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5章 風呂とかき氷と甘々の目撃者たち
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「それで何の騒ぎだったんだ?」
アレナド邸のリビングに到着して、抱いていた俺を降ろしながらメルヴィンが口を開いた。
70キロくらいある俺を抱いて小揺るぎもしないメルヴィンが逞しくて格好良い。
「ああ、多分いつもの公国からのハンターですよ。アレでは満足な調査結果は報告できないでしょうね。分かりやすかったけれど、低俗な輩だったから絡まれてしまって。でも旦那様が来てくれたから大丈夫でしたよ。」
嬉しそうに微笑むジェイデンとは対象的に、メルヴィンの表情が険しくなった。
「かなり許し難い事を言ってくれたからな…全力で否定して惚気ておいた。ああジェイデン、勘違いしないでくれ。ヤツらを黙らせる為に惚気た訳じゃない。ジェイデンが好きだって隠さなかったら惚気になって、結果的にザコハンターが黙っただけだから。サラッとメルヴィンのことも貶されたけど、それも否定できたと思う。」
「ほう、それで終わりか?」
ヤバい、メルヴィンのテンプルに青筋が浮いてきた。
ジェイデンを貶められてご立腹のようだ。
「ちゃんと殺気を当てて黙らせた。そしたら青い顔して震えてたから、もう怖くてここには来れないだろうな。」
「それじゃあ足りねえなあ…。」
メルヴィン、大魔神になってる。
「あのな、メルヴィン。ヤツら性的な意味でジェイデンの身体がデカすぎて何とか…って失礼な事を言ってきて腹が立ったから、他人の性器を見たら吐く魔法かけて隠蔽しておいた。ジェイデンの身体もメルヴィンの身体も、魅力的じゃないところなんて無いのに失礼にも程がある。これで少しは溜飲が下がったか?」
「良くやった、シオン!」
俺の頭をわしゃわしゃ撫でてくれるが、追加で強請る。
「褒めてくれるならメルヴィンからキスして。」
「おう、顔寄越せ…って、お前さんが言った通り、お前さん限定で癖みたいだな。」
そう言って深いキスをくれる。
俺限定って言ってもらえてホッとした。
興奮するとジェイデンはキスの雨を降らせてくれて、メルヴィンは濃厚なキスをしてくれる。
どっちも嬉しくて、どっちも好きだ。
「それにしても旦那様…いつの間にそんな魔法をかけたのです?」
岡持ちから料理を出し終わり、席に着いたジェイデンに「ナイショ」と答えて俺も椅子に座る。
俺の夕飯は済んでいるので、さっきレストランで出したシードルと梅酒を食卓に並べる。
ちなみに梅酒はブランデー仕込み。
俺はコレを炭酸水で割るのが好きなんだ。
「お前さん、酒は飲まないのかと思ってたけど違ったんだな。」
「故郷では夕飯の後に風呂に浸かることが多かったんだ。酒を飲んで熱い風呂に入ると酒が回るだろ?だから風呂の後かシャワーの日にしか飲まなかったんだけど、この国には風呂が無いから飲んでも良いかと思ってな。」
「あ、あの旦那様?ええと…その、お酒は…。」
もじもじするジェイデンも可愛いけど、言いたい事はわかった。
「安心して、ジェイデン。シードルと梅酒、1杯ずつしか飲まないから。」
ベッドに影響しない量しか飲まないと言えば、真っ赤な顔でコクリと頷いて俯いてしまった。
「お前なあ、恥ずかしいなら言わなけりゃあ良いだろうが。…ああ、ジェイデン。今日は食べる量を控え目にした方が良いぞ。じゃあ、今日の糧に感謝を。」
ジェイデンが言葉を失っている間に三人分の酒を注いでいく。
