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伴侶の章 アレナドふたりの、はじめてがいっぱい
感謝SS 02 〜ワイバーンより厄介なモノ
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「ね、メルヴィン、ジェイデン。」
「なんだ?」
「なんでしょう?」
「この前、二人がワイバーンスレイヤーだって教えてくれたけど、ワイバーンってどれくらい厄介な魔獣なんだ?」
「あー、オレらみたいな身体強化特化型は相性が悪いな。」
「ええ、まず飛んでいますから、高度をとられると攻撃の手段が限られます。それに大きくて体表も堅いですし。」
「だから普通は遠距離攻撃のできるヤツと組んで討伐するんだ。」
「じゃあどうやって討伐したんだ?臨時でパーティを組んだのか?」
「依頼でちょっと遠い国に行ってたときに追加で緊急の依頼を受けたんだ。さすがにワイバーン相手じゃ無傷ってワケには行かねえから、依頼の過程で負った怪我は依頼主である国が責任を持って治すって条件でな。」
「それでその国の騎士団や魔術師たちと討伐に出たのです。騎士団はわたしたちの援護、魔術師はワイバーンを地上に落とす、もしくは高度を取らせないようにするという段取りだったのですが…。」
「ありゃあヒドかった。ワイバーンを見た騎士団は恐慌状態で壊走するし、魔術師どもも騒ぐだけ騒いで気絶したり……。なぁ、ジェイデン。」
「ええ、何の役にもたたないどころか足を引っ張ることしかありませんでした。」
「何だその依頼……。」
「オレもそう思う。結局、騎士団の放置していった武器を身体強化して遠投したり、投石器で攻撃して翼にダメージを蓄積させて、落ちたところを二人でどうにか討伐したんだ。」
「あれは辛かったですね……。弩も機械弓の射手もいませんでしたから。メルヴィンは左腕が無くなりましたし。」
「そういうお前だって左の前腕を無くしたじゃねえか。」
「えっ!?何だそれ!そんなことがあったのか!?」
「左は盾を持つ腕だからな…。いくら身体強化できても、ワイバーンって時点でそれくらいは覚悟してた。だから依頼を受ける条件に怪我の治癒を入れたんだ。」
「それなのにアレですからね…。」
「まだ何かあったのか?」
「まあ…なあ。」
「ええ。とりあえずわたしたちの失った左腕は無事に再生できたのですが、帰国しようとしたら引き止められまして…。」
「自国の騎士団と魔術師の無能っぷりに慌てたんだろうが、やんごとない身分の娘や子息を嫁にやるから国に留まれって言ってきてな。」
「そんな見た目と身分しか取り柄の無い者など誰が欲しがるものですか!」
「落ち着け、ジェイデン。……当然断ったが、そうしたら腕の再生にかかった費用を払えとふっかけて来やがった。ムリなら国に仕えろってな。二人で白金貨一枚(一億円)なんてぼったくりもいいトコだ。そもそも契約違反だし。」
「腕の再生ってそんなに高額なのか?」
「いいや。確かに高額だが、再生ができる治癒魔法の使い手さえ確保できれば、ほとんどの場合は大金貨(一千万円)でどうにかなる。」
「仕方ないのでその場は白金貨を支払って出国しました。その時のあの人たちの顔は酷かったですね。少しですが溜飲が下がりました。」
「まあな。どうせそんな額払えるワケがねえと思ってふっかけたんだろうが、ポンと置いて出て行ったんだからな。高ランクハンターの稼ぎをナメんなって話だ。」
「酷い目にあって、痛い思いもしたのに、凄い赤字じゃないか。その国の名前教えてくれるか?ちょっと行ってバレないように王城を瓦礫の山に変えてくる!」
