ダメな方の異世界召喚された俺は、それでも風呂と伴侶を愛してる

おりく

文字の大きさ
上 下
114 / 170
5章 風呂とかき氷と甘々の目撃者たち

10

しおりを挟む
「おかえりなさい、シオン。ロバートさんから荷物が届いているわよ。」

宿に帰るとカウンターの奥からジェイデンが迎えてくれた。
俺の顔を見て花咲くように微笑んでくれる。

「ただいま。荷物はここで受け取りか?」

「いいえ、量があったからわたしの家のリビングで預かっているの。夜に来てくれると約束したから、そっちの方が良いかと思って。」

「ん、ありがと。あと昼食のとき料理長が差し入れをくれたんだ。フェイトとラースと一緒に美味しく頂いたよ。こっちもありがとう。」

「いいのよ」と言って笑顔を向けてくれるが、どこかそわそわしている。
原因は分かっているが、コメントするためにも全身が見たいのでカウンターから出てきてもらった。

「それ、新しい服だろ?ホルターネックもワイドパンツも良く似合ってる。今までよりもずっとエレガントで魅力的だよ。」

「嬉しいです、旦那様」と目元を染めながら俺にだけ聞こえる声で囁やいた。
頬と頬が触れ合う程の距離での会話は特別感があって満たされる。

「ふふ、シオンに言われた通り、カウンターに立つのに合わせて着替えてみたの。慣れないうちは裾に気を付けないといけないけれど、気持ちが切り換わって良いわね。こう…よりアンジェラとしてお仕事も頑張ろうってなったの。」

初めて会ったときの寂しそうな笑顔じゃない、輝く笑顔でそう告げるジェイデンはとても美しい。
俺の伴侶が尊くて困る。

「ジェイデンの魅力を引き出す服を作ってくれたロバートさんにお礼しなきゃな。」

あの人は夜に旦那さんと使う物を喜んでくれそうだから、準備しておこう。
ポジションの邪推とか、野暮なことはしない。
どっちでも良いし、どっちも良い…ってな。

「そうね。急ぎでシオンの普段着とわたしたちの仕事着を仕立ててくれたみたいだから、レストランに招待しようかしら。」

「良いんじゃないか?ここの食事は美味いし。」

「そう言ってもらえると嬉しいわ。メルヴィンはまだ帰ってないけど、夕飯はレストランで良いかしら。何かリクエストはある?」

残念ながらメルヴィンは帰りに用事があるらしく、一緒に帰って来れなかった。

「どんな料理があるか良くわからないからジェイデンに任せるよ。ただ、身体を動かしてきたからがっつり食べたいな。」

「わかったわ。カウンターのお席で待っててちょうだいね。」





言われた通りにカウンター席に座ってから認識阻害の魔法を発動した。
理由は単純に食事中に絡まれるのを防ぐためだ。
折角便利なモノを使えるようになったのだから、最大限に利用してやろう。

しばらくするとジェイデンが出来立ての料理を運んできてくれた。

「お待たせ。ディナーセットと追加のパンとブラウンシチューと牡蠣のオイル漬けよ。これで足りるかしら?」

目の前に並んだ料理を見るとかなりのボリュームだ。
セットのパン、スープ、サラダ、豚肉のソテーに追加のパンと具沢山なシチュー、夜に効きそうな牡蠣…。
食欲を唆る匂いがして腹が減る。

「ん、ありがとう。充分だよ。」

「今日のシチューは料理長のイチオシなんですって。」

厨房を見れば料理長がグッ!とサムズアップしていたので、俺も同じ動作を返しておいた。
ちなみにシチューは具の形がきれいに残っているのに、口に入れると溶ける程柔らかく、まさに絶品だった。

もう少しで完食するところでメルヴィンが帰って来た。
メルヴィンの登場でざわめきが起こったが、レストランの客は彼がスボン穿いてるのに驚いたんだろう。

認識阻害で気配を薄くしていることを忘れて「おかえり」と声をかけたらびっくりされてしまった。
ジェイデンと料理長は魔法を発動する前から俺の存在を知っていたので普通に認識できている。

「お前さん、何で認識阻害なんか展開してんだ?」

「虫除け。」

身も蓋もない言い方だけど、納得!って表情をされてしまった。

「あら、おかえりなさいメルヴィン。直接こっちに顔を出すなんて珍しいわね。このままここで夕食にする?」

「いや、シオンのメシも終わりそうだし、あっちで食う。それよりアレ買ってきたぞ。」

「わかったわ。じゃあ夕食は出来上がり次第届けるわね。あとロバートさんから服が届いてるの。お部屋に運んであるから確認してね。」

「ありがとうよ。しかし相変わらず仕事が早えな。」

「ふふ、今回は特に、ね。」

「あー……な。よっぽど嬉しかったんだろ。」

そう言って家に向かうメルヴィンを見送って、食後の飲み物を頼んだ。
周りの客は酒を飲んでいる者が多いが、俺は昔からの習慣で食後はお茶だ。
あと、飲酒後の入浴は危険なので、飲むならなるべくシャワーで済ませるか風呂の後にしている。

腹も膨れたし一度部屋に戻ろうかと思っていると、ジェイデンに絡む声が聞こえてきた。

「オーナー、そんな格好して抱いてくれるオトコでも出来たんですか~?」
「いやいや、そんなのムリだろ!イザとなったらデカ過ぎて逃げ出すに決まってるって。」
「じゃあそういう格好した男に抱かれるのが好きな相手ができたってことか!」
「違いねえ!ソイツもマトモなヤツじゃねえってことか!お似合いだな!ハハハっ。」

ハハハじゃねえよ。
俺の嫁を侮辱したヤツらを無事で帰すものか。
覚悟しろ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

柔道部

むちむちボディ
BL
とある高校の柔道部で起こる秘め事について書いてみます。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

○○に求婚されたおっさん、逃げる・・

相沢京
BL
小さな町でギルドに所属していた30過ぎのおっさんのオレに王都のギルマスから招集命令が下される。 といっても、何か罪を犯したからとかではなくてオレに会いたい人がいるらしい。そいつは事情があって王都から出れないとか、特に何の用事もなかったオレは承諾して王都へと向かうのだった。 しかし、そこに待ち受けていたのは―――・・

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

処理中です...