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5章 風呂とかき氷と甘々の目撃者たち
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今日の予定は、午前中はハンターギルドで鍛錬、午後からはロバートさんのところへ行ってお礼を渡して、可能なら作業を見学させてもらうことにした。
ジェイデンに行ってきますのキスをして、メルヴィンと手を繋いでギルドまでの道を歩いて行く。
手を繋ぎたいとお願いしたときのメルヴィンの慌て方から、こういう事をしたことが無いと窺えた。
それでも差し出した手を取ってくれた。
痛いくらいに握りしめられただけだが、それでも嬉しい。
次は是非とも恋人繋ぎをしてもらおう。
そのままギルドに入って行けば今日も視線を集めたが、そんな事は気にしない。
階段の下で二階の執務室に向うメルヴィンに「行ってらっしゃい」と言ってキスを待つ。
「おう、給料分は働かねえとな……ちゅ。」
ああもう、メルヴィンの照れ隠しがいちいち可愛い!
大好きだ!
今夜も抱き潰したいけど、嫌われたくないから自重しないと。
自重なんかしない!とか思ってたけど、メルヴィンのためだからな。
《リペア》の魔石に魔力を注いでから鍛錬をしたが、思いの外ノリノリで人形を壊し続けてしまったらしく、ルーシャが慌ててやって来た。
次回から気を付けるので大目に見て欲しい。
俺の嫁さんが可愛いのがいけないんだ。
だが鍛錬から戻ってきたホールで、浮かれていた俺の機嫌を急降下させるモノを見てしまった。
掲示場の前で男性体の職員の手を掴んでいるハンターが目に入って来た。
どうやら無理やり誘っているらしい。
「ルーシャ、アレはどうなんだ?」
「あの人また絡んで!ギルマスに報告してきます!」
ルーシャがメルヴィンを呼んでくる間に隣の受付嬢に詳細を尋ねる。
あの男性体の職員さんは女性体のハンターの恋人がいて、その恋人に抱かれていると思われているらしい。
絡んでいる色ボケハンターは、女性体に抱かれるくらいなら自分がいい思いをさせてやると言って迫っている、と。
色ボケしてるだけあって、ヤツの目は節穴だな。
確かに職員さんは華奢で線が細く可愛い顔をしているが、あの雰囲気は抱く方じゃないか?
だが体格差は如何ともし難くて、腕を振り解けないってトコか。
気分が悪いし、ちょっと魔力で威圧しておこう。
控え目に圧を飛ばすと、腐ってもハンターらしく手を離して辺りを探っている。
後はメルヴィンが抗議するだろう。
そう思って受付嬢に視線を移すと頷いてくれたのでこれで良いのだろう。
「ありがとうございます、シオンさん。ギルマスが助けてくれるって分かっていても掴まれたりすると恐いですから助かりました。」
「こういう事は結構あるのか?」
「月に数件くらいでしょうか。主にギルマスの前ではあんなことできないような小物がやりますね。」
小物…。
大物なら相手の方から寄って来るんだろう、それこそ掃いて捨てるほど。
高ランクになれば入れ喰いなんだから、そうなれるように努力すれば良いのに。
「モテない小悪党みたいだな。それでも体格差があると恐いだろう?」
「そうですね。私たちも護身術の講習は受けているんですけど元は素人が多いので。」
うーん、こういう事を聞くと何とかしてやりたくなるな。
だがギルドとハンターの問題に俺がでしゃばっても良いことはない。
今みたいな時間稼ぎが関の山だ。
ここの職員さんはメルヴィンの部下だし、何か考えてみよう。
そう思ったところで威圧をガンガンに飛ばしながらメルヴィンがやって来た。
色ボケハンターはメルヴィンがズボンを穿いている事に驚いているようで脚ばかり見ているが、メルヴィンが目の前に立って見下ろすと俯いて震え出した。
「お前か、嫌がるウチの職員に言い寄ってんのは。コナ掛けるくらいなら大目に見てやるが、ムリヤリは許さん。ここはギルドだ。娼館じゃあねえ。それも分からんヤツに回す依頼なんざねえ!とっとと出て行け。反省するまで戻ってくんな!」
おっかないけど優しいな、反省したら出禁解除なんて。
それだけハンター不足が深刻なのかもしれないが。
「分かったら行け!」
とどめの一言をもらって色ボケハンターが逃げ出して行った。
ルーシャの隣の受付嬢から話を聞いたメルヴィンが「時間稼ぎ助かった」と褒めてくれた。
やはり下手に首を突っ込まなかったのが良かったみたいだ。
いつもならキスを強請るところだが、止めた方が良いのだろうか。
「なあメルヴィン…ご褒美にキスが欲しいけど、ギルドではこういうの止めた方が良いか?」
えらく驚いているがどうしたのだろう。
「お前さんがそんなことを言うとは…。」
そんなにしみじみと言わなくても!