「嬉しい申し出ですが、赤字ではありませんでしたよ?ハンターギルドにコトの顛末を報告して白金貨は取り返しましたし、契約不履行などで違約金を毟り取ってやりましたから。」
「ギルドも事態を重く見て動いてくれたからな。当然、それ以後はその国からの依頼は受けてない。ある意味ワイバーンより厄介な相手だったぜ。」
「他の高ランクハンターも身の危険を感じてその国を去りましたし、今も苦労しているでしょうね。自業自得ですが。」
「…………なあ、メルヴィン、ジェイデン。今も討伐に出ることがある二人には無傷で帰って来てくれとは言いにくい。でも必ず生きて帰って来て。そうしたらどんな怪我でもきっと治してみせる。二人が俺の隣からいなくなるなんて、どうにもできない寿命以外認めないから!」
「ははっ!そりゃあ意地でも生きて帰らなきゃならんな。だがお前さんも長生きしてくれよ。」
「わたしからもお願いします。末永く旦那様のお側に置いてくださいましね。」
「うん。二人のことは俺が看取るよ。」
「看取るって、旦那様……。」
「まあ、オレらより10歳くらい若いしそうなるんだろうが、お前さん一人を置いて逝くのは心配だ。」
「寂しいし、きっと大丈夫じゃないけど、頑張って天寿を全うするよ。支えてくれる人もできてるだろうし。」
「ええと……それはこれからできるわたしたち以外の伴侶のことですか?」
「違うよ?伴侶のことは分からないけど。」
「じゃあ誰だ?」
「ん?きっと子どもたちや孫たちが支えてくれると思うんだ。」
「子ども…。」
「孫…。」
「うん。俺の子を産んでくれるんだろ?メルヴィン。」
「シオン………。おう、きっとお前さんに似た子を産むからな。」
「えっ!どっちに似ても愛せると思うけど、一人目はメルヴィン似がいい…。」
「わっ、わたしだって……。(ボソっ)」
「じゃあ今からオレのことを可愛がってくれよ。」
「いいのか?メルヴィン、愛してる。ちゅぅ。」
「わたしのことも愛してください、旦那様。」
「ジェイデン…。あなたも愛してる。ちゅっ。三人でたくさん愛し合おう。」
「おう。」
「はい。」
「なんだ?」
「なんでしょう?」
「この前、二人がワイバーンスレイヤーだって教えてくれたけど、ワイバーンってどれくらい厄介な魔獣なんだ?」
「あー、オレらみたいな身体強化特化型は相性が悪いな。」
「ええ、まず飛んでいますから、高度をとられると攻撃の手段が限られます。それに大きくて体表も堅いですし。」
「だから普通は遠距離攻撃のできるヤツと組んで討伐するんだ。」
「じゃあどうやって討伐したんだ?臨時でパーティを組んだのか?」
「依頼でちょっと遠い国に行ってたときに追加で緊急の依頼を受けたんだ。さすがにワイバーン相手じゃ無傷ってワケには行かねえから、依頼の過程で負った怪我は依頼主である国が責任を持って治すって条件でな。」
「それでその国の騎士団や魔術師たちと討伐に出たのです。騎士団はわたしたちの援護、魔術師はワイバーンを地上に落とす、もしくは高度を取らせないようにするという段取りだったのですが…。」
「ありゃあヒドかった。ワイバーンを見た騎士団は恐慌状態で壊走するし、魔術師どもも騒ぐだけ騒いで気絶したり……。なぁ、ジェイデン。」
「ええ、何の役にもたたないどころか足を引っ張ることしかありませんでした。」
「何だその依頼……。」
「オレもそう思う。結局、騎士団の放置していった武器を身体強化して遠投したり、投石器で攻撃して翼にダメージを蓄積させて、落ちたところを二人でどうにか討伐したんだ。」
「あれは辛かったですね……。弩も機械弓の射手もいませんでしたから。メルヴィンは左腕が無くなりましたし。」
「そういうお前だって左の前腕を無くしたじゃねえか。」
「えっ!?何だそれ!そんなことがあったのか!?」
