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伴侶の章 アレナドふたりの、はじめてがいっぱい
ジェイデン・アレナドは捧げたい 02
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ギルドへの道すがら、どうしてアンジェラが望む姿ではないか気付いたのか尋ねてみました。
理由を教えてもらいましたが、これでは彼には分かってしまっても仕方ないと思えました。
ですが、そこで驚く話を聞きました。
わたしと同じような境遇なのに、似て非なる先人の存在です。
他人から押し付けられた不自由と、自分で選んだ不自由……。
確かに納得のできる話でした。
ですが、決定的に違うのはアンジェラはジェイデンの価値を失くすための存在で、わたし以外には必要ないものなのです。
むしろ邪魔だと忌々しく思われているでしょう。
他人が必要とするのは金の髪の子種と、Sランクハンターのジェイデン・アレナドだけなのですから…。
でも彼は違いました。
アンジェラママを好きだと、わたしの努力の結果、わたしの一部だと言って認めてくれました。
ああ、この人に愛されたい。
たとえ愛されなくても、これからの人生をこの人の側で過ごしたい。
この身に価値など無くとも、全てを捧げたい。
わたしは身の内から湧き出る欲求に戸惑いましたが、溢れる想いを止められませんでした。
そしてその想いはすぐに露顕してしまいました。
こうなったら開き直るしかないのでしょうか……。
救いは、彼がわたしに好意を寄せられていると知っても嫌悪しなかったことです。
でも恥ずかしかったので、生贄を捧げてその場は切り抜けました。
生贄になってくれた彼には感謝しています。
ギルドの受付で無意識に彼を「シオン」と呼び、彼の手で、彼を特別に思っていることを暴露されました。
しかも、わたしに特別扱いされるなら罵られてもかまわないとまで言ってくれました。
もう、本当に、心臓を貫かれたかと思いました。
この日、ときめきというものを初めて現実の世界で知りました。
受付のお嬢さん方がきゃあきゃあ叫んでいましたが、本当に叫びたかったのは、わたしです。
「あの美形のお兄さん、きっと襲い受けよおぉ!」
やはりアンジェラとして暮らしていても、わたしが抱かれるとは思われないようです。
「ラースが他人事じゃないと言ってただろう?俺もあなたに他人事では無いと忠告したぞ。今更だ。諦めて俺に可愛がられると良い。」
そんなことを言われてしまえば、今すぐ抱いて欲しいと思ってしまいます。
いっそ襲い受け計画でも練りましょうか…。
そんな勢いで騒いでいたら、兄が執務室から出てきました。
今日もとても短いショートパンツにパンプスです。
彼の反応を窺えば、意外にも平然としていました。
アンジェラにも反応しなかったし、当然かと思う反面、初対面でキティと普通に挨拶できる人なんて殆ど居ない、とも思いました。
ルーシャさんが「キレイなお兄さんが襲い受けようとしています!アンジェラさんが無自覚にべた惚れで、既にメロメロです!!」なんて報告をして、兄に意味が分からないと突っ込まれていましたが、仕方ありません。
襲い受けたいのはわたしですが、他はその通りなのですから。
しかもそのルーシャさんは爪と靴のことも直ぐに気が付いたようで、彼に質問していました。
こんなにも分かりやすく自分の甘さを突き付けられるなんて…。
それに似合うと言って貰えたことに浮かれてしまいそうです。
受付のお嬢さんの誰かが彼の前職を愛の伝道師と予想していましたが、わたしにとっては正しくそうかもしれません。
それに、兄に細いと言われて膨れてしまうなんて、なんて可愛いのでしょうか。
しかもわたしや兄みたいになりたかっただなんて!
ルーシャさんが「止めてぇ!今のシオンさんがサイコーです!だから元気出してくださぁい!」と叫んでいましたが、本当にその通りです。
彼は彼のままが最も美しく、魅力に溢れていますから。
彼と手合わせをする際に兄はハンデが必要か、と聞きました。
確かに凄い体格差ですから、ハンデを貰っても恥ずかしい事ではありません。
でも彼は申し出を考えもせずに断りました。
これには驚きました。
自信過剰なのか、その実力があるのか…。
殺気を浴びた身としては後者だと思いましたが、兄はそれを知りません。
ハンデの変わりに、褒美をやろうと言い出しました。
しかもわたしも巻き込んで。
兄と同じモノを要求されるなら大丈夫、なんて軽く考えてしまいました。
触ってもらうこと自体はうれしいのですが、その…、とても恥ずかしかったです。
それに性的には触らないだなんて、残念です。
今思えば、他人の目さえ無ければわたしの身体などいくらでも、どんな触り方でもしてもらって構いませんでしたのに……。
その後、彼の実力を知るために手合わせをしましたが、わたしだけでなく兄まで相手になりませんでした。
入念な準備をして、相手を観察し、機を逃さない。
まさに完璧です。
兄も、そんな彼にコロっと参ってしまったようです。
これで彼が兄を憎からず想ってくれれば良いのですが。
でもその前に、彼は兄の服装を変えてくれました。
わたしにだけ辛い思いをさせまいと、兄の優しさからの行動でしたが、正直に言うとギルドでは怖がられる程の酷さでしたし、助かりました。
そしてわたしに寄り添うことは止めなくて良いとも…。