久しぶりの梅酒の香りに気分が上がる。
「シードルなんて久しぶりです。こちらの梅酒というのはどんな果物のお酒なのですか?甘酸っぱくて良い香りですね。」
「梅はスモモとかアンズの親戚みたいな果物で、酒と氷砂糖で漬けているんだ。ロックでも良いし、好きな飲み物で割っても美味い。これはブランデーで漬けた物だよ。」
祖母が梅酒を漬ける時に、手伝いでヘタを取ったのを思い出すな…。
梅酒だけでなく子どもだった俺のために梅シロップも漬けてくれた。
懐かしい思い出だ。
「ブランデーに砂糖と果物か…贅沢だな。……確かに良い匂いだ。……ん、そのままだとオレには甘いな。」
自分の梅酒をソーダ割りにしてメルヴィンに差し出す。
「おっ、このくらいなら丁度いい。オレのもコレで割ってくれ。」
メルヴィンはソーダ割りがお気に召したようだ。
「わたしはこの甘さでも美味しいです。」
「ジェイデンは果実水で割っても好きだと思うよ。」
「後で試してみます。」と言って、くぴくぴ飲んでいるが大丈夫だろうか…。
「飲みすぎんなよ」と注意してくれるメルヴィンがお兄ちゃんしていて頼もしい。
それなりに飲んでいたのに、メルヴィンは酔った気配がない。
ジェイデンは緊張しているからか、ほろ酔いだ。
酔ったままのジェイデンを揺さぶるわけにもいかないので、酔い醒ましにロバートさんからの荷物を開けることにした。
箱から服を取り出して広げていくと、シンプルで手触りの良いシャツとしっかりした造りのズボンが出てきた。
しかも襟や袖にメルヴィンとジェイデンの色を使った刺繍まで施されている。
「一日足らずでどうしたらここまでの仕事ができるんだ…。」
「シオンはロバートの仕事を見た事ないから、そう思うのもムリはねえ。今度見せてもらえば良い。あれはかなり凄いぞ。」
メルヴィンが凄いと言うのだから、お礼を渡しに行った時にお願いして見せてもらおう。
楽しみが増えたな。
アレナド邸のリビングに到着して、抱いていた俺を降ろしながらメルヴィンが口を開いた。
70キロくらいある俺を抱いて小揺るぎもしないメルヴィンが逞しくて格好良い。
「ああ、多分いつもの公国からのハンターですよ。アレでは満足な調査結果は報告できないでしょうね。分かりやすかったけれど、低俗な輩だったから絡まれてしまって。でも旦那様が来てくれたから大丈夫でしたよ。」
嬉しそうに微笑むジェイデンとは対象的に、メルヴィンの表情が険しくなった。
「かなり許し難い事を言ってくれたからな…全力で否定して惚気ておいた。ああジェイデン、勘違いしないでくれ。ヤツらを黙らせる為に惚気た訳じゃない。ジェイデンが好きだって隠さなかったら惚気になって、結果的にザコハンターが黙っただけだから。サラッとメルヴィンのことも貶されたけど、それも否定できたと思う。」
「ほう、それで終わりか?」
ヤバい、メルヴィンのテンプルに青筋が浮いてきた。
ジェイデンを貶められてご立腹のようだ。
「ちゃんと殺気を当てて黙らせた。そしたら青い顔して震えてたから、もう怖くてここには来れないだろうな。」
「それじゃあ足りねえなあ…。」
メルヴィン、大魔神になってる。
「あのな、メルヴィン。ヤツら性的な意味でジェイデンの身体がデカすぎて何とか…って失礼な事を言ってきて腹が立ったから、他人の性器を見たら吐く魔法かけて隠蔽しておいた。ジェイデンの身体もメルヴィンの身体も、魅力的じゃないところなんて無いのに失礼にも程がある。これで少しは溜飲が下がったか?」
「良くやった、シオン!」
俺の頭をわしゃわしゃ撫でてくれるが、追加で強請る。
「褒めてくれるならメルヴィンからキスして。」