「左は盾を持つ腕だからな…。いくら身体強化できても、ワイバーンって時点でそれくらいは覚悟してた。だから依頼を受ける条件に怪我の治癒を入れたんだ。」
「それなのにアレですからね…。」
「まだ何かあったのか?」
「まあ…なあ。」
「ええ。とりあえずわたしたちの失った左腕は無事に再生できたのですが、帰国しようとしたら引き止められまして…。」
「自国の騎士団と魔術師の無能っぷりに慌てたんだろうが、やんごとない身分の娘や子息を嫁にやるから国に留まれって言ってきてな。」
「そんな見た目と身分しか取り柄の無い者など誰が欲しがるものですか!」
「落ち着け、ジェイデン。……当然断ったが、そうしたら腕の再生にかかった費用を払えとふっかけて来やがった。ムリなら国に仕えろってな。二人で白金貨一枚(一億円)なんてぼったくりもいいトコだ。そもそも契約違反だし。」
「腕の再生ってそんなに高額なのか?」
「いいや。確かに高額だが、再生ができる治癒魔法の使い手さえ確保できれば、ほとんどの場合は大金貨(一千万円)でどうにかなる。」
「仕方ないのでその場は白金貨を支払って出国しました。その時のあの人たちの顔は酷かったですね。少しですが溜飲が下がりました。」
「まあな。どうせそんな額払えるワケがねえと思ってふっかけたんだろうが、ポンと置いて出て行ったんだからな。高ランクハンターの稼ぎをナメんなって話だ。」
「酷い目にあって、痛い思いもしたのに、凄い赤字じゃないか。その国の名前教えてくれるか?ちょっと行ってバレないように王城を瓦礫の山に変えてくる!」
「嬉しい申し出ですが、赤字ではありませんでしたよ?ハンターギルドにコトの顛末を報告して白金貨は取り返しましたし、契約不履行などで違約金を毟り取ってやりましたから。」
「ギルドも事態を重く見て動いてくれたからな。当然、それ以後はその国からの依頼は受けてない。ある意味ワイバーンより厄介な相手だったぜ。」
「他の高ランクハンターも身の危険を感じてその国を去りましたし、今も苦労しているでしょうね。自業自得ですが。」
「…………なあ、メルヴィン、ジェイデン。今も討伐に出ることがある二人には無傷で帰って来てくれとは言いにくい。でも必ず生きて帰って来て。そうしたらどんな怪我でもきっと治してみせる。二人が俺の隣からいなくなるなんて、どうにもできない寿命以外認めないから!」
「ははっ!そりゃあ意地でも生きて帰らなきゃならんな。だがお前さんも長生きしてくれよ。」
「わたしからもお願いします。末永く旦那様のお側に置いてくださいましね。」
「うん。二人のことは俺が看取るよ。」
「看取るって、旦那様……。」
「まあ、オレらより10歳くらい若いしそうなるんだろうが、お前さん一人を置いて逝くのは心配だ。」
「寂しいし、きっと大丈夫じゃないけど、頑張って天寿を全うするよ。支えてくれる人もできてるだろうし。」
「ええと……それはこれからできるわたしたち以外の伴侶のことですか?」
「違うよ?伴侶のことは分からないけど。」
「じゃあ誰だ?」
「ん?きっと子どもたちや孫たちが支えてくれると思うんだ。」
「子ども…。」
「孫…。」
「うん。俺の子を産んでくれるんだろ?メルヴィン。」
「シオン………。おう、きっとお前さんに似た子を産むからな。」
「えっ!どっちに似ても愛せると思うけど、一人目はメルヴィン似がいい…。」
「わっ、わたしだって……。(ボソっ)」
「じゃあ今からオレのことを可愛がってくれよ。」
「いいのか?メルヴィン、愛してる。ちゅぅ。」
「わたしのことも愛してください、旦那様。」
「ジェイデン…。あなたも愛してる。ちゅっ。三人でたくさん愛し合おう。」
「おう。」
「はい。」
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