そのための提案は嬉しかったですね。
あの下着のイタズラは、なんと言いますか、……結果的に彼の、その、情愛の対象となることが分かって良かったと思います。
理由を教えてもらいましたが、これでは彼には分かってしまっても仕方ないと思えました。
ですが、そこで驚く話を聞きました。
わたしと同じような境遇なのに、似て非なる先人の存在です。
他人から押し付けられた不自由と、自分で選んだ不自由……。
確かに納得のできる話でした。
ですが、決定的に違うのはアンジェラはジェイデンの価値を失くすための存在で、わたし以外には必要ないものなのです。
むしろ邪魔だと忌々しく思われているでしょう。
他人が必要とするのは金の髪の子種と、Sランクハンターのジェイデン・アレナドだけなのですから…。
でも彼は違いました。
アンジェラママを好きだと、わたしの努力の結果、わたしの一部だと言って認めてくれました。
ああ、この人に愛されたい。
たとえ愛されなくても、これからの人生をこの人の側で過ごしたい。
この身に価値など無くとも、全てを捧げたい。
わたしは身の内から湧き出る欲求に戸惑いましたが、溢れる想いを止められませんでした。
そしてその想いはすぐに露顕してしまいました。
こうなったら開き直るしかないのでしょうか……。
救いは、彼がわたしに好意を寄せられていると知っても嫌悪しなかったことです。
でも恥ずかしかったので、生贄を捧げてその場は切り抜けました。
生贄になってくれた彼には感謝しています。
ギルドの受付で無意識に彼を「シオン」と呼び、彼の手で、彼を特別に思っていることを暴露されました。
しかも、わたしに特別扱いされるなら罵られてもかまわないとまで言ってくれました。
もう、本当に、心臓を貫かれたかと思いました。
この日、ときめきというものを初めて現実の世界で知りました。
受付のお嬢さん方がきゃあきゃあ叫んでいましたが、本当に叫びたかったのは、わたしです。
「あの美形のお兄さん、きっと襲い受けよおぉ!」
やはりアンジェラとして暮らしていても、わたしが抱かれるとは思われないようです。
「ラースが他人事じゃないと言ってただろう?俺もあなたに他人事では無いと忠告したぞ。今更だ。諦めて俺に可愛がられると良い。」
そんなことを言われてしまえば、今すぐ抱いて欲しいと思ってしまいます。
いっそ襲い受け計画でも練りましょうか…。
そんな勢いで騒いでいたら、兄が執務室から出てきました。
今日もとても短いショートパンツにパンプスです。
彼の反応を窺えば、意外にも平然としていました。
アンジェラにも反応しなかったし、当然かと思う反面、初対面でキティと普通に挨拶できる人なんて殆ど居ない、とも思いました。
ルーシャさんが「キレイなお兄さんが襲い受けようとしています!アンジェラさんが無自覚にべた惚れで、既にメロメロです!!」なんて報告をして、兄に意味が分からないと突っ込まれていましたが、仕方ありません。
襲い受けたいのはわたしですが、他はその通りなのですから。
しかもそのルーシャさんは爪と靴のことも直ぐに気が付いたようで、彼に質問していました。
こんなにも分かりやすく自分の甘さを突き付けられるなんて…。
それに似合うと言って貰えたことに浮かれてしまいそうです。
受付のお嬢さんの誰かが彼の前職を愛の伝道師と予想していましたが、わたしにとっては正しくそうかもしれません。
それに、兄に細いと言われて膨れてしまうなんて、なんて可愛いのでしょうか。
しかもわたしや兄みたいになりたかっただなんて!
ルーシャさんが「止めてぇ!今のシオンさんがサイコーです!だから元気出してくださぁい!」と叫んでいましたが、本当にその通りです。
彼は彼のままが最も美しく、魅力に溢れていますから。
彼と手合わせをする際に兄はハンデが必要か、と聞きました。
確かに凄い体格差ですから、ハンデを貰っても恥ずかしい事ではありません。
でも彼は申し出を考えもせずに断りました。
これには驚きました。
自信過剰なのか、その実力があるのか…。
殺気を浴びた身としては後者だと思いましたが、兄はそれを知りません。
ハンデの変わりに、褒美をやろうと言い出しました。
しかもわたしも巻き込んで。
兄と同じモノを要求されるなら大丈夫、なんて軽く考えてしまいました。
触ってもらうこと自体はうれしいのですが、その…、とても恥ずかしかったです。
それに性的には触らないだなんて、残念です。
今思えば、他人の目さえ無ければわたしの身体などいくらでも、どんな触り方でもしてもらって構いませんでしたのに……。
その後、彼の実力を知るために手合わせをしましたが、わたしだけでなく兄まで相手になりませんでした。
入念な準備をして、相手を観察し、機を逃さない。
まさに完璧です。
兄も、そんな彼にコロっと参ってしまったようです。
これで彼が兄を憎からず想ってくれれば良いのですが。
でもその前に、彼は兄の服装を変えてくれました。
わたしにだけ辛い思いをさせまいと、兄の優しさからの行動でしたが、正直に言うとギルドでは怖がられる程の酷さでしたし、助かりました。
そしてわたしに寄り添うことは止めなくて良いとも…。
そのための提案は嬉しかったですね。
あの下着のイタズラは、なんと言いますか、……結果的に彼の、その、情愛の対象となることが分かって良かったと思います。
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