「俺だってあんたの心配くらいする。」
「そうか…だが今更だ。それに俺はギルマスだぞ。しかも元はSランク。ちゃんと仕事もしてるし、誰にも何も言わせねえよ。」
「でも…!」
「ギルマス、今からお昼休みを取ってください!休み時間や業務前なら誰も文句なんて無いですよ!シオンさんも心配しないでください。休み時間なんですから…ね?」
「だって、メルヴィン。良い部下を持ったな。」
「おう……ちゅ。お前さんもありがとうよ。」
ハァハァしてるけどありがとう、受付嬢。
後でこっそり教えてもらったが、この瞬間、ギルドに裏ルールができた。
「ギルマスがシオンさんといちゃいちゃしてるとき、ギルマスは休憩中である」
メルヴィンのメンツが保たれる暗黙の了解だ。
職員の皆さんには感謝している。
たとえ俺たちのいちゃいちゃで萌えたいだけだとしても。
ジェイデンに行ってきますのキスをして、メルヴィンと手を繋いでギルドまでの道を歩いて行く。
手を繋ぎたいとお願いしたときのメルヴィンの慌て方から、こういう事をしたことが無いと窺えた。
それでも差し出した手を取ってくれた。
痛いくらいに握りしめられただけだが、それでも嬉しい。
次は是非とも恋人繋ぎをしてもらおう。
そのままギルドに入って行けば今日も視線を集めたが、そんな事は気にしない。
階段の下で二階の執務室に向うメルヴィンに「行ってらっしゃい」と言ってキスを待つ。
「おう、給料分は働かねえとな……ちゅ。」
ああもう、メルヴィンの照れ隠しがいちいち可愛い!
大好きだ!
今夜も抱き潰したいけど、嫌われたくないから自重しないと。
自重なんかしない!とか思ってたけど、メルヴィンのためだからな。
《リペア》の魔石に魔力を注いでから鍛錬をしたが、思いの外ノリノリで人形を壊し続けてしまったらしく、ルーシャが慌ててやって来た。
次回から気を付けるので大目に見て欲しい。
俺の嫁さんが可愛いのがいけないんだ。
だが鍛錬から戻ってきたホールで、浮かれていた俺の機嫌を急降下させるモノを見てしまった。
掲示場の前で男性体の職員の手を掴んでいるハンターが目に入って来た。
どうやら無理やり誘っているらしい。
「ルーシャ、アレはどうなんだ?」
「あの人また絡んで!ギルマスに報告してきます!」
ルーシャがメルヴィンを呼んでくる間に隣の受付嬢に詳細を尋ねる。
あの男性体の職員さんは女性体のハンターの恋人がいて、その恋人に抱かれていると思われているらしい。
絡んでいる色ボケハンターは、女性体に抱かれるくらいなら自分がいい思いをさせてやると言って迫っている、と。
色ボケしてるだけあって、ヤツの目は節穴だな。
確かに職員さんは華奢で線が細く可愛い顔をしているが、あの雰囲気は抱く方じゃないか?
だが体格差は如何ともし難くて、腕を振り解けないってトコか。
気分が悪いし、ちょっと魔力で威圧しておこう。
控え目に圧を飛ばすと、腐ってもハンターらしく手を離して辺りを探っている。
後はメルヴィンが抗議するだろう。
そう思って受付嬢に視線を移すと頷いてくれたのでこれで良いのだろう。
「ありがとうございます、シオンさん。ギルマスが助けてくれるって分かっていても掴まれたりすると恐いですから助かりました。」
「こういう事は結構あるのか?」
「月に数件くらいでしょうか。主にギルマスの前ではあんなことできないような小物がやりますね。」
小物…。
大物なら相手の方から寄って来るんだろう、それこそ掃いて捨てるほど。
高ランクになれば入れ喰いなんだから、そうなれるように努力すれば良いのに。
「モテない小悪党みたいだな。それでも体格差があると恐いだろう?」
「そうですね。私たちも護身術の講習は受けているんですけど元は素人が多いので。」
うーん、こういう事を聞くと何とかしてやりたくなるな。
だがギルドとハンターの問題に俺がでしゃばっても良いことはない。
今みたいな時間稼ぎが関の山だ。
ここの職員さんはメルヴィンの部下だし、何か考えてみよう。
そう思ったところで威圧をガンガンに飛ばしながらメルヴィンがやって来た。
色ボケハンターはメルヴィンがズボンを穿いている事に驚いているようで脚ばかり見ているが、メルヴィンが目の前に立って見下ろすと俯いて震え出した。
「お前か、嫌がるウチの職員に言い寄ってんのは。コナ掛けるくらいなら大目に見てやるが、ムリヤリは許さん。ここはギルドだ。娼館じゃあねえ。それも分からんヤツに回す依頼なんざねえ!とっとと出て行け。反省するまで戻ってくんな!」
おっかないけど優しいな、反省したら出禁解除なんて。
それだけハンター不足が深刻なのかもしれないが。
「分かったら行け!」
とどめの一言をもらって色ボケハンターが逃げ出して行った。
ルーシャの隣の受付嬢から話を聞いたメルヴィンが「時間稼ぎ助かった」と褒めてくれた。
やはり下手に首を突っ込まなかったのが良かったみたいだ。
いつもならキスを強請るところだが、止めた方が良いのだろうか。
「なあメルヴィン…ご褒美にキスが欲しいけど、ギルドではこういうの止めた方が良いか?」
えらく驚いているがどうしたのだろう。
「お前さんがそんなことを言うとは…。」
そんなにしみじみと言わなくても!
「俺だってあんたの心配くらいする。」
「そうか…だが今更だ。それに俺はギルマスだぞ。しかも元はSランク。ちゃんと仕事もしてるし、誰にも何も言わせねえよ。」
「でも…!」
「ギルマス、今からお昼休みを取ってください!休み時間や業務前なら誰も文句なんて無いですよ!シオンさんも心配しないでください。休み時間なんですから…ね?」
「だって、メルヴィン。良い部下を持ったな。」
「おう……ちゅ。お前さんもありがとうよ。」
ハァハァしてるけどありがとう、受付嬢。
後でこっそり教えてもらったが、この瞬間、ギルドに裏ルールができた。
「ギルマスがシオンさんといちゃいちゃしてるとき、ギルマスは休憩中である」
メルヴィンのメンツが保たれる暗黙の了解だ。
職員の皆さんには感謝している。
たとえ俺たちのいちゃいちゃで萌えたいだけだとしても。
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