ダメな方の異世界召喚された俺は、それでも風呂と伴侶を愛してる

おりく

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5章 風呂とかき氷と甘々の目撃者たち

27 〜値付け ジェイデンとフェイト

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「こんばんは、今日は皆さんお揃いなんですね!」

声の主を振り返ればフェイトだった。

「あらフェイトちゃん、これから夕飯かしら?」

「そのつもりだったんですけど、シオンさんが居るならお話ししたいことがあるんです。少しお時間をもらえますか?」

「大丈夫だけど、どうしたんだ?」

フェイトが俺に用事なら魔道具関連かな。
何か進展があったか行き詰まったか……さすがに水の魔道具の完成はまだだろうし。

「シオンさんが宿泊費の代わりにした『ひえひえカップ』と『ほかほかカップ』のレシピ登録のことなんですけど、協力金のことを決めたいなと思って。」

何でも商業ギルドに魔道具のレシピを登録をすると、レシピの売買ができるようになって、登録したレシピが売れたり買われたレシピで魔道具が作られると収入になるらしい。
その魔道具の元になった付与をした俺にも売り上げからいくらか支払われる仕組みになっている、と。

「あのカップね!気付かないお客さんもいるけど概ね好評よ。エールが冷たいままだから最後まで美味しく飲めるって。」

ジェイデンの口から好評だと聞くと、損をさせてないっていうことと喜んでもらえてるってことにホッとする。
しかしそのまんまだが、えらく可愛らしいネーミングだ。

「今回は高額商品ではないので、シオンさんの取り分は2割5分でどうですか?」

笑顔で提案してくれてるけど、これは断れないヤツだ。
フェイトの指を再生させたときと同じ種類の圧力をひしひしと感じる……。

「ちなみに普通はどのくらいの割合なんだ?」

「ええと、物によりますが1割から3割ですね。一点物とか複雑で高額な物になると5割を越える事もありますけど。」

「うーん……。ちょっと気になってる魔道具があるんだけど、俺の取り分を放棄して魔道具を作ってもらうのはアリかな?」

「そうですね、僕が作れる物なら。あまり低価格なら追加してもらいますけど。」

「映像を記録する魔道具が欲しいんだ。どうかな?」

何かあったときの証拠として異世界モノの定番の魔道具だし、俺も自衛のために入手しておきたいと思ったのだ。
多分魔法でも記録できると思うけど、俺に都合の良い映像を作ったとか言われて証拠能力を疑われるかもしれないし。

「ああ『ハンディカム』ですね!それなら特許も切れててフリーレシピになってますし、作ったこともありますから大丈夫ですよ。」

ハンディカムって!
十中八九、過去の召喚者が作ったヤツなんだろうなぁ。

「じゃあそれで頼む。」

「わかりました!」

「そちらのお話しが終わった直後に申し訳ないのだけれど、わたしもフェイトちゃんにお願いがあるの。食事の後で時間があったら魔法を付与してもらった物の値付けに協力してもらえないかしら?お礼は今日の夕食なんていかが?」

「もちろんお手伝いさせてもらいます!」

「じゃあお願いするわね。シオンとメルヴィンはそろそろ部屋に戻ったら?もういい時間よ。」

言われてみればその通りだ。
メルヴィンを愛でる時間が減ってしまう!

「じゃあそろそろお暇しようかな。おやすみジェイデン…ちゅ。フェイトもおやすみ。魔道具、楽しみに待ってる。行こうメルヴィン。」

「お、おう。じゃあな。」

ジェイデンにおやすみのキスをして、メルヴィンの部屋に向かう背中に声が届く。

「キティさんどうしたんですか?随分静かでしたけど…。」

「ふふっ、シオンと二人きりで夜を過ごすから緊張してただけよ。心配いらないわ。」

「そっ、そうですか!」

見上げると図星だったのかメルヴィンの顔が真っ赤だ。
俺の嫁は本当に堪らなく可愛い。




◇◇◇◇◇

「フェイトちゃん、お待たせしたわね。このお皿なんだけど…どう思う?」

「…………こんなに大きいのに全然歪んでないし、形もピッタリ揃ってるなんて凄いですね。しかも絵付けまで。貴族からの払い下げでもあったんですか?」

「やっぱりそのクラスの品物だと思うわよね…。これはね、バイキング用にってシオンが用意して保温の魔法を付与してくれた物なの。ウチの備品になるから代金を支払いたくて相談させてもらったのだけれど、フェイトちゃんの見立てではいくらくらいかしら?」

「お皿そのものの価値についてはアンジェラさんの方が詳しいと思いますけど…これ、硬化も付与されてますよ?僕が同じ付与をするなら銀貨2枚から3枚(2~3万円)くらいいただきたいですね。」

「えっ!硬化もなの?はぁ、きっと長く使えるように気を遣ってくれたのね。」

「それなら硬化は知らなかったことにした方が良さそうですね。保温だけなら銀貨1枚と大銅貨3枚くらいかな。お皿は大銀貨1枚(10万円)くらいでしょうか…。」

「やっぱり大銀貨よね…。品物に見合った代金を支払いたいけど、そうするとシオンは喜びそうにない金額になっちゃうの。付けた値段の半額でって言ってくれたけど、本当ならこのお皿1枚は大銀貨1枚と銀貨3枚でしょ?」

「ちなみにこのお皿って何枚あるんですか?」

「30枚よ。」

「さんじゅう……。」

「そうよ、30枚。全部で金貨3枚と大銀貨9枚の半額で金貨1枚と大銀貨9枚と銀貨5枚……まあキリ良く金貨2枚(200万円)ね。」

「それは確かに不本意そうです。そもそもシオンさんの故郷は焼き物の技術が発達していて、この国ほど高額ではないのかもしれませんね。うーん……、お皿1枚大銀貨1枚で説得してみては?」

「そうすると金貨3枚の半額だから金貨1枚と大銀貨5枚ね。それでも高価過ぎるって言われそうよ…。」

「うーん…いっそシオンさんに必要そうな物での支払いの方が喜んでもらえるかもしれませんよ?ハンターのお仕事関連で何かありませんか?」

「そうね……。あっ!転移陣ゲート使用許可証ライセンスなんてどうかしら?」

「良いんじゃないですか?移動の時間が短縮されれば帰宅も早くなりますし。ちなみにおいくらなんですか?」

「確か金貨1枚よ。実際に転移陣を使うときには別途で使用料金と魔力か魔石が必要だけど、Bランクくらいから持ちはじめるわね。」

「シオンさんなら魔力は問題ありませんし、恋人の時間も確保できそうですね。」

「まあ!フェイトちゃんたら!嬉しいからデザートもオマケしちゃうわ!」
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