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伴侶の章 アレナドふたりの、はじめてがいっぱい
ジェイデン・アレナドは捧げたい 01
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最初に彼の姿を認めたとき、なんて美しいのだろうと思いました。
きっとわたしとは違い、全てが綺麗なのだろうと。
でも、こうも思ったのです。
こんな神に愛されたような人に愛されたら、どんなに幸せなのだろう…と。
彼が愛を囁く人を心の底から妬んでしまいました。
自分でも驚いたのですが、会った事も無い相手に嫉妬したのは初めてでした。
まあ、その人は、その………わたしと、わたしの兄だったのですが。
フェイト君、ラース君と共に訪ねて来た彼は、シオンと名乗りました。
途中だった仕事を終わらせるために離れた彼らの様子を見れば、仲の良さが伺い知れました。
歳の近そうな彼らを見て、自分のようなおじさんはお呼びじゃないと、彼には相応しく無いと自嘲していれば、信じ難い言葉が聞こえて来ました。
「相思相愛ならばどんな体格でも抱き潰せる自信がある」だなんて、わたしには福音のような言葉です。
勘違いしてはいけない、彼に愛されていないわたしには当てはまらない、と自分を戒めました。
それでも言葉が転がり出てしまいましたが、彼はわたしの心に寄り添うように励ましてくれました。
わたしが望む人…。
わたしを望んでくれる人…。
わたしが愛する人…。
わたしを愛してくれる人…。
わたしが望むのは、ありのままのわたしを愛してくれる人。
怖がりで愛されたがりで諦めを覚えた汚いわたし。
兄がいなければ何もできなかった無力なわたし。
子どもの頃は物語のお姫様のように、ただ王子様や騎士様に愛されることに憧れていました。
もちろん、子どもながらに自分は決してお姫様にはなれない事くらいわかっていました。
でも愛されない子どもだったわたしは、物語に登場する、無条件に皆の愛を一身に受けるお姫様が、心の底から羨ましかったのです。
家では金の髪を妬まれ、騎士団では体格と実力を妬まれ、ハンターになってからはそれに加えて兄まで妬まれました。
実力以外は不可抗力ですが、常に羨まれる側だったわたしは、常に愛情に飢えていたのですから滑稽です。
成長するにつれ、どんどん身体は大きくなり、男性体から性的に求められる条件からはかけ離れて行きました。
同じ想いを共有できたのはメルヴィンだけでした。
そう、メルヴィンだけ……。
わたしのたった一人の本当の兄。
母はわたしを愛してはくれましたが、自由に会うことは叶わず、さらに父の他の相手の手前、堂々とそれを表すことはできませんでした。
メルヴィンの御父上にも気にかけていただきましたが、あの方はわたしの父ではありませんでした。
ありのままのわたしを受け入れ、兄弟として愛情を注ぎ、父のように慈しんでくれたのはメルヴィンだけでした。
たった2つしか歳の変わらない自慢の兄。
誰もが認める、王国最強の座に君臨する唯一無二の兄。
彼がいなければ、わたしが生きていなかったのは間違いありません。
その兄に、本当は男性体に愛されたい兄にあんな事までさせてしまったなんて…。
それでも兄はわたしに変わらない愛情を注いでくれています。
兄なら彼の目に止まって、愛されるかもしれない。
彼なら兄の諦めた夢を叶えてくれるかもしれない。
そんな予感めいたものを感じたわたしは、彼に質問をしました。
わたしよりも大きな身体でも変わらず愛せるか、と。
返ってきた答えはわたしの望むものでした。
彼に実力さえあれば、きっと兄も彼を好きになる。
問題は兄の服装ですが……………なんとかなりますかね?
しかし彼は、その前にわたしが望んで、でも諦めた願いを叶えてくれました。
跪いて、あなたの靴を脱がせる許可を頂きたい、だなんて。
夜の誘いでは無いとわかってはいても心が震えました。
フェイト君がわたしをお姫様みたい、と言ってくれました。
彼が跪いたならば、その相手は須らく女王かお姫様に見えることでしょう。
アンジェラについての指摘が頭から抜け落ちるくらい衝撃的でした。
彼はアンジェラの事も否定せず、事情があるのだろうと察してもくれました。
この世界に、こんな人がいるなんて…。
思えばこの瞬間に、わたしの心は彼に捕らわれたのです。
愛されたいと願いながらも、メルヴィン以外に心を預けなかったわたしが、初めて好きになった人。
その後、彼の事情も説明してくれましたが、とんでもない事件で、思わず口調がジェイデンに戻ってしまいました。
わたしもまだまだ修行が足りないようです。
あと、わたしも頬に彼のキスが欲しいです。
お風呂への情熱にはびっくりしたけれど、一緒に温泉に行く約束ができたのは嬉しかったですね。
しかし彼の殺気は恐ろしいです。
ラース君が彼を魔王と言ったのもわかります。
将来的にメルヴィンを超える逸材かもしれない、なんて思っていた過去のわたしに教えてあげたい。
彼こそが最強…わたしたちの支配者であると。
たとえ魔王でもかまわない、全て捧げたいと思ってしまいました。
物語には魔王の生贄になるお姫様もいますからね!
