ダメな方の異世界召喚された俺は、それでも風呂と伴侶を愛してる

おりく

文字の大きさ
上 下
115 / 170
5章 風呂とかき氷と甘々の目撃者たち

11

しおりを挟む
「アイツら多分公国から来たハンターのパーティーだ。この国のハンターならオーナーにあんな口聞くわけがない。ここんとこ何回か通って来てるんだが、酷いな。」

立ち上がろうとした俺に料理長が教えてくれた。
王国と公国は仲が悪いから定期的にハンターが調査にやって来るらしい。
それ自体は違法ではないし、普通はもっとマトモなヤツらが他の依頼のついでに王国の世情を調べるのだろうが、今回のパーティーはクズだったみたいだな。

さらに調査員だと気付いた宿の従業員に宿泊を断られた腹いせもあるとの事だ。
アレナド兄弟は有名人だし、間違いなく調査対象だからここに泊まりたかったのだろう。

そうだとしても、本当にダメなパーティーだな。
レストランの客のほとんどに睨まれてるのに気付いてないし、こんな風に悪目立ちするなんて。
しかしジェイデンはお客さんにも好かれて人気があるんだな。

「オーナーのアニキもアタマおかしい格好してるっていうし、そんなのを英雄とか持ち上げなきゃいけない国民に同情するぜ。」

そのアニキはさっきまでここに居たけどな!
もうちゃんと似合う格好してるし。
メルヴィンに一連の会話を聞かれてたら、今頃ヤツらは瀕死だっただろう。

「行ってくる。」

「二度とここに出入り出来ないようにしてくれ。」

料理長と拳を合わせて出陣だ。





「ジェイデン。」

モデルの仕事中の父親を真似てオーラ全開でジェイデンに歩み寄る。

「シオン、どうしたの?」

少し困った顔で返事をくれた。
そりゃああんな程度の低いヤツらに絡まれたらそんな顔にもなるだろう。
そしてこの時点でほとんどの客は俺とジェイデンが特別な仲だって分かった筈だ。
彼をアンジェラではなくジェイデンと呼べるのだから。
知らないのはヤツらだけ。
見せ付けるように寄り添い並び立つ。

「ねぇジェイデン。今夜俺と一緒に過ごす約束だけど、仕事は何時くらいに終わるんだ?」

クズハンターたちが目を剥いた。
お前らがアタマがおかしいとこき下ろしたジェイデンの相手が俺だ!
言葉も無いだろう?
そのまま絶句してろ。

「そうね…今20時前だから21時くらいかしらね。どうかしたの?」

ここでジェイデンの腰に手を回し下半身を密着させ、頭は肩に凭れさせる。

「うん、夜の薬なんだけどな。昨日は一人でだったけど、今夜は一緒に準備してくれるんだろ?だから遅くならないように帰ってきて欲しくて…。」

「シオン…。わかったわ、余り遅くならないように気を付けるわね。」

「うれしい。じゃあジェイデンの部屋で待っててもいいか?」

ジェイデンの頬を撫で、うっとりした表情かおで尋ねる。
彼も俺の手に掌を重ね、頬を染めながら答えてくれる。
どうだ!俺の嫁は最高に可憐で可愛いだろう!!

「もちろんよ。メルヴィンも一人の夕食よりあなたと一緒の方が喜ぶものね。」

「そうだと良いな。じゃあ俺が待ちきれなくなる前に帰って来て……。ちゅ。」

ジェイデンにキスを贈って仕上げをした。
すると俺にキスの雨が降ってきた。

「ええ、ええ。ちゅっ、もちろんよ!わたしも待ち切れないわ!!ちゅぅ。」

「ん、ジェイデン大好き。今夜もたくさん愛し合おう。」

ギャラリーが俺とジェイデンのやり取りに呆気にとられている間に、ヤツらには他人の性器を目にすると嘔吐する魔法をかけてやろう。
もちろん、俺が犯人だとバレないように全力で隠蔽して。
俺の嫁の身体を勝手に想像した罰だ。

「あ…アンジェラさん、恋人ができたんですか?今まで誰ともお付き合いしたことありませんでしよね?」

若手のハンターっぽい青年からナイスな質問が投げかけられた。

「そうなの。わたしとメルヴィン、二人の恋人よ。ちゅ。彼はわたしたちの特別なの。ちゅっ。」

ギャラリーの間に今日一番のどよめきが奔った。

「ジェイデンもメルヴィンも、たとえ死んでも俺のものって約束してくれたもんな。」

俺もここぞとばかりに追い打ちをかける。

「ええ!たとえ肉体が滅びてもシオンだけよ。ちゅうぅ。」

何人かの客が灰になっているが、もう兄弟揃って俺の嫁だから諦めてくれ。

「ね、ジェイデン。あなたからのキスは凄く嬉しいけど、離れられなくなるからベッドまで取って置いて?ちゅぅ。」

「あっ、ごめんなさい!ちゅ。名残惜しいけれど、これで最後にするわね。んちゅ。」

「オーナー!こんなに盛り上がってるんだから今日はもう上がったらどうだ?」

ここで料理長が援護射撃してくれた。
クズハンターからジェイデンを一刻も早く引き離したいのは彼も同じだからな。
ジェイデンが「えっ、でも…」とか言ってるがコレを逃す手は無い。

「料理長!この辺で人気の酒って何かな?」

「この国は果物が高価だから果実酒が喜ばれるな。」

マジックバッグから取り出すフリをしながらシードルと梅酒、りんごと梅の炭酸飲料を作り出して近くのテーブルに並べていく。

「わかった。じゃあこれをお客さんと従業員のみんなに。りんごと梅の酒なんだ。こっちはジュースだから酒が飲めない人に。ジェイデンを早退させるお詫びだよ。」

クズハンター以外がワッと沸いてジェイデンの早退が決定した。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

柔道部

むちむちボディ
BL
とある高校の柔道部で起こる秘め事について書いてみます。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

○○に求婚されたおっさん、逃げる・・

相沢京
BL
小さな町でギルドに所属していた30過ぎのおっさんのオレに王都のギルマスから招集命令が下される。 といっても、何か罪を犯したからとかではなくてオレに会いたい人がいるらしい。そいつは事情があって王都から出れないとか、特に何の用事もなかったオレは承諾して王都へと向かうのだった。 しかし、そこに待ち受けていたのは―――・・

僕のダーリンがパーティーから追放宣言されて飼い猫の僕の奪い合いに発展

ミクリ21 (新)
BL
パスカルの飼い猫の僕をパーティーリーダーのモーリスが奪おうとしたけど………?

俺が総受けって何かの間違いですよね?

彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。 17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。 ここで俺は青春と愛情を感じてみたい! ひっそりと平和な日常を送ります。 待って!俺ってモブだよね…?? 女神様が言ってた話では… このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!? 俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!! 平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣) 女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね? モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

処理中です...