「おう、顔寄越せ…って、お前さんが言った通り、お前さん限定で癖みたいだな。」
そう言って深いキスをくれる。
俺限定って言ってもらえてホッとした。
興奮するとジェイデンはキスの雨を降らせてくれて、メルヴィンは濃厚なキスをしてくれる。
どっちも嬉しくて、どっちも好きだ。
「それにしても旦那様…いつの間にそんな魔法をかけたのです?」
岡持ちから料理を出し終わり、席に着いたジェイデンに「ナイショ」と答えて俺も椅子に座る。
俺の夕飯は済んでいるので、さっきレストランで出したシードルと梅酒を食卓に並べる。
ちなみに梅酒はブランデー仕込み。
俺はコレを炭酸水で割るのが好きなんだ。
「お前さん、酒は飲まないのかと思ってたけど違ったんだな。」
「故郷では夕飯の後に風呂に浸かることが多かったんだ。酒を飲んで熱い風呂に入ると酒が回るだろ?だから風呂の後かシャワーの日にしか飲まなかったんだけど、この国には風呂が無いから飲んでも良いかと思ってな。」
「あ、あの旦那様?ええと…その、お酒は…。」
もじもじするジェイデンも可愛いけど、言いたい事はわかった。
「安心して、ジェイデン。シードルと梅酒、1杯ずつしか飲まないから。」
ベッドに影響しない量しか飲まないと言えば、真っ赤な顔でコクリと頷いて俯いてしまった。
「お前なあ、恥ずかしいなら言わなけりゃあ良いだろうが。…ああ、ジェイデン。今日は食べる量を控え目にした方が良いぞ。じゃあ、今日の糧に感謝を。」
ジェイデンが言葉を失っている間に三人分の酒を注いでいく。
久しぶりの梅酒の香りに気分が上がる。
「シードルなんて久しぶりです。こちらの梅酒というのはどんな果物のお酒なのですか?甘酸っぱくて良い香りですね。」
「梅はスモモとかアンズの親戚みたいな果物で、酒と氷砂糖で漬けているんだ。ロックでも良いし、好きな飲み物で割っても美味い。これはブランデーで漬けた物だよ。」
祖母が梅酒を漬ける時に、手伝いでヘタを取ったのを思い出すな…。
梅酒だけでなく子どもだった俺のために梅シロップも漬けてくれた。
懐かしい思い出だ。
「ブランデーに砂糖と果物か…贅沢だな。……確かに良い匂いだ。……ん、そのままだとオレには甘いな。」
自分の梅酒をソーダ割りにしてメルヴィンに差し出す。
「おっ、このくらいなら丁度いい。オレのもコレで割ってくれ。」
メルヴィンはソーダ割りがお気に召したようだ。
「わたしはこの甘さでも美味しいです。」
「ジェイデンは果実水で割っても好きだと思うよ。」
「後で試してみます。」と言って、くぴくぴ飲んでいるが大丈夫だろうか…。
「飲みすぎんなよ」と注意してくれるメルヴィンがお兄ちゃんしていて頼もしい。
それなりに飲んでいたのに、メルヴィンは酔った気配がない。
ジェイデンは緊張しているからか、ほろ酔いだ。
酔ったままのジェイデンを揺さぶるわけにもいかないので、酔い醒ましにロバートさんからの荷物を開けることにした。
箱から服を取り出して広げていくと、シンプルで手触りの良いシャツとしっかりした造りのズボンが出てきた。
しかも襟や袖にメルヴィンとジェイデンの色を使った刺繍まで施されている。
「一日足らずでどうしたらここまでの仕事ができるんだ…。」
「シオンはロバートの仕事を見た事ないから、そう思うのもムリはねえ。今度見せてもらえば良い。あれはかなり凄いぞ。」
メルヴィンが凄いと言うのだから、お礼を渡しに行った時にお願いして見せてもらおう。
楽しみが増えたな。
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