わたしはそれも望むところです。
彼が提案した宿代にも驚きました。
物を冷やしたり温めたりする魔法はありますが、それをわざわざカップのような日用品に付与する魔術師などいません。
ですがお客さんに喜んでもらえる良い物だと思い、了承しました。
その後のラース君が可哀想なことになっていたので、わたしも気を付けようと誓ってギルドへと向かいました。
ギルドで彼に兄を売り込む事も忘れませんよ。
きっとわたしとは違い、全てが綺麗なのだろうと。
でも、こうも思ったのです。
こんな神に愛されたような人に愛されたら、どんなに幸せなのだろう…と。
彼が愛を囁く人を心の底から妬んでしまいました。
自分でも驚いたのですが、会った事も無い相手に嫉妬したのは初めてでした。
まあ、その人は、その………わたしと、わたしの兄だったのですが。
フェイト君、ラース君と共に訪ねて来た彼は、シオンと名乗りました。
途中だった仕事を終わらせるために離れた彼らの様子を見れば、仲の良さが伺い知れました。
歳の近そうな彼らを見て、自分のようなおじさんはお呼びじゃないと、彼には相応しく無いと自嘲していれば、信じ難い言葉が聞こえて来ました。
「相思相愛ならばどんな体格でも抱き潰せる自信がある」だなんて、わたしには福音のような言葉です。
勘違いしてはいけない、彼に愛されていないわたしには当てはまらない、と自分を戒めました。
それでも言葉が転がり出てしまいましたが、彼はわたしの心に寄り添うように励ましてくれました。
わたしが望む人…。
わたしを望んでくれる人…。
わたしが愛する人…。
わたしを愛してくれる人…。
わたしが望むのは、ありのままのわたしを愛してくれる人。
怖がりで愛されたがりで諦めを覚えた汚いわたし。
兄がいなければ何もできなかった無力なわたし。
子どもの頃は物語のお姫様のように、ただ王子様や騎士様に愛されることに憧れていました。
もちろん、子どもながらに自分は決してお姫様にはなれない事くらいわかっていました。
でも愛されない子どもだったわたしは、物語に登場する、無条件に皆の愛を一身に受けるお姫様が、心の底から羨ましかったのです。
家では金の髪を妬まれ、騎士団では体格と実力を妬まれ、ハンターになってからはそれに加えて兄まで妬まれました。
実力以外は不可抗力ですが、常に羨まれる側だったわたしは、常に愛情に飢えていたのですから滑稽です。
成長するにつれ、どんどん身体は大きくなり、男性体から性的に求められる条件からはかけ離れて行きました。
同じ想いを共有できたのはメルヴィンだけでした。
そう、メルヴィンだけ……。
わたしのたった一人の本当の兄。
母はわたしを愛してはくれましたが、自由に会うことは叶わず、さらに父の他の相手の手前、堂々とそれを表すことはできませんでした。
メルヴィンの御父上にも気にかけていただきましたが、あの方はわたしの父ではありませんでした。
ありのままのわたしを受け入れ、兄弟として愛情を注ぎ、父のように慈しんでくれたのはメルヴィンだけでした。
たった2つしか歳の変わらない自慢の兄。
誰もが認める、王国最強の座に君臨する唯一無二の兄。
彼がいなければ、わたしが生きていなかったのは間違いありません。
その兄に、本当は男性体に愛されたい兄にあんな事までさせてしまったなんて…。
それでも兄はわたしに変わらない愛情を注いでくれています。
兄なら彼の目に止まって、愛されるかもしれない。
彼なら兄の諦めた夢を叶えてくれるかもしれない。
そんな予感めいたものを感じたわたしは、彼に質問をしました。
わたしよりも大きな身体でも変わらず愛せるか、と。
返ってきた答えはわたしの望むものでした。
彼に実力さえあれば、きっと兄も彼を好きになる。
問題は兄の服装ですが……………なんとかなりますかね?
しかし彼は、その前にわたしが望んで、でも諦めた願いを叶えてくれました。
跪いて、あなたの靴を脱がせる許可を頂きたい、だなんて。
夜の誘いでは無いとわかってはいても心が震えました。
フェイト君がわたしをお姫様みたい、と言ってくれました。
彼が跪いたならば、その相手は須らく女王かお姫様に見えることでしょう。
アンジェラについての指摘が頭から抜け落ちるくらい衝撃的でした。
彼はアンジェラの事も否定せず、事情があるのだろうと察してもくれました。
この世界に、こんな人がいるなんて…。
思えばこの瞬間に、わたしの心は彼に捕らわれたのです。
愛されたいと願いながらも、メルヴィン以外に心を預けなかったわたしが、初めて好きになった人。
その後、彼の事情も説明してくれましたが、とんでもない事件で、思わず口調がジェイデンに戻ってしまいました。
わたしもまだまだ修行が足りないようです。
あと、わたしも頬に彼のキスが欲しいです。
お風呂への情熱にはびっくりしたけれど、一緒に温泉に行く約束ができたのは嬉しかったですね。
しかし彼の殺気は恐ろしいです。
ラース君が彼を魔王と言ったのもわかります。
将来的にメルヴィンを超える逸材かもしれない、なんて思っていた過去のわたしに教えてあげたい。
彼こそが最強…わたしたちの支配者であると。
たとえ魔王でもかまわない、全て捧げたいと思ってしまいました。
物語には魔王の生贄になるお姫様もいますからね!
わたしはそれも望むところです。
彼が提案した宿代にも驚きました。
物を冷やしたり温めたりする魔法はありますが、それをわざわざカップのような日用品に付与する魔術師などいません。
ですがお客さんに喜んでもらえる良い物だと思い、了承しました。
その後のラース君が可哀想なことになっていたので、わたしも気を付けようと誓ってギルドへと向かいました。
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