しいです。あっ!でも、味付けは料理長がしてくれたので、わたしが一人で作ったものではないのですが…。」
ジェイデンが作ってくれたものが一番美味しく感じるのはどうしてだろう。
愛情が入っているからか?
それとも愛情たっぷりの魔力が何かに作用しているとか?
何にしても愛のなせるワザだと良いな。
「そうだとしても嬉しい気持ちは減ったりしないし、感謝しているよ。大好きで大切な人が俺を思ってくれているんだから。
でもね、ジェイデン。だからこそあなたも自分を大切にしてほしい。」
「っ!旦那様…。」
上手く誤魔化せていると思っていたんだな、ジェイデンは。
こんなに分かりやすいことを俺が見逃すはずがないだろう?
「昨日は眠れた?」
「いえ、落ち着いていられなくて……。」
シュンとさせてしまって申し訳ない。
責めているわけじゃないんだ。
分かってもらえるだろうか…?
「そうか。無理に眠れとは言わない。でも、もし次にそうなったときはベッドに横になって目を瞑って?」
「……分かりました。」
「約束だよ。それと、食事も抜いていたんじゃないか?これも無理に食べろなんて言わない。その代わり水分はちゃんととろう。ハンクさんに頼めば野菜や果物をジュースにしてくれるだろ?
俺の大好きなぷるぷるの唇がひび割れて痛そうだ。それなのにおかえりのキスをねだった俺を許してくれ。」
「もちろんです。いつもどおりに振る舞えていると思っていたのに、旦那様にいらぬ心配をかけてしまうとは…。」
増々萎れてしまった。
そんな顔をさせたいわけじゃないけど、分かってほしいんだ。
「今回はいきなり化物に遭遇したし仕方ないよ。ただ、ジェイデンが俺を大切に思ってくれているのと同じように、俺もジェイデンを大切に思っているのを忘れないでくれ。」
0
お気に入りに追加
546
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い



淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

○○に求婚されたおっさん、逃げる・・
相沢京
BL
小さな町でギルドに所属していた30過ぎのおっさんのオレに王都のギルマスから招集命令が下される。
といっても、何か罪を犯したからとかではなくてオレに会いたい人がいるらしい。そいつは事情があって王都から出れないとか、特に何の用事もなかったオレは承諾して王都へと向かうのだった。
しかし、そこに待ち受けていたのは―――・・


飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる